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第1595回「あなたの『節約ごはん』は?」──朝は緊急卵と腸詰めでした。

 スクランブルエッグとソーセージとも言います。
 拙訳ごはんですが、何か?
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突然ですが問題です【日本語編75】──Web辞書にはのっていない「ハ」の働き

【問題】

 下記の1)~3)の「は」の働きに関して以下の【問】に答えなさい。
1)男は度胸、女は愛嬌
2)春はあけぼの
3)東京は浅草にやってまいりました


【問1】
 1)~3)と同様の働きをしている「は」の例をあげなさい。


【問2】
 1)~3)の「は」の働きはWeb辞書『大辞泉』のどれにあたるか考えなさい。

■Web辞書(『大辞泉』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=は&dtype=0&dname=0na&stype=1&index=14511500&pagenum=11
================================

[係助]名詞、名詞に準じる語、活用語の連用形、助詞などに付く。

1 判断の主題を提示する意を表す。「犬―動物だ」「教育―国民の義務である」
  「黒牛潟潮干の浦を紅の玉裳裾引(すそび)き行く―誰(た)が妻」〈万・一六七二〉

2 ある事物を他と区別して、または対比的に取り立てて示す意を表す。「風―強いが、日―照っている」
  「夕されば小倉の山に鳴く鹿―今夜(こよひ)―鳴かず寝(い)ねにけらしも」〈万・一五一一〉

3 叙述の内容、またはその一部分を強調して明示する意を表す。「喜ばずに―いられない」「やがてわかって―くれるだろう」
  「死を恐れざるに―あらず、死の近きことを忘るるなり」〈徒然・九三〉

4 (文末にあって)感動・詠嘆を表す。…ことよ。…だなあ。…よ。
  「されど、門の限りを高う作る人もありける―」〈枕・八〉

5 (形容詞・打消しの助動詞「ず」の連用形に付いて)順接の仮定条件を表す。…のときは。…の場合は。…ならば。
  「験(しるし)なきものを思はず―一坏(ひとつき)の濁れる酒を飲むべくあるらし」〈万・三三八〉

◆係助詞「は」は現在では「わ」と発音するが、「は」で表記するのが普通。格助詞「を」、また「ときに」に付くときは、音変化して「をば」「ときんば」の形をとることもある。4については終助詞とする説もある。また、5については近世初期以降には「は」が音変化して、「くば」「ずば」の形をとることもあり、「ば」を接続助詞と解して仮定条件を表すこともあった。→をば →ときんば →ずば →ては
================================

【問3】
 1)~3)の「は」の働きの説明としてふさわしいものを下記のa~cから選びなさい。

a 大事よねの〈ハ〉
b イチバンよねの〈ハ〉/と言ったらの〈ハ〉
c ~のどこかと言えばの〈ハ〉/素直に「ノ」って言えよの〈ハ〉








【解答?例】
 かなりの難問と言うより悪問だったかもしれない。(^_^A; \(_ _ ) ハンセイ
  とりあえず、出題者の意図したところを書く。

【問1】
 1)~3)と同様の働きをしている「は」の例をあげなさい。
  1) 坊主はお経
  2) 花は桜木、人は武士、柱は桧、魚は鯛、小袖はもみじ、花はみよしの
  3) 東京と言ってもいささか広うござんす。東京は神田……
    葛飾は柴又で産湯につかり……

【問2】
『大辞泉』の記述では、どれも説明できない。
 1)は『大辞泉』の「2」と言えなくはないかもしれない。でも書きかえようとすると、ちょっと違う気がする。


【問3】
  1) 男は度胸、女は愛嬌→a 大事よねの〈ハ〉
  2) 春はあけぼの→b イチバンよねの〈ハ〉/と言ったらの〈ハ〉
  3) 東京は浅草にやってまいりました→c ~のどこかと言えばの〈ハ〉/素直に「ノ」って言えよの〈ハ〉

【よくわからない解説】
 詳しくは下記をご参照ください。
【「ハ」の用法 男は度胸、女は愛嬌 春は、あけぼの 東京は浅草にやってまいりました】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2177.html


突然ですが問題です【日本語編】のバックナンバー
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突然ですが問題です【日本語編74】──ネットニュースにツッコミ

【問題】

 下記のネットニュースの文章にツッコミを入れなさい。
「誤用」と思われる表現が1か所あります。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110923-00000003-dal-base
================================
落合監督「辞めろと言われれば辞めるだけ」
デイリースポーツ 9月23日(金)7時28分配信
 「中日3-2ヤクルト」(22日、ナゴド)

 優しい目をしていた。戦況を見守る指揮官の視線が、愛に満ちていた。8年間、同じ釜の飯を食ってきた息子たち。成長過程を頭の中で振り返ると、笑顔を絶やさずにはいられなかった。中日・落合監督が初めて見せる顔だった。

 東京から名古屋に戻った今朝、白井オーナーから今季限りでの契約満了を告げられた。「この世界は紙切れ1枚の契約社会。やれと言われたらやるし、辞めろと言われれば辞めるだけ」。球団史上初のリーグ連覇、逆転Vに向けた残り試合の全力投球を約束した。

 最後のはなむけ。いつもとは違う指揮官のにおいに気付かない選手じゃない。無安打投球を続けられていた六回、2死二塁から、ブランコ、谷繁、堂上剛の3連続適時打で逆転。吉見は7回1失点の粘投で、運命の1日を勝利で飾った。

 ベンチ前で交わす恒例の握手。オレ流指揮官が、珍しく選手に声を掛けるシーンがあった。特別な思いは当然ある。笑顔の裏側には、8年間の積み重ね、思い出がびっしりと詰まっていた。

 「ナゴヤドームの野球だな」と言って去ろうとした落合監督を報道陣が追う。退任の問いに「契約書通り。この世界はそういう世界」とだけ言葉を残した。3・5差。勝ち星は60で並んだ。残り25試合。勝負の世界に生き続けた男。花道は自分の手で華麗に彩ってみせる。
================================






【解答?例】& 【よくわからない解説】
 なんと申しましょうか。なんで新聞記事をこんなに気持ち悪く情緒たっぷりに書くのだろう。
 いきなり「優しい目をしていた」ですかい。「最後のはなむけ」ですかい。まだペナントレースは続いていますけど……。
「契約社会」だったら「辞めろと言われれば辞めるだけ」ってことはないと思う、なんてツッコミは細かすぎるか?
「無安打投球を続けられていた」って何? なんで素直に「無安打に抑えられていた」って書かないんだろう。
「笑顔の裏側」に「思い出がびっしりと詰まっていた」って、どういうことなのか説明してください。
「3・5差」は縦書きの表記。横書きの場合は「3.5差」って書くものでしょ。基本中の基本。
 最後の段落の体言止めの頻出はなんなのよ。こういうことをするから、体言止めが嫌われる。

 まあそういう細かいことをネチネチ書くのは当方の芸風ではないのでやめておく。
 問題の誤用箇所。
「笑顔を絶やさずにはいられなかった」
 って、笑ってるの笑ってないの?

■Web辞書(『大辞泉』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=ずにはいられない&stype=0&dtype=0
================================
ずにはいられない
ある感情や動作をおさえようと思ってもおさえることができない意を表す。…ないではいられない。どうしても…してしまう。「おかしくて笑わ―ない」
================================

「ないではいられない」んだから、「笑顔を絶やした」んだろうな。
 おそらく書き手の意図は「自然と笑みがあふれてくる」くらいのことなんだろう。新聞記事にふさわしいか否かは知らない。だったら、「笑みをもらさずにはいられなかった」とでも書くしかないだろう。おそらく「笑顔を絶やさなかった」(試合中に?)あたりと混同したんだろうな。

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突然ですが問題です【日本語編73】──接続詞の謎 だって でも

【問題】
 相当かなりきわめて危険が危ない危機感を感じながら……。
「だって」に関する下記の辞書の記述を参考に、【問】に答えなさい。

■Web辞書(『大辞泉』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=だって&dtype=0&dname=0na&stype=0&index=11522900&pagenum=1
================================
だって
[接]《助詞「だって」の接続詞化したもの》相手に反論したり、相手の反対を予想しつつ理由や言い訳を述べる場合に用いる。そうはいっても。でも。なぜかというと。「とても間に合いません。―人手が足りません」
================================
※辞書が「片たり」ってどういう了見だ?

■Web辞書(『大辞林』から)
================================
だって1
(接続)
〔補説〕 助詞「だって」が接続詞化したもの
相手の言葉に反対したり、相手の反対を予想したりして、そうなった事情を説明する時に用いる。そうではあるが。でも。
  『なぜ遅れた』『―、電車が故障したんだもの』
  私は行けません。―、病気なんです
================================

【問1】
 下記の例文の「だって」を、別の接続詞に書きかえなさい。
  1) とても間に合いません。だって人手が足りません。
  2) 「なぜ遅れた」「だって、電車が故障したんだもの」
  3) 私は行けません。だって、病気なんです。

【問2】
 Web辞書によると、接続詞「だって」には「でも」の意味があるそうです。
  1) 【問1】の「だって」を「でも」にできるか否か考えなさい。
  2) このようなホニャララなことになった理由を考えなさい。







【解答?例】

【問1】
 接続詞の「だって」の書きかえは、基本的に「なぜなら(ば)」あたりが無難。
 2)のように話し言葉のニュアンスが強くなると、少し不自然になる。「なぜって」「なぜかと言うと」などに言いかえることはできるが、どちらも一般に接続詞としては認められていない。

【問2】
 1)
 できない。なぜなら、「だって」は順接(っぽい)、「でも」は逆接と役割が違うから。
 2)
 以下は単なる憶測。


【よくわからない解説】
 接続助詞と接続詞の両方の働きがある言葉は多い。たいていの場合、意味はかわらない。1例だけあげておく。
  あいつはバカだけれど、可愛げがある。(接続助詞)
  あいつはバカだ。けれど可愛げがある。(接続詞)
 こんなこといちいち考えるまでもない……はずなのよ。ところが、「だって」は違うようだ。
「でも」と比べるとよくわかる。
  バカでも可愛げがあるなら許せる。
  バカだ。でも可愛げがあるなら許せる。
  バカだって可愛げがあるなら許せる。
  バカだ。???可愛げがあるなら許せる。

 接続助詞の「だって」と「でも」はほぼ同じ意味で互換性があることが多いのに、接続詞の「だって」と「でも」は意味が逆になることが多い。なんでこんなことになるのかはわからない。
 辞書も混乱していることがうかがえる。
『大辞泉』は接続詞の「だって」の意味に「でも」と「なぜかというと」をあげている。すでに見たように、かなりニュアンスはかわるけど「なぜかというと」はアリ。しかし「でも」はありえないでしょ。
『大辞林』は接続詞の「だって」の意味に「そうではあるが」と「でも」をあげている。これはどっちもありえないでしょ。
 これはすでに書いたように、「だって」が特殊だからだろう。
 接続助詞の「だって」(たって)と「でも」(ても)のWeb辞書の例文を抜き書きしてみる。

■Web辞書(『大辞泉』から)
  ここなら泳い(だって)かまわない。
  笑われ(たって)かまわない。
  いくら捜し(たって)いるはずがない。
  死ん(でも)死にきれない。
  いくら呼ん(でも)返事がない。
  失敗し(ても)あきらめはしない。
  煮(ても)焼い(ても)食えない。
  知ってい(ても)知らぬ顔をする。
  自信があるにし(ても)、試験を受けるのはいやな気分だ。

 全部互換性がある。さらに言うと、係助詞のほうもほとんどが互換性があるのだが、煩雑になるので省略する。
「だって」(たって)も「でも」(ても)も、接続助詞として使われる場合は、ほぼ逆接になる。ところが、接続詞になったとたん「だって」だけが順接っぽくなる。理由はわかりません。
 実生活で考えると、「だって」を逆接っぽく使う例がある。
 母親に「遊んでばかりいないで勉強しないとダメでしょ!」と叱られた子供の口ごたえ。
「でも、○○ちゃんも遊んでるよ」
「だって、○○ちゃんも遊んでるよ」
 一応どちらも成立する気がする。しかし厳密に言うと、この「だって」は論理的に破綻している。「だって」は「なぜかというと」くらいの意味なのだから。これが次のような応答なら筋が通っている。
「なんで勉強しないで遊んでばかりいるの!」
「だって、○○ちゃんも遊んでるよ」

 結論。
 Web辞書の論理性は子供のダダ並み。


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突然ですが問題です【日本語編72】──「食う」を使う慣用句 「食べる」を使う慣用句

【問題】

【問1】
「食べる」を含む慣用句をあげなさい(「る」はつかなくてもOK)。

【問2】
「食べる」を使う慣用句より、「食う」を使う慣用句のほうが多い理由を考えなさい。






【解答例】

【問1】
1)「食べる」が一般的?
食べ盛り
食べ頃
食べ歩き

2)どっちでもいい(慣用句でさえない?)
食べごたえ(食いごたえ)
食べかけ(食いかけ)
食べさし(食いさし)
食べかす(食いかす)

3)本来は「食う」の慣用句
食べず嫌い
食べ合わせ
食べ出


【問2】
 とりあえず、2つあげておく。
・「食べる」よりも「食う」のほうがはるかに幅広い意味があるから
・「食べる」は比較的新しい言葉だから


【よくわからない解説】
 下記のコメント欄に〈「食う」が下品と勘違いして、慣用句を片っ端から「食べる」にするのもやめてほしい〉と書いたら、秀逸なコメントを貰った。無断で転載する。
【ゴメンナサイ、ついつい……──つまらんダジャレは嫌いだぁ!107】
(略)
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2011年09月24日 15:00

羽振りの良かったころは「食べ道楽」だったが、失業して「食べたり食べなかったり」の生活をしていたので、とんだ「食べさせ者」のうまい話に「食べつき(?)」、「時間を食べた」だけで何も得られなかった、「割を食べた」と痛い思いをして人のせいにする。

そういう「食べられない方」はおととい来やがれ!
================================

 なぜ慣用句は「食べる」ではなく「食う」が多いのか。積年の課題を調べてみたら、Web辞書をひいただけで終わったorz。
■Web辞書(『大辞泉』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=食べる&stype=0&dtype=0
================================
た・べる【食べる】
[動バ下一][文]た・ぶ[バ下二]《尊敬語「たぶ」(四段)に対応する謙譲語》

1 食物をかんで、のみこむ。「生(なま)で―・べる」「ひと口―・べてみる」
2 暮らしを立てる。生活する。「なんとか―・べていくくらいの蓄えはある」

①「食う」「飲む」の謙譲語。いただく。食(とう)ぶ。
  「御仏供(ぶく)のおろし―・べむと申すを」〈枕・八七〉
②「食う」「飲む」を、へりくだる気持ちをこめて丁寧にいう語。
  「さかづきが―・べたいと申して参られてござる」〈虎明狂・老武者〉
  「私は茶が嫌ひだから、これを―・べます」〈滑・浮世風呂・前下〉

◆本来は上位者からいただく意。ありがたくいただいて食す意から、自己の飲食する行為をへりくだって言うようになり、さらに、「食う」をやわらげていう丁寧な言い方に変わった。現代語では「食う」に比べれば丁寧な言い方であるが、敬意はほとんどない。また、現代では一般に飲む行為には用いられない。
================================

http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=食う&stype=0&dtype=0
================================
く・う〔くふ〕【食う/×喰う】
[動ワ五(ハ四)]

1 食物をかんでのみ込む。食べる。「飯を―・う」
2 生活をする。暮らしを立てる。「こんな薄給では―・っていけない」
3 口で物をしっかり捕らえる。食いつく。「えさを替えたら魚がよく―・う」
4 虫などがかじって物を傷める。また、虫などがからだを刺す。「衣魚(しみ)の―・った書籍」「蚊に―・われる」
5 しっかりと間に挟む。また、縄状のものが物にめり込む。「ファスナーに布地が―・われる」
6 金銭・時間などがかかる。費やす。「この車はガソリンを―・う」「手間ひま―・う仕事」
7 (「年をくう」の形で)かなりの年齢になる。「いたずらに年を―・うばかりだ」
8 他の勢力範囲・領域に入り込む。侵す。「縄張りを―・う」
9 スポーツなどで、強い相手を負かす。「強敵を―・う」
10 演劇・映画などで、ある俳優の演技が勝っていて共演者をしのぐ。「脇役に―・われる」
11 他から、ある行為、特に望ましくない行為を受ける。こうむる。「門前払いを―・う」「お目玉を―・う」「肩すかしを―・う」
12 (「人をくう」の形で)ばかにする。侮る。「人を―・った態度」
13 自分の利益のために、だまして人を利用する。食い物にする。「タレント志望の少女たちを―・う芸能プロダクション」
14 演劇で、上演台本の一部を省略する。カットする。
15 口で軽く挟んで物を支える。くわえる。ついばむ。
  「春霞流るるなへに青柳の枝―・ひ持ちてうぐひす鳴くも」〈万・一八二一〉
16 かみつく。歯をたてる。
  「指(および)ひとつを引き寄せて―・ひてはべりしを」〈源・帚木〉
17 薬などを飲む。
  「つとめて―・ふ薬といふもの」〈かげろふ・中〉

◆現代語では、食する意では「食う」がぞんざいで俗語的とされ、一般に「食べる」を用いる。しかし、複合語・慣用句では「食う」が用いられ、「食べる」とは言い換えができないものもある。「たべる(たぶ)」はもともと謙譲・丁寧な言い方であったが、敬意がしだいに失われ通常語となった。

[可能] くえる

[下接句] 泡を食う・一杯食う・犬も食わぬ・同じ釜(かま)の飯を食う・鬼を酢にして食う・糟(かす)を食う・霞(かすみ)を食う・気に食わない・臭い飯を食う・背負(しょ)い投げを食う・粋(すい)が身を食う・すかを食う・側杖(そばづえ)を食う・他人の飯を食う・年を食う・栃麺棒(とちめんぼう)を食う・取って食う・煮て食おうと焼いて食おうと・煮ても焼いても食えない・塗り箸(ばし)で素麺(そうめん)を食う・弾みを食う・人を食う・冷や飯を食う・道草を食う・無駄飯を食う・割を食う
================================

 辞書の記述を見比べれば一目瞭然。
「食う」には多彩な意味があり、「食べる」には3つの意味しかない。「食べる」の3番目はちょっと意味合いが違うから、「2つの意味しかない」と言ってもいいかもしれない。これだけ意味の守備範囲?に差があれば、「食う」を使った言い回しのほうが圧倒的に多いのも当然だろう。
 それ以前に、「食べる」は「本来は上位者からいただく意」であって、eatの意味で使われるようになったのは比較的最近だろう。多くの慣用句の類いができた頃にはそんな意味はないから、必然的に「食べる」は慣用句にはなりにくい。
 
 ……で終わってしまってもいいのだが、例によってあやしげなことを付け加える。
「食べる」の「2」の意味って昔からあったのだろうか。これは本来は「食う」だったのに、「食べる」が広まってから生まれたのではないかって気がする。この意味と思われる「食う」を使う慣用句はいくつか思いつくけど、「食べる」とは言わない。
「食い扶持」とは言うけど「食べ扶持」とは言わない。
「食い詰める」とは言うけど……。
「食いっぱぐれる」とは言うけど……。
「オマンマの食い上げ」とは言うけど……。
「食うや食わず」とは言うけど……。
 そう考えると、これから先も「食べる」の意味が拡大していくような気がする。
 とりあえず現段階で「食べる」を使う慣用句っぽいものをあげてみる。

1)「食べる」が一般的?
食べ盛り
食べ頃
食べ歩き

2)どっちでもいい(慣用句でさえない?)
食べごたえ(食いごたえ)
食べかけ(食いかけ)
食べさし(食いさし)
食べかす(食いかす)

3)本来は「食う」の慣用句
食べず嫌い
食べ合わせ
食べ出

 1)は比較的新しい言い回しって気がする。
 ふと思ったんだけど、「食べ盛り」ってなんかおかしくないか? 「育ち盛り」が本来の形って気がしないでもない。
 もしかすると、昔は「食べ頃」って概念が現代ほどなかったのかもしれない。収穫したときが「食べるとき」だったから。これに関しては理屈はどうにでもつく気がするのでパスする。「食べる」をほとんど使わなかった頃はなんて言ったんだろう。「鬼も十八……」(←やめんか!)
「食べ歩き」は、2つの意味がある。
「歩きながら食べる」……昔の人はそんな下品なことはしません。ホントか?
「いろんな飲食店を回る」……「食い道楽」かな。
 こんなことを主観で書いていてもしかたがないか。(←オイ!)

 すんごくヤな気がするのは3)に関して。こんなのは、本来は「食わず嫌い」「食い合わせ」「食い出」(こんな表記なんだ)に決まっている(断言してしまう)。でも「食べ」の形も市民権を得ているだろう。「食べ出」あたりは、こっちのほうが一般的かも(「食い出」は変換さえできなかった)。
 さて、次に「食べ」に身を売るのはドイツだ? クウェート? クワ(?)ラルンプール?

突然ですが問題です【日本語編】のバックナンバー
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2570.html

突然ですが問題です【日本語編71】──平成22年度「国語に関する世論調査」から【解答?編】

【問題】

■言葉の意味
 1)~5)の意味を(ア)(イ)から選びなさい。
1)情けは人のためならず(一般正解率約46%)
(ア)人に情けを掛けておくと,巡り巡って結局は自分のためになる
(イ)人に情けを掛けて助けてやることは,結局はその人のためにならない

2)雨模様(一般正解率約43%)
(ア)雨が降りそうな様子
(イ)小雨が降ったりやんだりしている様子

3)姑息(一般正解率約15%)
(ア)一時しのぎ
(イ)ひきょうな

4)すべからく(一般正解率約41%)
(ア)当然,是非とも
(イ)全て,皆

5)号泣する(一般正解率約34%)
(ア)大声を上げて泣く
(イ)激しく泣く


■慣用句等の認識と使用
 1)~5)の意味を(a)(b)から選びなさい。
1)「することや話題がなくなって,時間をもて余すこと」を(一般正解率約29%)
(a)間が持てない
(b)間が持たない

2)「古くからのやり方にのっとった様子で」を(一般正解率約67%)
(a)古式ゆかしく
(b)古式豊かに

3)「僅かの時間も無駄にしない様子」を(一般正解率約28%)
(a)寸暇を惜しんで
(b)寸暇を惜しまず

4)「大きな声を出すこと」を(一般正解率約11%)
(a)声を荒(あら)らげる
(b)声を荒(あ)らげる

5)「前に負けた相手に勝つこと」を(一般正解率約43%)
(a)雪辱を果たす
(b)雪辱を晴らす





【解答?例】
■言葉の意味
 1)~5)の意味 (ア)。

■慣用句等の認識と使用
 1)~5)の意味 (a)。


【よくわからない解説】
「言葉の意味」から順番に見ていこう。
 このあたりは前にも見たとおり。「情けは人のためならず」はちょうど半々くらい(重言?)か。こういうのがイチバン困る。いっそ誤用のほうに傾いてくれたほうがマシな気がする。
「雨模様」は死語一歩手前かな。日常ではめったに使わないだろう。
「姑息」は「もうダメ」の例。
「すべからく」。正しい意味を答えた人が多い? 嘘だろ。マンガで見るのはほとんど誤用だよ。「当然」ととれなくもない微妙な用例はたしかに多い。でもさ、さらに言うとね。本来は「すべからく~すべし」って係り結び的に使うのよ。ホントにこんなに多くの人が理解できているのだろうか。当方は意味も使い方もよくわからないので、こんな言葉はギャグとしてしか使いません。
「号泣する」は「激しく泣く」ではダメですかね。だって「激しく泣く」ときはたいてい「大声を上げて泣く」と思うよ。「激しくむせび泣く」場合や「激しく嗚咽する」場合は「号泣する」とは言わないってこと?

「慣用句等の認識と使用」のほうは……。
「間が持てない」と「間が持たない」。なんと言う微妙な話を(笑)。
 たしかに、「間が持てない」が本来の形だろう。ただ、「することや話題がなくなって、時間をもて余すこと」というニュアンスでは考えてなかった。「話題に詰まって気まずくなる」くらいの意味ででとらえていた。ああ、懐かしの初デート。いまなら「案ずるより有無を言わさず」的な行動をとるんだけど。
 ただ、「間が持たない」だって立派な日本語って気もしないでもない……。慣用句に関して理詰めで考えてもダメか。
突然ですが問題です【日本語編62】──微に入り細を穿つ 微に入り細に入り 微に入り細に入る【解答?編】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2099.html

「寸暇を惜しまず」は、論理的に考えれば「寸暇を惜しんで」だろうな。こういう誤用が生まれるときは、たいてい正しいほうが論理的におかしいんだけど、これはレアケース。おそらく「骨身を惜しまず」との混用だろう。

「雪辱を果たす」と「雪辱を晴らす」。当方の語感だと、両方ともヘンな気がする。「雪辱」自体が「辱(はずかし)めを雪(すす)ぐ」って意味だろう。「晴らす」は相当ヘンだけど、「果たす」も重言風になる。「雪辱する」「雪辱戦」あたりならOK。
 ただ、Web辞書に「遂げる」「果たす」って用例があるから、逆らいません。

 詳しくは下記をご参照ください。
文化庁もさぁ4──「痛っ」「寒っ」「怖っ」「長っ」 ほか
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2143.html
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