2009年1・2月の朝日新聞から
総索引は下記です。
【朝日新聞から総索引(2002年~)】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-244.html
09-1-9(忘れ物)
1月31日
「(前略)坂井くんは手厚く打って、細かい碁にもっていくのを得意としています。地で先行されては坂井くんの好みではありません」と趙善津解説者。(朝刊27面)
囲碁の観戦記。内藤由起子記者。何回読んでも意味がわからない。だってフツーは「手厚く打って」たら、「地で先行され」るもんだよ。「手厚く打って」「地で先行され」ないなんてことができたら無敵だろうな。どういう意味で書いてんだろ。
09-2-1
1日
A級順位戦50局以上の対局者の中で勝率1位は誰か?
将来のことは分からないが、現時点で1位は森内。2位があの升田幸三で3位と4位を羽生と谷川が争う。2度の降級経験を持つ郷田も直近4期のA級では22勝11敗という好成績を挙げている。
つまり、本局は順位戦を大の得意分野とする棋士2人の対戦なのだ。どちらも抜群の持久力と瞬発力を兼ね備えている。(朝刊22面)
将棋の観戦記。青記者。データとして興味深かったので長めに引用した。1位は森内俊之ですか。A級順位戦での最強説のウワサは聞いたことがあった。ホンマにそうなのね。最近の成績を見ても、今期の4勝4敗はありえない。60期から順に見ていく。
60期 8勝1敗で挑戦者に。4-0で丸山名人から奪取。
61期 羽生に0-4で敗れて失冠。
62期 9勝0敗(!)で挑戦者に。4-2で羽生名人から奪取。
63期 4-3羽生で防衛
64期 4-2谷川で防衛
65期 4-3郷田で防衛
66期 2-4羽生で失冠
2位が升田ですか。大山康晴は入らないか。そうか全盛期の大山はずーっと名人だから順位戦を戦ってないか。晩年は順位戦で苦戦しているからこうなるのか。中原誠も同様か。
郷田真隆の最近の充実ぶりも目につく。6勝3敗ペースか。一瞬、どういう計算か悩んだ。直近3期が18勝9敗で、今期が4勝2敗ってことらしい。たしかそのあと2連勝したから、統計的には最終戦に負けて6勝3敗?
文章として気になったのは「どちらも抜群の持久力と瞬発力を兼ね備えている」の部分。そりゃ間違ってはいない。A級棋士は超一流なんだから、「兼ね備えている」に決まっている。もう少し書き方を考えようよ。言いたいことはわかるよ。持ち時間の長い順位戦で強いってことは持久力がある。そう言いながら終盤は秒読みになるのがフツーだから瞬発力もある。それは常識だよ。もし将棋の持久力と瞬発力が相反するものなら、A級棋士と早指し戦の上位は顔ぶれがかわるはずだよね。いいたいことはわからなくはないけど、こんな中途半端に書かれても……。
「将来のことは分からないが、現時点で」って重言なんだろうか。単にクドい言い回しなんだろうか。「大の得意分野」も重言風だろうな。文字数の制限がきついんだから、もう少し考えようよ。
気のせいか、今月は囲碁・将棋の観戦記からのメモが多い。いろいろあって、観戦記くらいしか読んでないってウワサがある。まあ、普段だってメモの大半は観戦記とスポーツ欄ってウワサもある。これは、一般のニュースをちゃんと読んでないから? たぶん違うと思う。たまには「天声人語」だって読んでるし。
09-2-2
3日
日本で最も安打を期待できる選手の一人だろう。ヤクルトの青木だ。(朝刊19面)
抜井規泰記者。ほかにいるだろ、って問題ではなく、「最も~一人」はやめようよ。記事の文頭にこんなふうに書かれると、読む気が失せる。しかもキャンプレポートなんだから、「日本で」も余計な気がする。これがWBCの話なら別だけどさ。
09-2-3
4日
毎回力のこもった肉弾戦が特徴で、序中盤のせめぎあいにはつらつとした妙味がある。本局も早い動きでプラスアルファを探り合う、面白い駆け引きになった。(朝刊10面)
将棋の観戦記。剣記者。この無意味な言葉の羅列はなんなの? 細かい点はキリがないので無視する。一点だけ。「はつらつとした妙味」がある「せめぎあい」ってどんなのよ。本来の意味で使えなんてうるさいことは言わないけど、せめて「せめぎあい」って言葉が持つドロドロとしたニュアンスを汲み取ってくれよ。※08-10-8/08-9-1/07-9-3参照
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=949206025&owner_id=5019671
09-2-4
7日
△6五桂に、満を持した鈴木は▲4四角~▲5一飛成で決めに出る。(朝刊25面)
相当イヤ。「鈴木は満を持して▲4四角~▲5一飛成で決めに出た」なら許容してもいいかもしれない。正用は「満を持していた鈴木は▲4四角~▲5一飛成で決めに出た」なのかな。でも「満を持した鈴木は……」にはかなり強い違和感がある。※08-4-1参照。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=792129745&owner_id=5019671
09-2-5
8日
「水道料金の督促を逆恨(さかうら)みした男が市長を脅迫」。ある日の原稿だが、「逆恨み」に疑問の声が上がった。
どの辞書も、1)恨みに思う人から逆に恨まれること2)人の好意を曲解してかえって恨むこと、としている。市長が男に恨みや好意を抱いていたとは思えず、表現を変えてもらった。
ところが昨年の朝日新聞を調べると、先の原稿と同じ筋違いやお門違いの意味で「逆恨み」を使った記事の方が多い。
広辞苑編集部の平木靖成さんは「08年の第6版に載せた『逆切(ぎゃくぎ)れ』は一方的に怒り出す時によく使われる。この場合『逆』の意味はないとも言え、辞書と違う『逆恨み』の使い方は、これと似ている」と指摘する。
一方、日本国語大辞典の佐藤宏さんは「人の意図や予想、常識とは『逆に』解釈して恨むという使い方。2)の『好意を曲解』が変化したもの」と言う。
お二方とも「誤用とは言い切れない」そうだ。この用法、辞書に加わる日も近いと見たが、どうだろう。(板垣茂)(朝刊37面)
コラム「ことば談話室」のテーマは「逆恨み」。いろいろおもしろい点があって、全文を引いた。
冒頭の例文の「逆恨み」はおかしい、というのはわかる。それはただの「恨み」だろう。もしくは正当な請求を怒るなら「逆ギレ」。「一方的に怒る」からではなく、「謝罪すべき立場の人が怒る」から「逆ギレ」。ここまではわかる。
「自分に恨みも好意もない人」を筋違いに恨むこと……逆恨みって言っちゃいそうだな。たとえば傾斜のある道で自分の不注意で転んだときに道を恨む。坂ウラ……。プロ野球の関係者が、視聴率の低迷はJリーグのせいだと恨む。サッカー……。(←やめい!)
たとえば、トピで親切に間違いを教えてあげたtobirisuちゃんの言葉に怒る。これは逆ギレだよな。「感謝するべきなのに怒る」んだから。さらにそのことを根にもてば、「逆恨み」か。
意味不明でいきなり怒り出すのは……逆ギレでなく、単に「キレる」だろうな。
今後は使い方にちょっと気をつけよう。でも、「辞書に加わる日も近い」んだからどうでもいいか。
09-2-6
10日
総額は前年(1億1614万円)を下回ったが、2位とは2倍近い差が開いた。(夕刊4面)
伊藤衆生記者。08年の囲碁の賞金王が2年連続5回目の張栩名人だったことを伝える記事。1位の張栩名人の獲得賞金が1億1337万円で、2位の山下敬吾棋聖が6060万円。この状況を伝えるのに、「2倍近い差が開いた」が適切か否か。
根が理系頭なもんで、数字が出ると気になる。まず、「開いた」がヘンだろ。昨年より差が大きくなったのなら「開いた」だけど、そんなことはわからない。「ついた」くらいが無難。「2位とは2倍近い差」も違和感がある。それを言うなら「2位の2倍近く、大きな差」だろう。何かと何かの「差」があって、その倍近くの「差」があったら、「2倍近い差がついた」になる。そんなメンドーな状況は考えたくない。
たとえば、1位が1億で、2位が8100万円で、3位が7100万円だった場合。この場合は、2位と3位の差は1000万円で、1位と2位は、その「2倍近い差がついた」ことにはなる。
【朝日新聞から総索引(2002年~)】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-244.html
09-1-9(忘れ物)
1月31日
「(前略)坂井くんは手厚く打って、細かい碁にもっていくのを得意としています。地で先行されては坂井くんの好みではありません」と趙善津解説者。(朝刊27面)
囲碁の観戦記。内藤由起子記者。何回読んでも意味がわからない。だってフツーは「手厚く打って」たら、「地で先行され」るもんだよ。「手厚く打って」「地で先行され」ないなんてことができたら無敵だろうな。どういう意味で書いてんだろ。
09-2-1
1日
A級順位戦50局以上の対局者の中で勝率1位は誰か?
将来のことは分からないが、現時点で1位は森内。2位があの升田幸三で3位と4位を羽生と谷川が争う。2度の降級経験を持つ郷田も直近4期のA級では22勝11敗という好成績を挙げている。
つまり、本局は順位戦を大の得意分野とする棋士2人の対戦なのだ。どちらも抜群の持久力と瞬発力を兼ね備えている。(朝刊22面)
将棋の観戦記。青記者。データとして興味深かったので長めに引用した。1位は森内俊之ですか。A級順位戦での最強説のウワサは聞いたことがあった。ホンマにそうなのね。最近の成績を見ても、今期の4勝4敗はありえない。60期から順に見ていく。
60期 8勝1敗で挑戦者に。4-0で丸山名人から奪取。
61期 羽生に0-4で敗れて失冠。
62期 9勝0敗(!)で挑戦者に。4-2で羽生名人から奪取。
63期 4-3羽生で防衛
64期 4-2谷川で防衛
65期 4-3郷田で防衛
66期 2-4羽生で失冠
2位が升田ですか。大山康晴は入らないか。そうか全盛期の大山はずーっと名人だから順位戦を戦ってないか。晩年は順位戦で苦戦しているからこうなるのか。中原誠も同様か。
郷田真隆の最近の充実ぶりも目につく。6勝3敗ペースか。一瞬、どういう計算か悩んだ。直近3期が18勝9敗で、今期が4勝2敗ってことらしい。たしかそのあと2連勝したから、統計的には最終戦に負けて6勝3敗?
文章として気になったのは「どちらも抜群の持久力と瞬発力を兼ね備えている」の部分。そりゃ間違ってはいない。A級棋士は超一流なんだから、「兼ね備えている」に決まっている。もう少し書き方を考えようよ。言いたいことはわかるよ。持ち時間の長い順位戦で強いってことは持久力がある。そう言いながら終盤は秒読みになるのがフツーだから瞬発力もある。それは常識だよ。もし将棋の持久力と瞬発力が相反するものなら、A級棋士と早指し戦の上位は顔ぶれがかわるはずだよね。いいたいことはわからなくはないけど、こんな中途半端に書かれても……。
「将来のことは分からないが、現時点で」って重言なんだろうか。単にクドい言い回しなんだろうか。「大の得意分野」も重言風だろうな。文字数の制限がきついんだから、もう少し考えようよ。
気のせいか、今月は囲碁・将棋の観戦記からのメモが多い。いろいろあって、観戦記くらいしか読んでないってウワサがある。まあ、普段だってメモの大半は観戦記とスポーツ欄ってウワサもある。これは、一般のニュースをちゃんと読んでないから? たぶん違うと思う。たまには「天声人語」だって読んでるし。
09-2-2
3日
日本で最も安打を期待できる選手の一人だろう。ヤクルトの青木だ。(朝刊19面)
抜井規泰記者。ほかにいるだろ、って問題ではなく、「最も~一人」はやめようよ。記事の文頭にこんなふうに書かれると、読む気が失せる。しかもキャンプレポートなんだから、「日本で」も余計な気がする。これがWBCの話なら別だけどさ。
09-2-3
4日
毎回力のこもった肉弾戦が特徴で、序中盤のせめぎあいにはつらつとした妙味がある。本局も早い動きでプラスアルファを探り合う、面白い駆け引きになった。(朝刊10面)
将棋の観戦記。剣記者。この無意味な言葉の羅列はなんなの? 細かい点はキリがないので無視する。一点だけ。「はつらつとした妙味」がある「せめぎあい」ってどんなのよ。本来の意味で使えなんてうるさいことは言わないけど、せめて「せめぎあい」って言葉が持つドロドロとしたニュアンスを汲み取ってくれよ。※08-10-8/08-9-1/07-9-3参照
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=949206025&owner_id=5019671
09-2-4
7日
△6五桂に、満を持した鈴木は▲4四角~▲5一飛成で決めに出る。(朝刊25面)
相当イヤ。「鈴木は満を持して▲4四角~▲5一飛成で決めに出た」なら許容してもいいかもしれない。正用は「満を持していた鈴木は▲4四角~▲5一飛成で決めに出た」なのかな。でも「満を持した鈴木は……」にはかなり強い違和感がある。※08-4-1参照。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=792129745&owner_id=5019671
09-2-5
8日
「水道料金の督促を逆恨(さかうら)みした男が市長を脅迫」。ある日の原稿だが、「逆恨み」に疑問の声が上がった。
どの辞書も、1)恨みに思う人から逆に恨まれること2)人の好意を曲解してかえって恨むこと、としている。市長が男に恨みや好意を抱いていたとは思えず、表現を変えてもらった。
ところが昨年の朝日新聞を調べると、先の原稿と同じ筋違いやお門違いの意味で「逆恨み」を使った記事の方が多い。
広辞苑編集部の平木靖成さんは「08年の第6版に載せた『逆切(ぎゃくぎ)れ』は一方的に怒り出す時によく使われる。この場合『逆』の意味はないとも言え、辞書と違う『逆恨み』の使い方は、これと似ている」と指摘する。
一方、日本国語大辞典の佐藤宏さんは「人の意図や予想、常識とは『逆に』解釈して恨むという使い方。2)の『好意を曲解』が変化したもの」と言う。
お二方とも「誤用とは言い切れない」そうだ。この用法、辞書に加わる日も近いと見たが、どうだろう。(板垣茂)(朝刊37面)
コラム「ことば談話室」のテーマは「逆恨み」。いろいろおもしろい点があって、全文を引いた。
冒頭の例文の「逆恨み」はおかしい、というのはわかる。それはただの「恨み」だろう。もしくは正当な請求を怒るなら「逆ギレ」。「一方的に怒る」からではなく、「謝罪すべき立場の人が怒る」から「逆ギレ」。ここまではわかる。
「自分に恨みも好意もない人」を筋違いに恨むこと……逆恨みって言っちゃいそうだな。たとえば傾斜のある道で自分の不注意で転んだときに道を恨む。坂ウラ……。プロ野球の関係者が、視聴率の低迷はJリーグのせいだと恨む。サッカー……。(←やめい!)
たとえば、トピで親切に間違いを教えてあげたtobirisuちゃんの言葉に怒る。これは逆ギレだよな。「感謝するべきなのに怒る」んだから。さらにそのことを根にもてば、「逆恨み」か。
意味不明でいきなり怒り出すのは……逆ギレでなく、単に「キレる」だろうな。
今後は使い方にちょっと気をつけよう。でも、「辞書に加わる日も近い」んだからどうでもいいか。
09-2-6
10日
総額は前年(1億1614万円)を下回ったが、2位とは2倍近い差が開いた。(夕刊4面)
伊藤衆生記者。08年の囲碁の賞金王が2年連続5回目の張栩名人だったことを伝える記事。1位の張栩名人の獲得賞金が1億1337万円で、2位の山下敬吾棋聖が6060万円。この状況を伝えるのに、「2倍近い差が開いた」が適切か否か。
根が理系頭なもんで、数字が出ると気になる。まず、「開いた」がヘンだろ。昨年より差が大きくなったのなら「開いた」だけど、そんなことはわからない。「ついた」くらいが無難。「2位とは2倍近い差」も違和感がある。それを言うなら「2位の2倍近く、大きな差」だろう。何かと何かの「差」があって、その倍近くの「差」があったら、「2倍近い差がついた」になる。そんなメンドーな状況は考えたくない。
たとえば、1位が1億で、2位が8100万円で、3位が7100万円だった場合。この場合は、2位と3位の差は1000万円で、1位と2位は、その「2倍近い差がついた」ことにはなる。
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