下記の仲間。
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-category-12.htmlmixi日記2008年10月20日から
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=969581246&owner_id=5019671 前日の日記にいただいた質問に関して、メンドーなので(←オイ)……もとい、ちゃんと書くと話が長くなるので、「
赤い本」に書いたことから抜粋します。
●「~たり」の使い方
【練習問題26】
次の文の「~たり」の使い方は適切なものか、考えてください。
1)昨夜は、飲んだり歌って大騒ぎしました。
2)昔は朝まで飲んだりしたものです。
「~たり」の用法は、2つに大別できます。
第1に、動作などを並列させていることを示す1)のような使い方です。この場合は、2つ目以降の「~たり」は省略できません。動作を3つ並列させていれば、3つすべてに「たり」をつける必要があります。1)の文も、「飲んだり歌って」ではなく、「飲んだり歌ったりして」にしなければなりません。
第2に、ひとつの動作などを示すことで、同様のことを暗示する2)のような使い方です。この場合は、「~たり」は1回しか使いませんが、言外にほかの動作を含んでいます。
ここまでは「文章読本」などに書かれていることがあるので、ご存じのかたも多いでしょう。そういった記述を目にしたことがなくても、1)の文は言葉足らずの感じがするはずです。しかし、実際には「~たり」がひとつしかない文(「片たり」と呼ぶことにします)をしばしば目にします。あまりにも頻繁に目にするので、ごく近い将来には許容されるのではないか、と思ってしまうほどです。
「片たり」になってしまう理由は、よくわかります。たとえば、次の文を見てください。
〈原文1〉
子供がある程度の年齢になれば、親にいえないような秘密をもったり、親の意見に反発するのは当然のことです。
さほどヘンではない気がしませんか。
おそらく、1)の「歌って」に比べて〈原文1〉の「親の意見に反発する」の部分が長いために、「片たり」でもおかしくない気になるせいです。「~たり」を含む部分が極端に長くなると、前の「~たり」からずいぶん離れたところに後ろの「~たり」が唐突に出てきた感じになるので、「片たり」のほうが自然に感じられることさえあります。
2つ目以降の「~たり」も省略しないのが日本語のルールなので、〈原文1〉は次のようにしなければなりません。
〈書きかえ文1-1〉(「~たり」を機械的に入れた文)
子供がある程度の年齢になれば、親にいえないような秘密をもったり、親の意見に反発したりするのは当然のことです。
「~たり」の正しい使い方どおりに書くと、「したりする」の部分がもたついた感じがして、語感が非常に悪くなります。「正しい使い方であれば語感が悪くても構わない」と考える人は、〈書きかえ文1-1〉のように機械的に「~たり」を入れればよいでしょう。
しかし、もう少しマシな文にしたければ、次のことを考えてみてください。文によっては、もたついた感じが緩和できます。
1)「~たり」を含む部分をできるだけ短くする
先に書いたように、「~たり」を含む部分が長いときは、ルールからはずれた「片たり」でもおかしくない気になります。逆に「~たり」を含む部分が短いときは、ルールどおりでないとリズムが悪く感じられるはずです。そのため、「~たり」を含む部分を短く書くことを心がけると、「片たり」にならずに済みます。
〈書きかえ文1-2〉(「~たり」を含む部分を短くした文)
子供がある程度の年齢になれば、親に対して秘密をもったり、反発したりするのは当然のことです。
2)「熟語+する」の形の動詞を前にもってくる
〈原文1〉で並列されている動詞は、「秘密をもつ」と「反発する」です。「反発する」のように「熟語+する」の形の動詞が後ろに来ていると、「したりする」「したりして」などの形になり、もたついた感じが強くなります。このような場合には、単純に動作の順番を入れかえるだけでもマシになります。
〈書きかえ文1-3〉(「熟語+する」の形の動詞を前にもってきた文)
子供がある程度の年齢になれば、親の意見に反発したり、親にいえないような秘密をもったりするのは当然のことです。
3)動詞を名詞にする
並列されている動詞が両方とも「熟語+する」の形だと、2)の方法は使えません。その場合は、「熟語+する」の「する」をとって名詞にした文に書きかえる方法も考えられます。
〈原文2〉
人から注目されたり、尊敬されたりするために、見栄を張る人は多いようです。
〈書きかえ文2〉(「熟語+する」の形の動詞を名詞にした文)
人の注目や尊敬を得るために、見栄を張る人は多いようです。
4)「~たり」を含む文をできるだけ短くする
1)で例をあげたように、「~たり」を含む部分はできるだけ短くするべきです。さらに、文全体も短くしたほうが、わかりやすくなります。
〈原文3〉
接続詞を無理に減らすために、2つの文を結合して一文が長くなったり、接続詞のかわりによけいな言葉を使って意味がわかりにくくなるぐらいなら、素直に接続詞を使うほうがよいでしょう。
〈原文3〉は「片たり」になっていますが、一読しただけでは、後ろの「~たり」をどこに入れたらよいのかさえわかりません。「~たり」を含む部分が長いうえに文全体が長いため、わかりにくくなっています。まず、単純に文を分割して後ろの「~たり」を加えてみましょう。
〈書きかえ文3-1〉(「~たり」を含む文を短くした例)
接続詞を無理に減らそうとするのはよくありません。2つの文を結合して一文が長くなったり、接続詞のかわりによけいな言葉を使ったりして、意味がわかりにくくなることがあるからです。そんなことになるぐらいなら、素直に接続詞を使うほうがよいでしょう。
「~たり」を含む文を短くすることを徹底するなら、次のようになります。
〈書きかえ文3-2〉(「~たり」を含む文をさらに短くした例)
接続詞を無理に減らそうとすると、意味がわかりにくくなることがあります。2つの文を結合して一文が長くなったり、接続詞のかわりによけいな言葉を使ったりするからです。そんなことになるぐらいなら、素直に接続詞を使うほうがよいでしょう。
〈書きかえ文3-1〉と〈書きかえ文3-2〉のどちらにするのかは趣味の問題でしょう。どちらにしても、〈原文3〉よりはマシですが、「~たり」を含む部分が長いという問題が残っています。この場合の「~たり」を含む部分は、現状でもやや言葉足らずの印象になっているので、これ以上短くするのはむずかしそうです。こういう場合は、別の書きかえ方も考えます。
5)「~たり」を使わない形に書きかえる
「~たり」を含む部分が長いときは、いっそ「~たり」を使わない形に書きかえたほうがすっきりすることも多いようです。
〈書きかえ文3-3〉(「~たり」を使わない形に書きかえた例)
接続詞を無理に減らそうとするのは、文の意味がわかりにくくなる原因のひとつです。まず、接続詞を減らすためには文を結合することが多いので、必然的に一文が長くなってしまいます。さらに、接続詞のかわりによけいな言葉を使ってしまうこともあります。そんなことになるぐらいなら、素直に接続詞を使うほうがよいでしょう。
「~たり」を含む部分がとくに長くはないのにもたついた感じになっている文も、「~たり」を使わない形に書きかえたほうがよい場合があります。
〈原文4〉
接続詞が多用されている文章は、同じ接続詞を繰り返していたり、必要のない接続詞が使われていたりすることが多いようです。
〈書きかえ文4-1〉(「~たり」を使わない形に書きかえた例)
接続詞が多用されている文章は、同じ接続詞を繰り返していることや、必要のない接続詞が使われていることが多いようです。
伝言板【板外編1】「~たり」の使い方〈2〉mixi日記2014年09月26日から
テーマサイトは下記。
【「たり」という言葉について。】
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10136024295/a340601503
うなってしまった。
最近、mixiのトピでのやり取りはほとんどがしょうもないものになっているし(詳細はあらためて)、他の質問板も妙な感じになっている例が目立つ(当方にも責任の一端はあるかも)。ホンマにそろそろそのテのものから離れようかと考えているときに、おもしろいものに当たってしまった。
質問と、当方のコメントの全文をひく。
==============引用開始
「たり」という言葉について。
①例を並べあげる
②一例をあげ、他を暗示する。
③例示を装って、刺激の強いことがらを受け止めやすく言う言い方。
③についてが、よくわかりません。
どういう意味でしょうか?
③の例として、「おこったりして、すみません。」とあります。
つまり、言い方をやわらかくするっていうことでしょうか?
==============引用終了
【tobiクンのコメント】===引用開始
「たり」という言葉について。
1)例を並べあげる
2)一例をあげ、他を暗示する。
3)例示を装って、刺激の強いことがらを受け止めやすく言う言い方。
※丸つき数字はバケる可能性があるので、書きかえました。
↑これは辞書とかにのっていた説明でしょうか。貴重な記述なので、できれば原典を教えてください。
通常は1)と2)しか見ないもので、3)に驚きました。
たしかに「おこったりして、すみません」は3)ですね。「言い方をやわらかくする」効果がありそうです。
ただ、この3)と2)の違いは微妙かもしれません。
念のためWeb辞書をひきます。
http://dictionary.nifty.com/word/%E3%81%9F%E3%82%8A?dic=daijirin
『大辞泉』の2)の意味の例文として下記があげられています。
「車にひかれたりしたらたいへんだ」
これは3)の意味にもとれる気がします。
微妙なので区別しなかったのか、3)の意味に気がつかなかったのか……。
類似の例文は想起できます。3)とは不妙に違う気がします……。
「(そんな派手な恰好をして)変質者にあったりしたらどうするの」
「(こんな時間に外出して)危ない目にあったりしても知らないよ」
「~たり」の使い方に関しては、以前書いた知恵ノートが参考になると思います。
近く3)に関して加筆します。勉強になりました。ありがとうございます。
【45定番の質問 「~たり」の使い方】
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n148591
他の並列助詞に関しても、最近ルールが揺れている気がします。このコメントの冒頭で使った「辞書とか」も、「文法書」「参考書」などを含めた用法なのですが、やはり少し不自然ですね。
==============引用終了
「たり」の用法に関して「赤い本」に書いてから早ウン年。追記の必要性はほとんど感じなかった。頭がかたくなり、物事を考える……ヤカマシ!
こういうのはきわめて珍しい。まあ、そこそこよく書けている、のかもしれない……と考えることにしていた(超弱気)。
「たり」の主な用法に関しては、従来のままでいいだろう。↑の1)と2)。これの説明に関しても、「赤い本」のままでさほどおかしくない。
問題は3)。「例示を装って」……厳密に考えるとその後が何種類かある気がする。
a「たり」の前の動詞を否定的に語る
例 怒ったりして、済まなかった
「怒る」以外に「叱る」「罵る」「殴る」「蹴る」といろいろやっていたなら、典型的な2)になる。
b「たり」の前の動詞をギャグにする
例 ……と言ったりしてね
ひと昔前の「なーんちゃんて」の類い。……と繰り返したり、△△と囁いたりを想定するなら、2)に近づく。
c極端な例を出して注意を促す
例 車にひかれたりしたらたいへんだ
これが微妙なのかもしれない。「車にひかれる」ほかにいろいろな事故を想定するなら、2)に近づく。
「車に轢かれたり、馬車に轢かれたり、戦車に轢かれたりしたらたぶんケガをする」
a~cを簡潔にまとめる言い方はないのだろうか。「刺激の強いことがらを受け止めやすく言う言い方」では説明しきれていないような……。
30分
伝言板【板外編1】「~たり」の使い方〈3〉mixi日記2014年10月15日から
FBにコメントをもらい、可愛く小首を傾げてしまった。
初心に返って、辞書をひくところから始めたい。
いただいたコメントにあったのは『三省堂国語辞典 第七版(サンコク7)』(ヒーロー戦隊みたいでカッコいい、以後カッコいいほうで呼ぶ(笑)。さらにWeb辞書をひいて、この段階で目眩を感じて挫折しそうになる。
コメントと辞書の引用の全文は末尾に。
以下、〈1〉〈2〉の書き方に準じて書く。「~たり」の使い方は2つに大別できる。
1)動作などを並列させていることを示す
2)ひとつの動作などを示すことで、同様のことを暗示する
このほかに〈3)よくわからない用法〉があるってこと。
ここまではよしとしたい。ただ、辞書を見比べると、1)や2)の品詞が微妙に違う。
1)に関して。
『サンコク7』『大辞泉』……接助
『大辞林』…… 並立助
2)に関して。
『サンコク7』……副助① ※だと思う
『大辞林』…… 並立助②(副助詞的用法)
『大辞泉』……接助2(副助詞的に用いられ) ※だと思う
どれが正解なんでしょ(泣)。当方としては、何助詞でも構わない。腐女子はちょっとイヤだけど。
1)は並列助詞(並立助詞とほぼ同義だと思う)と考えていた。そのほうがほかのケースを考えるときにわかりやすいから。
1181)【バイト敬語/若者言葉──「~とか」の話】〈2〉──並列助詞の迷宮
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-3027.html
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1927524020&owner_id=5019671
おおざっぱに書くと、2)は1)の一方を省略したものと考えれば「並列助詞」。そう考えないのなら「副助詞」なんだろう。『サンコク7』の書き方だと、どれになるのかイマイチわからない。この際どちらでもいいことにする。
『大辞林』と『大辞泉』にある「終助詞的用法」(ただし、『大辞林』は並立助詞にしていて、『大辞泉』は接続助詞にしている)は、当方の語感にはないので無視する。
問題は3)の用法。
いろいろ分類を試み〝たり〟したけど、スッキリしない。
分厚い文法辞典をひけば、さらに亜種が出て来る気がする。こういうのは「~など、いろいろな用法がある」とでもしておかないと収拾がつかなくなる。
という感じで逃げ〝たり〟する。(←オイ!)
いただいたコメントを引用する。FBのコメントって、単独のリンクは張れないのかね。
==============引用開始
ほほー、タリ問題おもしろいですね。ちなみに三省堂国語辞典 第七版(サンコク7)では以下のとおり。
>>
【たり】三省堂国語辞典 第七版
[二](接助)ならべて のべるときに使う。「煮(ニ)―焼い―して食べる」
[三](副助)①例として あげることをあらわす。「テレビを見―して過ごす」
②そういう場合があることをあらわす。「週末は道路が こんでい―する」
③そういうことは いけない、という気持ちをあらわす。「なぜ うそをつい―したの?」
④〔話〕えんりょがちに言う気持ちをあらわす。「きょう、ひまだっ―します?・わたし、じつは成績がよかっ―するんです」
<<
「たりして」は連語扱いになってますね。
>>
3. 〔話〕…というのはじょうだんだ、という気持ちをあらわす。
「このまま そっと帰っちゃったりして」
<<
9月27日 22:05
==============引用終了
今度はWeb辞書をひく。
http://dictionary.nifty.com/word/%E3%81%9F%E3%82%8A?dic=daijirin
==============引用開始
大辞林 第三版の解説
たり
( 並立助 )
〔完了の助動詞「たり」の終止形「たり」から。中世末期以降の語〕
活用語の連用形に接続する。ガ・ナ・バ・マ行五(四)段活用の動詞に付く場合には「だり」となる。
①並行する,あるいは継起する同類の動作や状態を並べあげるのに用いる。普通,「…たり…たり」のように,「たり」を二つ重ねて用いる(時に,末尾の「たり」のあとに「など」を添えていうこともある)。 「人が出-入っ-している」 「本を読ん-((だり))手紙を書い-するひまもない」 「大きかっ-小さかっ-などして,なかなかからだに合うのがない」
②(副助詞的用法)一つの動作や状態を例としてあげ,他に同類の事柄がなおあることを暗示する。 「あの子は,親にたてつい-して,ほんとうに困ったものだ」 「わたしが人をだまし-などするものですか」
③(終助詞的用法)同じ動作を「…たり…たり」と繰り返してあげ,命令や勧誘の意を表す。 「さあ,早く起き-起き-」 「そこに居てはじゃまだ。どい-どい-」
==============引用終了
デジタル大辞泉の解説
たり【たり】
[接助]《文語の完了の助動詞「たり」から》用言、一部の助動詞の連用形に付く。ガ・ナ・バ・マ行の五段活用動詞に付く場合は「だり」となる。
1
ア 動作や状態を並列して述べる。「泣い―笑っ―する」「とんだり跳ね―する」
イ 反対の意味の語を二つ並べて、その動作・状態が交互に行われることを表す。「暑かっ―寒かっ―の異常な陽気」「足を上げ―下げ―する運動」
2 (副助詞的に用いられ)同種の事柄の中からある動作・状態を例示して、他の場合を類推させる意を表す。「車にひかれ―したらたいへんだ」
3 (終助詞的に用いられ)軽い命令の意を表す。「早く行っ―、行っ―」
◆「たり」は中世以降、文語的な「…ぬ…ぬ」に対し口語として動詞の連用形だけに付く形で用いられた。1は、並立助詞として扱われる場合もあるが、近世後期からはあとのほうを省略して「…たり…」の形をとる場合もみられる。
==============引用終了
テーマ : ことば
ジャンル : 学問・文化・芸術