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突然ですが問題です【日本語編5】Yahoo!知恵袋ver.──いろいろな読み方1 手数 逆手 人気 上手 下手

【問題】

【問1】次の「手数」の読み方を答えなさい。※複数回答可
1)(ボクシングの試合結果)手数の差が勝敗をわけた
2)お手数をおかけしました

【問2】次の「逆手」の読み方を答えなさい。※複数回答可
1)相手の腕を逆手にとる
2)刀を逆手に握る
3)相手の言葉を逆手にとる

【問3】次の言葉の読み方を答えなさい。※単数回答不可
人気

【問4】次の「上手」「下手」の読み方を答えなさい。※1問のみ複数回答可
1)下手⇔上手(相撲)
2)下手⇔上手(舞台)
3)下手⇔上手い
4)下手⇔上手(「下手」の読み方は3)と同じ)
5)下手(人)
6)下手(物)






【解答?例】

【問1】
1)てかず/てすうのどちらでもいいが、一般には「てかず」が優勢。
2)てかず/てすうのどちらでもいいが、一般には「てすう」が優勢。


【問2】 
いずれも「さかて」でも「ぎゃくて」でもいいようです。

【問3】
「ひとけ」とも「にんき」とも読むとか書いてある雑学本がある。
 これ、「じんき」とも読むのよ。
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=人気&stype=1&dtype=0

【問4】
1)したて⇔うわて
2)しもて⇔かみて
3)へた⇔うまい
4)へた⇔じょうず
5)げしゅ(人)
6)げて(物)

 ……と考えるのがフツー。これ5)がひっかけで、「げしゅ」のほかに「げし」とも読む。
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=下手人&stype=1&dtype=0



【よくわからない解説】
【問1】
 1)は「てかず」(「てすう」が間違いとも言い切れない気もする)。
 問題は2)の読み方。「てすう」か「てかず」か。
 まず下記を見てほしい。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1340215948
 4人が4人とも「てすう」としているから「てすう」だろう。ホントか?

 こういう意見もある。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1111026881
「両方あり」「本来は〈てかず〉」という意見が出てきた。
 ここでやおら(正しく「おもむろ」の意)辞書をひく。
■Web辞書(『大辞泉』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=手数&stype=1&dtype=0
================================
て‐かず【手数】
1 「てすう(手数)1」に同じ。「―をかけた料理」
2 「てすう(手数)2」に同じ。「お―ですが、よろしくお願いします」
3 囲碁・将棋などで、ある手段を施すのに必要な着手の数。また攻め合いで、石を打ち上げるために詰めなければならない駄目の数。「―を読む」「白のほうが―が長い」
4 ボクシングで、パンチを出す度数。「―は多いが有効打が少ない」
================================

http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=手数&dtype=0&stype=1&dname=0na&pagenum=1&index=14716212697500
================================
て‐すう【手数】
1 それをするのに要する動作・作業などの数。てかず。「―のかかる料理」
2 他人のためにことさらにかける手間。てかず。「お―でもよろしく」「お―をかけて恐縮です」
================================

 これを見る限り、1)は「てかず」。2)はどちらでもいいけど、本来は「てすう」ってことになる。
『大辞林』だとちょっとかわってくる。
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=てかず&dtype=0&stype=1&dname=0ss
================================
てかず1 【手数】
[1]ある事をするための労力。手間。てすう。
・―のかからない仕事
[2]碁・将棋などの手の数。てすう。
・―が少ない
[3]ボクシングで手を出す回数。
================================

http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=てすう&dtype=0&stype=1&dname=0ss
================================
てすう2 【手数】
それをするのに必要な動作・細工などの数。また、それが多くて面倒なこと。てかず。
・―ばかりかかる仕事
・お―ですがよろしくお願いいたします
================================

 2)の意味の「手数」に関しては「てかず」でも「てすう」でもどっちでもいい感じだけど、「お手数ですが~」の用例がなぜか「てすう」にしかのっていない。
 
 手元の『広辞林』だと、「てかず」をひくと「てすう」を見よ、とある。つまり、本来は「てすう」と言うこと。ただし、「てすう」の項目にはボクシングや囲碁・将棋関係のことは書いてない。

 この「てかず/てすう」問題に関しては10年以上前に身内で話題になり、「本来はテカズ」で決着がついたと記憶している。いまとなっては根拠は示しようがない。
 現在の趨勢としては下記のようになる。
1)てかず/てすうのどちらでもいいが、一般には「てかず」が優勢。
2)てかず/てすうのどちらでもいいが、一般には「てすう」が優勢。


【問2】
■Web辞書(『大辞泉』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=逆手&stype=1&dtype=0
================================
ぎゃく‐て【逆手】
1 柔道などで、相手の腕の関節を逆に曲げる技。
2 相撲で、禁じ手のこと。
3 相手の攻撃をそらし、逆にそれを利用して攻め返すこと。また、ある状況などに対して、ふつう予想されるのとは反対の方法で応じること。さかて。「不利な条件を―に取る」
4 物の持ち方や握り方が普通とは逆であること。さかて。⇔順手。 
================================

http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=逆手&dtype=0&stype=1&dname=0na&pagenum=1&index=08391807182200
================================
さか‐て【逆手】
《普通とは逆にした手の使い方の意》

1)刃物の柄を、親指が柄の端、小指が刃の方になるように握ること。切腹するときの短刀の持ち方。
2)器械体操で、鉄棒などを、手のひらを手前に向けて下から握る握り方。⇔順手。
2 相手の攻撃を利用して、逆にやり返すこと。ぎゃくて。「発言を―にとってやりこめる」
3 「逆手投げ」の略。
4 上代、人をのろうときや凶事に際して打ったという手の打ち方。詳細は未詳。天(あま)の逆手。
================================

 要はどっちでもいいみたい。
 笑ってしまったのは相撲の話。「ぎゃくて」だと禁じ手全般のことを指し、「さかて」だと技の名前……なんてわかりやすい。
『大辞林』には相撲の話は出てこない。あとはほとんど同じ。
 手元の『広辞林』だと『大辞泉』とほぼ同じ。相撲の話もほぼ同じ。
 ということで、1)~3)はいずれも「ぎゃくて」でも「さかて」でもOK、が正解。

 昔調べたときには、ちょっと違った。
 好い加減な記憶で書くと、1)は「ぎゃくて」、2)は「さかて」。3)は本来は「ぎゃくて」だが、「さかて」の例が増えている、だった。個人的な語感だと、いまでもこのとおり。
 言葉は日々かわっていくのね。
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突然ですが問題です【日本語編4】Yahoo!知恵袋ver.──「汁」の話 肉汁 苦渋 苦汁

【問題】

【問1】下記の漢字の読み方と意味を答えなさい。
 肉汁

【問2】下記の( )内の言葉を漢字にしなさい。
1)(くじゅう)の決断
2)(くじゅう)を味わう





【解答?例】
【問1】
 にくじゅう/にくじる 
 どちらも間違いではありません。
 個人的には「にくじゅう」だと思っていますが「にくじる」を×にする根拠が見当たりません。
 ご存じのかたは教えてください。
(これを「ご存知」の書くのはたぶん誤用です。http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-903.html)

【問2】
 1)2)とも、「苦渋」でも「苦汁」でも間違いではありません。
 個人的には「苦渋の決断」「苦汁を味わう」だと思っていますが、そうでなければいけないと主張する根拠が見当たりません。
 ご存じのかたは教えてください。


【よくわからない解説】
 エート。
 下ネタだと思って、鼻の穴を広げて口を半開きにして読みにきた人はお引き取りください。
 きわめてまじめな話です。

●鼻汁の話
 鼻血鼻水鼻づまり……ってネタは前に書いた気がする。これに「鼻汁」が加わると完璧。
 なんのことかと言うと、「じ」「ぢ」「ず」「づ」の使い分けの話。
 これだけコンパクトにまとめた例はないと思うけど、教育現場では使いにくいようだ(笑)。

●肉汁の話
 言葉の問題で何がなんだかわからなくなってしまったもののひとつに「肉汁」の読み方がある。
 こんなのどう考えたって、「にくじゅう」だろう、と思ってきた。でもグルメ番組を見ていると、ナレーションも何割かは「にくじる」と言っている気がする。タレントのコメントだと、「にくじる」率がグンと上がって5割くらいなるような。
 例によってWeb辞書をひく。
『大辞泉』
にく‐じゅう【肉汁】 の意味とは - Yahoo!辞書
================引用開始
にく‐じゅう〔‐ジフ〕【肉汁】
1 鳥獣の肉を煮出した汁。肉羹(にっこう)。
2 肉をしぼって取った汁。肉漿(にくしょう)。
3 (「にくじる」とも)肉を焼いたときにしみ出る液汁。
================引用終了

にく‐じる【肉汁】 の意味とは - Yahoo!辞書
================引用開始
にく‐じる【肉汁】
⇒にくじゅう3
================引用終了
 少なくとも当方は「にくじゅう」を「1」「2」の意味で使ったことはない。「3」の意味でも滅多に使わないけど。
 これは、「にくじゅう」の「3」の意味なら「にくじる」でもOKってことだよな。

『大辞林』
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=にくじゅう&dtype=0&stype=1&dname=0ss
================引用開始
[1]肉を煮出した汁。スープ。
[2]肉から搾り取った汁。肉漿(にくしよう)。
================引用終了
 こちらは「にくじる」は立項されてない。
 そのかわりと言ってはなんだが、『大辞泉』の「3」の意味もない。じゃあ「焼いた肉から出るエキス」はなんて言うの?
 ちなみに手元の『広辞林』も『大辞林』とほぼ同じ。
 ということは、「焼いた肉から出るエキス」を表わす言葉が日本語にはなかったってことになる気がする。「脂」とでも言っていたのかな? で、それを表わす言葉として本来は別の意味だった「にくじゅう」をもってきた。それを認めている『大辞泉』では、「にくじる」と読んでもいいいよ、としている。どうせ借りたきた言葉だから?
 さて、「肉汁」はなんて読みますか?

●「苦渋」と「苦汁」
 少し前にゲラに出てきて困った。以前からこの使い分けに関してちと疑問を感じていたけど、調べたことがなかった。
 なんとなく「苦渋の決断」「苦汁を味わう」だと思っていた。
 手元の3冊の用字・用語辞典には、意外なことに何も出ていない。こういう微妙な使い分けに関して国語辞典はあまり役に立たないことは経験的にわかっているが、しかたがないのでひいてみる。
 Web辞書(『大辞泉』)。
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=苦渋&stype=1&dtype=0
================引用開始
く‐じゅう〔‐ジフ〕【苦渋】
[名・形動]
1 にがくてしぶいこと。
2 苦しみ悩むこと。また、そのさま。「―を味わう」「―の色を浮かべる」
・「彼は―な表情のままじっと煙草を吸っていたが」〈横光・上海〉
================引用終了

http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=苦汁&stype=1&dtype=0
================引用開始
く‐じゅう〔‐ジフ〕【苦汁】
1 にがい汁。
2 つらい経験。「―を飲まされる」
================引用終了

 これを見比べて「苦渋」と「苦汁」の違いがわかる人がいたら教えてください。
 おそらく、「苦い汁」(青汁?)は「苦汁」だけど、あとはわからない。
「くじゅうの決断」は「苦渋」って気がするが、「苦汁」はダメと断言するのは無理だろう。一方の「くじゅうを味わう」に関してはどっちもアリってことになる。ちょっと気になるのは「苦渋」の品詞。「形容動詞」なんてアリだろうか。

 しょうがないので『大辞林』をひく。

http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=くじゅう&dtype=0&stype=1&dname=0ss&pagenum=1&index=105372800000
================引用開始
くじゅう[―じふ] 0 【苦渋】
(名)
スル
物事が思いどおりに行かず、苦しくつらい思いをすること。
・―の色を浮かべる
・―に満ちた顔
・難問をかかえて―している
================引用終了

http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=くじゅう&dtype=0&stype=1&dname=0ss&pagenum=1&index=105372700000
================引用開始
くじゅう[―じふ] 0 【苦汁】
にがみのある汁。にがい汁。
→(句)苦汁(くじゅう)を嘗(な)・める
================引用終了

 こちらほうが当方の感覚に近い。ただ、「苦渋する」なんて言うかな? 「くじゅうを嘗める」は「苦汁」らしい。どうやら「嘗める」や「飲む」のように具体的(物理的)な問題だと「苦汁」らしい。これが「味わう」になると抽象的な意味合いにもとれるから「苦渋」もアリってこと。


【追記】
 ネット検索をすると、いろいろな説がとびかっている。
「肉」の「ニク」は訓読みと思われがちだが実は音読み。したがって、「音+音」の組み合わせの「にくじゅう」が自然。そんな無茶な。「重箱読み」とか「湯桶読み」ってご存じですよね。
 肉の入った汁物が「にくじる」で、肉のエキスは「にくじゅう」……それって根拠があるんでしょうか。

突然ですが問題です【日本語編3】Yahoo!知恵袋ver.──ことわざの迷走

【問題】

下記のことわざの意味を答えなさい。   

1)情けは人のためならず
2)犬も歩けば棒に当たる
3)隗より始めよ
4)他山の石
5)枯れ木も山の賑わい
6)君子は豹変す






【解答?例】
1)情けは人のためならず
正 人にかけた情けは、めぐりめぐって自分に返ってくるものである
誤 むやみに情けをかけるのは甘やかすことになるので、結局その人のためにならない

2)犬も歩けば棒に当たる 
正 でしゃばってよけいなことをすると、ロクなことがない
誤 積極的に動き回れば、幸運に出合うことがある

3)隗より始めよ
正 大きな事をするには、手近なことから始めよ
誤 事を始めるには、まず自分自身が率先垂範せよ

4)他山の石
正 戒め(反面教師)になる他者の失敗
誤 手本になる他者のすぐれた言動

5)枯れ木も山の賑わい
正 つまんないものでも、ないよりはマシ
誤 人がたくさん集まれば賑やかになってよい

6)君子は豹変す
正 立派な人ほど自分の過ちを潔く認めて改めること
誤 態度が急に悪いほうにかわること


【よくわからない解説】
 個々について説明するとかなり長くなります。
 詳しくは下記をご参照ください。

【よくある誤用2──ことわざの迷走 情けは人のためならず 犬も歩けば棒に当たる 隗より始めよ】
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n114824

【よくある誤用11──ことわざの迷走2 他山の石 枯れ木も山の賑わい 君子は豹変す】
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n119180

突然ですが問題です【日本語編2】Yahoo!知恵袋ver.──「お疲れさまです」「ご苦労さまです」

【問題】
お願いしたいことがあって、参加しているコミュの管理人にメッセージを書く必要ができたとします。最初の挨拶として、次のうちでもっとも無難なのはどれでしょう。
1)いつもコミュの管理、ありがとうございます。
2)いつもコミュの管理、お疲れさまです。
3)いつもコミュの管理、ご苦労さまです。
4)いつもコミュの管理、ご苦労なことです。






【解答?例】
いろいろな考え方があるようだが、一般論で言えば1)が正解。
2)も許容範囲だろう。正確に言うなら、あまり望ましくないけどほかに適切な言い方がないからしかたがない。
3)はやめたほうがいい。一般に目下に対して使うとされている。
4)は論外。ゴロツキがケンカを売っているとしか思えない。もっとわかりやすく書くなら「ご苦労なこった」。

【よくわからない解説】
アッチでもコッチでも話題になっているのは、それだけ重要なことなのかもしれない。
かなり基本的な話だと思うけど、ありふれた一般論を正々堂々と自説として開陳する人が多いのはどういうことなんだろう。「お疲れさまです ご苦労さまです」をキーワードにWeb検索すると山ほど出てくる。コメント書くなら、当然それくらいは読んでるよね。
3)に関して「ご苦労さまでございます」なら目上にも使える、という説も聞く。何を根拠に言ってるんだろう。たしかに「ご苦労さまです」よりは丁寧な気はするが、現実的に考えてほしい。
「ご苦労さまです」なんて失礼で絶対許せない、と考えている人が「ご苦労さまでございます」なら許容するだろうか。しないよ。つまり、「ご苦労さまでございます」ならOKって考え方は、勝手な理屈ってこと。やめたほうがいい。
じゃあ、「ありがとうございます」が使えないような場面で、目上の人になんて言えばいいか。たとえば、定時を過ぎた時間に会社の廊下で役員とすれ違うとき……。
目礼(黙礼?)するくらいしかないだろうな。だって適当な言葉がないんだもん。「お疲れさまです」とかで許してもらえればいいけど、「キミそれは正確には……」とかインネンつけられたら困る。「お疲れさまでございます」なら許される、と考える方はそれでどうぞ。
もうひとつ考えなければならないことがある。
「管理人さんは目上か否か」
これも考え方しだいだろう。
「好きでやってるんだから対等」「ある種の権力者なんだから目上」……etc.
個人的には敬意を払うべき存在だと思う(原則的にね)。まあ、メンドーだから「対等」ってことにしておこうか。
対等の相手(「目上」ではない)だから、「ご苦労さま」でも問題はないのかもしれない。これも考え方しだい。見ず知らずの対等の人間とのコミュニケーションをどうするか。別にタメ口が悪いとは言わないけど、原則としてデス・マス体を使うべきだろう。だったら、「ご苦労さま」を使うべきではないことはよほどの●●でなければわかるはずだ。

突然ですが問題です【日本語編1】Yahoo!知恵袋ver. 人間/人生到る所青山あり 人間/人生万事塞翁が馬

【問題】

【問1】
下記1)3)の「人間」にルビをふりなさい。

【問2】
下記の1)~4)のうち誤用はどれでしょう。

1)人間到る所青山あり
2)人生到る所青山あり
3)人間万事塞翁が馬
4)人生万事塞翁が馬





【解答?例】
【問1】
にんげん
「じんかん」も間違いではないが、「にんげん」のほうが意味が広い。辞書類も「にんげん」を本線にしているものが多い。
【問2】
考え方しだい。
辞書を見る限り、どれも「誤用」とは言い切れない。

【よくわからない解説】

まず【問1】。当方は長年、こういう場合の「人間」は「じんかん」と読むと思い込んでいた。いつの間にか世間の常識はかわったらしい。このことにはしばらく前に気づいた。
再確認のために辞書をいくつかひいて、当方はトンデモナイ泥沼に足を踏み入れたような気がしてきた(泣)。


ネット辞書(『大辞泉』)をひく。辞書のリンクがあまりにうるさいので、末尾にまとめる。
================================
人間(にんげん)到(いた)る所青山(せいざん)あり
《幕末の僧、月性(げっしょう)の「清狂遺稿」から》故郷ばかりが骨を埋めるべき土地ではない。大志を抱いて、郷里を出て大いに活動すべきである。→青山(せいざん)
================================
人間(じんかん)到(いた)る所青山(せいざん)あり
⇒人間(にんげん)到(いた)る所青山(せいざん)あり
================================
人間(にんげん)万事塞翁(さいおう)が馬
⇒塞翁(さいおう)が馬
================================

『大辞泉』を見る限り、
1)は「にんげん」(「じんかん」も許容)
3)は「にんげん」
そもそも「にんげん」と「じんかん」はどう違うか。
================================
にん‐げん【人間】
1 ひと。人類。「―の歴史」
2 人柄。また、人格。人物。「―がいい」「―ができている」
3 人の住む世界。人間界。世の中。じんかん。
・「―五十年下天のうちをくらぶれば」〈幸若・敦盛〉
================================
じん‐かん【人間】
人の住んでいる世界。世間。にんげん。
・「老人に身をやつしまして暫く―に住んでおりました」〈中勘助・鳥の物語〉
================================
要は「にんげん」のほうが意味が広い。「にんげん」の「3」の意味が「じんかん」をカバーしている。


納得がいかないので今度はネット辞書の『大辞林』もひいてみる。
================================
人間(にんげん)到(いた)る処(ところ)青山(せいざん)あり
→人間(じんかん)到る処(ところ)青山あり
================================
人間(じんかん)到る処(ところ)青山(せいざん)あり
〔補説〕 幕末の僧、月性(げつしよう)の「清狂遺稿」による
人はどこで死んでも青山(=墳墓の地)とする所はある。故郷を出て大いに活躍すべきである、との意。
〔補説〕 「人間」は「にんげん」とも読む
================================
人間(にんげん)万事(ばんじ)塞翁(さいおう)が馬
→塞翁(さいおう)が馬(うま)
================================

『大辞林』を見る限り、
1)は「じんかん」(「にんげん」も許容)。『大辞泉』とは逆になっている。
3)は「にんげん」
「にんげん」と「じんかん」に関しては、『大辞泉』とほぼ同様。
手元の『広辞林』をひく。事情はさらに悪くなる。
『広辞林』には「人間(じんかん)」って項目がない。当然「青山」も「塞翁」も「人間(にんげん)~」になっている(乱暴な略し方に、憤りが表われている)。


今度は『成語林』をひく。
人間(にんげん)到る処青山あり(「所」ではなく「処」)
※説明中に〈「じんかん」とも読む〉とある。
人間(にんげん)万事塞翁が馬→塞翁が馬
こうして並べると、「にんげん」のほうが圧倒的に優勢。
「塞翁」のほうは全部が「にんげん」。
「青山」のほうは、『大辞林』だけが「じんかん」を本線にしている。『大辞泉』と『成語林』は「じんかん」を許容扱い。
とくに納得できないのは『成語林』の態度。出典の『淮南子』人間訓に「えなんじ」「じんかんくん」とルビをつけている。でも言葉のほうの読みは「にんげん」ですかい。

ちょっと事情があって3)4)の話を先に書く。
3)人間万事塞翁が馬
4)人生万事塞翁が馬
これは一応3)が正解。ネット辞書は『大辞林』『大辞泉』とも「塞翁が馬」を見なさいとしている。

まず『大辞泉』。
================引用開始
塞翁(さいおう)が馬
《「淮南子(えなんじ)」人間訓から》人生の禍福は転々として予測できないことのたとえ。「人間万事―」
◆昔、中国の北辺の塞(とりで)のそばに住んでいた老人の馬が胡(こ)の地に逃げたが、数か月後、胡の駿馬(しゅんめ)を連れて帰ってきた。その老人の子がその馬に乗り落馬して足を折ったが、おかげで兵役を免れて命が助かったという故事から。
================引用終了

次は『大辞林』。
================引用開始
塞翁(さいおう)が馬
人間の禍福は変転し定まりないものだというたとえ。人間万事塞翁が馬。
〔補説〕 「淮南子(人間訓)」から。昔、塞翁の馬が隣国に逃げてしまったが、名馬を連れて帰ってきた。老人の子がその馬に乗っていて落馬し足を折ったが、おかげで隣国との戦乱の際にも兵役をまぬがれて無事であったという話から
================引用終了

まあ、似たようなもんだ。では4)は誤用かと言うと、そうは言い切れない。
両方の辞書とも非常に重要なことを書き落としている。

【語源由来辞典】
※あんまり余計なことは書きたくないが、最低でもこれくらいの解説は欲しいよな。辞書の記述だと何がなんだかわからない。
http://gogen-allguide.com/sa/saiougauma.html
↑にあるように、元々の言葉は「塞翁が馬」。これにあとから「人間万事」が追加されている。誰が追加したかわからないんだから、「人生万事」が誤用と決めつけるなんてナンセンス、って考え方もできる。
そう考えると、4)が誤用と断言する自信はない。あとから「人間万事」をくっつけた3)が正用と断言するする自信もない。

で、この「塞翁が馬」って言葉はどういう場面で使うか。
意味が近いことわざは「禍福は糾える縄の如し」だろう。これは使う場面は……ねえよ。
基本的に結果論でしか使えない言葉だと思う。現在進行形の事柄に使うと相当おかしい。
善いことがあった人に、「好事魔多し」みたいな意味で使ったら性格がtobiすぎる。「縁起でもない」って殴られるよ。かと言って自分のことで「いいことばかり続かないから」とか戒めるのも相当ヘン。
悪いことがあった人を慰める意味で使っても的外れだし、ヘタすりゃ通じないと思う。「悪いことばかりじゃないから」とかくらいならまだアリだろうか。
結局、波瀾万丈の人生に関して結果論として「〈塞翁が馬〉などと申しますが……」と語るしかない。そんな言葉が使えるのは、落語か講談だよ。


残っているのは下記の2つ。
1)人間到る所青山あり
2)人生到る所青山あり
これは常識的には1)が正解。ネット辞書の『大辞林』を再掲する。
================引用開始
人間(じんかん)到る処(ところ)青山(せいざん)あり
〔補説〕 幕末の僧、月性(げつしよう)の「清狂遺稿」による
人はどこで死んでも青山(=墳墓の地)とする所はある。故郷を出て大いに活躍すべきである、との意。
〔補説〕 「人間」は「にんげん」とも読む
================引用終了

このテの話は漢籍によるものが多いが、これは日本人の言葉が原典。
問題がいくつかある。まず「処」か「所」か。
今回ひいた4冊の辞書のうち、『大辞泉』と『広辞林』が「所」、『大辞林』と『成語林』が「処」。どっちでもいいってこと?
『成語林』には原典が明記されている。
人間到処在青山
こりゃ明らかです。本来は「処」。じゃあ「所」は誤用と断じていいのか。だとしたら、「在り」にすべきだろうって話も出てくる。
これはね。漢字の神様と「所」の密約があったらしい。「一所懸命」より「一生懸命」が一般的になったことの悲哀を「所」が切々と訴えた。あんまりしつこいので神様が根負けし、「青山」のほうは「所」でもいいよヨシヨシ、ってことで手を打った。
だってそうとでも考えなけりゃ、説明できないよ。「処」だって常用漢字なんだから、代用漢字にする理由はない。「お休み処」とか「甘味処」とか、「ところ」と読む例だってよく目にする。
ついでに書くと、「到る所」を「至る所」にするのはよくない。ちょっと意味がかわる「至る所」だと「どこにでも」のニュアンスが強い。「到る所」だと「たどり着いた場所」のニュアンス。
o( ̄ー ̄;)ゞううむ
結果的には同じような意味になってる?
さらについでに「青山」は元々は文字どおり「青々とした山」。これがなんで「墳墓の地」の意味になったのかは知らない。この言葉にちなみ、「青山」を関した「墓地」「墓所」が全国各地にある。東京・港区にも有名なのがある。

……と書いて話を終える予定だった。
ところが、『広辞林』でイヤな記述を見つけてしまった。
ほかと同じような説明の最後に。「人生到る所青山あり。」とある。これって素直に考えると、「~とも言う」ってことだよな。
ということは、こっちも「人生」でもOKってことなのだろうか。可能性は否定できない(泣)。
ということで最終的な解答です。1)~4)とも誤用とも言えるし、すべて許容とも言える。ヒデエ問題だなorz。
まあ、自分でこんな言葉を使うことはないだろうからどうでもいいや。(←オイ!)
蛇足ながら、〈この言葉にちなみ、「青山」を関した「墓地」「墓所」が全国各地にある。東京・港区にも有名なのがある。〉はまったくのデマです。港区の青山は人名からついたものらしい。


詳しくは下記をご参照ください。
【突然ですが問題です【日本語編1】──解答?編】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1298.html

12/01のツイートまとめ

kuroracco

ギソン金って……。 http://t.co/DcRDLE97
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