fc2ブログ

自動詞と他動詞〈1〉〜〈5〉

 下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)【11】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1906376407&owner_id=5019671

 自動詞と他動詞なんて恐ろしいテーマに踏み込んではいけない。
 そう考えているので、説明する場合にも極力避けてきた。
 ただ、どうしても必要な場合もある(泣)。
 mixiだと下記あたりが関係するだろう。

【他動詞と自動詞の教え方】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=1281254&id=60041234
【「見つける」と「見つかる」独り言です52くらい──日本語教師関連編25くらい※全体公開】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-934.html
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1370388644&owner_id=5019671
【助詞の話……「を」】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1807.html
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1669163707&owner_id=5019671

 さすがの庭三郎のサイトも、何がなんだか……。
【庭三郎】
http://www.geocities.jp/niwasaburoo/04dousibun.html#4.43

 下記を見つけた。もしかすると初級者向けとしてはこれがよいかも。
【自動詞と他動詞】※リンク切れ
http://web.ydu.edu.tw/~uchiyama/1h93fy/jita.html
 ↓下記あたりがいいか。
日本語の自動詞・他動詞【日本語の構造・日本語教育能力検定試験対策 】
https://japanese-bank.com/licence/intransitiveverb_transitiveverb/

 問題は〈なお、〈「を」+動詞〉の形でも、〈名詞+「を」〉の部分が場所を表わすものは他動詞ではない。〉の部分。「ない」は言いすぎでは。「ないことがある」くらいだろう。
「グラウンドを走る」が自動詞で、「グラウンドを見る」が他動詞になる理由なんて簡単には説明できない。

 例外としてあげられているもの。
  駐車場を通る
  電車をおりる
  空を飛ぶ
  グラウンドを走る
  廊下を曲がる
  部屋を出る
  大学を卒業する
 
 以下の例も自動詞なんだろうだな。
  橋を渡る
  街道を行く
  日本を離れる
  海を泳ぐ


自動詞と他動詞〈2〉

 動詞は、おおざっぱに言うと自動詞と他動詞がある。
 日本語の場合、自動詞と他動詞(以下「自他」と書く)の話がどこまで正確なのかわからないところがあるが、ここでは無視する。↑にあった定義に従っておく。例外についても↑参照。
http://web.ydu.edu.tw/~uchiyama/1h93fy/jita.html
================引用開始
自動詞
〈「を」+動詞〉の形にならない動詞

他動詞(たどうし)
〈「を」+動詞〉の形になる動詞
================引用終了

 複合動詞(「付けかえる」などのような動詞を便宜的にこう呼ぶ)の場合、前半と後半の自他が一致するほうが自然なことが多い(はず)。後半のほうが支配力が強いという説も聞くし、例外はいろいろあるが……。
  立ち直る(自+自)○
  立ち直す(自+他)△
  立て直る(他+自)△
  立て直す(他+他)○

■「立ち上げる」
 例外のトップに上げたいのが「立ち上げる」。「会社を立ち上げる」「パソコンを立ち上げる」などと使う。
 法則性で考えると下記になるはず。
  立ち上がる(自+自)○
  立ち上げる(自+他)△
  立て上がる(他+自)△
  立て上げる(他+他)○

 転んだ子供が「立ち上がる」という用法のほか、先にあげた「立ち上げる」も広く使われる。そのためか、「立て上げる」のほうはあまり見ない。「(建築物を)を建て上げる」なら問題はなさそうだが、これもあまり見ない。

■「並び替わる」と「並べ替える」
 法則に従うなら下記のようになる。
  並び替わる(自+自)○
  並び替える(自+他)△
  並べ替わる(他+自)△
  並べ替える(他+他)○ 

「数字が自動的に並び替わる」「数字を並べ替える」が自然だろう。
 理由は不明だが「並び替え(る)」とする例をかなり見る。mixiのExcelのコミュでは「並び替え」という言葉がたびたび問題になっていた。Excelに限れば、「並べ替え」でないとおかしい。法則性云々ではなく、Excelのプルダウンメニューが「データ」→「並べ替え」になっているから。
「並び」を「替える」と考えれば「並び替え」でもおかしくはない、という説を目にすることもある。まあ、Excelの仕様を別にして日本語の問題と考えるなら、そういう考え方もアリかもしれない。
 個人的には相当気持ちが悪く感じる。某テレビ番組で「並び替え川柳」という言葉が使われるたびに引っかかるものがあり、投書をしようかと半ば本気で考えている。

■「聞き飽きる」
 これは↓のmixiのトピで教えてもらった。
「他+自」の形になっているので不自然なはずだが、書きかえようがない(泣)。

■少し関係しそうなトピ
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=21710714&comm_id=19124

 コメントを回収しておく。
================引用開始
[10] 2007年08月12日 00:32

tobirisu
 当方の意見を初めに書いておくと、あげられた例文に関してはすべて「*」です。ただし、文脈によっては「?」ということもあるかもしれません。
 そもそも複合動詞を形成しているそれぞれの動詞がどんな助詞を伴うか、ということから考えてみました。たとえば「走り続ける」なら、「走る」も「続ける」が両方とも同じような助詞を伴うので、「走り続ける」も同様になり、迷う余地はないと思います。
 例文をすべて検討すると煩雑になるので、「聞き飽きた」を例に考えましょう。語感に多少の違いはあっても、ほかも同様だと思います。
     ~に  ~を  ~は  ~も
聞いた  ×   ○    ○   ○
飽きた  ○   △    ○   ○
 原則としては、両方の動詞が伴いうる助詞でなければ使いにくいのではないでようか。
「に」を使うと異和感があるのは、「聞いた」が「に」を伴わないからだと思います。この観点もあって、当方の語感では「には」にしてもすべて「*」です。一方、「を」だとさほど異和感がないのは、
1)「飽きた」が「を」を伴うことも可能だから(どちらかというと「に」が自然ですが)
2)直接助詞と結びつく「聞いた」が「を」伴うのが自然だから(あるいは、「聞いた」が主、「飽きた」が従、という考え方もできるかもしれません)
 両方の動詞と結びつく「は」「も」は文としては成り立ちますが、当然のことながら「限定」「累加」などの意味合いが付加されるので、文脈によっては不自然になります。

 いずれにしても、文脈しだいのところがあります。
6:accoさんのコメント中にあった
「虫は春からこの方、ずっと青葉に食べ飽きて、」
 なら、「は」は「虫は」と重複感があって少しヘンでしょう。間を省略して「虫は青葉は食べ飽きて」とすると、あきらかにヘンになります。「も」もほかに食べ飽きたものが出てこないのならヘンです。この場合なら「に」もアリかなと思います。個人的な語感では「を」ですが。
 そもそも、他動詞的な「聞く」と自動詞的な「飽きる」が結びついた「聞き飽きる」がイレギュラーな表現な気がします。よく指摘される「並び替え」(「並べ替え」が正しい表現でしょう)のような気持ちの悪さがあります。
 8:ichamonologystさんのコメントあるように、「必須格であるニ格・ヲ格を用いている例が案外少ない」のも、この気持ちの悪さと関係があると思います。
 素人考えで長々と失礼しました。土曜日中のタイムリミットを少し過ぎてしまいましたが、ご参考までに。
================引用終了

================引用開始
[19]
2007年08月12日 19:34

tobirisu
 まず、いまさらながらひとつ提案です。当方はMacintosh環境で見ているため、冒頭の例文のマルイチ、マルニと思われるものが化けています。 16: Crane Ugoさんの〈???では、「にも」とすると〉あたりになると、判読できません。ということで、改めて下記のようにしました。さしさわりがあるなら、修正してください。

1)彼のくだらない冗談に聞き飽きた。
2)病室の窓から見える殺風景な景色に見飽きた。
3)子供向けの漫画に読み飽きた。
4)日本に10年住んでいるので生魚に食べ慣れた。
5)ロンドンに10年住んでいるのでイギリス英語に聞き慣れた。
6)最初は驚いたが、今では彼女の風変わりな髪型や服装に見慣れた。
 
 当方の考えは保守的なのかもしれませんが、「にも」にすると、
  1)2)3)(~にも○○飽きた)は「*」
  4)5)6)(~にも○○慣れた)は「?」
 です。いずれも、「にも」にするなら、「も」にするべきという気がします。

「ている」「てきた」にすると「に」がOKというのは、最初はそう思いました。
 おそらく、「ている」「てきた」にすると、それだけ、「飽きる」「慣れる」の部分の字面が重くなるので、それだけ、「に」との親和性が強まるからでしょう。
 ただし、じいっと眺めているうちに感じが違ってきました。やはりすべて「*」です。もはや当方の語感は何の判断力ももたなくなったようです(泣)。
 やはり通常の形は「~を」でしょうが、原因不明の気持ちの悪さは感じるので、自分では極力使わないと思います。こうして使えない表現がまたひとつ増えてしまいました。

17: accoさんのコメント中の
「そこらの中華料理に食べ飽きている人はぜひ行ってみてください。」
 に関しては、この文脈なら「に食べ飽きている人」でも「に食べ飽きた人」でもさほどおかしくないかな、と思います。個人的な語感ではどちらも「を」ですが。
 このあたりの語感の問題は、水掛け論になる気がします。
================引用終了


自動詞と他動詞〈3〉


 大事な先行日記を忘れていた。
【複合動詞の「~アゲル」と「~アガル」の違い】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2765.html
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1898206024&owner_id=5019671

 予想どおり、考えれば考えるほどいろいろわからないことが出てくる(泣)。
 こういう話だと先行論文がある気がするから、書くだけムダって気もする(実際にあるらしい。紹介してもらった)。まあ、そんな論文がいくらあったって、どうせ当方には理解できないんだし……と前向き?に考えよう。
 まず気になったことをまとめた表。この表は今後も増殖していくような……。

ならべ

 つらつら考えるに、「並び替え(る)」ってかなり特殊な言葉って気がしてきた。
 複合動詞には、当然のことながら前語(前半の動詞をこう呼ぶ)と後語(後半の動詞をこう呼ぶ)がある。
 上の表では、前語が自他(自動詞と他動詞)の両方の形をもつか否か、後語が自他の両方の形をもつか否かを中心に考えている。
 両方が自他の両方の形をもっていると、可能性としては4つの複合動詞がつくれる。
 しかし、現実には、4つの複合動詞が使われているものは見当たらない(あったら教えて。以下同)。
 現実には2つの例が多く、3つの例も1つしかない。それが、1)の「並べ替える」「並び替える」「並び替わる」。「建て上げる」を考慮すると8)も可能かもしれないが、この際無視する。

「並べ替える」の特殊性の解釈は2つありそう。
1「並び替える」(自+他)が特殊
 動詞の組み合わせとしては、「自+自」と「他+他」が素直。
2「並び替わる」(自+自)が特殊
 表の2)3)を見ると、「並び/並べ」の後語は、他動詞になっている。これが法則なら「並び替わる」が特殊。「開店前に行列が並び始まる」と言えなくない気もするが、「でき始める」あたりがフツーだろう。 

 仮に↑の「2」のようなことが言えるなら、「並び/並べ」はきわめて支配力の強い前語になる。自分自身は両方の形をとりながら、後語は他動詞限定。
 ところがそんなことにはならない(泣)。

 支配力の強い後語(前語が自であろうが他であろうが自分は不変)もありそう。
 支配力の強い前語と後語を組み合わせるとどうなるか……。

 カラン、カラン、カラ~ン。
 ↑サジを投げた音。
 出直します(泣)。


【追記】
「降り続ける」「降り続く」
「降り続く」はレアらしい。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14137519214

http://dic.search.yahoo.co.jp/dsearch?p=%E7%B6%9A%E3%81%8F&ei=UTF-8&b=1&dic_id=jj&stype=suffix



「する」と「させる」教えて! goo 辞書 自動詞と他動詞〈4〉

 テーマサイトは下記。
【「する」「させる」】
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/8969529.html

==============引用開始
「する」「させる」は、本来まったく意味が異なるはずなのに、なぜ、
ア、「歌が彼女の気持ちを明るくした。」
イ、「歌が彼女の気持ちを明るくさせた。」
が、両方ともほぼ同じ内容をあらわすのでしょうか。それとも、後者は間違いなのでしょうか。
==============引用終了

 以下はほとんどマユツバな当方の主観。
 考えやすいように少し例文を加える。

ア 歌が彼女の気持ちを明るくした
イ 歌が彼女の気持ちを明るくさせた
ウ 恋する気持ちが彼女を明るくした
エ 恋する気持ちが彼女を明るくさせた

 たしかに「イ」も見聞する気がするが、ひょっとするとヘンなのかもしれないと思えてきた。「エ」だと相当強い異和感がある。
 ネット検索すると、かなりヒットするがよくわからい(泣)。
 下記を見るに{完成する/完成させる}なら何も問題がないようだ。これに比べると「エ」は相当イヤ。

https://oshiete.goo.ne.jp/qa/1274606.html


 いきなり結論を書くと、おそらく、「~を明るくさせた」は「自動詞の使役形」。
「~を明るくした」は他動詞。
 下記の例文で考える。

■自動詞
先生のひと言で生徒が目覚めた
先生のひと言で生徒が静かになった
■自動詞の使役形
先生のひと言が生徒を目覚めさせた
先生のひと言が生徒を静かにならせた△
先生のひと言が生徒を静かにさせた
(先生のひと言が生徒を静かにした)

 今度は「他動詞」の場合。
■他動詞
コーチが生徒をプロ選手にした
先生が生徒を静かにした
■他動詞の使役形
監督がコーチに生徒をプロ選手にさせた
校長が先生に生徒を静かにさせた


「歌が彼女の気持ちを明るくした」の場合は、下記だろう。
■原形(自動詞)
歌で彼女の気持ちが明るくなった
■自動詞の使役形
歌が彼女の気持ちを明るくならせた△
歌が彼女の気持ちを明るくさせた
(歌が彼女の気持ちを明るくした)

■原形(他動詞)
歌が彼女の気持ちを明るくした
■他動詞の使役形
歌が彼女に気持ちを明るくさせた△
有名歌手が歌で彼女の気持ちを明るくさせた△

「自動詞の使役形」としてイチバン正確なのは、おそらく「歌が彼女の気持ちを明るくならせた」。でも現実にはこんな言い方はしない。そこでかわりに使われるのが、「歌が彼女の気持ちを明るくさせた」。
 ここで辞書を確認する。下記に近いのでは。
http://www.excite.co.jp/dictionary/japanese/?search=%E3%81%95%E3%81%9B%E3%82%8B&match=exact&itemid=DJR_saseru_-030
==============引用開始
大辞林 第三版の解説

④他動詞を持たない自動詞に接続して,他動詞の代用をする。 「水を沸騰させる」
==============引用終了

 自動詞の「沸騰する」を使役形の「沸騰させる」にすることで他動詞の代用にする。
「目覚める」を使役形の「目覚めさせる」しても同様。
 厳密には「する」は他動詞をもっているが、そういう動詞でも「自動詞の使役形」で他動詞のように使えるということだろう。こうでも考えないと「明るくさせる」の説明ができない。
「~を輩出{する/させる}」とか。
「~を完成{する/させる}」もそうかもしれない。
 一方、「歌が彼女の気持ちを明るくした」に関しても、「自動詞の使役形」と考えることができそうな気がするが、フツーの「他動詞」(の原形)と考えるのが素直だろう。これを使役形にするにはちょっと要素を増やす必要がありそう。いずれにしても、「歌が彼女の気持ちを明るくさせた」にはなりそうにない。

「歌が彼女の気持ちを明るくした」と「歌が彼女の気持ちを明るくさせた」はどちらもアリ。意味は同じ。ニュアンスの違いは……当方はそういうことはできるだけ考えないことにしている。いろいろな理屈をつけることはできるだろうが、そういうのはたいてい個人の主観の問題なので、基本的に他者に押し付ける気はない。
 
 どうしてもって言うならば……。
 この場合は「歌が彼女の気持ちを明るくした」のほうが自然に感じる。理由は……だからわからないって。
 恋する気持ちが彼女を明るく{した/させた}
 の場合なら、「させた」は×って気さえする。
 これが「その言葉が彼女を悲しく{した/させた}」だと、「させた」のほうが自然に感じる。理由は……わからないって。


「する」と「させる」〈2〉 辞書 自動詞と他動詞〈5〉

 ↑の話がずっと気になっていた。
 とっても気になって気になって、南国のフルーツ並みにたわわにキになっていた。
 元の質問。
==============引用開始
「する」「させる」は、本来まったく意味が異なるはずなのに、なぜ、
ア、「歌が彼女の気持ちを明るくした。」
イ、「歌が彼女の気持ちを明るくさせた。」
が、両方ともほぼ同じ内容をあらわすのでしょうか。それとも、後者は間違いなのでしょうか。
==============引用終了
 いろいろ考えた結論。「明るくした」って例文が「自動詞」と解釈できないので説明がしにくいのでは。
「(形容詞・形用動詞)~する」はいろいろあり、自他両用の形をとることがあるけど、自動詞になりにくいときもあるし、他動詞になりにくいときもある。どういう法則性があるのか……いまは不明。
 ちなみに『大辞泉』の記述では、下記の用法がわかりにくい。
https://kotobank.jp/word/%E7%82%BA%E3%82%8B-544032#E5.A4.A7.E8.BE.9E.E6.9E.97.20.E7.AC.AC.E4.B8.89.E7.89.88
==============引用開始
大辞林 第三版の解説

する【為る】
( 動サ変 ) [文] サ変 す

❸(形容詞・形容動詞の連用形に付いて)その状態にならせる。その状態を出現させる。 「髪を長くする」 「これまでの経緯を明らかにする」 「静かにしなさい」
==============引用終了

 元の例文が下記だったら、すっきり説明できる。以下、理由はよくわからないけど過去形(正確にはタ形)のほうがシックリくるので、過去形で書く。
==============引用開始
「する」「させる」は、本来まったく意味が異なるはずなのに、なぜ、
ウ「先生の言葉が生徒を大人しくした」
エ「先生の言葉が生徒を大人しくさせた」
が、両方ともほぼ同じ内容をあらわすのでしょうか。それとも、後者は間違いなのでしょうか。
==============引用終了

 ウの「~した」は他動詞用法。
 エの「~させた」は自動詞用法の使役形。
 使役形を外した形は「(先生の言葉で)生徒が大人しくした」
 仮に他動詞の使役形と考えるなら、別の「ガ格」もしくは「ニ格」が必要になる。
「校長先生ガ(担任の)先生に(言葉で)生徒を大人しくさせた」
「先生がクラス委員ニ生徒を大人しくさせた」

「~した」が自他両方の形で使えるなら、形容動詞でも同様の考え方ができる。
●他動詞
オ「先生の言葉が生徒を静かにした」
●自動詞の使役形
カ「先生の言葉が生徒を静かにさせた」
 ただの自動詞「(先生の言葉で)生徒が静かにした」
 他動詞の使役形。
「校長先生ガ(担任の)先生に(言葉で)生徒を静かにさせた」
「先生がクラス委員ニ生徒を静かにさせた」


 このようにすっきり説明できるのは「~する」が自他両用の場合だけで、むしろレアケースなのかも。
【「自動詞だけ」の場合】
●自動詞
 意識がはっきりした。
●自動詞の使役形
 (その衝撃が)意識をはっきりさせた。
「意識をはっきりした」の形にはしにくい。

【「他動詞だけ」の場合】
●自動詞
 歌で彼女の気持ちが明るくなった
●他動詞
 歌が彼女の気持ちを明るくした
●自動詞の使役形
 歌が彼女の気持ちを明るくならせた×
 歌が彼女の気持ちを明るくさせた
 原理的には自他両用のときと同じことだと思うが、この説明はちょっと強引でわかりにくいかもしれない。

 自他両用のケースは……〈漢語+する〉ならいくつか浮かぶんだけど。
『大辞林』の例文で考える。「静かにしなさい」は命令形をやめたら↑のとおり。
・髪を長くする/髪を長くさせる
・これまでの経緯を明らかにする/これまでの経緯を明らかにさせる
 これは元々の質問の「明るくする」と同様。「~が~なる」の形でも使わなければ自動詞にはしにくい。「大人しくする」と「明るくする」でなぜそんな違いが出るのかは言葉の神様に訊いてください。
 ただ、考え方としては同じだと思う。

 同じようでも、「長髪にする」だと、自他両方アリの気がするが、そこはかとなくぎごちない。いっそ「坊主」にすれば多少自然かも(笑)。
●他動詞
「母親が子供を長髪にする」
●自動詞の使役形
「(母親が)子供を長髪にさせた」
●自動詞
「子供が長髪にする」
●他動詞の使役形
 どうなるんだろ?



 以下、思いつくままに例をあげていく。
 なんせ自他の境い目自体が曖昧で……。

〈他だけ〉(自は「~なる」〉
明るくする
明らかにする
強くする
大きくする
長くする

〈自だけ〉
沸騰する
感動する
はっきりする
すっきりする
勝手にする

〈自他両形〉
完成する
混入する
輩出する※間違いなく自他両用なんだけど、語感が働かない(泣)
発射する※自はやや不自然か?
発車する※他はやや不自然か?
自慢する※「自慢させる」にはしにくい

 教えて! gooで、質問をしてみた。
 前回ナゾのままだった疑問が解決したようだ。めでたし、めでたし。
【続「する」「させる」】
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/8998066.html
スポンサーサイト



よく目にする誤用の御三家 1)さわり 2)役不足 3)斜に構える

 下記の仲間。
【日本語アレコレの索引(日々増殖中)】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-306.html

mixi日記2008年3月16日から

 昨日の日記にもらったコメントへの返信が長くなるので、こちらに書きます。
 以下の記載は手元にいっさいの資料がないため、すべて記憶で書いてます。あとで資料を確認できた段階で不備があれば随時加筆します(ホントかなぁ)。

 当方は勝手に下記の3点を「よく目にする誤用の御三家」と考えている。

  1)さわり
  2)役不足
  3)斜に構える

 1)はテレビで使われるときはたいてい誤用。活字の世界で作家などが誤用する例もよく見かける。それがチェックされないってことは、編集者の間にも相当誤用が浸透しているのだろう。意味と用例は昨日の日記参照。
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=744835761&owner_id=5019671

 2)はマンガの影響が大きい。マンガの中での誤用は多すぎて例示する気にもなれない。対決シーンなどで、「キサマでは役不足だ」って感じで使う。これを正しい意味で考えると相当珍妙なことになる。考えてみると、この言葉を正しく使った例って、活字の世界でもほとんど見たことがない。「言葉の雑学」みたいな本では定番だけど(前に文章の書き方みたいな本〈俗称「赤い本」〉を書いたときも、この「役不足」については多少書いたけど、それほど詳しくはふれなかった。「言葉の正しい使い方」と「文章の書き方」は、ちょっと種類が違うと思うもので)。誤用でしか使われない言葉ってのは哀れすぎる。それだけ取り沙汰されているのに誤用が減らないのは、マンガにかかわる編集者の勉強不足としか言いようがない。カッコいいからってヤタラに使うんじゃない。
 似た例で言えば、「すべからく」の誤用がよく登場するのも、カッコいいからなんだろうな。えーと。「すべて」と同じような意味で「すべからく」を使うのは誤用。本来は「すべからく……すべし」という形で使う。「すべからく……しなければならない」みたいな形も認められているようだ。なんせ、あの丸谷才一が使うくらいだから。
 ちなみに、マンガの中で「役不足」が正しく使われた例を当方は1回だけ見たことがある。一部では現代版『のらくろ』と評される出世魚を描いた作品の中。作品名を書かないことに他意はなく、出世するたびに作品名がかわるので特定できないから。たぶん、「部長」のときだ。フィリピンだかの企業で働く非常に有能な女性を、ヘッドハンティングだか単なるナンパだかが目的で口説く。「君には○○みたいな仕事は役不足だ」
 見本にしたいような使い方(してるじゃん)だった。

 3)はもはや誤用とはいえない気もする。1)や2)の誤用は目にしたことがない天下の朝日新聞様でも、3)に関してはもっぱら誤用のほうを使っている。これに関しては「○月の朝日新聞から」のシリーズで何度か書いているので、興味のある方はご確認いただきたい。
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-244.html
 
 言葉ってのはナマモノだから、誤用が定着してしまえば、それは誤用ではなくなる。問題は過渡期をどう乗り切るか。個人的には、別にどっちが正しいと強く主張する気はないから、どっちでもいいから早く統一してくれ、と思う。誤用が一般的になればなるほど、正しい意味では使いにくくなる。かと言って誤用のほうで使うのには抵抗がある。その結果、使えない言葉がどんどん増えていくことが悲しい。
 あと、コメントにあった「的を得る」。さすがにまともな知識レベルの人は誤用しないだろう(現段階では)。「的を射る」と「当を得る」の混用だろう。「的を射る」と同様の言葉に、「正鵠を射る」なんてのもある。どこかのトピで「正鵠を得る」も間違いとはいいきれないとか書いてあったけど、真偽のほどは不明。とりあえず「射る」にしとくほうが無難だろう。「正鵠」は的の中心にある黒丸のことなんで、厳密に言えばこちらのほうがずっと正確ってことになる。いまYahooの辞書を索いてみたら、「セイコク」のほかに「セイコウ」って慣用読みがあるらしい。初めて知った。どう勘違いしたらそんな読み方になるんだ。



【追記】
「役不足」に関する「赤い本」の記述は下記。
================================
【Coffee Break】
「役不足」の誤用はマンガの定番

 誤用されることが多い表現としては、次のようなものがよくあげられます。
  役不足/さわり/私淑/斜に構える/気が置けない
 なかでも目にすることが多いのが「役不足」の誤用です。この言葉はもともとは芝居の用語で、「役者の格に比べて、割り当てられた役が軽すぎる」ことを指したといわれます。これが転じて、一般社会でも「当人の力量に比べて役割などが軽い」という意味で使われるようになりました。
 ところが、実際の使用例を見ると、ほとんどが正反対の「力不足」「力量不足」「荷が重い」「荷が勝つ」の意味で使われています。おそらく、「役不足」のほうが語感がよいからです。もう少し正確にいうと、「役不足」のほうがカッコよくて言葉に迫力が感じられるからでしょう。
 この誤用が頻繁に出てくるのは、マンガの対決シーンです。
「キサマじゃ役不足だ!」
 と相手をののしるときに使われます。
「キサマじゃ力不足だ!」
「キサマには荷が重い!」
 と正しい言葉の使い方をすると、間が抜けた感じになります。
「たかがマンガの中の誤用に目くじらを立てなくても……」という考え方もあるでしょうが、マンガの影響力はあなどれません。「役不足」の誤用を目にするたびに、「このまま定着してしまうんじゃないだろうか」と不安を感じます。
 もともとの意味を知らなくても、論理的に考えれば「役」が「不足」しているのですから「力不足」とは逆の意味になるのは明らかです。もっとも、「負けず嫌い」のように論理的には説明できない表現もあるので、あまり強くは主張できませんが。
「役不足」にかわる表現として有力なのは、「役者不足」です。誤用に関する本のなかには「そんな言葉は存在しない」と書いてあるものもありますが、感じが出ている言葉だと思います。新聞でも何度か目にしたことがあり、今後は定着していくかもしれません。
================================

【続きは】↓
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=877740614&owner_id=5019671

「斜に構える」について書きはじめたらエラいことに……(泣)。
「斜に構える」をめぐって【1】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-874.html

「的を射た」について書きはじめたらエラいことに……(泣)。
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-913.html

1)さわりに関する「昨日の日記」は下記です。
================================
爆弾追加。
2008年03月15日01:55

 また、爆弾がひとつ手の中に転がり込んできた。もともともめごとは嫌いなんだけど、体質がかわったかな。

 今度のはね。某社のサービスセンターの係をひとりクビにして社内的に少し騒ぎが起こる程度の破壊力。模倣犯が出ると困るのでちょっと扱いには慎重を期する必要がある。

 先週、某有名メーカーのパソコン周辺機器を買った。これが1週間もしないうちに突然認識されなくなった。14日の朝、メーカーに問い合わせていろいろやり取りした。あまりにもバカな話をたくさん聞いて、しまいには笑い転げてしまった。
 この周辺機器は、大雑把に言ってAとBの2タイプがある。当方が買ったのはスタイリッシュ(これちょっとキーワード)なAタイプだとする。全部書くとすんごく長くなるので、とりあえず「さわり」だけ。ああ、なんて適確な「さわり」の使い方なんだろう。「さわり」は「山場」とかって意味。まあ簡単に言ってしまうと、曲のサビ。テレビなんかで「ほんのさわり」とか言って最初の部分とかを紹介してるのは誤用です。でもね。テレビで頻繁に誤用してると、それは瞬く間に誤用ではなくなるの。こうして日本語は破壊されていく。

 押したり引いたりさんざんゆさぶりかけて、最後はにこやかな会話をかわし、最後の最後にtobirisuが訊きました。「ブッチャケたところ、機器の安全性って面で、Aタイプって弱いんじゃない? 素人考えだけど、どう考えたってそうでしょ。まあ、メーカーさんとしては言いにくいところもあるでしょうけど……」
「あくまで個人的な見解ということで言わせていただくと……」
 いいねえ、「個人的な見解」。好物だよ。本音を聞かせてくれるのね。
「安全性という点では、Bタイプのほうがマサると思います」
 そうでしょ、そうでしょ。誰が考えたってそうでしょ。
「やっぱそうだよね。で、御社の製品だと、Bタイプは……」
「申し訳ございません。当社ではAタイプの製品しか製造しておりません」
 エーッ、そうなの! そりゃ悪いこと言わせちゃった。だってさ、アンタいま自社製品全否定したんだよ。そりゃマズいよ。こっちにはオタクの名前が入ったファックスだってあるんだよ。来週早々にお客様センターに電話してみようか。
「アンタんとこの会社は、安全性を犠牲にしてまでカッコつけたオモチャみたいな欠陥品売ってんだって? とぼけてんじゃねえよ。アンタのとこのサービンセンターの人がハッキリ認めてんだよ、安全性に問題があるって。おかげで買ったばかりの製品がたった1週間で壊れて、スゲー迷惑かかってんだけど……」
 当方の主張はなんか間違ってます?
================================

文化庁の調査では、世間では誤用の意味で考えている人が半数を超えるとか。
http://www.bunka.go.jp/publish/bunkachou_geppou/2011_07/series_08/series_08.html
================================引用開始
連載 「言葉のQ&A」

「さわりだけ聞かせる」の「さわり」とは?

文化部国語課
 「話のさわりだけ聞いた。」などと使う「さわり」。「国語に関する世論調査」では,「さわり」の意味を「話などの最初の部分のこと」と考える人が半数を超えているという結果が出ました。この言葉の本来の意味を確かめましょう。

問1 「さわり」は,元々,邦楽に関係する言葉だそうですが,その意味を詳しく教えてください。
答 「さわり」は義太夫節の最大の聞かせどころ,聞きどころとされている箇所を指した言葉でした。それが転じて,音楽や物語の最も感動的な部分,話や文章の要点などという意味で使われています。
  「さわり」は,江戸時代に竹本義太夫が創始した浄瑠璃の流派の一つ,義太夫節で用いられていた言葉です。辞書の記述を見てみましょう。
・「広辞苑 第6版」(平成20年 岩波書店)
 さわり【触り】 (1)さわること。手でふれること。また,触れた感じ。 (2) ア (他の節にさわっている意)義太夫節の中に他の音曲の旋律を取り入れた箇所。曲中で目立つ箇所になる。 イ 転じて,邦楽の各曲中の最大の聞かせ所。「くどき」の部分を指すことが多い。 ウ さらに転じて,一般的に話や物語などの要点,または,最も興味を引く部分。「-だけ聞かせる」

・「大辞林 第3版」(平成18年 三省堂)
 さわり【触り】 (2)浄瑠璃用語。 ア [他の節にさわっている意。普通「サワリ」と書く]義太夫節以外の先行の曲節を義太夫節に取り入れた箇所。 イ 曲中で最も聞きどころ,聞かせどころとされている部分。本来は口説きといわれる歌謡的部分をさす。 (3)[(2)が転じて] ア 広く楽曲で中心となる部分。聞かせどころ。 イ 話の中心となる部分。聞かせどころ。 ウ 演劇・映画などの名場面。見どころ。「西部劇の-を集めて編集した映画」

 このように,「さわり」は,元々,義太夫節の「聞かせどころ」「聞きどころ」に当たる言葉でした。それが,一般的な音楽や物語,話や文章などにも使われるようになったのです。ですから,「話のさわりだけ聞いた。」「曲のさわりを演奏してください。」などと言う場合の「さわり」は,その話の最も重要な点や感動的で印象深いところ,曲の最大の聞かせどころなどを指すことになるのです。
問2 「さわり」について尋ねた「国語に関する世論調査」の結果を教えてください。
答  全ての年代を通して,本来の意味ではない「話などの最初の部分のこと」を選んだ人が多くなっています。

 平成19 年度の「国語に関する世論調査」で,「話のさわりだけ聞かせる。」という例文を挙げて,「さわり」の意味を尋ねました。結果は次のとおりです。(下線を付したものが本来の意味。) 

(ア) 話などの要点のこと・・・・・・・・・・・・・・・・・・35.1%
(イ) 話などの最初の部分のこと・・・・・・・・・・・55.0%
(ア)と(イ)の両方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2.7%
(ア),(イ)とは全く別の意味・・・・・・・・・・・・・・・・0.2%
分からない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7.0%

 年代別の結果を示すグラフからも分かるとおり,この言葉については,全ての年代を通じ,本来とは違う「話などの最初の部分のこと」という意味で使う人が多くなっています。60歳以上を除いた年代では,「話などの最初の部分のこと」が6割弱~6割台後半になっており,「話などの要点のこと」を大きく上回っています。
 本来は「中心となる部分」「要点」という意味の「さわり」ですが,「さわりだけ」「ほんのさわりですが」というように,ある部分を限定するような文脈で使われることが多いこと,また,「さわる」という言葉の響きが,物事に軽く触れる,表面的に触れるというような意味で捉えられやすいことなどが重なって,「話などの最初の部分のこと」と連想されてしまうのかもしれません。
================================引用終了


「代用語」にちょうどいいと思っていた「役者不足」にも別の問題が……(泣)。
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1669.html


「役不足」に関する文化庁の見解。
http://www.bunka.go.jp/publish/bunkachou_geppou/2012_02/series_07/series_07.html

テーマ : ことば
ジャンル : 学問・文化・芸術

句読点の打ち方/句読点の付け方 ふたたび

 下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-306.html
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1354427241&owner_id=5019671

mixi日記2010年05月日から。

 句読点について書いた下記があまりにも毒分が強い気がするので、毒を抜いて書き直します。
句読点の打ち方ふたたび※公開制限あり】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1487442872&owner_id=5019671

 ふと思い立って「句読点の打ち方」についてネット検索してみた。
 ちょっとビックリするほどいろいろな意見が飛びかっている。飛びかっている内容自体はそう代わり映えがしないのだが、件数がとにかくスゴい。なんでこんなに多いのだろう。
 驚くべき珍説も多い。なかでもビックリしたのは、昭和21年(1846)に文部省教科書局調査課国語調査室で作成した「くぎり符号の使ひ方〔句読法〕(案)」を基準にしているものがあること。
【くぎり符号の使ひ方〔句読法〕(案)】
http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/joho/kijun/sanko/pdf/kugiri.pdf
 ↓ ↓
http://nifongo.style.coocan.jp/kugiri.html

 これをもってきますか。なかには、「現在でも公用文、学校教育その他で参考にされている」とか断言している人もいる。
 現在でもホントに参考にされているか否かは知らないけど、あんなふうに断言するんだからそのとおりなんだろう。ハッキリ言えるのは、そんなもん参考にしているから「学校教育では句読点の使い方も教えない」って話になるってこと。
 別に「古すぎる」ことを理由にダメ出しする気はない。ものすごく優れたもので、それを上回る理論がいまだに出ていないなら古い理論を持ち出すのもアリでしょう。でも、この「くぎり符号の使ひ方〔句読法〕(案)」は本多勝一の『日本語の作文技術』(朝日新聞社・1976/朝日文庫=改訂版・1982。以下、「本多読本」と略す)でボロボロに書かれて、なんの論理性も正当性もない、ってほぼバレちゃってるの。本多読本の書き方は例によって容赦がないけど、そういう扱いを受けてもしかたがない代物だと思う。
 それをいまさら持ち出しますか。そりゃ驚くって。まさか本多読本を知らずに句読点について語る気じゃないでしょうね。まあ、思想的に本多勝一を嫌う人はいるけど、それとこれとは別の話。
 もちろん本多読本だって刊行されたのが1976年だから、決して新しくはない。でも句読点に関してはこれを上回る理論がほぼ見当たらないんだからしょうがないよ(いいのがあったら教えてほしい)。そのあたり、文章読本を書くセンセーはどう考えているんだろう。
 改めて本多読本を開いて「くぎり符号の使ひ方〔句読法〕(案)」を確認して意外なことに気づいた。主語のあとに打つ」というルールは見当たらない。「三」の「副詞的語句の前後に打つ」の「附記」のなかに「私は、反対です」などが出てくるだけ(「私は、反対です」のどこが副詞的語句なんだろう)。学校では「主語のあとに打つ」とか教えていると思うけど、何を根拠にしているんだろう。
「主語のあとに打つ」はあまり重要ではないけど、まったくふれない「くぎり符号の使ひ方〔句読法〕(案)」の態度もどうかと思う。
 ちなみに「くぎり符号の使ひ方〔句読法〕(案)」には「シロテン」という奇妙な記号も出てくる。これを採用している公用文や教科書があるのだろうか。
 ということは、「現在でも公用文、学校教育その他で参考にされている」が勘違いなんじゃないか、って気さえする。
 〈これがテンの打ち方における最も重要な、一ばん多く使はれる原則であって、この原則の範囲内で、それぞれの文に従ひ適当に調節するのである〉
 あのー、つまり最も重要な部分の説明はないのね。ムチャすぎる。
 ついでに書くと、解説中にある「最も重要な、一ばん多く」のような読点は相当マズいと思うけど、何かのギャグだろうか。


 検索の上位の来るもののなかに、下記がある。
http://www13.plala.or.jp/hosonag/tohten%20uchikata.htm
  ↓
http://www9.plala.or.jp/juken1/toten.htm
 真っ先にあげらているのは、「1)文の主題となる語のあと」。一般的にはこうなる。
 このサイトの「読点の打ち方」はもっともらしいことが書いてあるけど、相当乱暴。ひとつひとつ検討していくと相当ヤバい。
 あからさまにヘンな例を少々。

4)-1 主語が文の中間に置かれた場合、その前に打つ
 (やぶの中から、ウサギが出てきた。)
 その読点はなぜ必要なの? 主語のあとに打つ読点はどうなるの?

8)!(感嘆符)と?(疑問符)について
もともと外国語に用いられる符号であり、和文に用いる場合は効果的に。
 あのー、いったいなんの話をしているのでしょうか。

 こういうふうに読点を打つべき場所を細かくあげていくと、個々の指摘は正しくても(正しくないときもあるけど)、矛盾が出てくることがある。何を優先するべきなのかをハッキリさせる必要がある。


「朝日新聞の用語の手びき」を参考にしているものもある。手元にあるものを確認してみた。手元にあるのは相当古いものだが、大きくかわっていないことが怖い。
 一般の文章読本なんかにもこんなふうに書いてある。ここまでわかりにくいのは珍しいか。
================================
一、誤読、難読の恐れがあるときに使う。
  1)主題となる語につく助詞(提言の助詞「は」など)の次に。句・文が短いときは省いてもよい。
  2)修飾語句が誤解される恐れのあるとき。
  3)副詞の帰属を明らかにする必要があるとき。
  4)修飾節の対象を明らかにさせるとき。
  5)仮名や漢字がくっつきやすいとき。
二、語句を並べるときや、対立節に使う。
三、形容詞節と直接次に続く被修飾語の名詞との間には読点を打たない。
================================


 これで句読点の打ち方がわかるなら誰も苦労しないって。実質的には何も書いてないのと一緒。
 当方が、句読点のルールについて「これはとりあえず読む価値があるかもしれない」と考える基準にしていることがある。イチバン大事なのは「一文の長さとの関連性を書いているか」ってことなんだけど、そんなことを基準にすると、ほとんどのルールは×になる(笑)。
 そこで、イチバンわかりやすいと思っているのは、「主語に相当する句」(メンドーなので、以後は「主語」と呼ぶ)のあとの読点の扱い。真っ先に「主語のあとに打つ」とか書いてあるのは×。だってそんなの重要じゃないんだもん。
 ↑にあげたあとの2つは、両方とも真っ先に来てるからそれだけで×。
 ただ、「句・文が短いときは省いてもよい」って記述に注意してほしい。これは、「(主語になる)句」や「文(全体)」が短いときには「省いてもよい」ということだろう。一応一文の長さと関係している。
 ただ、言葉足らずだと思う。正確に書くなら下記のようになる。

 主語のあとには読点を打ってもいいことが多い(必ず打つという意味ではない)。
 ただし、次の場合は極力打たない。
1)一文が長い場合
2)主語が短い場合
3)(近くに)別の理由で読点を打つべき場所がある場合

 よく「一文が長いときは読点を多めに打つ」と書いてある心得がある。もっともらしいけど、これはウソです。一文が長い場合は読点の打ち方に気をつける必要がある。原則としては、一文が長いときほどできるだけ読点を減らさないと収拾がつかなくなる。それじゃ読みにくいと思う人は、一文を短くしなさい。これをちゃんと書くと長くなるので、下記の【第2章 4 句読点の打ち方 】を読んでもらうしかない。
 ホントに単純な例で考える。「くぎり符号の使ひ方〔句読法〕(案)」に出てきた「私は、反対です」なら一文が短いから「打ってもいい」。主語が短いから打たないほうがよい、とも言える。こんなに短い文ならどっちでもいい。
 ところが、次のようなときは打ってはいけない。とくに重文や複文の場合はできるだけ打たないほうがいい。
1)-2 私は、母は、賛成で、父も、賛成ですが、反対です。
1)-3 私は、母は賛成で父も賛成ですが、反対です。
1)-4 母は賛成で父も賛成ですが、私は反対です。
 1)-2がわかりやすいと思う人がいるだろうか。しかし読点が少ない1)-3ならまだなんとか理解できる。単純な構造にして1)-4にするともっとわかりやすい。1)-4で1つだけ残した読点はなくてもいいが、あったほうがいいだろう。1か所だけ打つならここしかありえない(重文の区切りの読点)。主語のあとに打つ理由はない。

2)-2 ずっと反対してきた私は、いまでも反対です。
 この場合は、主語が長いから読点を打ってもいい(必ず打つという意味ではない)。
2)-3 ずっと反対してきた私はいまでも反対ですが、ずっと賛成してきた両親はいまでも賛成です。
 一文がこのくらいの長さだと微妙。読点が1つのほうが意味はわかりやすいが、少し読みにくいと思えば主語のあとに打ってもいい。これがもっと長くなってくると、主語のあとの読点なんて打っていられなくなる。

 こういう説明を積み上げていくと、すんごくメンドーな気がするが、それは読点の問題が微妙でむずかしいから。でも説明できないわけではない。
 読点に関して以前書いたものが2本ある。
1)【板外編2──句読点の打ち方(読点と使い方の2つの原則と6つの目安)】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-145.html
2)【第2章 4 句読点の打ち方
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-45.html

 前者は「赤い本」の一部。ホントに基本的なことしか書いてない。これ以上グチャグチャ書くと危険と判断した。後者は【伝言板】の一部。書いてからもう数年たとうとしているが、現段階では修正の必要は感じていない。
 当然どちらも本多読本を踏まえている。
「朝日新聞の用語の手びき」よりはるかに詳しくて有用な『説得できる文章・表現200の鉄則』の記述についても2)で詳しく書いている。これを引用して「化石」に遅れをとる理由はないはずだ。

【続きは】↓
【句読点の打ち方/句読点の付け方 ふたたび2】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1254.html

【句読点に関する記述】
1)【板外編2──句読点の打ち方(読点と使い方の2つの原則と6つの目安)】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-145.html
2)【第2章 4 句読点の打ち方】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-45.html
3)【句読点の打ち方/句読点の付け方 ふたたび 毒抜き編】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1253.html
4)【句読点の打ち方/句読点の付け方 ふたたび2】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1254.html
5)【句読点の打ち方/句読点の付け方 ふたたび3】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1255.html
6)句読点の打ち方/句読点の付け方──実例編
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1522.html

重言の話4(第1稿)

 下記の仲間。
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-306

日本語アレコレの索引(日々増殖中)】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1129089107&owner_id=5019671

 
 重言の話の始まりは下記か。
7)【重言の話1】(2008年07月30日)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=886320216&owner_id=5019671&org_id=885700960

 先日下記のトピが立った。
日本語の重複表現の要因】日本語の乱れが気になる会 トピック
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=48237596
 相変わらず趣旨がわからない。
 当方の記憶に間違いがなければ、トピ主の足跡はない。当然内容に関するコメントもない。わざわざあんなに例の豊富なリンクを張ったのにさ。いやはや、なんと申しましょうか。
 アンケートをとりたい? やめておいたほうがいいよ。

【ゴミ箱17】【「かわいい」についてのアンケート】言語学 トピック
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=47888505&comm_id=3675056

重言というもの自体がうまれるように? なった要因」
 それは、言葉の神様じゃないとわからないと思う。当方には●●みたいな勇敢なコメントを入れる度胸はない。
 凡人としては、とりあえずリンク先などの例から重言のパターンを考えてみたい。
 これはまだまだ考える余地があるな……。何かおもしろい例なり分類なりあったら教えてください。

【1】不注意もしくは無神経あるいは稚拙の例
  1)だいたい60字ぐらい
  2)古来から
  3)第1回目
  4)まず第1に
  5)1階~3階までは
 ※1)~5)に関しては下記参照。
【伝言板 板外編4──重言の話3】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-59.html

  炎天下の下→炎天下/炎天のもと
  一番最初→最初/一番はじめ
  ダントツの1位→ダントツ/断然トップ/大差の1位
  過半数を超える→過半数に達する/半数を超える
  思いがけないハプニング→思いがけない出来事/ハプニング
  返事を返す→返事をする(「言葉を返す」だと意味がかわる。何を返せばいいのだろう)
  射程距離→射程/射程圏
  元旦の朝→元旦/元日の朝
  お体御自愛下さい→お体にお気をつけください/御自愛下さい
  あらかじめ予約する→予約する/あらかじめ申し込む
  収入が入った→収入があった/○○が入った
  満○周年→○周年/満○年
  すべて一任する→すべてまかせる/一任する
  捺印を押す→捺印する/印を押す
  はっきりと断言する→ハッキリ言う/断言する
  頭をうなだれる→うなだれる
  秘密裏のうちに→秘密裏に/秘密のうちに
  違和感を感じる
  ※諸説あるのでここに入れるべきではないかも。「重言ではない」と主張する人も多い。
162【重言の話5──「まず第1に」「違和感を感じる」】(2010年04月17日)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1176.html

  各店舗により→店舗により/各店舗で
  ※これは最近街で見かけた。
  http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1336226955&owner_id=5019671

  
【2】重言っぽいが直せない
  1)消費者の立場にたって考える
  2)なぜ犯罪をおかすのか
  3)東日本が甚大な被害をこうむった
 ※1)~3)に関しては下記参照。
【伝言板 板外編4──重言の話3】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-59.html

  4)違和感を覚える?
  事前予約
  最後の切り札  

【3】動詞などによって主語などが限定されるため、重言っぽくなる例
  献身的に尽くす?
  馬がいななく

【4】同族目的語
  着物を着る?
  旅行へ行く?
  寝言を言う?
  ひと言で言う

  歌を歌う
  走者が走る 

【5】微妙な例
  1)特別な例外を除く
  2)日頃から/ふだんから
  3)第1号機
 ※1)~3)に関しては下記参照。
【伝言板 板外編4──重言の話3】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-59.html

  2時から会議を始める
  おのずから→これはフツーの日本語
  自然の生薬
  新発売
  総称で呼ぶ
  常日頃
  排気ガス→排気/排ガス
  みずから墓穴を掘る

  少なくとも2人以上
※新種かもしれない。
http://oshiete.goo.ne.jp/qa/7821535.html


【ほとんどネタ】
あとで後悔する/まだ未定/エントリーナンバー○番/まずはじめに/
永遠に不滅/わたしのマイミク(笑) /今日という日(笑)

 トピ主があげた例はどれに属するのだろう。下記くらいかな。
【1】不注意もしくは無神経あるいは稚拙の例
  賞を受賞する→受賞する/賞を受ける
  馬から落馬する→落馬する/馬から落ちる
  貯金を貯める→貯金する/金を貯める
  
【3】動詞によって主語が限定されるため、重言っぽくなる例
  馬がいななく(けっこう珍しいので、上にも入れておく)

【番外】これは重言じゃないだろう
  はさみで切る
  ベッドで寝る

●有名なフレーズ?
いにしえの昔 武士と言わねどさむらいが 木曽山中の山中(やまなか)で 馬から落ちて落馬して 女の婦人に笑われて 赤い顔して赤面し 家に帰って帰宅して 仏の前の仏前で 短い刀の短刀で 腹かき切って切腹した

●重言関連の話一覧
7)【重言の話1】(2008年07月30日)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-284.html

8)【重言の話2】(2008年11月24日)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-58.html

9)【伝言板 板外編4──重言の話3】(2008年11月25日)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-59.html

90)【重言の話4(第1稿)】(2009年11月21日)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-863.html

162【重言の話5──「まず第1に」「違和感を感じる」】(2010年04月17日)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1176.html

読書感想文/『続弾! 問題な日本語』(北原保雄編/大修館書店/2005年11月3日初版第1刷発行)【1】~【3】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1717.html




【20200321追記】
 酒をあおる
  ※「馬がいななく」に近いかもしれない。「先行車をあおる」なら重言ではないけど重罪。
主に○○を中心に活動
  ※無神経かな。
前後の文脈
  ※これも無神経? よく見る。

【所要時間は1時間程度です goo】
https://ameblo.jp/kuroracco/entry-12598379154.html
===========引用開始
「所要時間は1時間程度です」。個人的な趣味ではこの文脈なら「所要時間は約1時間です」にしたいけど、そういう話はパス。
「所要時間」という言葉は「所要」にはしにくい。×ではないと思うけど。
 一方「1時間」の「時間」は単位。そうなると、「単に字面が重複している」タイプの重言だろう。
 下記にはないか。加えないといかんな。

【重言の話4(第1稿)】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-863.html

【4】同族目的語
  着物を着る?
  旅行へ行く?
  寝言を言う?
  ひと言で言う
  歌を歌う
  走者が走る

 に近いけど少し違う気がする。
「1万歩歩いた」などと同じだろう。
 そうか。「ひと言で言う」も字面の問題かも。
 ということで、「所要時間は1時間程度です」は「重言」ではない。
 でも字面の重複が気になる気持ちも(重言?)わかる。 どうしても気になるなら、「所要時間は60分程度です」をおすすめする。 
===========引用終了

テーマ : ことば
ジャンル : 学問・文化・芸術

「貸してください」のさまざまな言い方

mixi日記2013年10月13日から

 興味深いサイトを見つけた。文化庁の「第21期国語審議会」の話し合いをまとめたもの。10年ちょっと前のものらしい。
【第1 現代における敬意表現の在り方】
http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/joho/kakuki/21/tosin03/17.html#pagetop

  ↓リンク切れ
http://kokugo.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/joho/kakuki/21/tosin03/17.html

  ↓再度リンク切れ。文化庁は何を考えておる
https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kakuki/21/tosin03/17.html

 どうしてこういう話になったのかサッパリわからないが、「貸してください」のいろいろな言い方が出ている。
〈一例として,主として話し言葉において,何かを借りるときに出現し得る多様な表現の形を,前置きなどを省略した形で,丁寧さや改まりの程度とともに掲げておく。〉という趣旨らしい。
 この前提自体がかなり大雑把だし、言葉の並べ方の順なども相当大雑把だとは思う。しかし、興味深いことがうかがえる。
================引用開始
多様な表現                 丁寧さの程度  改まりの程度
拝借させていただけません(でしょう)か   非常に丁寧   非常に改まっている
拝借させていただきたいんですけ(れ)ど
拝借してよろしいでしょうか
拝借させてください(ませんか)
拝借したいんですけど
お借りしてもよろしい(いい)でしょうか
お借りしたいのですが            かなり丁寧   かなり改まっている
貸していただけませんか(⤴)
貸していただきたいんですけど
貸していただけますか(⤴)
貸してくださいませんか(⤴)
お借りできますか(⤴)
 ※以上,謙譲語又は尊敬語+丁寧語

お貸しください               丁寧      改まっている
貸してください(ね)
 ※以上,尊敬語のみ

貸してもらえますか(⤴)
貸してもらえませんか(⤴)
貸してくれますか(⤴)
貸してくれませんか(⤴)
 ※以上,丁寧語のみ

拝借していい(⤴)             親しさ+丁寧  打ち解けている
貸していただける(⤴)
貸していただけない(⤴)
貸してくださる(⤴)
貸してくださらない(⤴)
貸してちょうだい(ね,よ)
お借りしてもよろしい (⤴)
お借りしていい(⤴)
 ※以上,多くは親しい相手に使う言い方。丁寧語なし

貸してほしいんだけど            親しさ+ややぞんざい 打ち解けてかつ,ややくだけている
貸してもらえる(⤴)
貸してもらえない(⤴)
借りて(も)いい(⤴)
貸してくれる(⤴)
貸してくれない(⤴)
貸して(よ,よね)
借りるよ(ぜ)
貸してくれ(よ,よね)            ぞんざい      くだけている
 ※以上,敬語なし
================引用終了

 このサイトのツリーを1段階遡ったものが下記。
【新しい時代に応じた国語施策について(審議経過報告)】
http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/joho/kakuki/21/tosin03/index.html
 ザッと読んでみたけど頭が痛くなる。どうしてもう少しわかりやすく書いてくれないのだろう。肝心の場所だけひいておく。
http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/joho/kakuki/21/tosin03/11.html
================引用開始
第1 現代における敬意表現の在り方

II 敬意表現の在り方

1 敬意表現と敬語

(1)敬意表現の概要

 例えば何かを借りたいという同じ内容を述べるにも,「拝借させていただけませんでしょうか」のような非常に敬意が高く改まった言い方から「貸してくださいませんか」「お借りしたいのですが」のような普通よく使われる敬意の軽い言い方,また「貸してくれよ」「貸してほしいんだけど」などのような打ち解けた言い方まで様々ある(付2(1)参照)。さらに,これらの言葉に,「申し訳ないけど」「ちよ(ママ)っと」などの前置きの言葉を添えたり,「忘れてきたので」「頼まれたものだから」などのように借りたい理由を説明したりすることもある。例えば,「貸してくれよ」や「ちょっと貸してほしいんだけど」は敬語を含まない言い方ではあるが,終助詞「よ」や「〜てくれる」という言い方を加えたり,「ちょっと」という言葉や「〜けど」のような言い差しの表現を用いたりしている点で,「貸せ」という命令だけの言い方とは明らかに異なっており,相手への配慮を示す表現となっている。話し手は,相手や話題の人との関係や場面などに配慮して,その時々にふさわしいものを選んで使っている。このような種々の表現が敬意表現である。
 敬意表現は必ずしも上位者への言葉遣いばかりではなく,仲間内以外の人に対して距離を置く言葉遣い,下位者への優しい配慮の表現,さらには,打ち解けた敬語抜きの言葉遣いなども含まれる。
 なお,敬意表現は言葉以外の種々の側面,すなわち服装,身振り,表情などにまで広げて考えることもできるが,ここでは言葉に関係するものに限って扱うこととする。
================引用終了

1)「拝見させていただきます」は「誤用」でも「二重敬語」でもない
 ここに出てくる「拝借させていただけませんでしょうか」の「拝借」を「拝見」にかえても大きな違いはないだろう。つまり、文化庁は「拝見させていただけませんでしょうか」を「非常に敬意が高く改まった言い方」とし、誤用にも二重敬語にもしていない。「拝見させていただきます」が「誤用」とか「二重敬語」とか言うのはお門違いだろう(こういう主張をする人は実に多いが、当然のことながら典拠らしきものを示すことができる人は皆無)。
【「拝見する」をめぐって〈2〉 「拝見させていただきます」は二重敬語か 修正版】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2270.html
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1812576728&owner_id=5019671

2)「〜ませんでしょうか」は文化庁のお墨つき?
 それは勘違いって気もする。
「誤用」ではないだろうが、やはり相当クドい言い方なので自分では使わない。 
198【「〜ますでしょうか」 「〜ませんでしょうか」】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1214.html
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1483085125&owner_id=5019671

3)「お〜ください」「〜ください」は尊敬語
 敬語ルールとしてはそうなるんだろうな。

4)「拝借していい」も文化庁のお墨つき
 丁寧語なしの謙譲語か。ルールとしてはアリなんだろうな……。

※いろいろあって下記になった。
【できますですか?】
https://ameblo.jp/kuroracco/entry-12660392265.html
プロフィール

tobi

Author:tobi
フリーランスの編集者兼ライターです。

カレンダー
08 | 2023/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード