「ガ、」の修辞学〈2〉
下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2020.html
日本語アレコレの索引(日々増殖中)【8】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1821744441&owner_id=5019671
mixi日記2012年04月23日から
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1839875398&owner_id=5019671
下記の続き。
【「ガ、」の修辞学】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-915.html
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1364668143&owner_id=5019671
Yahoo!知恵袋の質問に答えたところ、【補足】の質問をいただいた。
いろいろ考えるところがあり、改めて「曖昧のガ、」について考えてみたい。
【やっぱり曖昧接続の「ガ」が分かりません……。】
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1285892422
================================引用開始
2つ目は微妙です、とはどういうことです? ブログでは『逆接・順接のどちらにもとれる「曖昧のガ、」』と記載。私も2つ目の「ガ」を、逆接・順接のどちらにもとれる「曖昧のガ、」だと、理解し納得しました。
ブログを拝見して納得がいかないことは→意味的には逆接の「曖昧のガ、」とか意味的には順接の「曖昧のガ、」という概念です。意味的に逆接とか順接とか分かれば、それはもう「曖昧のガ、」ではなく、逆接であり順接だと。
================================引用終了
基本的な考え方として、接続助詞の「ガ、」の働きは「逆接のガ、」と「順接のガ、」の2種類に大別できることを前提にしたい。この考え方している書籍を目にすることがある。気になる人は↑の【「ガ、」の修辞学】を参照してほしい。あるところで「逆接」や「順接」は術語(専門用語)だという指摘を受けたが、当方は専門家ではないのでそんなに厳密な意味では使っていない。フツーの辞書に出ている程度の意味で使っている。
ただ、細かく見ていくと、文脈によって「逆接」にも「順接」にもなるものがある。これは「曖昧のガ、」などと呼ばれる。
通常はこの3分法でいいと思う。
当方は書きかえ案を考えることを重視しているので、機械的な書きかえのできないものも「曖昧のガ、」にしている。【「ガ、」の修辞学】では暫定的に「曖昧のガ、」を3つに分けている。こう考えたほうが「ガ、」のもつ曖昧さを排除してわかりやすい文に書きかえるにはわかりやすと思うからだ。
……この分類法自体を見直す必要があるかもしれない。
【補足】の質問について考えてみる。質問は2つあるようだ。
質問1)2つ目は微妙です、とはどういうことです?
「2つ目」とは、【「ガ、」の修辞学】で引用した下記の例文の「使われるガ、」のこと。
「彼は頭はよいガ、走るのも速い」というような表現がよく使われるガ、この
「ガ、」は明確な意味を持たない。
これは質問者の理解で間違いない。〈逆接・順接のどちらにもとれる「曖昧のガ、」〉だろう。ただ、「。しかし、」にはできても「。そして、」にはしにくい。【「ガ、」の修辞学】にも下記のように書いた。
================================引用開始
「。そして、」に書きかえるとヘンになる。「。」に書きかえるなら、少しマシかもしれない。次のように書きかえれば、もう少しマシになる。
【修正案】
「彼は頭はよいガ、走るのも速い」というような表現でよく使われる「ガ、」は、明確な意味を持たない。
================================引用終了
書きかえの法則から外れる(理由は不明)ので、〈逆接・順接のどちらにもとれる「曖昧のガ、」〉とはちょっと違うと判断したので「微妙」という書き方をした。
3分法なら、「曖昧のガ、」で問題はない。
質問2)意味的には逆接の「曖昧のガ、」とか意味的には順接の「曖昧のガ、」という概念です。意味的に逆接とか順接とか分かれば、それはもう「曖昧のガ、」ではなく、逆接であり順接だと。
これも質問者の理解で間違いない。「分類」を重視するなら、そのとおりだと思う。
ただし、「書きかえ方」を重視するなら、機械的に「。しかし、」にかえられる「逆接のガ、」と、〈意味的には逆接の「曖昧のガ、」〉は分けて考えるほうがいい気がする。〈意味的には順接の「曖昧のガ、」〉も同様。
●Web辞書『大辞林』の記述から
基本に戻って、接続助詞の「ガ」について辞書を確認する。『大辞泉』の記述は言葉足らずの気がするので、『大辞林』をひく。
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%8C&dtype=0&dname=0ss&stype=1&index=102907300000&pagenum=1
================================引用開始
が
2 (接助)
1 の用法から転じてできたもので、院政時代から見られる。現代語では終止形、古語では連体形に、それぞれ接続する。
[1] 前置き・補足的説明などを後に結びつける。
次に予算の件です―、重要なので今日中に決めてください
御存じのことと思います―、一応説明します
[2] 二つの事柄を並べあげる場合、時間的前後・共存など、それらの時間的関係を表す。
驚いて外に飛び出した―、何事もなかった
しばらく見ていた―、ふっといなくなった
[3] 対比的な関係にある二つの事柄を結びつけ、既定の逆接条件を表す。けれども。
学校へ行った―、授業はなかった
君の好意はうれしい―、今回は辞退する
[4] どんな事柄でもかまわない、の意を表す。「…うが」「…まいが」の形をとる。
どうなろう―知ったことではない
行こう―行くまい―、君の勝手だ
================================引用終了
[4]はちょっと違う用法なのでパス。
[1]~[3]の例文を逆接と順接の観点で見てみる。「逆接・順接のどちらにもとれる」ものを「逆接or順接」と表記する。
[1]-1 次に予算の件です―、重要なので今日中に決めてください→順接
[1]-2 御存じのことと思います―、一応説明します→逆接
[2]-1 驚いて外に飛び出した―、何事もなかった→逆接
[2]-2 しばらく見ていた―、ふっといなくなった→逆接or順接
[3]-1 学校へ行った―、授業はなかった→逆接
[3]-2 君の好意はうれしい―、今回は辞退する→逆接
ちょっと意外に思ったことがある。
まず、[1]の意味で逆接があったこと。このテの「前置き」は順接が多い印象だった。[1]-1が典型だし、[1]-2も「御存じのことと思いますガ、昨年の業績は最悪でした」なら、ありがちな(前置きの)順接になる。
いままで確認している逆接or順接は、かなり特殊な形だと思っていた。[2]-2を見るに、逆接or順接の例はほかにもありそうだ。
[3]の例文はちょっと疑問。これって「対比的な関係」なんだろうか。「対比的な関係」の典型は「昨日は雨だったガ、今日は晴天だ」あたりでは。
●「ガ、」の種類の判定法
接続助詞の「ガ、」が逆接か順接かを判断するのに、当方は安直な方法を使っている。
「。しかし、」にかえられるもの→逆接
「。そして、」にかえられるもの→順接
この判定法で大半の例に対応できる。
[2]-2が逆接&順接であることも確認できる。どちらになるのかは、例によって文脈しだいなんだろう。ただ、この場合、それぞれがふさわしい文脈が想定しにくい気もする(詳細は後述)。
しばらく見ていた。しかし、ふっといなくなった
しばらく見ていた。そして、ふっといなくなった
「逆接のガ、」でも「順接のガ、」でもないものを、当方は「曖昧のガ、」と呼んでいる。接続助詞の「ガ、」の大半は「逆接のガ、」か「順接のガ、」で、まれに「曖昧のガ、」があるってことだと思う。「曖昧のガ、」のうちでわかりやすいのが逆接or順接の「ガ、」。
この3分法でいいと思うが、厳密に言うとどれにも属さない例がある。
↑の例文で言うと、[1]-1。ここで使われている「ガ、」は、意味的には順接なのだが「。そして、」にはしにくい。これを当方は〈意味的には順接の「曖昧のガ、」〉と呼んでいる。同様に〈意味的には逆接の「曖昧のガ、」〉もある。このあたりは【「ガ、」の修辞学】に書いた。こちらはピンポイント(これで?)なので転載する。
================================引用開始
1)意味的には逆接の「曖昧のガ、」
【原文1】
考えがまとまりきっていないガ、書いてみよう。
この「ガ、」が「順接のガ、」ではないことは明らかだ。じゃあ「逆接のガ、」と考えて分割してみよう。
【書きかえ文1】
考えがまとまりきっていない。しかし、書いてみよう。
分割した2つの文が短すぎて不自然に感じられるので、「逆接のガ、」と考えるのも無理がありそうだ。ただし、意味的には「逆接のガ、」とほとんどかわらないことは、少し書きかえるとハッキリする。
【原文2】
この問題に関しては考えがまとまりきっていないガ、現段階でわかっている範囲のことを書いてみよう。
【書きかえ文2】
この問題に関しては考えがまとまりきっていない。しかし、現段階でわかっている範囲のことを書いてみよう。
このように「ガ、」の前後が長くなると、フツーの「逆接のガ、」になる。どうやら、「ガ、」の前か後ろかが短いと、「逆接のガ、」のように分割すると不自然になるらしい。文全体はソコソコ長くても、「ガ、」の前か後ろのどちらか一方が短いと、「逆接のガ、」が「曖昧のガ、」になってしまう。次の【原文3】と【原文4】で確認してほしい。
【原文3】(「ガ、」の後ろが短くて「曖昧のガ、」になっている例)
この問題に関してはいろいろな例外もあり、単純に見えて意外に複雑なので考えがまとまりきっていないガ、書いてみよう。
【原文4】(「ガ、」の前が短くて「曖昧のガ、」になっている例)
考えがまとまりきっていないガ、この問題に関していくつかの例を示しながら現段階でわかっている範囲のことを書いてみよう。
ただし、この【原文3】と【原文4】は人工的に作った「例」で、実例はあまり見かけない。数少ない実例に出合ったら、文全体があまりにも長くなるときだけ、書きかえればいい。「ガ、」の部分で分割して、短いほうに少し言葉を加えればいいだろう。
================================引用終了
●gooの「類語辞書」の記述
http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/thsrs/17237/m0u/
================================引用開始
〔が〕▽(1)雨が降ってきましたが、試合は続行します▽(2)天気はよいが、風が冷たい▽(3)ここだけの話だが、彼は秋に結婚するそうだよ
【2】「が」は、一般にもっぱら逆接を表わす接続助詞のように思われがちであるが、接続助詞の「が」は格助詞の「が」から発達したもので、本来は順接とか逆接には関わりのない接続関係を表わす。したがって、現代語でも逆接の確定条件(例文(1))のように、前件と後件が特別な因果関係にあることを表わす用法だけではなく、前件と後件とを対比・対照させていることを表わす用法(対比・対照。例文(2))や、後件の断り書きのように前件を提示して後件に接続させる用法(単純接続。例文(3))などがある。そのほかにも、「顔もいいが性格もいい」のような順接の並列や、「課長でしたらもう帰りましたが」のような終助詞的な用法もある。
================================引用終了
終助詞を別にすると、「ガ、」には4つの働きがあるとしている。
↑の『大辞林』の分類と比べると微妙に食い違って気持ちが悪い。やっぱりちゃんとした文法辞典を調べたほうがいいのかな?
見比べると、gooの「類語辞書」の分類のほうが適切な気がするので、『大辞林』の例文をこちらに合わせる。
A逆接の確定条件
A-1 雨が降ってきましたガ、試合は続行します→逆接
[1]-2 御存じのことと思いますガ、一応説明します→逆接
[3]-1 学校へ行ったガ、授業はなかった→逆接(対比ではないだろう)
[3]-2 君の好意はうれしいガ、今回は辞退する→逆接(対比ではないだろう)
[2]-1 驚いて外に飛び出したガ、何事もなかった→逆接
B対比・対照
B-1 天気はよいガ、風が冷たい→逆接
C単純接続
C-1 ここだけの話だガ、彼は秋に結婚するそうだよ→順接
[1]-1 次に予算の件ですガ、重要なので今日中に決めてください→順接
[2]-2 しばらく見ていたガ、ふっといなくなった→逆接or順接
D順接の並列
D-1 顔もいいガ性格もいい→逆接or順接
分類の名称が本当に適切か否か、個々の例文の分類が本当に適切か否か、当方には見当もつかない。それは学者の仕事だろう。当方の主目的は、文章を書くときに「ガ、」の曖昧さを排除すること。
「A逆接の確定条件」と「B対比・対照」の例文は、どれも「。しかし、」にかえられるから、「逆接のガ、」。
「C単純接続」は、通常は順接。前置きなどに出てくることが多い。ただ、[2]-2がなぜ逆接or順接になるのかわからない。
「D順接の並列」は呼称がヘンだろう。これは【「ガ、」の修辞学】で見た〈彼は頭はよいガ、走るのも速い〉と同様で、逆接or順接の形。順接になるか逆接になるかは文脈次第だと思う。
================================引用開始
1)彼は頭はよいガ、→逆接・順接のどちらにもとれる「曖昧のガ、」
「彼は頭はよい。しかし、走るのも速い」の意味にもとれるし、「彼は頭はよい。そして、走るのも速い」ともとれる。どっちの意味になるかは文脈しだいだ。たとえば、「頭のよい人はたいてい運動が苦手だ」みたいな流れだったら、「逆接のガ、」になる。
一方、「天は二物を与えず、が当てはまらない人もいる」みたいな流れなら、「順接のガ、」になる。ただし、その場合はこんな文を書くヤツが悪い。順接の意味なら、「よいガ、」を「よく、」とか「よいうえに、」ぐらいにするほうがずっと自然だ。その場合は「頭は」ではなく、「頭も」のほうが自然かもしれない。
================================引用終了
課題がいくつか残ってしまった。ネットで閲覧できる辞書類の限界なのかもしれない。こういうことを細かく分析するがするほど学者の仕事に近づき、本来の目的から離れるような……。
課題1)「昨日は雨だったガ、今日は晴天だ」は逆接or順接なのかもしれない
※「対比・対照」は基本的には逆接だが、少し特殊な文脈をつくれば順接にできることもある。
課題2)「対比・対照」と「並列」っはどう違いのか
※逆接なら「対比・対照」で、順接なら「並列」なのかもしれない。
課題3)[2]-2がなぜ逆接or順接になるのか
課題4)分類のしかたの再検討
課題5)あのとき話した例の書類だけど、見つからないの
※「順接のダケド、」もあるのね。これを「ガ、」にすると、接続助詞ではなく格助詞になりそう。先祖帰り?
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mixi日記2012年04月23日から
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下記の続き。
【「ガ、」の修辞学】
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Yahoo!知恵袋の質問に答えたところ、【補足】の質問をいただいた。
いろいろ考えるところがあり、改めて「曖昧のガ、」について考えてみたい。
【やっぱり曖昧接続の「ガ」が分かりません……。】
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1285892422
================================引用開始
2つ目は微妙です、とはどういうことです? ブログでは『逆接・順接のどちらにもとれる「曖昧のガ、」』と記載。私も2つ目の「ガ」を、逆接・順接のどちらにもとれる「曖昧のガ、」だと、理解し納得しました。
ブログを拝見して納得がいかないことは→意味的には逆接の「曖昧のガ、」とか意味的には順接の「曖昧のガ、」という概念です。意味的に逆接とか順接とか分かれば、それはもう「曖昧のガ、」ではなく、逆接であり順接だと。
================================引用終了
基本的な考え方として、接続助詞の「ガ、」の働きは「逆接のガ、」と「順接のガ、」の2種類に大別できることを前提にしたい。この考え方している書籍を目にすることがある。気になる人は↑の【「ガ、」の修辞学】を参照してほしい。あるところで「逆接」や「順接」は術語(専門用語)だという指摘を受けたが、当方は専門家ではないのでそんなに厳密な意味では使っていない。フツーの辞書に出ている程度の意味で使っている。
ただ、細かく見ていくと、文脈によって「逆接」にも「順接」にもなるものがある。これは「曖昧のガ、」などと呼ばれる。
通常はこの3分法でいいと思う。
当方は書きかえ案を考えることを重視しているので、機械的な書きかえのできないものも「曖昧のガ、」にしている。【「ガ、」の修辞学】では暫定的に「曖昧のガ、」を3つに分けている。こう考えたほうが「ガ、」のもつ曖昧さを排除してわかりやすい文に書きかえるにはわかりやすと思うからだ。
……この分類法自体を見直す必要があるかもしれない。
【補足】の質問について考えてみる。質問は2つあるようだ。
質問1)2つ目は微妙です、とはどういうことです?
「2つ目」とは、【「ガ、」の修辞学】で引用した下記の例文の「使われるガ、」のこと。
「彼は頭はよいガ、走るのも速い」というような表現がよく使われるガ、この
「ガ、」は明確な意味を持たない。
これは質問者の理解で間違いない。〈逆接・順接のどちらにもとれる「曖昧のガ、」〉だろう。ただ、「。しかし、」にはできても「。そして、」にはしにくい。【「ガ、」の修辞学】にも下記のように書いた。
================================引用開始
「。そして、」に書きかえるとヘンになる。「。」に書きかえるなら、少しマシかもしれない。次のように書きかえれば、もう少しマシになる。
【修正案】
「彼は頭はよいガ、走るのも速い」というような表現でよく使われる「ガ、」は、明確な意味を持たない。
================================引用終了
書きかえの法則から外れる(理由は不明)ので、〈逆接・順接のどちらにもとれる「曖昧のガ、」〉とはちょっと違うと判断したので「微妙」という書き方をした。
3分法なら、「曖昧のガ、」で問題はない。
質問2)意味的には逆接の「曖昧のガ、」とか意味的には順接の「曖昧のガ、」という概念です。意味的に逆接とか順接とか分かれば、それはもう「曖昧のガ、」ではなく、逆接であり順接だと。
これも質問者の理解で間違いない。「分類」を重視するなら、そのとおりだと思う。
ただし、「書きかえ方」を重視するなら、機械的に「。しかし、」にかえられる「逆接のガ、」と、〈意味的には逆接の「曖昧のガ、」〉は分けて考えるほうがいい気がする。〈意味的には順接の「曖昧のガ、」〉も同様。
●Web辞書『大辞林』の記述から
基本に戻って、接続助詞の「ガ」について辞書を確認する。『大辞泉』の記述は言葉足らずの気がするので、『大辞林』をひく。
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%8C&dtype=0&dname=0ss&stype=1&index=102907300000&pagenum=1
================================引用開始
が
2 (接助)
1 の用法から転じてできたもので、院政時代から見られる。現代語では終止形、古語では連体形に、それぞれ接続する。
[1] 前置き・補足的説明などを後に結びつける。
次に予算の件です―、重要なので今日中に決めてください
御存じのことと思います―、一応説明します
[2] 二つの事柄を並べあげる場合、時間的前後・共存など、それらの時間的関係を表す。
驚いて外に飛び出した―、何事もなかった
しばらく見ていた―、ふっといなくなった
[3] 対比的な関係にある二つの事柄を結びつけ、既定の逆接条件を表す。けれども。
学校へ行った―、授業はなかった
君の好意はうれしい―、今回は辞退する
[4] どんな事柄でもかまわない、の意を表す。「…うが」「…まいが」の形をとる。
どうなろう―知ったことではない
行こう―行くまい―、君の勝手だ
================================引用終了
[4]はちょっと違う用法なのでパス。
[1]~[3]の例文を逆接と順接の観点で見てみる。「逆接・順接のどちらにもとれる」ものを「逆接or順接」と表記する。
[1]-1 次に予算の件です―、重要なので今日中に決めてください→順接
[1]-2 御存じのことと思います―、一応説明します→逆接
[2]-1 驚いて外に飛び出した―、何事もなかった→逆接
[2]-2 しばらく見ていた―、ふっといなくなった→逆接or順接
[3]-1 学校へ行った―、授業はなかった→逆接
[3]-2 君の好意はうれしい―、今回は辞退する→逆接
ちょっと意外に思ったことがある。
まず、[1]の意味で逆接があったこと。このテの「前置き」は順接が多い印象だった。[1]-1が典型だし、[1]-2も「御存じのことと思いますガ、昨年の業績は最悪でした」なら、ありがちな(前置きの)順接になる。
いままで確認している逆接or順接は、かなり特殊な形だと思っていた。[2]-2を見るに、逆接or順接の例はほかにもありそうだ。
[3]の例文はちょっと疑問。これって「対比的な関係」なんだろうか。「対比的な関係」の典型は「昨日は雨だったガ、今日は晴天だ」あたりでは。
●「ガ、」の種類の判定法
接続助詞の「ガ、」が逆接か順接かを判断するのに、当方は安直な方法を使っている。
「。しかし、」にかえられるもの→逆接
「。そして、」にかえられるもの→順接
この判定法で大半の例に対応できる。
[2]-2が逆接&順接であることも確認できる。どちらになるのかは、例によって文脈しだいなんだろう。ただ、この場合、それぞれがふさわしい文脈が想定しにくい気もする(詳細は後述)。
しばらく見ていた。しかし、ふっといなくなった
しばらく見ていた。そして、ふっといなくなった
「逆接のガ、」でも「順接のガ、」でもないものを、当方は「曖昧のガ、」と呼んでいる。接続助詞の「ガ、」の大半は「逆接のガ、」か「順接のガ、」で、まれに「曖昧のガ、」があるってことだと思う。「曖昧のガ、」のうちでわかりやすいのが逆接or順接の「ガ、」。
この3分法でいいと思うが、厳密に言うとどれにも属さない例がある。
↑の例文で言うと、[1]-1。ここで使われている「ガ、」は、意味的には順接なのだが「。そして、」にはしにくい。これを当方は〈意味的には順接の「曖昧のガ、」〉と呼んでいる。同様に〈意味的には逆接の「曖昧のガ、」〉もある。このあたりは【「ガ、」の修辞学】に書いた。こちらはピンポイント(これで?)なので転載する。
================================引用開始
1)意味的には逆接の「曖昧のガ、」
【原文1】
考えがまとまりきっていないガ、書いてみよう。
この「ガ、」が「順接のガ、」ではないことは明らかだ。じゃあ「逆接のガ、」と考えて分割してみよう。
【書きかえ文1】
考えがまとまりきっていない。しかし、書いてみよう。
分割した2つの文が短すぎて不自然に感じられるので、「逆接のガ、」と考えるのも無理がありそうだ。ただし、意味的には「逆接のガ、」とほとんどかわらないことは、少し書きかえるとハッキリする。
【原文2】
この問題に関しては考えがまとまりきっていないガ、現段階でわかっている範囲のことを書いてみよう。
【書きかえ文2】
この問題に関しては考えがまとまりきっていない。しかし、現段階でわかっている範囲のことを書いてみよう。
このように「ガ、」の前後が長くなると、フツーの「逆接のガ、」になる。どうやら、「ガ、」の前か後ろかが短いと、「逆接のガ、」のように分割すると不自然になるらしい。文全体はソコソコ長くても、「ガ、」の前か後ろのどちらか一方が短いと、「逆接のガ、」が「曖昧のガ、」になってしまう。次の【原文3】と【原文4】で確認してほしい。
【原文3】(「ガ、」の後ろが短くて「曖昧のガ、」になっている例)
この問題に関してはいろいろな例外もあり、単純に見えて意外に複雑なので考えがまとまりきっていないガ、書いてみよう。
【原文4】(「ガ、」の前が短くて「曖昧のガ、」になっている例)
考えがまとまりきっていないガ、この問題に関していくつかの例を示しながら現段階でわかっている範囲のことを書いてみよう。
ただし、この【原文3】と【原文4】は人工的に作った「例」で、実例はあまり見かけない。数少ない実例に出合ったら、文全体があまりにも長くなるときだけ、書きかえればいい。「ガ、」の部分で分割して、短いほうに少し言葉を加えればいいだろう。
================================引用終了
●gooの「類語辞書」の記述
http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/thsrs/17237/m0u/
================================引用開始
〔が〕▽(1)雨が降ってきましたが、試合は続行します▽(2)天気はよいが、風が冷たい▽(3)ここだけの話だが、彼は秋に結婚するそうだよ
【2】「が」は、一般にもっぱら逆接を表わす接続助詞のように思われがちであるが、接続助詞の「が」は格助詞の「が」から発達したもので、本来は順接とか逆接には関わりのない接続関係を表わす。したがって、現代語でも逆接の確定条件(例文(1))のように、前件と後件が特別な因果関係にあることを表わす用法だけではなく、前件と後件とを対比・対照させていることを表わす用法(対比・対照。例文(2))や、後件の断り書きのように前件を提示して後件に接続させる用法(単純接続。例文(3))などがある。そのほかにも、「顔もいいが性格もいい」のような順接の並列や、「課長でしたらもう帰りましたが」のような終助詞的な用法もある。
================================引用終了
終助詞を別にすると、「ガ、」には4つの働きがあるとしている。
↑の『大辞林』の分類と比べると微妙に食い違って気持ちが悪い。やっぱりちゃんとした文法辞典を調べたほうがいいのかな?
見比べると、gooの「類語辞書」の分類のほうが適切な気がするので、『大辞林』の例文をこちらに合わせる。
A逆接の確定条件
A-1 雨が降ってきましたガ、試合は続行します→逆接
[1]-2 御存じのことと思いますガ、一応説明します→逆接
[3]-1 学校へ行ったガ、授業はなかった→逆接(対比ではないだろう)
[3]-2 君の好意はうれしいガ、今回は辞退する→逆接(対比ではないだろう)
[2]-1 驚いて外に飛び出したガ、何事もなかった→逆接
B対比・対照
B-1 天気はよいガ、風が冷たい→逆接
C単純接続
C-1 ここだけの話だガ、彼は秋に結婚するそうだよ→順接
[1]-1 次に予算の件ですガ、重要なので今日中に決めてください→順接
[2]-2 しばらく見ていたガ、ふっといなくなった→逆接or順接
D順接の並列
D-1 顔もいいガ性格もいい→逆接or順接
分類の名称が本当に適切か否か、個々の例文の分類が本当に適切か否か、当方には見当もつかない。それは学者の仕事だろう。当方の主目的は、文章を書くときに「ガ、」の曖昧さを排除すること。
「A逆接の確定条件」と「B対比・対照」の例文は、どれも「。しかし、」にかえられるから、「逆接のガ、」。
「C単純接続」は、通常は順接。前置きなどに出てくることが多い。ただ、[2]-2がなぜ逆接or順接になるのかわからない。
「D順接の並列」は呼称がヘンだろう。これは【「ガ、」の修辞学】で見た〈彼は頭はよいガ、走るのも速い〉と同様で、逆接or順接の形。順接になるか逆接になるかは文脈次第だと思う。
================================引用開始
1)彼は頭はよいガ、→逆接・順接のどちらにもとれる「曖昧のガ、」
「彼は頭はよい。しかし、走るのも速い」の意味にもとれるし、「彼は頭はよい。そして、走るのも速い」ともとれる。どっちの意味になるかは文脈しだいだ。たとえば、「頭のよい人はたいてい運動が苦手だ」みたいな流れだったら、「逆接のガ、」になる。
一方、「天は二物を与えず、が当てはまらない人もいる」みたいな流れなら、「順接のガ、」になる。ただし、その場合はこんな文を書くヤツが悪い。順接の意味なら、「よいガ、」を「よく、」とか「よいうえに、」ぐらいにするほうがずっと自然だ。その場合は「頭は」ではなく、「頭も」のほうが自然かもしれない。
================================引用終了
課題がいくつか残ってしまった。ネットで閲覧できる辞書類の限界なのかもしれない。こういうことを細かく分析するがするほど学者の仕事に近づき、本来の目的から離れるような……。
課題1)「昨日は雨だったガ、今日は晴天だ」は逆接or順接なのかもしれない
※「対比・対照」は基本的には逆接だが、少し特殊な文脈をつくれば順接にできることもある。
課題2)「対比・対照」と「並列」っはどう違いのか
※逆接なら「対比・対照」で、順接なら「並列」なのかもしれない。
課題3)[2]-2がなぜ逆接or順接になるのか
課題4)分類のしかたの再検討
課題5)あのとき話した例の書類だけど、見つからないの
※「順接のダケド、」もあるのね。これを「ガ、」にすると、接続助詞ではなく格助詞になりそう。先祖帰り?
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