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2010年7月の朝日新聞から

【索引】
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●朝日新聞から──番外編 よく目にする誤用の御三家
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●朝日新聞から──ではない 世に誤用の種は尽きまじ
「7割以上が間違ったら、もうそれは誤用ではない」のか?
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【2010年7月】
1日
 W杯の準々決勝を控えた予想記事(もはや遠い過去のようだ)。書き手は村上研志記者。相当危うい日本語で、3か所チェックした。
10-7-1
ロッベンが復帰した攻撃は強さを増したが、従来の飽くなき攻撃欲は抑え、攻守のバランスに気を配っている(朝刊14面)。
 この一文だけで読む気が失せる。まず、「復帰した攻撃は」が引っかかる。「復帰したFW陣は」とか「復帰して攻撃面は」とかならフツー。次に、「強さ」は増すものかということ。「厚みを増す」とか「一段と強力になる」ことはありそう。イチバン気になったのは、「従来の飽くなき攻撃欲」って表現。「従来の」っていつのことよ。「伝統の」なら、オランダの伝統ってことだよね。予選段階では超攻撃的なチームが本大会では「攻撃欲」を抑えているのかな。「飽くなき」って、こういう表記はめったに見ない。フツーは「欲望」などにかかる。ここでは後ろを「攻撃欲」だからOKなのかもしれないけど、どっちの言葉づかいも相当ヘン。ほとんど誤用だと思う。
■Web辞書(『大辞泉』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%82%E3%81%8F%E3%81%AA%E3%81%8D&stype=1&dtype=0
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あく‐なき【飽く無き】
[連体]飽きることのない。いつまでも満足することのない。「―挑戦」
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10-7-2
 世界ランク2位のスペインと31位のパラグアイ。南米の一角が崩れるとすれば最も可能性の高いカードだが、期待通りの攻撃力を発揮できていないスペインにとって、堅守のパラグアイはやっかいな相手になる。(朝刊14面)
 なんじゃこれは? 言いたいことはわかるけど、なんでこんなわかりにくい書き方をする。「南米の一角が崩れるとすれば最も可能性の高いカード」って何? 要は南米が4強を独占する可能性があるが、4チームのなかでイチバン勝てそうにないのがパラグアイってことでしょ? ついでに書くと、「期待通り」って誰が期待しているの? あえて言うならスペインサポーターだろうな。なんでいきなりそういう立場になるの。
 最低限修正してみる。
【修正案】
 世界ランク2位のスペインと31位のパラグアイ。世界ランクを見る限り、南米の一角が崩れる可能性が最も高いのはこのカードだろう。しかし、持ち前の攻撃力を発揮できていないスペインにとって、堅守のパラグアイはやっかいな相手だ。

10-7-3
積極的な守備からすばやい攻めを狙うパラグアイにとって日本よりかみ合わせがいい。(朝刊14面)
「かみ合わせ」がよくないなら歯医者に行けよ……とは言いながら、書きかえがむずかしい。「日本よりくみしやすい」ってのも個人的には誤用だと思う。
「03-12-1」「08-6-6」参照。
http://1311racco.blog75.fc2.com/?q=%C1%C8%A4%DF%A4%B7%A4%E4%A4%B9%A4%A4
「日本より相性がいいかもしれない」くらいかな。じゃあ、日本よりも戦いやすいかって? そんなバカな。

10-7-4
4日
試写を見ながら、ほおに何度も熱いものがつたった。(朝刊40面)
 岩本哲生記者。テレビ番組欄。結びの言葉。ほお「を」じゃないか? これが「流れる」でも「を」だろうな。「に」は「ほおにふれる」とか。それ以前にこんな情緒的な表現が必要なんだろうか。

10-7-5
4日
 ミュラーのヘディングシュートは、通常なら足の届く範囲でも取れない。(朝刊33面)
 忠鉢信一編集委員。編集委員に手から水がこぼれたのかな。フツーの語順にするなら「通常なら足の届く範囲のミュラーのヘディングシュートでも取れなかった。」くらいだろう。ここでもうひとつの疑問。「足の届く範囲」なら取れるのか? 相当器用だな。猿か?「反応しきれなかった」「「防げなかった」くらいだろう。

10-7-6
5日
前がかりなスペインとはかみ合わせがいい。(朝刊24面)
 中川文如記者。また「かみ合わせ」か。前出と同じスペイン・パラグアイ戦。これってサッカー特有の表現なんだろうか?

10-7-7
7日
 福地会長は「やっぱり相撲の灯を消したくないですよ。なにも意気がって相撲の中継をやめることが我々の本意じゃない」と理解を求めた。(朝刊39面)
 記者不明。大相撲の中継を見送ることを発表したNHKの福地会長のコメント。どう解釈したら「理解を求めた」ととれるのかは不明。さらに疑問なのは「意気がって」の意味。
■Web辞書(『大辞泉』から)
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いき‐が・る【▽粋がる】
[動ラ五(四)]粋だと思って得意にになる。また、虚勢を張る。「薄着で―・る」
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 本来は「粋がる」と書いて、「粋だと思って得意にに(ママ)なる」ことだろう。常用漢字表外なので「意気がる」と書くのはしかたがない。この表記のせいか近年は「虚勢を張る」の用法が優勢の気がする。で、引用部に関しては、どちらの意味でもなさそうだ。たぶん、「積極的に」くらいか。あるいは「カッコつけて」と解釈できなくもない? このコメントの前に次のようなコメントもあったらしい。
 「申し上げておきますけれども、今回の措置は不祥事に伴う異例中の異例の措置。苦渋の選択ですよ」
 これも相当ヒドい。「申し上げておきますけれども」って、これはmixiなどでおなじみの言い回し。相当ふてぶてしい開き直りのときに使う。自分の行為に「苦渋の選択」ってのもどうなんだろう。

10-7-8
9日
右肩下がりの不透明な時代だからこそ、あえて上を向いて生きることの大切さを思い出させてくれる。(朝刊40面)
 久保智祥記者。テレビの番組欄。文中の「あえて」はどういう働きをしているか。それはおくとして、問題は「右肩下がり」。こういう言葉を「 」も“ ”(縦書きの場合は印刷用語で「ツメ」などと呼ぶ)もつけずに使える無神経さが、ある意味うらやましい。下記の「29~」の激論はなんだったのだろう。思えば、このトピは噛み付き電波のあまりの薄気味悪さに途切れたんだよな。コミュが停滞気味だから復活させようかな。
【反対語で遊ぼ】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=29363995

10-7-9
14日
破天荒でも、それが新鮮(朝刊31面)
 田玉恵美記者。テレビの番組欄。コラムの見出しにデカデカと。本文中でこれに相当する言葉は「ハチャメチャ」。やはり誤用だろうな。書きかえ案としては「型破り」がオススメ。「横紙破り」だとかなり意味が違ううえにほとんど死語だろうな。
■Web辞書(『大辞泉』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%AF%E3%81%A6%E3%82%93%E3%81%93%E3%81%86&stype=1&dtype=0
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は‐てんこう〔‐テンクワウ〕【破天荒】
[名・形動]前人のなしえなかったことを初めてすること。また、そのさま。前代未聞。未曾有(みぞう)。「―の試み」「―な大事業」

◆「天荒」は未開の荒蕪地(こうぶち)の意。唐の時代、官吏登用試験の合格者が1名も出なかった?州は人々から「天荒」といわれていたが、劉蛻(りゅうぜい)が初めて合格して「天荒を破った」といわれたという、「唐?言」「北夢瑣言」の故事から。
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10-7-10
14日
 一応新聞つながり。以前ちょっと書いた毎日新聞の『RT』の見本誌がポスティングされていた。こんなものがいつまで続くのだろう。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1481156467&owner_id=5019671

10-7-11
24日
コンビニ各社は、わざと入り口から遠い棚に陳列。客を店の奥まで引き入れ、長い時間店内にとどめる「マグネット(磁石)商品」にしている。ファミリーマートではこのマグネット効果もあって、最近はおにぎりの売れ行きも好調という。(朝刊12面)
 記者不明。「猛暑商戦 熱気」という大きめの記事。「エアコン・旅行 ビール・アイス」というサブタイトルがあり、各業界の盛り上がりぶりを伝えている。セブンイレブンでは、炭酸飲料などのペットボトル入り飲料が前年水準の約3割増なんだとか。それに続く文章が上記。やっぱり夏はおにぎりですよねー……●●か? 仮に「マグネット効果」があったら、全体の売り上げが伸びるんじゃないかな。気持ちはわかるよ。ファミリーマートにも取材したから何か書きたかったんだろうね。もう少しまともなこと書こうよ。
 サブタイトルに「旅行」とあり、リードにも「プールや避暑地も盛況」とあるが、避暑地の話がなかなか出てこない。記事の最後にちょっとだけ出てくる。

 レジャーでは、プールや避暑地への日帰り旅行が人気を集める。東京23区で最大のプール「としまえん」(練馬区)では17日からの3連休の利用者数が前年比4割増。
 夏休みの国内旅行の予約も好調で、JTBによると、北海道が前年比5%増、沖縄が同8%増という。(朝刊12面)
 あのー。避暑地の話はどこに行ったの? 夏休みの国内旅行が好調なのも猛暑のおかげですか。それは別の話じゃないかな。たしかに暑いと北海道に行きたくなるよね。東京あたりからの日帰り旅行はちょっとむずかしいけど。暑いと沖縄に……●●か?

10-7-12
30日
 朝刊35面のコラムが、長野の名産品を活用したソフトクリームを紹介している。ネット上にテキストがあった。「バッタソフト」の話は1か月ほど前にマイミクさんに教えてもらっていたが……。「グミの食感」って、なんとなくわかるだけにイヤすぎる。
【ネタ元】朝日新聞
http://www.asahi.com/national/update/0729/TKY201007290497.html
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食感人気のソフトクリーム え、イナゴ入り? 長野

写真:5匹のイナゴの甘露煮がのせてある「バッタソフト」=長野県諏訪市5匹のイナゴの甘露煮がのせてある「バッタソフト」=長野県諏訪市

写真:4匹の蚕のさなぎの甘露煮がのった「蛾のさなぎソフト」=長野県諏訪市4匹の蚕のさなぎの甘露煮がのった「蛾のさなぎソフト」=長野県諏訪市

 B級グルメブームの中、長野県・諏訪湖畔の売店で、信州名物の「イナゴ」や「蚕のさなぎ」の甘露煮をトッピングしたソフトクリームが登場した。

 売店従業員の上原義人さん(39)が発案。見た目は「!?」だが、イナゴはサクサク、蚕はグミの食感。修学旅行生らが「ワーワー騒ぎながら食べてくれる」。

 値段は通常よりも50円高い350円。人気に味を占め、「蜂の子」や「ざざ虫」も検討しているが、こちらはいまや高級品。「コスト面がネックです」
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2010年6月の朝日新聞から

【索引】
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●朝日新聞から──番外編 よく目にする誤用の御三家
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●朝日新聞から──ではない 世に誤用の種は尽きまじ
「7割以上が間違ったら、もうそれは誤用ではない」のか?
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【2010年6月】
10-6-1
24日
▲2六飛で3枚目の銀を渡し、ここは森内も自信のない形勢と感じていた。(朝刊15面)
 剣記者。将棋に観戦記。別に誤用でもなんでもないけど、後半が相当引っかかる。フツーにするなら、「森内も形勢に自信が持てなかった(という)」くらいだろうか。「自信のない形勢」が異様なんだろう。

10-6-2
26日
 そんな喫緊の対策が成功した根底には、チームに蓄積された4年間の経験がある。(朝刊1面)
 中川文如記者。これは誤用なのかな。「喫緊」なんて目にしたのはいつ以来だろう。
■Web辞書(『大辞泉』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E5%96%AB%E7%B7%8A&stype=1&dtype=0
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きっ‐きん【喫緊/×吃緊】
[名・形動]差し迫って重要なこと。また、そのさま。緊要。「―の問題」
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 これ、ワールドカップ開催前の強化試合で4連敗して、守備戦術を変更したことをさしている。直前には「突貫工事は当たった」とある。文脈を考えると、「応急措置的な対策」だろう。「緊急の対策」と考えるとOKの気もするが、それは「緊」の字に引きずられてないか? まさかと思うけど「場当たり的」とか「やっつけ仕事」とか「苦しまぎれ」とか……そうう言葉を使うのを避けようとして慣れない言葉をもってきて誤用っぽくなった、なんてことはないだろうね。いずれにしても、使い慣れない言葉は使うもんじゃない。

10-6-3
29日
イングランド、役者不足(朝刊35面)
 村上研志記者。かなり大きめの見出し。見出しだから書き手は別なのかもしれない。「役者不足」もそろそろ認知されたのかな?
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-122.html
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「役不足」にかわる表現として有力なのは、「役者不足」です。誤用に関する本のなかには「そんな言葉は存在しない」と書いてあるものもありますが、感じが出ている言葉だと思います。新聞でも何度か目にしたことがあり、今後は定着していくかもしれません。
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http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-203.html
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08-9-11
30日
芸能レポーターの梨元勝さんは「役者不足。論争してみせて盛り上げようとしているけど、結論の見えているレコード大賞」(朝刊1面)
 総裁選を話題にした「天声人語」。「役者不足」って言葉を朝日新聞で目にしたのは何回目だろう。正しい日本語ではないという説が有力だが、誤用の「役不足」にかわる表現として、もっと広まってほしい。
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 今月“も”ネタが少ないので、「天声人語」に悪態をつく。(←オイ!)
10-6-4
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2010年6月19日(土)付印刷
 明治から大正にかけての横綱太刀山(たちやま)は、巨体からの突っ張りで「四十五日」と恐れられた。ひと突き(月)半で倒すというしゃれである。怖がる相手が後ずさりし、体に触れぬまま土俵を割った一番もある。「にらみ出し」とはやされた▼大相撲の野球賭博スキャンダルが大ごとだ。にらみ出されるように親方や人気力士が「やりました」と白状し、世間の口の端に上らない日はない。ばらすぞと脅され、大金を暴力団筋に渡したという大関琴光喜は、7月の名古屋場所を辞退した▼日本相撲協会は、29人が名乗り出た内部調査の公表を渋り、文部科学省やメディアに尻をたたかれている。己に累が及ぶと案じたか、協会幹部の動きは鈍い。イヤイヤをしながら俵に押し込まれる醜態だ▼他人の真剣勝負に金を賭けるとは、どうにも暇な勝負師たちである。そもそも、球場が気になって場所に集中できまい。相手のちょんまげに野球帽が乗り、勝敗の電光表示がスコアボードに見えたに違いない▼神事だ国技だと言ったところで、大相撲は興行である。お客が入らぬことには立ち行かない。暴力団の金づるが絡んだ土俵を、誰が見に行くだろう。手を汚した者を明かし、反省させ、ひと場所を傷めても悪習をにらみ出すしかない▼組んでも怪力の太刀山は、背中からたたきつける「仏壇返し」の大技で観衆をわかせた。文科省や警察が本気なら、相撲協会は公益法人を返上する「財団返し」を迫られかねない。精進不足が背から落とされるは常、決まり手はサヨナラ負けとでもするか。
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 ひとことで書くと、「うまく書こうとする意識が鼻につく」。このところの「天声人語」はそんな記事ばかりだけど、これはとくにヒドい。
 趣旨はよくわかるけどさ。
「仏壇返し」って「背中からたたきつける」技かな? 「呼び戻し」の別名だから違うでしょう。世間的には別の意味のほうが有名。(←オイ!)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%8F%E5%A3%87%E8%BF%94%E3%81%97
http://48.lovesupple.jp/chuukyu/butudangaeshi.html

 後半はヒドい。「にらみ出す」「財団返し」「サヨナラ負け」(意味不明)……『AERA』並みだな。

10-6-5
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2010年6月27日(日)付印刷
 英語の「スピーチ」に、福沢諭吉が「演説」の語をあてたのはよく知られている。かの「学問のすゝめ」でも、「我思うところを人に伝うるの法なり」などと解説している。もともとあった「演舌」という語を、「舌では俗っぽい」と「説」に替えたそうだ▼たしかに、話す言葉の不実をたとえる「舌」のイメージは芳しくない。「舌先三寸」に「二枚舌」「口舌の徒」、「舌の根の乾かぬうちに」というのもある。舌でごまかさず説を述べるべし――訳語には、そうした思いがこめられていたかも知れない▼ところで今日は、諭吉が開いた日本で初の演説会にちなむ「演説の日」だという。折しも参院選の選挙サンデーである。津々浦々で言葉が飛び交うことだろう。それが「演説」なのか、「演舌」ではないのか、ここはじっくり吟味したい▼「口に蜜あり腹に剣あり」などと中国の故事に言う。悪だくみを腹に秘めた政治家など、今の日本にいるまいが、甘い言葉はあふれている。剣はなくても、腹の中が空っぽなら、有権者はまた「力量不足」という肩すかしを食うことになる▼諭吉が偉かったのは、訳語を作っただけでなく、演説を真っ先に実践したことだろう。それは政治家に欠かせぬ技能となる。切磋琢磨(せっさたくま)から多くの名演説が生まれ、言論として光を放ってきた▼その輝きが衰えたと言われて久しい。政治家の言葉を楽しみ、心震わせる機会は、いまやすっかり希少になった。選挙戦を眺めつつ、物干し台で特訓をしたという諭吉の時代の熱に、ふと思いを致してみる。
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「口に蜜あり腹に剣あり」か。いい言葉を教えてもらった。類語に「腹に一物股間に……」
「致してみる」ってのにもちょっと異和感があった。
■Web辞書(『大辞泉』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%84%E3%81%9F%E3%81%99&stype=1&dtype=0
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いた・す【致す】
[動サ五(四)]《「いたる」に対して「いたらせる」の意。敬語として用いられるのは中世以降》
1 届くようにする。至らせる。「遠い祖国に思いを―・す」
2 そのことがもとで、ある結果、特によくない結果を引き起こす。ある状態に立ち至らせる。「私の不明の―・すところ」
3 全力で事を行う。心を尽くす。
(以下略)
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 へー。この意味が「1」に来るんだ。「2」以外はほとんど古語だと思っていた。
 個人的な語感だと「馳せてみる」かな。「至らせてみる」もアリかもしれない。

10-6-6
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2010年6月29日(火)付印刷
 日本の交通機関は、アナウンスも掲示も「お願い」が多い。ある地下鉄の優先席に〈ゆずりあう心が、明るい車内をつくります〉とあった。「つくる」という動詞に二つを思う。乗り心地は客にもよること、そして「こわす」者の影である▼東京の声欄に、少年(12)の投書「バスに乗ったらトンデモ乗客」があった。都下町田市。バスが5分遅れで停留所に着く。少年が母親と乗り込むと、男の客が女性運転士を怒鳴り上げたそうだ▼遅れに立腹したか、座っても車体をけとばし、手すりに足を乗せる。信号では「黄色なんだから突き進め!」。当然、車内は「とても怖い感じ」になった。降り際には、運転士の名を確かめるそぶりも見せたという▼4日後、当の運転士(46)の感想が載った。女性ゆえに当たりやすいのなら、これほど悲しいことはないと。「怖い思いをさせて申し訳ありません。でもありがとう。お陰で、これからも気持ちよく乗ってもらえるよう頑張る勇気が出ました」▼乗務員は客を選べず、客も隣人を選べない。とりわけストレスの発火点が低い都会では、車内のトラブルは茶飯事だ。大抵の大人は、険悪への感度を鈍らせる知恵を備えている。音楽や携帯電話で耳と目を「開店休業」にするのも一つだろう▼攻撃と防御がせめぎ合う都市のくらし。とんでもない客に当たった運転士や駅員も気の毒だが、居合わせた子どもはたまらない。耳目が無防備だから、とんがる空気に丸裸でさらされてしまう。怒声と鈍感が並走する車内で、ちいさな心が震えている。
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 これも相当鼻につく。結びの一文はいくらなんでも……。
「申し訳ありません」に関しては書きあきた。
「せめぎ合う」に関しては書きあきたけど、これは相当ヒドい。「攻撃と防御がせめぎ合う都市のくらし」って内戦状態じゃあるまいし。
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