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「故障中」は誤用なのだろうか〈1〉〈2〉

 下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2020.html
日本語アレコレの索引(日々増殖中)【7】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1789673749&owner_id=5019671


mixi日記2008年11月10日から
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=990297431&owner_id=5019671

『ガリレオ』(東野圭吾)の中に、湯川学(福山雅治)が自動販売機に「故障中」と張り紙がされてあるのを見て、
「故障中、という言葉はあるのかな。故障、だけで意味は通るはずだが」
 と呟くシーンがあるらしい。
 この「故障中」は辞書にも一語として掲載されていないから誤用なのか、という質問をいただいた。

 お答えしましょう。このテの合成語は辞書にはほとんどのっていません。したがって、のっていないからと言って誤用とは言い切れません。
 では「故障中」は誤用か否か。明確に断言しましょう。
 当方にはわかりません。<( ̄- ̄)> エッヘン!
 この表現が誤用か否かを考えたキッカケは、テレビ番組の『ジャポニカロゴス』。
 下記あたりがわかりやすいかな。
【ジャポニカロゴス 故障中の検索結果から】
http://koda.jugem.cc/?eid=1192
=================================
故障中→故障
※○○中となるのは時間的に継続する事柄でなければいけない。
一瞬の変化を表す名詞は○○中とはならない。
=================================
 ってことらしい。
 かの有名な「赤い本」にも出てくる「継続」の動詞と「瞬間」の動詞の話ですね。
「継続」の動詞の「販売」は「販売中」にできても、
「瞬間」の動詞の「発売」は「発売中」にするのはヘンということ。
 よく目にする「好評発売中」などはほとんど誤用、という話だ。

 一般によく混同されているのが「就航」(瞬間)と「運航」(継続)。「運航中」とは言えても「就航中」はヘン。
 
 では「瞬間」の動詞に「中」はつかないかと言うとそんなことはない。
 目にする例だと「特許出願中」「特許申請中」なんてのがある。「出願」も「申請」も「瞬間」の動詞でしょ。
 それ以前に「故障」は「瞬間」だけど「継続」でもあるだろう、って疑問もある。いったん「故障」したものは修理しない限りは「故障」したままなんだから、「故障中」でもいいだろう、って気がする。
 待てよ。「出願」や「申請」も、取り下げない限りは「中」なのかな。
 「瞬間」だけど「継続」でもあるって言葉はいくらでもある。
 対になっている言葉なのに「入院」は「瞬間」&「継続」だけど、「退院」は「瞬間」だけ。だから「入院中」はアリだけど「退院中」はナシ。
 それがなぜか「入学」と「退学」(フツーは「卒業」か)はどちらも「瞬間」。ああ、日本語はむずかしい。

 とは言え誤用説がこんなに知られると、例によって「故障中」は使えない言葉になっちゃったけど。

 ついでに書くと、これもテレビ番組の影響で「考え中」って言い方が広まった。そんな日本語はないって説もあるが、日常的なやり取りの中ではアリだと思う。「考慮中」「思案中」なんかよりも、ずっとやわらかい感じがする。

【追記】
 Web辞書の『大辞泉』は「就航」の「継続」のほうの意味も認めているようだ。困ったもんだ。言葉の構造を考えればヘンでしょうに。まあ、それだけそういう用例が(「誤用」とは言えない?)多いのだろう。こうしてまたWeb辞書嫌いになっていく。
■Web辞書(『大辞泉』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E5%B0%B1%E8%88%AA&stype=1&dtype=0
================================
しゅう‐こう〔シウカウ〕【就航】
[名](スル)
1 船舶や航空機が初めて航路につくこと。「世界最大のタンカーは明日―する」
2 船舶や航空機がその航路で運行されていること。「現在―している船」
================================


【「故障中」は誤用なのだろうか】〈2〉──
故障中 婚約中 就寝中 結婚中 発注中

 順を追って書こう。ブログのアクセス解析に、あるブログからの【「故障中」は誤用なのだろうか】へのアクセスが複数確認できた。何事かと思って見にいくと、リンクが張ってあった。
【張り紙「故障中」】
http://tombo1005.blog.fc2.com/?no=407

 好青年にふさわしいコメントを残す。
================引用開始
はじめまして。

 アクセス解析から逆探知?しました。
 リンク先のブログを書いた者です。

「故障中」に関しては、「誤用ではない」に傾きつつあります。
 きわめて単純に考えます。
「故障した」のが「故障」。
「故障している」のが「故障中」です。

>故障という負の要因に、”中”という物事の継続を表す語を付けていいのだろうか
 微妙です。
「闘病中」(闘病している)
「療養中」(療養している)
「閉鎖中」(閉鎖している)
 あたりはフツーに使えると思います。

「~している」には「現在進行形(的)」な使い方のほかに「過去の経験(的)」な用法があって……。
 通常は「発売している」はおかしいのですが、「昨年5月に発売している」はアリでしょう。
 ただ。この「~している」の判別法にも例外があって……。
「骨折している」は「骨折中」にはしにくいようです。
================引用終了

 改めて「故障中」に関して考えてみる。
 下記あたりが参考になるだろうか。
【1】【新「ことば」シリーズ17「言葉の「正しさ」とは何か」 問9 - 国立国語研究所】(全文は末尾に)
http://www.ninjal.ac.jp/publication/catalogue/shin_kotoba_series/11_19/pages/kotoba17q09/
 典型的な用法からは外れているが、「誤用とは言えない」としている。

【2】【ことば会議室 故障中】
http://kotobakai.seesaa.net/article/8173711.html
「誤用ではない」のほうが優勢だろう。 

 下記は「誤用」と断じている。
【3】【「故障中」という言葉の使い方は誤用 ~「中(ちゅう)」という字の正しい使い方】
http://www.kotobano.jp/archives/1261
 根拠は2つあるようだ。これが根拠になるのだろうか。

1)「~中(ちゅう)という言葉は、主体が人であるときに使う
 まず「人」という表現が不用意だろう。せめて「生物」にしてほしい。犬だって猫だって「食事中」と言える。植物が「成長中」のこともあれば菌が「増殖中」のこともある。さらに言うと、「生物」が主体のことが多いが、そうではないものが主体の例だって考えられる。
「気温が上昇中」
「記録が継続中」
 ほかにもいろいろあるだろう。

2)その状態にあることを表現しており、状態を伝える「~中(ちゅう)」という言葉を続けてしまうと重複表現(重語)になってしまう
 一般にはこういう考え方をすると思う。でも、「状態にあることを表現して」いるか否かをどうやって判断するのか不明。当方にはわかりません。
「病気中」と言いにくいのは「病気」が状態だからだろうか。
「療養中」と言えるのは「療養」が状態ではないからだろうか。
 百歩譲って「重言」であったとしても「誤用」ではない。


【1】を読むと、当方の考え方はさほど的外れでないことがわかる。
 当方は「~している」に置きかえたが、【1】は「~し続ける」に置きかえている。
「~している」には得体の知れない用法があるし用途が広すぎるので、「~し続ける」のほうがいいのかもしれない。
 たとえば「安定している」とは言えるが、「安定中」「安定し続ける」とは言えない。
「故障中」は誤用で「修理中」が正用と主張もヘンってことだろう。まさに「修理」の「作業中」なら「修理中」になる。たいてい「放置中」でしかない。修理のための部品を「発注中」だったら、「修理中」でもOKなのかな。
 この「発注中」あたりも厳密に言うと「~し続ける」ではない。1回発注したら納品を「待機中」でしかない。「問い合わせ中」とかも同類だろう。
「~している」に関して詳しくは下記をご参照ください。
【「~ていません」「~ませんでした」】☆日本語教師☆〈1〉〈2〉】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1175.html

 微妙なヤツをどう考えればいいのかがわからない。【1】の記述から引く。
================引用開始
 「~し続ける」という言い方が成立しない場合でも,人間が主体であり,かつ「いずれ解消される状態を一時的に保つ」という意味が認められれば,「~中」という言い方は,典型的な用法とは言えませんが,比較的成立しやすくなります。
婚約中(結婚までの間,婚約した状態を保つ)(×婚約し続ける)
就寝中(起きるまでの間,就寝した状態を保つ)(×就寝し続ける)
 「×死亡中」「×結婚中」のように,「いずれ解消される状態を一時的に保つ」ということが考えにくい場合は,人間が主体であっても,「~中」という言い方は成立しません。
================引用終了

 細かいツッコミをひとつ。「就寝中」ってアリなんだろうか。
「就職」「就航」あたりは「瞬間」を表わすので、「継続」には使えない。「就寝」は微妙。「瞬間」が本義だろうが、かろうじて「継続」に使える気がしないでもない。必然的に「就寝中」も微妙になる。
「眠っている間に汗をかく」「睡眠中に汗をかく」ならフツーだが、「就寝中に汗をかく」は……。

 もうひとつ妙なことに気づく。
「中」には多くの意味がある。予想以上に多い。
http://kotobank.jp/word/%E4%B8%AD?dic=daijisen&oid=08570500
================引用開始
ちゅう 【中】

[音]チュウ(呉)(漢)ジュウ [訓]なか うち あたる
[学習漢字]1年
〈チュウ〉
1 物のまんなか。「中央・中核・中原・中心・中枢・中点/正中」
2 二つの物の間。また、上下・大小などに分けたときの、間のところ。「中位・中音・中間・中佐・中耳・中旬・中農・中略・中流」
3 いずれにも偏らない。「中道・中庸・中立・中和」
4 一定の空間・時間の範囲のうち。「暗中・意中・渦中・懐中・寒中・眼中・忌中・宮中・在中・山中・車中・術中・掌中・陣中・水中・忙中・夢中」
5 一定の範囲の全体。「年中(ねんじゅう)・二六時中」
6 物事の進行のなかほど。「中座・中止/最中・途中・道中」
7 仲間うち。「社中・女中・連中(れんちゅう・れんじゅう)」
8 中心をずばりと突き通す。あたる。「中毒・中風/的中・南中・命中・百発百中」
9 中国。「中華/日中・米中・訪中」
10 「中学校」の略。「中卒」
================引用終了

 ここで話題にしているのは、「6」(現在~し続けている)なのだが、場合によっては「5」(もしくは「4」、~の期間中)とまぎらわしいことがある。
「在任中」「在職中」あたりは、「5」だろう。
「結婚中」も「5」の意味ならアリって気がする。「結婚中に獲得した財産は夫婦共有のもの」とか。実際には「婚姻(期間)中」などという気はするが、「結婚中」が×とは思えない。
 屁理屈っぽいことを承知で書くと、「故障中」も「故障期間中」ととれなくはない。
「故障中もメイン電源を落とさない限り、待機電力を消費します」(ヤな機械だな)

 そう考えると、「~し続ける」ではなくても「○○中」と言えるものの説明がつくかもしれない。
「婚約中」→「婚約期間中」
「就寝中」→「就寝時間中」(やはり異和感がある)
「発注中」→「発注して納品を待っている時間中」
「問い合わせ中」→「問い合わせして納品を待っている時間中」

 こうなると、「骨折中」も「骨折している間」なのでOKになりそう。「骨折中は激しい運動は控えるように」……実際には「骨がくっつくまでは~」と言うだろうな。

 外来語をからめるとさらに混迷が深くなる。
「リハビリ中」はOKだろう。
「スランプ中」は微妙。


【1】【新「ことば」シリーズ17「言葉の「正しさ」とは何か」 問9 - 国立国語研究所】
================引用開始
新「ことば」シリーズ17「言葉の「正しさ」とは何か」 問9
問9 「故障中」という言い方は文法的に間違っていると聞いたことがあるのですが,本当ですか。私は間違っているとは感じないのですが。

「文法的に間違っている」とはどういうことか

 文法とは,ことばのパターン(規則性)のことです。そして,通常のパターンに合わない言い方は「文法的に間違っている」と言われます。たとえば,日本語学習者が「×着らない」「×おいしいの料理」のような言い方をすれば「誤用」とされますが,それはこの言い方が日本語の通常のパターンに合わないからです。

 しかし,通常のパターンに合わない言い方がすべて文法的に間違っているというわけではありません。例えば,「行く」の過去形は「行った」ですが,これは「く」で終わる動詞の通常のパターン(例:聞く→聞いた)とは異なります。また,形容動詞が名詞につくときは「静かだ→静かな街」のように「だ」が「な」になりますが,「同じだ」が名詞につくときは「×同じな値段」ではなく,「同じ値段」となります。

 人間にいろいろな人間がいるのと同じように,語にもいろいろな語があります。中には,「行く」「同じだ」のように,通常のパターンに合わない例外的なふるまいをする語もあります。通常のパターンとは異なるというだけで,文法的に間違っているわけではありません。文法的に間違っている(いない)というのは,「母語話者がその表現を不自然と感じるかどうか」という問題なのです。

「故障中」を不自然に感じる人と感じない人がいる理由

 さて,問題の「故障中」ですが,私自身はこの言い方にそれほど不自然さは感じません。しかし,「故障中」という言い方に違和感を覚えたり,不自然だと感じたりする人も少なくないようです(参考文献)。

 このような差が生ずる背景には,「故障中」という言い方が「~中
ちゅう
」という表現の典型的な用法から外れているということがあります。

 「~中」は「動作を一時的に保つ」ことを表す表現で,典型的には「~し続ける」という言い方が成立するものについて用いられます。

食事中(食事し続ける),走行中(走行し続ける),滞在中(滞在し続ける),
開放中(開放し続ける),停止中(停止し続ける)

 「~し続ける」という言い方が成立しない場合でも,人間が主体であり,かつ「いずれ解消される状態を一時的に保つ」という意味が認められれば,「~中」という言い方は,典型的な用法とは言えませんが,比較的成立しやすくなります。

婚約中(結婚までの間,婚約した状態を保つ)(×婚約し続ける)
就寝中(起きるまでの間,就寝した状態を保つ)(×就寝し続ける)

 「×死亡中」「×結婚中」のように,「いずれ解消される状態を一時的に保つ」ということが考えにくい場合は,人間が主体であっても,「~中」という言い方は成立しません。

 ここで「故障中」について考えてみると,まず「故障」は「×故障し続ける」とは言えません。また,人間が主体ではない点で「婚約中」「就寝中」などとも異なります。つまり,「故障中」という言い方は「~中」の典型的な用法からかなり外れているのであり,「故障中」を不自然に感じる人はこのずれが気になるわけです。

「典型的ではない」と「文法的に間違っている」の差は微妙

 しかし,典型から外れているというだけで「文法的に間違っている」とは言えません。実際,「×死亡中」「×結婚中」などとは異なり,「故障中」には「いずれ解消される状態が一時的に保たれる」という意味は認められるので,「~中」の典型的な用法との共通性は保たれています。「故障中」を特に不自然に感じない人は,典型からのずれよりも,典型との共通性の方をより強く感じているわけです。

 「典型的ではないが文法的ではある」と「文法的に間違っている」の差は微妙です。「故障中」の問題はまさにそのような問題なのです。

参考文献
国広哲弥『日本語誤用・慣用小辞典』(1991年,講談社)
(井上優)
================引用終了


 下記も少し参考になるかも。
 ツッコミどころも……。
http://web.ydu.edu.tw/~uchiyama/conv/chyu.html

【コメントに対する追記】
 あまりにも興味深いコメントをもらったので、返信を追記の形にする。後日もれなくブログにも追記します。支障があるなら言ってください。

================引用開始
1)Sさん
2014年06月21日 23:36
 小学校の国語で『戦争』と『平和』を対義語として教えられた時から、何となくおかしいような気がしていまして。
 今考えてみて、『戦争中』は言えるけれど『平和中』は言えませんよね。
================引用終了
================引用開始
2)Jさん
2014年06月22日 16:55
> Sさん 
言われてみれば。
動詞と形容動詞が対義語として一対になるってのも変な感じがしますね。
それ自体は普通のことなのか知らん(?_?)

(横から失礼しました)
================引用終了

 大前提として「戦争」の対義語が「平和」になることに異和感があった。
 だって「戦争」は始まったり終わったりするけど、平和はそういうことはない。
「喧嘩」の対義語は「仲良し」か?

 2)のコメントに納得する。そうか。「戦争」も「平和」も名詞ではあるが、たしかに前者は名詞兼動詞で、後者は名詞兼形容詞。つまり前者は「行動」的で後者は「状態」的。

「中」をつけると、そこが明確になる。「戦争中」はあっても「平和中」はない。
 ただ、「戦時」「平時」だとどちらも名詞だろう。でも「戦時中」はアリで「平時中」はナシ。なんでだ?
 よく考えると、「中」のニュアンスを含む気がする。もしかすると、「戦時中」は厳密には重言なるのかな。
 
 品詞の違う言葉が対義語になるか否か。
 基本的には同じ品詞だろうけど、例外もいろいろありそう。
 有名なのは「ある」と「ない」だろう。
 あとは……。
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「ガ、」の修辞学 外伝

 下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2828.html

日本語アレコレの索引(日々増殖中)【13】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1929935424&owner_id=5019671

mixi日記2014年11月13日から

 直接的には下記の続きだろうな。
110)【「ガ、」の修辞学】2009年12月16日
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-915.html
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1364668143&owner_id=5019671

757)【「ガ、」の修辞学〈2〉】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2374.html
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1839875398&owner_id=5019671

 テーマサイトが2つある。
テーマサイト1)【「山田ですが」 の 「が」 は 「but」?】
http://oshiete.goo.ne.jp/qa/8723742.html
 ここから下記が派生?している。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10137332810/a343140381

テーマサイト2)【ウサイン・ボルトがドーピングしてるかどうかは分からないが、ドーピングは良くないことだ。】
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12138129092

 まずテーマサイト1)のベストアンサーから転載する。
==============引用開始
日本語の接続助詞の「が」(「が」と「け(れ)ど(も)」を一緒にして「が・けど類」とも呼ばれます)は、

1.逆接・対比
2.並列・累加
3.主題の提示
4.補足説明・前置き
5.注釈
6.言い切り回避

といった用法があります。(これ以外にも、あると言っている人もいます)
「山田ですが、田中さんはいらっしゃいますか?」の「が」は、4の補足説明・前置きの用法ですね。
==============引用終了

 出典が知りたい。文法辞典だとこういう書き方になるのだろうか。
 疑問もある。
「3.主題の提示」は、一般には主格(厳密には違う)を示す格助詞の「が」だろう。
「僕が食べました。」「天気がいい。」……etc.
「6.言い切り回避」は、文末の「が」だろう。これも格助詞かな。
「そんな気もするのですが……。」……etc.
 接続助詞の「が」は次の3つに絞れるのでは。
1.逆接・対比
2.並列・累加
4.補足説明・前置き

 これが当方の従来の分類だと下記の3つになる。
「逆接のガ、」
「順接のガ、」
「曖昧のガ、」
 このうち「曖昧のガ、」は、やはり2つに分けたほうがよさそうだ。新たな分類。
1)「逆接のガ、」(「。しかし、」に書きかえられる)
2)「順接のガ、」(「。そして、」に書きかえられる)
3)「曖昧のガ、」(「。しかし、」にも「。そして、」にもしにくい)
4)「両義のガ、」(文脈しだいで「。しかし、」にも「。そして、」にもなる)
 一般的な呼称に当てはめると、「順接のガ、」は「並列・累加」とか「単純接続」になる。
「曖昧のガ、」は「補足説明・前置き」だろう。
「両義のガ、」の典型は110)【「ガ、」の修辞学】でひいた『「超」文章法』の例文がわかりやすい。「彼は頭はよいガ、」が「両義のガ、」になる。
==============引用開始
【引用部】(一部の表記をかえている)
「曖昧接続の『……が』を使うな」という忠告がある。「曖昧のガ、」とは、つぎの文中の「ガ、」のようなものである。
  「彼は頭はよいガ、走るのも速い」というような表現がよく使われるガ、この
  「ガ、」は明確な意味を持たない。頭のよい人は必ず遅いというなら、この
  「ガ、」は〈しかし〉の意味になるガ、そうとも限らない。
「曖昧のガ、」を使うと、論理関係がはっきりしなくとも文を続けられる。そこで、非常に頻繁に使われる。
「作文の際の留意事項だガ、最も重要なのは、曖昧表現しないことだ」
というように。
「〈曖昧のガ、〉を排除せよ」という注意は、正しい。ただし、これは正論である。正論の常として、息がつまる。一度、「曖昧のガ、」をまったく使わずに本を一冊書いたことがあるガ、息がつまった。「死ぬまでに一度たっぷりつゆをつけてそばを食いてえ」という気持ちがよくわかった。ただし、一つのパラグラフに三度以上は現れないようにしたい。
 私が初めて「〈曖昧のガ、〉を使うな」という注意に接したのは、清水幾太郎の『論文の書き方』である。しかし、いまこの本を読み直してみると、「曖昧のガ、」が何度も出て来る。「私が言うとおりにせよ」と注意するのは簡単だガ、「私がするとおりにせよ」と示すのは至難のわざだ。(p.210~211)

(略)

1)彼は頭はよいガ、→逆接・順接のどちらにもとれる「曖昧のガ、」
「彼は頭はよい。しかし、走るのも速い」の意味にもとれるし、「彼は頭はよい。そして、走るのも速い」ともとれる。どっちの意味になるかは文脈しだいだ。たとえば、「頭のよい人はたいてい運動が苦手だ」みたいな流れだったら、「逆接のガ、」になる。
 一方、「天は二物を与えず、が当てはまらない人もいる」みたいな流れなら、「順接のガ、」になる。ただし、その場合はこんな文を書くヤツが悪い。順接の意味なら、「よいガ、」を「よく、」とか「よいうえに、」ぐらいにするほうがずっと自然だ。その場合は「頭は」ではなく、「頭も」のほうが自然かもしれない。
==============引用終了

「よく使われるガ、」も「両義のガ、」の一種だと思うが、話が長くなるのでパスする。
 で、やっとテーマサイト2)の話になる。
 まず全文をひく。
==============引用開始
① ウサイン・ボルトがドーピングしてるかどうかは分からないが、ドーピングは良くないことだ。
② 以前から思っていたが、ローラはとても可愛い。
③ 大げさかもしれないが、私は人生の殆どを棒に振ってしまった。
④ どこのどいつだか知らないが、舐めた真似をしてくれるもんだぜ。
⑤ 昨日も言いましたが、体調管理をしっかりして下さい。
⑥ 昨日出された宿題ですが、全部解き終わりました。
⑦ 同じ中学に通ってたから分かるんだが、彼の身体能力は凄い。

①〜⑦の文章の「が」はここでは逆接の働きをしてるのではなく、単純に文と文を接続してるんですよね?
もし、上の文章の中に逆接の「が」があるのなら指摘をお願いしますm(._.)m
==============引用終了

 基本的にはすべて「順接のガ、」(単純接続)でいいと思う。しかし、やや苦しくても前後の文脈(重言)をによっては「逆接のガ、」になりそうなものもある。少し言葉を加えてみるとわかる。
①ウサイン・ボルトがドーピングしてるかどうかは分からないが、(いずれにしても)ドーピングは良くないことだ。
「いずれにしても」を入れると、「が、」は「。しかし、」にできる気がする。
②ハーフの芸能人はどこか作り物っぽくて好きになれない。(そう)以前から思っていたが、ローラはとても可愛い。
 これだと「逆接のガ、」だろう。
③その出来事が、私の人生観をメチャクチャにした。(そこまで言うと)大げさかもしれないが、(その出来事のせいで)私は人生の殆どを棒に振ってしまった。
 これだと「逆接のガ、」だろう。
④(こんなことをしでかしたのが)どこのどいつだか知らないが、舐めた真似をしてくれるもんだぜ。
 これは原文のままでも「逆接のガ、」になりそう。要は前半が言葉足らずのため「曖昧のガ、」(前置き)っぽくなっているのでは。
⑥昨日出された宿題(は常識では考えられないような量)ですが、全部解き終わりました。
 これは原文のままでも「逆接のガ、」になりそう。要は前半が言葉足らずのため「曖昧のガ、」(前置き)っぽくなっているのでは。
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