助詞の話「ニ」──省略可能な「ニ」Yahoo!知恵袋
下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-306.html
日本語アレコレの索引(日々増殖中)【5】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1669912728&owner_id=5019671
mixi日記2011年03月25日から
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1695747115&owner_id=5019671
【どうやら、昔の文章は「に」が省略されていないことがおおいようです。】
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1058363565
質問の全文を転載する。
================================
どうやら、昔の文章は「に」が省略されていないことがおおいようです。
これって、言葉が変化したってことですか?
最近の文章には「に」がないセンテンスが多いです。僕は文章を書くときには、たいてい「に」をきちんと入れて書いていますが。
例
・かすれた声で精一ぱい「に」叫びながら
・人一倍「に」敏感であった。
「走れメロス」
最近の文章には「に」がないセンテンスが多いです。上にある例は、最近の文章だといらない「に」です、というかほとんどつかわない「に」です。
僕は文章を書くときには、たいてい「に」をきちんと入れて書いていますが。
それとも、最近の文章は言文一致をつとめて来た結果、会話にでてこない「に」はいらない!ってことなんですか?
ちなみに、ネット上にある著作権切れの作品朗読を聞いていました。
そしたら、「に」「に」と耳に障ったので、この質問を考えました。
================================
もんのすごい難問で、Yahoo!知恵袋で扱う問題ではないと思う。ご指名のようなんで書いてみる。
まずこの「ニ」の意味。
■Web辞書(『大辞林』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%AB&dtype=0&dname=0ss&stype=1&index=114785000000&pagenum=11
================================
に
1 (格助)
〔補説〕 上代から用いられている語で、動作・作用が行われ、また存在する、時間的・空間的な位置や範囲を示すのが本来の用法
[10] 動作・状態の行われ方・あり方を表す。
左右―ゆれる
ぴかぴか―光る
================================
ちなみに『大辞泉』の説明もほぼ同じ。当然のことながら、例文は違う。
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%AB&dtype=0&stype=1&dname=0na&pagenum=11
================================
【1】[格助]名詞、名詞に準じる語、動詞の連用形・連体形などに付く。
8 動作・作用の行われ方、その状態のあり方を表す。「直角―交わる」「会わず―帰る」
================================
手元の『広辞林』をひく。
================================
八 動作・作用の行なわれ方、その状態のあり方を表わす。
「高山植物がすきまもなし―咲き乱れている」
================================
「ニ」の省略に関しては何も書いていない。
あげられた例文のうち、「ニ」を省略できるのは「ぴかぴかニ光る」だけだろう。これはむしろ「ニ」がない形か「ぴかぴかト」のほうが自然な気がする。つまり「ニ」を省略しているのではなく、「ぴかぴかト」の「ト」を省略したと考えるほうが素直。
同じようでも「ぴかぴかニする」なら「ニ」は省略できない。
どういうときに「ニ」が省略できるか。言葉の神様に訊かないとわからないような難問だと思う。気が重い(泣)。
■「ト」の場合
まず思い出したのは「ト」の話。
【日本語アレコレ──「自然に」と「自然と」の違い1 】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-305.html
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『大辞泉』===========================
[格助]名詞、名詞的な語、副詞などに付く。
1 動作をともにする相手、または動作・関係の対象を表す。「子供―野球を見に行く」「友達―けんかをした」「苦痛―闘う」
「しぐれ降る暁月夜紐解かず恋ふらむ君―居(を)らましものを」〈万・二三〇六〉
2 (文や句をそのまま受けて)動作・作用・状態の内容を表す。引用の「と」。「正しい―いう結論に達する」
「名をばさかきの造(みやつこ)―なむいひける」〈竹取〉
3 比較の基準を表す。「君の―は比べものにならない」「昔―違う」
「思ふこといはでぞただにやみぬべき我―ひとしき人しなければ」〈伊勢・一二四〉
4 動作・状態などの結果を表す。「有罪―決定した」「復讐(ふくしゅう)の鬼―化した」
「年をへて花の鏡―なる水は散りかかるをやくもるといふらむ」〈古今・春上〉
5 (副詞に付いて新たな副詞をつくり)ある状態を説明する意を表す。「そろそろ―歩く」「そよそよ―風が吹く」
「ほのぼの―春こそ空に来にけらし天のかぐ山霞たなびく」〈新古今・春上〉
================================
「自然と」の「と」は上記の「5」だろう。手元の『広辞林』だと、同じことを「状態を強めていう」としている。「そろそろ」「そろそろと」のように「と」があってもなくてもどちらもアリってことらしい。
そう考えれば、「自然」も「自然と」もアリ。厳密に言うと、「自然と」は1語の副詞ではなく、副詞の「自然」に助詞の「と」がついたと考えるべきではないだろうか。まあ、1語でも2語でも大きな違いはないけど。
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「ト」の省略に関しては、↑で説明できていると思う。
したがって、「ぴかぴかト光る」「ぴかぴか光る」のどちらもアリ。
「ニ」もほぼ同様と考えていいのではないか。
ただ、「ニ」は形容動詞の話がからむので、ちょっとややこしい。
■形容動詞の活用の「ニ」
1) 一生懸命ニ走る
2) 懸命ニ走る
同じように見えても、1)のニは省略できて、2)のニは省略できない。
1)は「一生懸命+ニ」だけど、2)は形容動詞「懸命だ」の連用形「懸命ニ」だから(だと思う)。
名詞「懸命」+助詞「ニ」という解釈をすれば省略も可能? そう思う人は省略してください。当方はしません。
■個人的な語感で判断する「ニ」の省略の是非
…………………分類………「ニ」の省略……個人的な語感
精一杯ニ………名詞+ニ…………○…………「ニ」はつけない
人一倍ニ………名詞+ニ…………○…………「ニ」はつけない
一所懸命ニ……名詞+ニ…………○…………両方アリ
懸命ニ…………形容詞……………X…………「ニ」は必須
ぴかぴかニ……副詞………………○…………「ニ」はつけない
これが、歴史的に昔はつけていまはつけないか否かは、膨大な文献にあたればわかるかもしれない。
でもそれは学者の仕事だろう。
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質問の全文を転載する。
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どうやら、昔の文章は「に」が省略されていないことがおおいようです。
これって、言葉が変化したってことですか?
最近の文章には「に」がないセンテンスが多いです。僕は文章を書くときには、たいてい「に」をきちんと入れて書いていますが。
例
・かすれた声で精一ぱい「に」叫びながら
・人一倍「に」敏感であった。
「走れメロス」
最近の文章には「に」がないセンテンスが多いです。上にある例は、最近の文章だといらない「に」です、というかほとんどつかわない「に」です。
僕は文章を書くときには、たいてい「に」をきちんと入れて書いていますが。
それとも、最近の文章は言文一致をつとめて来た結果、会話にでてこない「に」はいらない!ってことなんですか?
ちなみに、ネット上にある著作権切れの作品朗読を聞いていました。
そしたら、「に」「に」と耳に障ったので、この質問を考えました。
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もんのすごい難問で、Yahoo!知恵袋で扱う問題ではないと思う。ご指名のようなんで書いてみる。
まずこの「ニ」の意味。
■Web辞書(『大辞林』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%AB&dtype=0&dname=0ss&stype=1&index=114785000000&pagenum=11
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に
1 (格助)
〔補説〕 上代から用いられている語で、動作・作用が行われ、また存在する、時間的・空間的な位置や範囲を示すのが本来の用法
[10] 動作・状態の行われ方・あり方を表す。
左右―ゆれる
ぴかぴか―光る
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ちなみに『大辞泉』の説明もほぼ同じ。当然のことながら、例文は違う。
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%AB&dtype=0&stype=1&dname=0na&pagenum=11
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【1】[格助]名詞、名詞に準じる語、動詞の連用形・連体形などに付く。
8 動作・作用の行われ方、その状態のあり方を表す。「直角―交わる」「会わず―帰る」
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手元の『広辞林』をひく。
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八 動作・作用の行なわれ方、その状態のあり方を表わす。
「高山植物がすきまもなし―咲き乱れている」
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「ニ」の省略に関しては何も書いていない。
あげられた例文のうち、「ニ」を省略できるのは「ぴかぴかニ光る」だけだろう。これはむしろ「ニ」がない形か「ぴかぴかト」のほうが自然な気がする。つまり「ニ」を省略しているのではなく、「ぴかぴかト」の「ト」を省略したと考えるほうが素直。
同じようでも「ぴかぴかニする」なら「ニ」は省略できない。
どういうときに「ニ」が省略できるか。言葉の神様に訊かないとわからないような難問だと思う。気が重い(泣)。
■「ト」の場合
まず思い出したのは「ト」の話。
【日本語アレコレ──「自然に」と「自然と」の違い1 】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-305.html
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『大辞泉』===========================
[格助]名詞、名詞的な語、副詞などに付く。
1 動作をともにする相手、または動作・関係の対象を表す。「子供―野球を見に行く」「友達―けんかをした」「苦痛―闘う」
「しぐれ降る暁月夜紐解かず恋ふらむ君―居(を)らましものを」〈万・二三〇六〉
2 (文や句をそのまま受けて)動作・作用・状態の内容を表す。引用の「と」。「正しい―いう結論に達する」
「名をばさかきの造(みやつこ)―なむいひける」〈竹取〉
3 比較の基準を表す。「君の―は比べものにならない」「昔―違う」
「思ふこといはでぞただにやみぬべき我―ひとしき人しなければ」〈伊勢・一二四〉
4 動作・状態などの結果を表す。「有罪―決定した」「復讐(ふくしゅう)の鬼―化した」
「年をへて花の鏡―なる水は散りかかるをやくもるといふらむ」〈古今・春上〉
5 (副詞に付いて新たな副詞をつくり)ある状態を説明する意を表す。「そろそろ―歩く」「そよそよ―風が吹く」
「ほのぼの―春こそ空に来にけらし天のかぐ山霞たなびく」〈新古今・春上〉
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「自然と」の「と」は上記の「5」だろう。手元の『広辞林』だと、同じことを「状態を強めていう」としている。「そろそろ」「そろそろと」のように「と」があってもなくてもどちらもアリってことらしい。
そう考えれば、「自然」も「自然と」もアリ。厳密に言うと、「自然と」は1語の副詞ではなく、副詞の「自然」に助詞の「と」がついたと考えるべきではないだろうか。まあ、1語でも2語でも大きな違いはないけど。
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「ト」の省略に関しては、↑で説明できていると思う。
したがって、「ぴかぴかト光る」「ぴかぴか光る」のどちらもアリ。
「ニ」もほぼ同様と考えていいのではないか。
ただ、「ニ」は形容動詞の話がからむので、ちょっとややこしい。
■形容動詞の活用の「ニ」
1) 一生懸命ニ走る
2) 懸命ニ走る
同じように見えても、1)のニは省略できて、2)のニは省略できない。
1)は「一生懸命+ニ」だけど、2)は形容動詞「懸命だ」の連用形「懸命ニ」だから(だと思う)。
名詞「懸命」+助詞「ニ」という解釈をすれば省略も可能? そう思う人は省略してください。当方はしません。
■個人的な語感で判断する「ニ」の省略の是非
…………………分類………「ニ」の省略……個人的な語感
精一杯ニ………名詞+ニ…………○…………「ニ」はつけない
人一倍ニ………名詞+ニ…………○…………「ニ」はつけない
一所懸命ニ……名詞+ニ…………○…………両方アリ
懸命ニ…………形容詞……………X…………「ニ」は必須
ぴかぴかニ……副詞………………○…………「ニ」はつけない
これが、歴史的に昔はつけていまはつけないか否かは、膨大な文献にあたればわかるかもしれない。
でもそれは学者の仕事だろう。
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