よくある誤用16〜20
下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2020.html
日本語アレコレの索引(日々増殖中)【9】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1854387407&owner_id=5019671
mixi日記2012年10月05日から
【よくある誤用16──泣いたり笑ったり 爆笑 失笑 号泣】
ここ数年、誤用と指摘する意見をよく目にするのに、いっこうに誤用が減らない例。こういうのは、あんまり書きたくなかったんだけど……。
爆笑
正 大勢の人が一斉に笑うこと
誤 一人で大笑いすること
では「一人で大笑いすること」はどう言えばいいのか。「大笑」はちょっと古い感じがあるので、「大笑い」くらいしかないような気がします。「爆笑」に比べるとインパクトが弱いような……。
「大爆笑」は強調か重言か……どっちでしょうね(笑)。
失笑
正 こらえ切れず吹き出して笑う
誤 笑いも出ないくらいあきれる
「正」と「誤」の意味は先日発表された平成23年度「国語に関する世論調査」から引用しました。
「笑いも出ないくらいあきれる」なんて解釈があることに驚きました。「笑いを失う」と考えれば、そうとれなくもありませんか。失格/失恋/失効……の仲間ですか?
当方の語感では、「失笑する」は「こらえ切れず苦笑してしまう」くらいの意味。「吹き出し」はしません。
詳しくは下記をご参照ください。
【平成23年度「国語に関する世論調査」に対する疑問】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2484.html
号泣
正 大声をあげて泣く
誤 激しく泣く
■Web辞書『大辞泉』から
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=ごうきゅう&stype=0&dtype=0
================================引用開始
ごう‐きゅう〔ガウキフ〕【号泣】
[名](スル)大声をあげて泣くこと。泣き叫ぶこと。「遺体にとりすがって―する」
◆文化庁が発表した平成22年度「国語に関する世論調査」では、本来の意味である「大声をあげて泣く」で使う人が34.1パーセント、間違った意味「激しく泣く」で使う人が48.3パーセントという逆転した結果が出ている。
================================引用終了
どんなに激しい泣き方でも、大声を出さないと「号泣」とは言わないようです。
「号」に「大声をあげる」という意味があるからでしょう。「号令」や「怒号」も大声を上げなければ感じが出ません。
事態はもっとヒドいことになっています。新聞のテレビ欄に「号泣」とある番組を見てください。「大声を上げる」どころか「激しく泣く」ですらなく、涙ぐんだくらいのことを「号泣」と呼んでいます。あれも一種の演出でしょうか。
【よくある誤用17── これもおなじみ 逆王手 王道 煮詰まる】
こういうありふれたことはあんまり書きたくないのですが……。
こういうのもアリでしょ。
逆王手
野球の日本シリーズの記事などでよく目にします。将棋用語なので、将棋を知らない人にこれがどうして誤用なのかを説明するのはむずかしいかも。言いかえがむずかしいので、このまま定着する気がします。
詳しくは下記をご参照ください。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1249845797
================================引用開始
よく見る「逆王手」の使い方は、本来の意味を考えれば間違いなく誤用です。
将棋用語の本来の「逆王手」は、「相手がかけてきた王手を防いだ手が、相手に対する王手になること」のはずです。つまり、自分に対する王手は解消されていなければなりません。
ただ、適切な言いかえがないので、広まっているようです。
意味を考えれば「追っかけリーチ」のほうが適切ですね。ただ、これが広まるかと言うと……。
================================引用終了
王道
正 近道
誤 正当派(のやり方)
「王」つながりでもうひとつ。「これぞ醤油ラーメンの王道」のような使われ方が広まっているようです。もう許容されている気もしますが、厳密には誤用です。「本道」とでも言いかえるのが正解でしょうか。
本来は「近道」の意味です。
http://www.sanabo.com/kotowaza/arc/2004/12/post_482.html
================================引用開始
学問に王道なし(がくもんにおうどうなし)
意 味: 学問をするのに安易な方法はない。
読 み: がくもんにおうどうなし
解 説: 「王道」は、安易な方法、楽な道。ユークリッドから幾何学を学んでいたエジプト王が、「もっと簡単に幾何学を学ぶ方法はないか」と尋ねたところ、「幾何学に王道なし」と答えたという故事による。
出 典:
英 語: There is no royal road to learning.
類義語: 学問に近道なし
================================引用終了
煮詰まる
正 もうすぐ結論が出る
誤 行き詰まる
これも「誤用集」の類いではおなじみかも。誤用が減らないのは、料理用語で「煮詰まる」があまりいい意味でないせいでしょうか。「行き詰まる」と言いかえれば、だいたい大丈夫です。
■Web辞書『大辞泉』から
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=煮詰まる&stype=0&dtype=0
================================引用開始
に‐つま・る【煮詰(ま)る】
[動ラ五(四)]
1 煮えて水分がなくなる。「汁が―・る」
2 討議・検討が十分になされて、結論が出る段階に近づく。「問題が―・ってきた」→生煮え
◆近頃では、若者に限らず、「煮詰まってしまっていい考えが浮かばない」のように「行き詰まる」の意味で使われることが多くなっている。本来は誤用。2の意は1900年代後半に始まるようである。「行き詰まる」の意は1950年ころの使用例があるが、広まったのは2000年ころからか。
文化庁が発表した平成19年度「国語に関する世論調査」では、「7日間に及ぶ議論で、計画が煮詰まった」を、本来の意味である「(議論や意見が十分に出尽くして)結論の出る状態になること」で使う人が56.7パーセント、間違った意味「(議論が行き詰まってしまって)結論が出せない状態になること」で使う人が37.3パーセントという結果が出ている。
================================引用終了
【よくある誤用18──ラ抜き言葉 的を射る/的を得る 全然+肯定形】
言葉の問題で、いろいろな説が飛びかって、結局何がなんだかわからなくなっているものがいろいろあります。Yahoo!知恵袋でもおなじみの質問ですが、ホントのところはどうなのでしょう。
ラ抜き言葉
現段階では×でしょう。「誤用」と言うよりも「現在の標準語においては規範的でない」くらいの考え方が妥当だと思います。「乱れ」か「変化」か、と言うと、現段階では「乱れ」と言うしかありません。
とくに若い世代は「ラ抜き言葉」のほうがフツーとか言う人が多いようです。話し言葉ならそれでいいと思います。ただし、「ラ抜き言葉」の是非を語るなら、お願いですから「ラ抜き言葉」がどういうものかくらいは調べてから主張してください。
次のうち、どれが「ラ抜き言葉」か理由をつけて説明できますか。
しゃべれる/掘れる/守れる/攻めれる
伝言板【板外編4】【「ラ抜き言葉」を防ぐ方法】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-96.html
的を射る/的を得る
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1155316126
================================引用開始
「的を射る」を「的を得る」とする人はけっこういるようです。
原因は2つ考えられます。
1)よく似た意味の「当を得る」との混同。
2)よく似た意味の「正鵠を得る」との混同。
1)に関しては「的を射る」と「当を得る」が一般的です。
2)に関しては、本来の形は「正鵠を得る」です(「正鵠を射る」でも間違いではないと思います)。
ここから類推して、「的を得る」でも間違いではない、と主張する人がいます。一理あるかもしれませんが、一般には「的を射る」です。
================================引用終了
下記のように、「的を得る」は誤用とは言い切れないという考え方もあるようです。ここまで掘り下げてしまうと「学説」って気もします。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1061145880
【BIFFの亜空間要塞】
http://biff1902.way-nifty.com/biff/2010/05/post-fc48.html
全然+肯定形
Yahoo!知恵袋に限っても、同様の質問が何度出たことか。
結論だけ書きましょう。
もともと肯定でも否定でも○だったようです。一時期肯定は×になりましたが、最近は「×とは言い切れない」という説が増加傾向にあるようです。
ただし、現在の出版・編集の現場では基本的に肯定は×です(微妙なものもありますが……)。
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1641.html
以下は要約。
全然+肯定形はいくつかに分けて考えるべきでしょう。
●「全然+フツーの言葉」
「全然明るい」「全然おいしい」など「全然」を「very」(とても)の意味で使うもの。これは基本的に×でしょう。
●「全然+否定的な肯定形」
「否定的な肯定形」は、形の上では肯定形だけど、意味が否定的な言葉のことです。
「全然ダメ」「全然違う」「全然別(のこと)」
この場合の「全然」は「まったく」の意味なのでOKでしょう。
●「全然+大丈夫系」
これがイチバン微妙です。「全然大丈夫」のほかに「全然平気」などがあります。
個人的には、異和感がなくなりつつあります。おそらく、「全然大丈夫」が「全然問題がない」とほぼ同じニュアンスになるからでは……。「全然OK」だとさらに得体がしれなくて……。
下記の2記事は読みごたえがあります。
【なぜ広まった? 「『全然いい』は誤用」という迷信 】
http://www.nikkei.com/article/DGXBZO37057770W1A201C1000000/
【「『全然いい』は誤用」という迷信 辞書が広めた? 】
http://www.nikkei.com/article/DGXBZO42854280R20C12A6000000/
ただし、ちゃんとした原稿を書く場合は話が「全然別」(やはりちょっとヘンだな)になります。「誤用」と思われる可能性のある言葉をわざわざ使う理由はありません。
「ラ抜き言葉」は使いません。
「的を射る」を使い、「的を得る」は使いません。
「全然+肯定形」は基本的に使いません。「全然+否定的な肯定形」は、ラフな文体ならこっそり使うかも。
【よくある誤用19──なんかカッコいいからね2 ひとつとない 押しも押されぬ 火蓋が切って落とされる】
文語調とまでは言えなくても、大袈裟な言い回しで誤用されやすい例をあげます。大袈裟な言い回しはカッコよく感じられるせいか、つい使ってしまう人が多いようです。ロクなことはないでの、やめておいたほうが無難です。
ひとつとない
この旅館には、同じ間取りの客室がひとつとない。
ガイドブックで見かける文章です。どこがおかしいかわかりますか。微妙な例とは思いながら、これは「ふたつとない」にするべきでしょう。「ふたつとない」にすれば間違いではなくなりますが、依然としてヘンです。「ふたつとない」は、「(世界中を探しても)めったに例がない」くらいの強い表現ですから、この程度のことで使うべきではありません。「この旅館は、すべての客室の間取りが違う。」ぐらいで十分でしょう。
ちなみに、「この旅館には、この客室と同じ間取りの客室がひとつとない」なら誤用ではないでしょう。「自分と同じ人間は世界中を探しても一人もいない」と同様の用法と言えそうです。誤用ではありませんが、こんな大袈裟な言い回しはオススメできません。
押しも押されぬ
ホームラン王になった彼は、押しも押されぬ4番打者に成長したといえるだろう。
正しい使い方は、「押しも押されもせぬ」です。 派生した形で「押しも押されもしない」も許容形でしょうか。同様の意味で「押すに押されぬ」という慣用句もあります。「押しも押されぬ」は、2つの慣用句の混淆によって生まれた誤用でしょう。
例文の場合、「押しも押されもせぬ」に直してもヘンな感じが残ります。「押しも押されもせぬ」という大袈裟な表現と、文末の「~だろう」がチグハグな印象になっているからです。「不動の4番打者」ぐらいで十分でしょう。「ホームラン王」になったほどの選手ですから、「球界を代表する4番打者」としてもよいかもしれません。
火蓋が切って落とされる
戦いの火蓋が切って落とされる。
「火蓋」は火縄銃の部品です。発砲するたびに「切って落とし」ていたら、ほかの人が拾って歩かなければなりません。正解は「火蓋が切られた」「火蓋を切った」です。
■Web辞書『大辞泉』から
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=ひぶた&dtype=0&dname=0na&stype=0&index=15636200&pagenum=1
================================引用開始
火蓋(ひぶた)を切・る
火蓋1を開いて点火の準備をする。転じて、戦いや競争を開始する。「選挙戦の―・る」
◆「幕を切って落とす」との混同で、「火蓋を切って落とす」とするのは誤り。
================================引用終了
【よくある誤用20──誤用ではないけれど…… なるほど 了解 参考にする】
誤用ではありませんが、使い方に注意が必要な言葉があります。目上の人にはNGと考えるべきでしょう。ピンと来ない人は、うんと年下にこういう言葉を使われたら、と考えてみてください。あるいは、学生が先生に対して言うシーンを想起してみてください。
なるほど
これはビジネスマナー系の雑学としておなじみかも。「なるほど マナー」あたりで検索すると、山ほどヒットします。無難なのは「おっしゃるとおりです」あたりでしょう。これが堅苦しく感じる場合は……。
「そうですね」も状況によってはアリでしょうが、これを乱発すると相当耳障りなのでご注意を。
了解
「了解」「了解です」だと相当軽い感じです。気軽な相手ならOKでしょうが、目上には×。「了解しました」「了解いたしました」だとさほど問題がない気もしますが、これも「了解 マナー」あたりで検索すると、山ほどヒットします。こうなると、使わないほうが無難でしょう。
かわりにどう言えばいいか。「承知しました」くらいでしょうか。「承知いたしました」「かしこまりました」のほうが丁寧ですが、少し堅苦しいような。
ただ、「承知しました」は某大ヒットドラマのせいで、一時期ギャグになっていました。もう使っても大丈夫でしょうか……。
参考にする
これは微妙かもしれません。「参考 マナー」あたりで検索しても、ほとんどヒットしません。これが×なのは、〈参考(考えの「足し」にする)なんて何様〉という理由のようです。「勉強になります」「ありがとうございます」などと言うほうが無難です。いろいろなケースが考えられるので、詳しくは下記を参考(考えの「足し」)にしてください。
以下は一部の抜粋(重言)。
================================引用開始
【1】答えを教えてもらった場合
学生「この問題は、a、b、cのどれが正解でしょうか」
先生「aだね。○○だから」
この場合、「参考にいたします」は不適。「勉強になります」のほうがいいだろう。「ありがとうございます」もアリ。
【2】アドバイスをもらった場合(重め)
学生「a、b、cのうち、私に合う進路はどれでしょうか」
先生「aだね。○○だから」
この場合、「勉強になります」はヘンだろう。「参考にいたします」にも異和感がある。無難なのは「ありがとうございます」かな。
【3】アドバイスをもらった場合(軽め)
学生「a、b、cの3色のうち、私にはどれが似合うでしょうか」
先生「aだね。○○だから」
こうなると、「勉強になります」(服飾科とかなら話は別だけど)はありえないだろう。「参考にいたします」にも異和感がある。無難なのは「ありがとうございます」かな。
【1】のように明確な答え(解答)をもらったときに「参考にいたします」は相当無礼。まさに〈参考(考えの「足し」にする)なんて何様〉ってことになる。
【2】や【3】のように、アドバイスや解答の「例」をもらったときなら「参考にいたします」でもおかしくないかもしれない。でも相手が先生なら、避けたほうが無難だろう。
================================引用終了
詳しくは下記をご参照ください。
【参考にします 参考にいたします 参考にさせていただきます なるほど】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2212.html
【20代が間違えやすい敬語──この記事大丈夫か? 相当ヘンだぞ!】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-596.html
バックナンバーは下記。
【お品書き】よくある誤用
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n118365
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2020.html
日本語アレコレの索引(日々増殖中)【9】
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mixi日記2012年10月05日から
【よくある誤用16──泣いたり笑ったり 爆笑 失笑 号泣】
ここ数年、誤用と指摘する意見をよく目にするのに、いっこうに誤用が減らない例。こういうのは、あんまり書きたくなかったんだけど……。
爆笑
正 大勢の人が一斉に笑うこと
誤 一人で大笑いすること
では「一人で大笑いすること」はどう言えばいいのか。「大笑」はちょっと古い感じがあるので、「大笑い」くらいしかないような気がします。「爆笑」に比べるとインパクトが弱いような……。
「大爆笑」は強調か重言か……どっちでしょうね(笑)。
失笑
正 こらえ切れず吹き出して笑う
誤 笑いも出ないくらいあきれる
「正」と「誤」の意味は先日発表された平成23年度「国語に関する世論調査」から引用しました。
「笑いも出ないくらいあきれる」なんて解釈があることに驚きました。「笑いを失う」と考えれば、そうとれなくもありませんか。失格/失恋/失効……の仲間ですか?
当方の語感では、「失笑する」は「こらえ切れず苦笑してしまう」くらいの意味。「吹き出し」はしません。
詳しくは下記をご参照ください。
【平成23年度「国語に関する世論調査」に対する疑問】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2484.html
号泣
正 大声をあげて泣く
誤 激しく泣く
■Web辞書『大辞泉』から
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=ごうきゅう&stype=0&dtype=0
================================引用開始
ごう‐きゅう〔ガウキフ〕【号泣】
[名](スル)大声をあげて泣くこと。泣き叫ぶこと。「遺体にとりすがって―する」
◆文化庁が発表した平成22年度「国語に関する世論調査」では、本来の意味である「大声をあげて泣く」で使う人が34.1パーセント、間違った意味「激しく泣く」で使う人が48.3パーセントという逆転した結果が出ている。
================================引用終了
どんなに激しい泣き方でも、大声を出さないと「号泣」とは言わないようです。
「号」に「大声をあげる」という意味があるからでしょう。「号令」や「怒号」も大声を上げなければ感じが出ません。
事態はもっとヒドいことになっています。新聞のテレビ欄に「号泣」とある番組を見てください。「大声を上げる」どころか「激しく泣く」ですらなく、涙ぐんだくらいのことを「号泣」と呼んでいます。あれも一種の演出でしょうか。
【よくある誤用17── これもおなじみ 逆王手 王道 煮詰まる】
こういうありふれたことはあんまり書きたくないのですが……。
こういうのもアリでしょ。
逆王手
野球の日本シリーズの記事などでよく目にします。将棋用語なので、将棋を知らない人にこれがどうして誤用なのかを説明するのはむずかしいかも。言いかえがむずかしいので、このまま定着する気がします。
詳しくは下記をご参照ください。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1249845797
================================引用開始
よく見る「逆王手」の使い方は、本来の意味を考えれば間違いなく誤用です。
将棋用語の本来の「逆王手」は、「相手がかけてきた王手を防いだ手が、相手に対する王手になること」のはずです。つまり、自分に対する王手は解消されていなければなりません。
ただ、適切な言いかえがないので、広まっているようです。
意味を考えれば「追っかけリーチ」のほうが適切ですね。ただ、これが広まるかと言うと……。
================================引用終了
王道
正 近道
誤 正当派(のやり方)
「王」つながりでもうひとつ。「これぞ醤油ラーメンの王道」のような使われ方が広まっているようです。もう許容されている気もしますが、厳密には誤用です。「本道」とでも言いかえるのが正解でしょうか。
本来は「近道」の意味です。
http://www.sanabo.com/kotowaza/arc/2004/12/post_482.html
================================引用開始
学問に王道なし(がくもんにおうどうなし)
意 味: 学問をするのに安易な方法はない。
読 み: がくもんにおうどうなし
解 説: 「王道」は、安易な方法、楽な道。ユークリッドから幾何学を学んでいたエジプト王が、「もっと簡単に幾何学を学ぶ方法はないか」と尋ねたところ、「幾何学に王道なし」と答えたという故事による。
出 典:
英 語: There is no royal road to learning.
類義語: 学問に近道なし
================================引用終了
煮詰まる
正 もうすぐ結論が出る
誤 行き詰まる
これも「誤用集」の類いではおなじみかも。誤用が減らないのは、料理用語で「煮詰まる」があまりいい意味でないせいでしょうか。「行き詰まる」と言いかえれば、だいたい大丈夫です。
■Web辞書『大辞泉』から
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=煮詰まる&stype=0&dtype=0
================================引用開始
に‐つま・る【煮詰(ま)る】
[動ラ五(四)]
1 煮えて水分がなくなる。「汁が―・る」
2 討議・検討が十分になされて、結論が出る段階に近づく。「問題が―・ってきた」→生煮え
◆近頃では、若者に限らず、「煮詰まってしまっていい考えが浮かばない」のように「行き詰まる」の意味で使われることが多くなっている。本来は誤用。2の意は1900年代後半に始まるようである。「行き詰まる」の意は1950年ころの使用例があるが、広まったのは2000年ころからか。
文化庁が発表した平成19年度「国語に関する世論調査」では、「7日間に及ぶ議論で、計画が煮詰まった」を、本来の意味である「(議論や意見が十分に出尽くして)結論の出る状態になること」で使う人が56.7パーセント、間違った意味「(議論が行き詰まってしまって)結論が出せない状態になること」で使う人が37.3パーセントという結果が出ている。
================================引用終了
【よくある誤用18──ラ抜き言葉 的を射る/的を得る 全然+肯定形】
言葉の問題で、いろいろな説が飛びかって、結局何がなんだかわからなくなっているものがいろいろあります。Yahoo!知恵袋でもおなじみの質問ですが、ホントのところはどうなのでしょう。
ラ抜き言葉
現段階では×でしょう。「誤用」と言うよりも「現在の標準語においては規範的でない」くらいの考え方が妥当だと思います。「乱れ」か「変化」か、と言うと、現段階では「乱れ」と言うしかありません。
とくに若い世代は「ラ抜き言葉」のほうがフツーとか言う人が多いようです。話し言葉ならそれでいいと思います。ただし、「ラ抜き言葉」の是非を語るなら、お願いですから「ラ抜き言葉」がどういうものかくらいは調べてから主張してください。
次のうち、どれが「ラ抜き言葉」か理由をつけて説明できますか。
しゃべれる/掘れる/守れる/攻めれる
伝言板【板外編4】【「ラ抜き言葉」を防ぐ方法】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-96.html
的を射る/的を得る
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1155316126
================================引用開始
「的を射る」を「的を得る」とする人はけっこういるようです。
原因は2つ考えられます。
1)よく似た意味の「当を得る」との混同。
2)よく似た意味の「正鵠を得る」との混同。
1)に関しては「的を射る」と「当を得る」が一般的です。
2)に関しては、本来の形は「正鵠を得る」です(「正鵠を射る」でも間違いではないと思います)。
ここから類推して、「的を得る」でも間違いではない、と主張する人がいます。一理あるかもしれませんが、一般には「的を射る」です。
================================引用終了
下記のように、「的を得る」は誤用とは言い切れないという考え方もあるようです。ここまで掘り下げてしまうと「学説」って気もします。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1061145880
【BIFFの亜空間要塞】
http://biff1902.way-nifty.com/biff/2010/05/post-fc48.html
全然+肯定形
Yahoo!知恵袋に限っても、同様の質問が何度出たことか。
結論だけ書きましょう。
もともと肯定でも否定でも○だったようです。一時期肯定は×になりましたが、最近は「×とは言い切れない」という説が増加傾向にあるようです。
ただし、現在の出版・編集の現場では基本的に肯定は×です(微妙なものもありますが……)。
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1641.html
以下は要約。
全然+肯定形はいくつかに分けて考えるべきでしょう。
●「全然+フツーの言葉」
「全然明るい」「全然おいしい」など「全然」を「very」(とても)の意味で使うもの。これは基本的に×でしょう。
●「全然+否定的な肯定形」
「否定的な肯定形」は、形の上では肯定形だけど、意味が否定的な言葉のことです。
「全然ダメ」「全然違う」「全然別(のこと)」
この場合の「全然」は「まったく」の意味なのでOKでしょう。
●「全然+大丈夫系」
これがイチバン微妙です。「全然大丈夫」のほかに「全然平気」などがあります。
個人的には、異和感がなくなりつつあります。おそらく、「全然大丈夫」が「全然問題がない」とほぼ同じニュアンスになるからでは……。「全然OK」だとさらに得体がしれなくて……。
下記の2記事は読みごたえがあります。
【なぜ広まった? 「『全然いい』は誤用」という迷信 】
http://www.nikkei.com/article/DGXBZO37057770W1A201C1000000/
【「『全然いい』は誤用」という迷信 辞書が広めた? 】
http://www.nikkei.com/article/DGXBZO42854280R20C12A6000000/
ただし、ちゃんとした原稿を書く場合は話が「全然別」(やはりちょっとヘンだな)になります。「誤用」と思われる可能性のある言葉をわざわざ使う理由はありません。
「ラ抜き言葉」は使いません。
「的を射る」を使い、「的を得る」は使いません。
「全然+肯定形」は基本的に使いません。「全然+否定的な肯定形」は、ラフな文体ならこっそり使うかも。
【よくある誤用19──なんかカッコいいからね2 ひとつとない 押しも押されぬ 火蓋が切って落とされる】
文語調とまでは言えなくても、大袈裟な言い回しで誤用されやすい例をあげます。大袈裟な言い回しはカッコよく感じられるせいか、つい使ってしまう人が多いようです。ロクなことはないでの、やめておいたほうが無難です。
ひとつとない
この旅館には、同じ間取りの客室がひとつとない。
ガイドブックで見かける文章です。どこがおかしいかわかりますか。微妙な例とは思いながら、これは「ふたつとない」にするべきでしょう。「ふたつとない」にすれば間違いではなくなりますが、依然としてヘンです。「ふたつとない」は、「(世界中を探しても)めったに例がない」くらいの強い表現ですから、この程度のことで使うべきではありません。「この旅館は、すべての客室の間取りが違う。」ぐらいで十分でしょう。
ちなみに、「この旅館には、この客室と同じ間取りの客室がひとつとない」なら誤用ではないでしょう。「自分と同じ人間は世界中を探しても一人もいない」と同様の用法と言えそうです。誤用ではありませんが、こんな大袈裟な言い回しはオススメできません。
押しも押されぬ
ホームラン王になった彼は、押しも押されぬ4番打者に成長したといえるだろう。
正しい使い方は、「押しも押されもせぬ」です。 派生した形で「押しも押されもしない」も許容形でしょうか。同様の意味で「押すに押されぬ」という慣用句もあります。「押しも押されぬ」は、2つの慣用句の混淆によって生まれた誤用でしょう。
例文の場合、「押しも押されもせぬ」に直してもヘンな感じが残ります。「押しも押されもせぬ」という大袈裟な表現と、文末の「~だろう」がチグハグな印象になっているからです。「不動の4番打者」ぐらいで十分でしょう。「ホームラン王」になったほどの選手ですから、「球界を代表する4番打者」としてもよいかもしれません。
火蓋が切って落とされる
戦いの火蓋が切って落とされる。
「火蓋」は火縄銃の部品です。発砲するたびに「切って落とし」ていたら、ほかの人が拾って歩かなければなりません。正解は「火蓋が切られた」「火蓋を切った」です。
■Web辞書『大辞泉』から
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=ひぶた&dtype=0&dname=0na&stype=0&index=15636200&pagenum=1
================================引用開始
火蓋(ひぶた)を切・る
火蓋1を開いて点火の準備をする。転じて、戦いや競争を開始する。「選挙戦の―・る」
◆「幕を切って落とす」との混同で、「火蓋を切って落とす」とするのは誤り。
================================引用終了
【よくある誤用20──誤用ではないけれど…… なるほど 了解 参考にする】
誤用ではありませんが、使い方に注意が必要な言葉があります。目上の人にはNGと考えるべきでしょう。ピンと来ない人は、うんと年下にこういう言葉を使われたら、と考えてみてください。あるいは、学生が先生に対して言うシーンを想起してみてください。
なるほど
これはビジネスマナー系の雑学としておなじみかも。「なるほど マナー」あたりで検索すると、山ほどヒットします。無難なのは「おっしゃるとおりです」あたりでしょう。これが堅苦しく感じる場合は……。
「そうですね」も状況によってはアリでしょうが、これを乱発すると相当耳障りなのでご注意を。
了解
「了解」「了解です」だと相当軽い感じです。気軽な相手ならOKでしょうが、目上には×。「了解しました」「了解いたしました」だとさほど問題がない気もしますが、これも「了解 マナー」あたりで検索すると、山ほどヒットします。こうなると、使わないほうが無難でしょう。
かわりにどう言えばいいか。「承知しました」くらいでしょうか。「承知いたしました」「かしこまりました」のほうが丁寧ですが、少し堅苦しいような。
ただ、「承知しました」は某大ヒットドラマのせいで、一時期ギャグになっていました。もう使っても大丈夫でしょうか……。
参考にする
これは微妙かもしれません。「参考 マナー」あたりで検索しても、ほとんどヒットしません。これが×なのは、〈参考(考えの「足し」にする)なんて何様〉という理由のようです。「勉強になります」「ありがとうございます」などと言うほうが無難です。いろいろなケースが考えられるので、詳しくは下記を参考(考えの「足し」)にしてください。
以下は一部の抜粋(重言)。
================================引用開始
【1】答えを教えてもらった場合
学生「この問題は、a、b、cのどれが正解でしょうか」
先生「aだね。○○だから」
この場合、「参考にいたします」は不適。「勉強になります」のほうがいいだろう。「ありがとうございます」もアリ。
【2】アドバイスをもらった場合(重め)
学生「a、b、cのうち、私に合う進路はどれでしょうか」
先生「aだね。○○だから」
この場合、「勉強になります」はヘンだろう。「参考にいたします」にも異和感がある。無難なのは「ありがとうございます」かな。
【3】アドバイスをもらった場合(軽め)
学生「a、b、cの3色のうち、私にはどれが似合うでしょうか」
先生「aだね。○○だから」
こうなると、「勉強になります」(服飾科とかなら話は別だけど)はありえないだろう。「参考にいたします」にも異和感がある。無難なのは「ありがとうございます」かな。
【1】のように明確な答え(解答)をもらったときに「参考にいたします」は相当無礼。まさに〈参考(考えの「足し」にする)なんて何様〉ってことになる。
【2】や【3】のように、アドバイスや解答の「例」をもらったときなら「参考にいたします」でもおかしくないかもしれない。でも相手が先生なら、避けたほうが無難だろう。
================================引用終了
詳しくは下記をご参照ください。
【参考にします 参考にいたします 参考にさせていただきます なるほど】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2212.html
【20代が間違えやすい敬語──この記事大丈夫か? 相当ヘンだぞ!】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-596.html
バックナンバーは下記。
【お品書き】よくある誤用
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n118365
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