「~だろう」と「~のだろう」
下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-306.html
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1354427241&owner_id=5019671
mixi日記2010年04月19日から。
テーマトピは下記。
【「だろう」と「のだろう」】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=52318240
かなりの難物とは思うが、似たような問題を考えたことがあるので、少し書いてみる。
まずトピ主が書いた「0」を少し書きかえて引用する。
================================
教科書の文
(ラジオの外国語講座のテキストの話。4月頃はよく売れるが、6月になると売れなくなる。)
最初の頃は易しくて、三か月経つと、次第に難しくなり、勉強をやめてしまうのだろう。
【質問1】上記の文の「だろう」は“可能性の高い推量”を述べていると理解してよろしいのでしょうか。
【質問2】「だろう」の前の部分、「~」と「~の」の違いは何でしょうか。
例)
1A:これから、日本はもっと子どもが少なくなるだろう。
1B:これから、日本はもっと子どもが少なくなるのだろう。
2A:だから、彼は無理をしなかっただろう。
2B:だから、彼は無理をしなかったのだろう。
例1の場合、1Aは自然で、1Bは不自然です。
例2の場合、2Aは不自然で、2Bは自然です。
================================
※ちなみに、「三ヶ月」の「ヶ」は「箇」の部首からとった略字のようなもの(だったよな)なので、使わないほうがいい。
※「ご教授」も誤用の可能性が高い。下記参照。
【ネットが広めた誤用……etc.──「教授する」か「教示する」か 】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-869.html
正確に書こうとすると大変なことになりそうなので、できるだけ簡単に。
例によって辞書をひくが、記述が長くなるので下記にまとめておく。
辞書を見れば【質問1】は解決するはず。
いろいろ書くとメンドーになるので意味は「推量」と書いておく。「可能性の高い推量」か否かは不明。たしかに一般には「かもしれない」「気がする」などよりは「可能性が高い」かもしれないが、その話は省略する。
問題は【質問2】。
1A&1Bは、文脈しだいで両方ともアリ。「の」はあってもなくてもいい気がする。意味もほとんど変わらない。この「の」の働きは↓の「のだろう」の「1 念を押したり、確かめたりする意を表す」と考えられる。
2A:だから、彼は無理をしなかっただろう。
2B:だから、彼は無理をしなかったのだろう。
2Aは不自然で、2Bは自然……というのは同感(微妙な話だけど)。これは↓の「のだろう」の「2 (「から(ので)…のだろう」の形で)原因・理由となる事柄を推量する意を表す」と考えられる。
これで一応【質問1】【質問2】の答えになっているはず。
ここから先はほぼヨタ話。
2Aは不自然で、2Bは自然な理由を考えるために、推量ではない形にしてみる。
2C:だから、彼は無理をしなかった。
2D:だから、彼は無理をしなかったのだ。
2Dと比べると、2Cはほんの少し不自然な気がする。2Cがヘンなのではなく、2Dのほうが論旨が明確で自然な気がするからだろう。
〈「から(ので)…のだろう」の形〉ではない形にしてみる。
2E:それを知っていたら、彼は無理をしなかっただろう。
2F:それを知っていたら、彼は無理をしなかったのだろう。
こう考えると、あってもなくてもいい「の」になり、1A&1Bと同様に考えていいのではないか。
さらにヨタ話。
この「の」の働きに似たものを感じるのは、「のだ」の「の」。
1C&1Dを推量ではない形にしてみる。
1C:これから、日本はもっと子どもが少なくなる。
1D:これから、日本はもっと子どもが少なくなるのだ。
この文末の「のだ」にもいくつか種類があるが、「強調」と考えておけばほぼ大丈夫。
1Bの「の」もこれとほぼ同じと考えていいのではないか。ただし、1Dの「のだ」は「の」に断定の「だ」がついている形なのでかなり強調されている。1Bは「の」だけなのでさほど強い働きはない。
ほ~んの少しだけ強調する、と言うより「語調を整える」程度の働きかもしれない。
この「あってもなくてもいい」けどなんとなくあったほうがいい「の」はいろいろある。それはまた別の話か(笑)。
ex.
そういう考え方もある(の)でしょうが。
※これじゃ「(の)だろう」とかわらないか。
一応(の)答えにはなっている。
※これは全然違う用法かも。
【追記】
日本語学習者が微妙な助詞の使い分けを知る必要がある(の)か疑問です。
【追記2】
トピ主はこの点には質問してないが、念のため。
元々の例文の「~のだろう」の意味。
>最初の頃は易しくて、三か月経つと、次第に難しくなり、勉強をやめてしまうのだろう。
いろいろ気になるのでフツーの日本語に書きかえる。
1)最初はやさしいが、三か月もたつと難しくなり、勉強をやめてしまうのだろう。
この「の」は削除できなくはないが、削除するとニュアンスが大きくかわる。
おそらく、この「の」は「2B」と同様に「のだろう」の「2 (「から(ので)…のだろう」の形で)原因・理由となる事柄を推量する意を表す」からだろう。
少し変形すると、そのことがよくわかる。
2)最初はやさしいが、三か月もたつと難しくなるから、勉強をやめてしまうのだろう。
3)最初はやさしいが、三か月もたつと難しくなるので、勉強をやめてしまうのだろう。
このあたりのことを、トピ主は理解したのだろうか。
■Web辞書(『大辞泉』)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%A0%E3%82%8D%E3%81%86&stype=1&dtype=0
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だろう〔だらう〕
[連語]《断定の助動詞「だ」の未然形+推量の助動詞「う」》不確かな断定、あるいは推定の意を表す。「彼はきっと成功する―う」「むこうの山が南アルプス―うか」→のだろう
◆現代語では、主に「う」「よう」が話し手の意志を表すのに対し、「だろう」は広く用言に接続して推量を表すのに用いられる。「だろう」を一語の助動詞とみる説もある。
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の‐だろう〔‐だらう〕
[連語]《準体助詞「の」+断定の助動詞「だ」の未然形+推量の助動詞「う」。話し言葉では「んだろう」とも》
1 念を押したり、確かめたりする意を表す。「われわれも参加できる―う」「格別変わったことはない―う」
2 (「から(ので)…のだろう」の形で)原因・理由となる事柄を推量する意を表す。「みんなに無視されたから怒っている―う」「人が大勢いるので恥ずかしい―う」
================================
こうなると、「準体助詞」の「の」の働きもひいておきたくなる。「の」の「準体助詞」の部分だけひく。用例がよくわからないので無視する。
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%AE&dtype=0&stype=1&dname=0na&pagenum=1&index=16622114371000
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[準体助詞]
1 (体言に付いて)下の名詞を表現せず、「のもの」「のこと」の意を表す。「この本、君―だろう」「自分―には記名しておく」
2 (活用語に付いて)その語を名詞と同じ資格にすることを表す。「読む―が速い」「彼を行かせる―はまずい」「こんな―が欲しい」→のだ →のだろう →のです
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テーマトピは下記。
【「だろう」と「のだろう」】
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かなりの難物とは思うが、似たような問題を考えたことがあるので、少し書いてみる。
まずトピ主が書いた「0」を少し書きかえて引用する。
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教科書の文
(ラジオの外国語講座のテキストの話。4月頃はよく売れるが、6月になると売れなくなる。)
最初の頃は易しくて、三か月経つと、次第に難しくなり、勉強をやめてしまうのだろう。
【質問1】上記の文の「だろう」は“可能性の高い推量”を述べていると理解してよろしいのでしょうか。
【質問2】「だろう」の前の部分、「~」と「~の」の違いは何でしょうか。
例)
1A:これから、日本はもっと子どもが少なくなるだろう。
1B:これから、日本はもっと子どもが少なくなるのだろう。
2A:だから、彼は無理をしなかっただろう。
2B:だから、彼は無理をしなかったのだろう。
例1の場合、1Aは自然で、1Bは不自然です。
例2の場合、2Aは不自然で、2Bは自然です。
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※ちなみに、「三ヶ月」の「ヶ」は「箇」の部首からとった略字のようなもの(だったよな)なので、使わないほうがいい。
※「ご教授」も誤用の可能性が高い。下記参照。
【ネットが広めた誤用……etc.──「教授する」か「教示する」か 】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-869.html
正確に書こうとすると大変なことになりそうなので、できるだけ簡単に。
例によって辞書をひくが、記述が長くなるので下記にまとめておく。
辞書を見れば【質問1】は解決するはず。
いろいろ書くとメンドーになるので意味は「推量」と書いておく。「可能性の高い推量」か否かは不明。たしかに一般には「かもしれない」「気がする」などよりは「可能性が高い」かもしれないが、その話は省略する。
問題は【質問2】。
1A&1Bは、文脈しだいで両方ともアリ。「の」はあってもなくてもいい気がする。意味もほとんど変わらない。この「の」の働きは↓の「のだろう」の「1 念を押したり、確かめたりする意を表す」と考えられる。
2A:だから、彼は無理をしなかっただろう。
2B:だから、彼は無理をしなかったのだろう。
2Aは不自然で、2Bは自然……というのは同感(微妙な話だけど)。これは↓の「のだろう」の「2 (「から(ので)…のだろう」の形で)原因・理由となる事柄を推量する意を表す」と考えられる。
これで一応【質問1】【質問2】の答えになっているはず。
ここから先はほぼヨタ話。
2Aは不自然で、2Bは自然な理由を考えるために、推量ではない形にしてみる。
2C:だから、彼は無理をしなかった。
2D:だから、彼は無理をしなかったのだ。
2Dと比べると、2Cはほんの少し不自然な気がする。2Cがヘンなのではなく、2Dのほうが論旨が明確で自然な気がするからだろう。
〈「から(ので)…のだろう」の形〉ではない形にしてみる。
2E:それを知っていたら、彼は無理をしなかっただろう。
2F:それを知っていたら、彼は無理をしなかったのだろう。
こう考えると、あってもなくてもいい「の」になり、1A&1Bと同様に考えていいのではないか。
さらにヨタ話。
この「の」の働きに似たものを感じるのは、「のだ」の「の」。
1C&1Dを推量ではない形にしてみる。
1C:これから、日本はもっと子どもが少なくなる。
1D:これから、日本はもっと子どもが少なくなるのだ。
この文末の「のだ」にもいくつか種類があるが、「強調」と考えておけばほぼ大丈夫。
1Bの「の」もこれとほぼ同じと考えていいのではないか。ただし、1Dの「のだ」は「の」に断定の「だ」がついている形なのでかなり強調されている。1Bは「の」だけなのでさほど強い働きはない。
ほ~んの少しだけ強調する、と言うより「語調を整える」程度の働きかもしれない。
この「あってもなくてもいい」けどなんとなくあったほうがいい「の」はいろいろある。それはまた別の話か(笑)。
ex.
そういう考え方もある(の)でしょうが。
※これじゃ「(の)だろう」とかわらないか。
一応(の)答えにはなっている。
※これは全然違う用法かも。
【追記】
日本語学習者が微妙な助詞の使い分けを知る必要がある(の)か疑問です。
【追記2】
トピ主はこの点には質問してないが、念のため。
元々の例文の「~のだろう」の意味。
>最初の頃は易しくて、三か月経つと、次第に難しくなり、勉強をやめてしまうのだろう。
いろいろ気になるのでフツーの日本語に書きかえる。
1)最初はやさしいが、三か月もたつと難しくなり、勉強をやめてしまうのだろう。
この「の」は削除できなくはないが、削除するとニュアンスが大きくかわる。
おそらく、この「の」は「2B」と同様に「のだろう」の「2 (「から(ので)…のだろう」の形で)原因・理由となる事柄を推量する意を表す」からだろう。
少し変形すると、そのことがよくわかる。
2)最初はやさしいが、三か月もたつと難しくなるから、勉強をやめてしまうのだろう。
3)最初はやさしいが、三か月もたつと難しくなるので、勉強をやめてしまうのだろう。
このあたりのことを、トピ主は理解したのだろうか。
■Web辞書(『大辞泉』)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%A0%E3%82%8D%E3%81%86&stype=1&dtype=0
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だろう〔だらう〕
[連語]《断定の助動詞「だ」の未然形+推量の助動詞「う」》不確かな断定、あるいは推定の意を表す。「彼はきっと成功する―う」「むこうの山が南アルプス―うか」→のだろう
◆現代語では、主に「う」「よう」が話し手の意志を表すのに対し、「だろう」は広く用言に接続して推量を表すのに用いられる。「だろう」を一語の助動詞とみる説もある。
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の‐だろう〔‐だらう〕
[連語]《準体助詞「の」+断定の助動詞「だ」の未然形+推量の助動詞「う」。話し言葉では「んだろう」とも》
1 念を押したり、確かめたりする意を表す。「われわれも参加できる―う」「格別変わったことはない―う」
2 (「から(ので)…のだろう」の形で)原因・理由となる事柄を推量する意を表す。「みんなに無視されたから怒っている―う」「人が大勢いるので恥ずかしい―う」
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こうなると、「準体助詞」の「の」の働きもひいておきたくなる。「の」の「準体助詞」の部分だけひく。用例がよくわからないので無視する。
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[準体助詞]
1 (体言に付いて)下の名詞を表現せず、「のもの」「のこと」の意を表す。「この本、君―だろう」「自分―には記名しておく」
2 (活用語に付いて)その語を名詞と同じ資格にすることを表す。「読む―が速い」「彼を行かせる―はまずい」「こんな―が欲しい」→のだ →のだろう →のです
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