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「大丈夫ですか」考 日本語

 下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-306.html
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1486031711&owner_id=5019671

mixi日記2010年09月03日から
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1574884694&owner_id=5019671

 テーマトピは下記。
【「大丈夫」(?)】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=56052070

 まず、トピ主の質問を一部抜粋する。
================================
8月29日(日)の日経新聞の「歌壇」に

  なにかにつけ「大丈夫ですか」は若きらの丁寧言葉と聞き流せるも

という入選歌が載っていました。

僕も日ごろ、この手の「大丈夫」には違和感を持っていましたので、歌の作者に親近感を覚えました。

例えば、スーパーで1品を取ってレジに持って行くと、「袋に入れますか」「いいえいりません」「大丈夫ですか」・・・というような会話になります。

自分の目の前で転んでしまった人に「大丈夫ですか」と声を掛ける、というような使い方が本来だったと思いますが、なぜ、いつから、だれがスーパーでの例のような使い方をするようになったのでしょうか。
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 まず、日経新聞の「歌壇」に採用された短歌の解釈。
 これは本来の「いたわりの大丈夫」(仮にこう呼ぶ)って気がする。かなり老齢の作者が、見知らぬ若者に「大丈夫ですか」としょっちゅう声をかけられる。親切心から出る丁寧言葉と思いながらも、それほどいたわられる身になったと感じて嘆いている……と読める。
 短歌の解釈の問題なんで、あまり深入りする気はない。

 それとは別に、最近に妙な「大丈夫ですか」が増えている気がする。トピ主が書いた「大丈夫」の例。これは一般に問題視されているのとはちょっと違う気がする。仮に「確認の大丈夫」と呼ぶ。

 当方が「1」でリンクを張った下記のコミュでは、別の使い方が出ている。
【日頃おかしいと思う日本語の使われ方】(「447」~と「886」~)
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=697073

「447」に出てくるのは下記の例。
店員「トッピングのメニューがありますが、いかがですか?」
客「大丈夫です」→1)

店員「(スタンプカードを)作りますか?」
客「大丈夫です」→2)

「886」に出てくるのは下記の例。
店員「袋に入れますか?」
客「大丈夫です」→3)

 1)~3)はいずれも「いりません」の意味だろう。最近増えているのはこの用例だろう。トピでいろいろ意見が飛び交っている。「いります」の意味にとるのはちょっと無理があるだろう。
 これを「不要の大丈夫」と呼ぶことにする。

 ここで辞書をひいておく。
■Web辞書(『大辞泉』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E5%A4%A7%E4%B8%88%E5%A4%AB&dtype=0&dname=0na&stype=0&index=13554611185800&pagenum=1
 ↓
https://kotobank.jp/word/%E5%A4%A7%E4%B8%88%E5%A4%AB-557414#E3.83.87.E3.82.B8.E3.82.BF.E3.83.AB.E5.A4.A7.E8.BE.9E.E6.B3.89
================================
だい‐じょうぶ〔‐ヂヤウブ〕【大丈夫】
【1】[名]⇒だいじょうふ(大丈夫)

【2】[形動][文][ナリ]
1 あぶなげがなく安心できるさま。強くてしっかりしているさま。「地震にも―なようにできている」「食べても―ですか」「病人はもう―だ」
2 まちがいがなくて確かなさま。「時間は―ですか」「―だ、今度はうまくいくよ」
◆近年、形容動詞の「大丈夫」を、必要または不要、可または不可、諾または否の意で相手に問いかける、あるいは答える用法が増えている。「重そうですね、持ちましょうか」「いえ、大丈夫です(不要の意)」、「試着したいのですが大丈夫ですか」「はい、大丈夫です(可能、または承諾の意)」など。
【3】[副]まちがいなく。確かに。「―約束は忘れないよ」
================================

 やはり辞書はひくもんだ。この『大辞泉』の注はかなり適確だと思う。同じWeb辞書でも『大辞林』にはこのテの記述はない。名詞の「大丈夫」に関しては、今回のテーマにはあまり関係がないのでパスする。
「いたわりの大丈夫」「確認の大丈夫」は本来の意味と考えていいだろう。これの詳細に関しては後述する。
 リンクを張ったトピの1)~3)は、いずれも「不要の大丈夫」だろう。これはアリだと思う。ただし、個人的には「袋は大丈夫ですか?(必要ですか)」という使い方にはかなり異和感がある。
 辞書にあるように、「可能・承諾の大丈夫」の「はい、大丈夫です」もアリの気はする。ただし、「試着したいのですが大丈夫ですか」が「可能・承諾の大丈夫」なのか「確認の大丈夫」なのかは微妙だろう。
 自分で使うかと言うと、「不要の大丈夫」も「可能・承諾の大丈夫」も原則的には使わない。これは個人の感覚の問題なので、強く主張する気はない。

「あしたの合コンは大丈夫?」(出席できる?)
 ……「可能・承諾の大丈夫」なのか「確認の大丈夫」なのかは微妙だろう。
「たぶん大丈夫」(出席できる)
 ……「大丈夫」と訊かれたら「大丈夫」とこたえるかも。これは「可能・承諾の大丈夫」だろうか。
「頼むよ、tobirisuが来ないと女性陣が盛り上がらないんだ」
「そんなレベルの低いメンツで大丈夫かよ」
 ……「確認の大丈夫」だろうな。
 ここまで無理のある例文は不可かな?(笑)

 閑話休題。これは正しい使い方だよな。http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1512484166&owner_id=5019671
 ……えーと。
「いたわりの大丈夫」「確認の大丈夫」は、1つにまとめてもよいのだろうが、かなり微妙な場合がある気がするので2つに分けた。
「確認の大丈夫」は本来の意味合いのはずだが、マズい場合もある。
 まず、目上の人には使えないと思う。たとえば上司が「この案件は私が責任をもつ」と言っているのに「大丈夫ですか?」と訊いたら、「オレを信用できないのか!」と怒鳴られても不思議はない。
 その意味でトピ主があげた「確認の大丈夫」も不適切だろう。「いらないって言ってるだろ!」と客に怒鳴られても仕方がない気がする。意味は本来の形に近いけど、使い方が不適切。「いいえいりません」と言っているのに「確認」するのはダメ押し・押しつけに近い。「ありがとうございました」と言って釣り(あれば)とレシートを渡すべきだろう。
 ただし、たとえば上司の具合が悪そうなときに「大丈夫ですか」はあり。これは「いたわりの大丈夫」のニュアンスが強くなるから。入院中の上司の見舞いにいったときの「大丈夫ですか」も「いたわりの大丈夫」。
 高齢者に対する「大丈夫ですか」は、多くは「いたわりの大丈夫」だろう。基本的に年長者は目上だけど、使っても問題はないと思う。ただし、ちょっと注意が必要かもしれない。電車などで微妙な年齢の人にムヤミに座席を譲るのはかえって失礼なことになる。いまの高齢者って、軟弱な若いモンより元気なんだから。
 冒頭の短歌も、自分では元気なつもりだからこそ、「大丈夫ですか」と言われることをさびしく感じているのでは。


 辞書にも見当たらない特殊な用例もある。
 これはネット上でのモメゴト限定かな?
「大丈夫ですか」が「頭おかしいんじゃないの?」という意味になることがある。日本語学習者やまともな日本人が知る必要はまったくない用法だろう(黒笑)。


【追記1】
「3」のコメントを読んで妄想が広がる。一部抜粋(重言)する。
================================
今から20年ほど前,横浜中華街あたりにあるホテルに泊まった時,チェックアウトの際に,清算がすべて済んで,冷蔵庫や電話などの追加料金もない,という状態で,従業員が「大丈夫です」と私に言うのです.
================================
 別にこれが現代の「大丈夫です」のルーツなんてことはないだろう。「3」のコメントもそんなことを主張しているわけではないと思う。
 ただ、「大丈夫」って相当用途が広い気がする。外国人にとっては「どうも」に匹敵する万能語なのでは。思いつくだけでも下記のような意味で使える。
「心配ないさー」(←大西ライオンかよ!)
「OK」
「問題ない」
 とくに気になったのは「問題ない」。
 英語なら「No problem.」で、中国語なら「無問題」(「沒問題」かな)だろう。どちらもよく使われる表現だと思う。
 日本語に直訳すると「問題なし」「問題ありません」かもしれないが、どうにも偉そうで日常語にはなりにくい。そこで、その中国人は「大丈夫です」を使っていたのでは。
 ちょっと微妙な話なんで書き方に気を使うが、ドラマなどで片言の日本語を話す中国系(正確には韓国系?)の人たちが「大丈夫」と言うのが記憶に残っている。その場合に日本語の濁音が発音しにくいらしく「たいちょーぷ」になっていた。最近は聞かないなぁ。

 妄想はさらに広がり、現代の話に戻る。
「大丈夫」の用途の広さが注目され、若者層を中心に広がったのでは(「用途の広さ」と言うより「使いやすさ」かな)。ある意味、「かわいい」の蔓延に近い。こうして日本語の語彙が減っていく?
72)【「あはれ」と「をかし」をめぐって   独り言です36くらい──日本語教師関連編15くらい】(2009年10月01日)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1298628736&owner_id=5019671
 もうひとつ思い当たるのは「いりません」という言葉がかなり強い響きをもっていること。これが嫌われて、「いらないです」という文法的には問題のある言い回しをする人が増えている気がする。
【板外編7】デス・マス体が書きにくいワケ1(No.277)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1114634130&owner_id=5019671
 同じ理由で「不要の大丈夫」が広まったのでは。


【追記2】
 ついさっきコンビニで雑誌を一冊だけ買ったら、「袋に入れなくて大丈夫ですか?」と訊かれて笑いそうになった。
 ↑にあげた例とは少し違っている。トピ主があげた例の短縮形なのだろうか(笑)。
「確認の大丈夫」だと思うが、意味を考えると「不要の大丈夫」ととれなくもない。
 意味は通じるけど、違和感を感じる(重言)人もいるかもしれない。
「袋に入れなくてもよろしいですか?」
 くらいがフツーだと思う。
「違和感を感じる」に関しては下記を参照。
162【重言の話5──「まず第1に」「違和感を感じる」】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1454999593&owner_id=5019671
 

【20120218追記】
『大辞泉』に出てくる「地震にも大丈夫なようにできている」「病人はもう大丈夫だ」が、↑の分類のどれでもない気がする。「安全保証の大丈夫」くらいかな。場合によっては「励ましの大丈夫」かも。
 

【追記】こういうサイトもあるんだ。
http://dic.yahoo.co.jp/newword?ref=1&p=%E5%A4%A7%E4%B8%88%E5%A4%AB%E3%81%A7%E3%81%99&index=2003000660
================================
大丈夫です(だいじょうぶです)-社会-2003年11月26日
若者たちが「結構です」とか「ありません」の意味合いで使っていることば。ホテルのレストランで朝食のバイキングを終えた後に「サインは必要ですか?」と聞くと、若いウエイターが「大丈夫です」と答える。「朝食料金は宿泊料金のなかに含まれているのでサインは必要ありません」と言いたいのだろうが、年配者は「何が大丈夫なのか」と思ってしまうことだろう。同じように、後輩を食事に招待して「ご飯のおかわりはどう?」と聞くと、やはり「大丈夫です」という答えが返ってくることが多い。「もう、十分にいただきました。お腹は一杯になっていて満足しています」という意味だろうが、やはり、聞いた側には「何が大丈夫なのか」意味不明である。山梨県地方の方言として「食べ物などを勧められて辞退する時の語」という解説を載せている辞書もあるので一概に間違いとは言えないが、若者たちが常用することに違和感を覚える年配者が多いということを、若者の側も心すべきであろう。
================================

【20150305追記】
「僕と付き合ってくれませんか?」
「大丈夫です」
 というやり取りについてどこかに書いたが、見つからない(泣)。
 この「大丈夫」は「両義ありの大丈夫」(笑)。
「OK」の意味にもとれる。
「NO」(間に合ってます)の意味にもとれる。
 こんなホニャはそうないと思っていた。

http://www.excite.co.jp/News/entertainment_g/20150305/Narinari_20150305_30403.html
==============引用開始
そして番組側から「井戸田さんと結婚してもらえませんか?」とプロポーズ。“茂木ちゃん”は笑顔で「えっ!?」と返し、「う~ん」と少し悩んだ後、「ごめんなさい」と辞退した。その理由については詳しくは明かさなかったが「今はちょっと大丈夫です」とのことだ。
==============引用終了

「今はちょっと大丈夫です」だと曖昧性が増し、「OK」の意味にはとれそうにない(笑)。


【20160907追記】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=125916&id=78540703
==============引用開始
【大丈夫です】

最近よく話題にもなっているし、「誤用もしくは意味が変化した代表的な日本語」として認知度は高いようですが、そもそも私は違和感がありました。今でもとても気になります。

先日処方箋薬局で、薬剤師がおそらくは「ジェネリックを使う(購入する)か」という質問をしたかったのでしょう、初めてらしい客(患者)に、「ジェネリックというのをご存知ですか?」と切り出したとたんに、「大丈夫です」との答え。

ジェネリックそのものは知っていて理解している様子でしたが、流石にこれには薬剤師が困った顔でした。「患者本人の負担も少ない、ジェネリックを出していただく配慮は不要ですよ」の意味なのか、「はい、先行品にはこだわらないので、ジェネリックで結構です」なのか、まさに「半々」でまったくわからない。結論としてはジェネリック不要だったようですが、そんなことはどうでもいい。
要するに、「日本語として本来おかしい」とかそういう問題ではなく、「これじゃあまったく意味が通じない」「顔色や様子から窺って、yes なのか no なのか、答えを出すしかない」と、つまりコミュニケーションツールとして機能していない、ということです。

こういう場合にも世間のあの人たちは、「言葉は変化するものだ」という、お得意の、「何に対しても実効性の無い伝家の宝刀」を持ち出してくるのでしょうか。
==============引用終了


●「全然大丈夫」に関しては下記。
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1641.html

●バイト敬語/若者言葉のコレクション
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1818.html
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