学者の言葉〈1〉──無助詞文あるいは助詞の省略
下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2020.html
日本語アレコレの索引(日々増殖中)【7】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1789673749&owner_id=5019671
mixi日記2012年01月12日から
直接的には下記の続き。
【完全毒日記──全方位毒吐き30 公開制限あり】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1808391282&owner_id=5019671
公開制限のある日記なので、関係箇所だけ転載する。
==============引用開始
で、引用?されていた論文http://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/3498/1/34014.pdfを読んでちょっと驚く。当方のレベルでもすらすら読める。ほぼ理解できるから、内容がムチャクチャだということもよくわかる。
少なくとも、「助詞なしでなければならない場合」はこんなにないよ。「助詞なしでもOK」ならわかるけど。本気で書いているのだろうか?
この論文に関しては、改めて書いてみたい。
わかりやすいムチャクチャがいいのか、わかりにくい正論がいいのか……究極の選択だな。
==============引用終了
一部訂正する。「当方のレベルでもすらすら読める」はオーバーだった。わからないところがけっこうある。それでもいままで目にした(とても「読んだ」とは言えない)学者の論文よりはずっとマシだろう。
ただ、問題は内容。ヒトサマの文章を「内容がムチャクチャ」などと書きっぱなしにするのは失礼なので、少し具体的に書く。どちらが失礼なのかは微妙かもしれない。(←オイ!)
「4.無助詞文の分類」(p.81~)で、「無助詞文」(「助詞がないほうが自然な文」の意味。「助詞なしでなければならない場合」とまでは書いてないと思う。じゃあそもそも誰が誤読したんだ?)の例をあげている。とりあえず「4.2.1. 」だけ引用する。「無助詞(文)」と「助詞の省略」は厳密には違うようだ。一応理解したつもりだが、当方に厳密な使い分けができているとは思えない。詳しくは論文をお読みください。
なお、〈助詞のない部分はφの記号で示し、「*」は不適当、「?」は文法判断が揺れるものである〉とのこと。
==============引用開始
4.2. 文単位からの分類
4.2.1. 聞き手の情報を求める文
「聞き手の情報を求める文」とは、話し手が聞き手に能力、知識、所有、嗜好、経験、 聞き手の行為の完了等を尋ねる文である。
(15)〔バスの中で高校生が友人に大学入試試験の過去問を見せながら言う。〕
なあ、これ (φ/ * ハ/ * ガ/ )、わかる? (ケ)
(16)〔弁護士探しをしている村長と役場職員だったが、上手く引き受けてもらえず落
胆している。今日はもうあきらめようということになって、村長が言う。〕
どっか、いいホテル(φ/ * ハ/ * ヲ )知ってる? (合)
(17)〔旅行先で、シャワーを浴びようと思ったが石鹸を持ってくるのを忘れてしまっ
た。友人の部屋をノックしながら言う。〕
柴田 せっけん(φ/ * ハ/ * ヲ )持ってねーか (継)
(18)〔コーヒーをいれながら友人に尋ねる。〕
ミルク(φ/ * ハ/ * ヲ )入れる? (ビ)
(19)〔小売店の娘が客の友人に尋ねる。〕
ねえ、ニコちゃんストアー、行ったこと(φ/ * ハ/ * ガ )ある? (合)
(20)〔図書館司書が親しい利用者に声を掛ける。〕
『岩窟王』(φ/ * ハ/ * ヲ )読破?
(ビ)
本稿は、無助詞文の出現理由を、主題の重なりという点から分析する。久野(1973:30- 31)が以下のように述べているように、一文の中で最も述語から遠くにある名詞句、つま り最も文頭に近い名詞句は主題として捉えられる。しかし、それ以外の名詞句に「ハ」が付く場合、それは対比として捉えられる。
==============引用終了
「自然」か否かは主観にかかわることが多いのであまり強くは言えないが、ちょっとヘンじゃないか?
とりあえず、(16)(17)(18)は助詞アリでもおかしくないと思う。無助詞とどちらが自然なのか、当方には判断できない。
(16)どっか、いいホテル(φ/ * ハ/ * ヲ )知ってる?
「ヲ」はなぜ * なの? 「ハ」はたしかに少しヘンかも。
(17)柴田 せっけん(φ/ * ハ/ * ヲ )持ってねーか
「ヲ」はなぜ * なの? 「ハ」は微妙かな……。
(18)ミルク(φ/ * ハ/ * ヲ )入れる?
「ハ」はなぜ * なの? 「ヲ」は微妙かな……なんでだろう。
(15)(19)(20)あたりはたしかにφのほうが自然な気がするが、別の理由があるのでは。
何も考えずに思いつくことをあげていく。
●「無助詞文」になりやすいのは話し言葉である。
これは大前提で、論文の冒頭に書いてある。ただ、文字で書かれている小説のセリフは話し言葉か書き言葉か、と厳密に考えると泥沼にはまる可能性が高いのでスルーする(個人的には話し言葉だと思う)。
●「呼びかけ」(「注意喚起」と考えるほうがいいらしい)は「無助詞」になりやすい。
●「目上の人」に対しては「無助詞文」になりにくい。
同じ内容でも、「親しい同格以下の人に話す場合」は「無助詞文」になることがある。言葉づかいがラフになればなるほど、その傾向が強くなる。相手が子供だと、「無助詞文」だらけになることもある。
●「省略」(もしくは「無助詞」)が「省略」(もしくは「無助詞」)を呼ぶ傾向がある。
●「聞き手の情報を求める文」と言うか、要するに疑問文だと「無助詞文」になる傾向が強い。
こういうことをどこかに書いてあるのかな。
あとは考えはじめると泥沼が待っている予感。
(15)(19)(20)は同じ意味でも言葉づかいをもう少し丁寧にするとかなりかわる。
(15)なあ、これ (φ/ * ハ/ * ガ/ )、わかる?
「なあ、」と「わかる?」がタメ口なんで、φが自然なのだろう。しかも直後に読点があるから、無助詞文のほうがずっと自然になる。
(15)’ 済みませんが、これ (φ/ * ハ/ * ガ)わかりますか?
これなら「ハ」が自然だろう。(「ガ」の近接の影響もある?)
(19)ねえ、ニコちゃんストアー、行ったこと(φ/ * ハ/ * ガ )ある?
「ねえ、」があるうえに直前の「に」が省略されている。
(19)’ (つかぬことをうかがいますが、)ニコちゃんストアーに行ったこと(φ/ * ハ/ * ガ)ありますか?
これなら「ハ」「ガ」もアリだろう。
(20)『岩窟王』(φ/ * ハ/ * ヲ )読破?
「読破?」だもん。相当ラフ。あれ、このセリフは図書館司書だから常磐貴子だよね。このなれなれしさはキムタクっぽいけど(これは『ビューティフルライフ』のセリフらしい)。
(20)’ 『岩窟王』(φ/ * ハ/ * ヲ)もう読破したのですか?
これなら一番自然なのは「ハ」だろう。「ヲ」もアリかな。
以下、論文の例文を読み進めていくと、同様の疑問がブクブクと湧き立ってくる。なかには、φのほうが自然ってケースもあるけど、割合としては……。どなたか検証してください。
何か当方が大きな勘違いをしているのだろうか……。
ちなみに、無助詞の話は過去にトピも立っている。
【「助詞」の有る無し】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=30473460
上記の論文よりはずっとまともな気がするが、当方にはむずかしいorz。「呼びかけ」ではなく「注意喚起」ってコメントには感心した。例によって、おひとかた以外のコメントが……。
「無助詞文あるいは助詞の省略」に関しては下記参照。
【学者の言葉〈外伝〉──無助詞文あるいは助詞の省略〈2〉】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2447.html
学者の言葉〈2〉
──「わからない」「わかりにくい」ということ
mixi日記2012年01月24日から
下記が公開制限のある日記なので、関係箇所だけ転載する。
以下は、とある「学者の卵」が書いたものから抜粋している。
著作権? まあ厳密に言えば問題があるだろうな。(←オイ!)
【完全毒日記──全方位毒吐き30 公開制限あり】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1808391282&owner_id=5019671
================================
●キーワード集
1)「学者の言っていることがわからん」のはある程度当たり前
2)ある程度の知識がある事を前提としてアカデミックな議論というものは成り立っている
3)知識が無い人間にとって学者のいう事がわからないのは当たり前
4)専門知識が無い一般人向けに専門分野を紹介する文献(新書に多い)も存在する
5)一般人にもわかりやすく理論を単純化し、それでいて本質を外れない記述というのはなかなか難しく、普通の学者に出来る事ではない
================================
「●キーワード集」の1)~3)は一種の居直りでしかない。
こういう考え方をしている限り学者と一般人の間の溝は埋まらず、コミュニケーションはむずかしい。編集の世界で「学者と医者の原稿は使いものにならない」と言われるのは、そのせいだろう。
ただ、4)5)にあるように、一般人に通じる文章が書ける学者も存在する。当方が仕事で読んだ原稿のなかにも、そういう例はいくつもあった。
おもしろいもので、まともな文章を書ける人は、不明点を指摘すると理解して修正してくれる。文章が書ける人は読解力もあるから、こういうまともなコミュニケーションができる。
まともな原稿を書けない人に「わかりにくい点」「わからない点」(場合によっては「間違っている点」)を指摘しても、理解できない。妙な理屈をこねて言い訳をすることはあっても修正はしない、と言うよりできない。理解できたら、そもそもそんな原稿は書かないか(これは学者でもライターでも同じかも)。
しかもそういう人に限ってプライドが高いから、ウカツなことを指摘すると逆ギレする。こうなると泥沼。「こんな原稿は使えない」と突き返すしかなくなる。そういうめったにない扱いをしてしまった人が、最近テレビで講釈を垂れているのを見ると、ちょっとホニャララな気持ちになる。
やさしく書こうとしても限界があるジャンルもある。たとえば医学。これはきわめてむずかしい。病名ひとつとっても、素人が理解できるように書くのはむずかしい。「くも膜下出血」あたりだと、脳の構造から始まってクダクダ書くと、それだけで数百字は必要になる。
もっと身近な病名だって、簡単に説明するのはむずかしい。いまでも覚えているのは「頭の片側がズキズキと痛む偏頭痛」ってフレーズ。これはギャグではなく某健康雑誌の常套句になっていた。ちなみに、その編集部では医者に原稿を書かせることはハナからあきらめていた。誌面の体裁としては医者の記名原稿だが、実際に書くのは取材したライター。きわめて正しい態度だと思う。
IT関係(例によっていい加減なイメージで、「コンピュータ関連」とほぼ同義)の記事あたりも、素人にわかるように書くのはむずかしいかも。そのテのマニュアルがむずかしいのは仕方がないかも。
●そもそも「わかりにくい」とはどういうことか
「わかりにくい」とか「わからない」とはどういうことか。
これを厳密に考えはじめると、禅問答に近くなる。うんと意地悪に考えると下記のようになる。
================================
「わかりやすく書け」という、だれにも反対できないように思える理屈にも、落とし穴はある。「わかりやすい」かどうかは、たぶんに書く人と読む人との関係性によるのである。極端な話、数式や楽譜は「わかやすく」(ママ)するために発案された書法である。しかし、わからない人にはわからない。万人にわかりやすい文章など、厳密にいえばありえないのだ。(『文章読本さん江』)
================================
ここまで考えはじめると、グチャグチャになりそうだ。なかにはツワモノもいて、ごくフツーのショップ紹介を、ものすごくわかりにくく書く人もいる。それはそれで一種の才能なのかもしれない。
そういう話を別にすると、要は「専門用語の使い方のサジ加減」ってことになると思う。「くも膜下出血」という病名も一種の専門用語だろう。医者同士の会話なら当然通じる(別の呼称がありそうだな)。一般人でも、少し医学の知識のある人ならわかる(知識が正確か否かは別問題)。しかし、どんな病気かまったく知らない人に伝えようとすると、かなりむずかしい。ヘタに噛み砕くとかえってわかりづらくなり、ウソになってしまうことも多い。専門分野に特化したライターでもむずかしい話なんだから当然だ。このあたりは↑の「キーワード集」の5)に通じる。
このへんのサジ加減がむずかしく、どの程度なら一般人にも理解できるのかわかったうえで解説できるのが、「普通の学者」にない能力をもった「貴重な学者」なんだろう。
「普通の学者」が書いた文章は、一般の人には通じない。たいていの学者はそのことを自覚しているから、一般の人に向かって講釈を垂れたりしない。
したがって、フツーの生活をしている人は「普通の学者」の念仏に出会うことはめったにない。新書の類いで目にするのは「貴重な学者」の文章だから、一般人でも理解できる(例外は多々ある)。
これがインターネットの世界だとちょっと事情がかわってくる。
本来は学者の世界の内部資料とでも言うべき論文(紀要)や念仏が飛び交っている。ちゃんとした論文のpdfが手軽に手に入るのは喜ばしいことなのだろう。基本的に一般人はそういうものに近づかないから、ある意味棲み分けができている。
学者が参加する掲示板にどんな専門用語がとびかっても、それはそれ。どうぞご自由としか言えない。
困るのは、一般人に世界に「普通の学者」(「もどき」を含む)が進出してくること。専門的な話をわかりやすく解説してくれるなら大歓迎だが、そんな「貴重な学者」はめったにいない。
「全方位毒吐き30」で紹介した「学者の卵」が困ったちゃんなのは、一般人の話に学者の理論を持ち込んできたから。それで居直られたら、コミュニケーションにならない。
質問サイトの掲示板のホニャララぶりは何度かレポートしてきたたが、不思議なことに学者の言葉で回答する人は見かけない。
本能的に避けているのか、バカバカしくて寄り付かないのかはわからない。もしかすると、そういう勇敢な人もいたのかもしれない。でも誰にも相手にされないからフェードアウトしたのかもしれない。
そういう意味では、ああいう質問板は自分の言葉の「わかりやすさ」や「正し(いっぽ)さ」を判定するのに適したツールかもしれない。Yahoo!知恵袋でBAが50%を超えている人のコメントなら、かなり信頼できる。もちろん、もっともらしいウソって可能性はある。
●mixiで見かける学者(もどき)
これがmixiのコメントになると、そういう判定の基準がないせいか、偉そうに専門用語をふりかざすホニャララがけっこういる。
当方が首を突っ込んでいる日本語関係だと、何人か思い当たる。
少数ではあるが、学者の言葉と一般の言葉の両方を使い分けている人もいる。当方がこの面で信頼しているのは、SさんとOさん。この2人のコメントはよくわかるし、間違いもない。通常のコメントは当方でもわかる書き方をする一方、学者とのやり取りになれば、当方にはチンプンカンプンの書き方もする。簡単に言えばバイリンガル? ほかにもバイリンガルが何人かいるようだが、コメントすることが少ないので存在感がない。
「学者同士のやり取り」がどのようなものかは、当方が「コミュズレ3部作」と呼んでいる下記を見てほしい。
【独り言です56くらい──日本語教師関連編27 モゴモゴ王決定か※公開制限あり】K
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1417110060&owner_id=5019671
================================
以下のコミュズレ3部作はあまりにもレベルが高すぎて、当方には何がなんだかわからない。たぶん「こどもの学習者」なら理解できるのだろう。「言語学」あたりのコミュならそう悪くないやり取りなのかもしれない。
一部、コメントを入れてるマイミクさん。こんな書き方してゴメンナサイ。でも、この3部作はコミュのフツーの参加者には理解できないと思う。
【総記でしょうか中立叙述でしょうか】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=48489573
これってコミュズレだと思う。
【~おいてもらう VS ~もらっておく】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=49551162
コミュズレ気味のうえ、何が論点なのか……
【格と副の交渉】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=50361254
これもコミュズレだと思う。
================================
下記だと少しマシかもしれないが、やはりコミュズレだと思う。
【「あげる」「くれる」「もらう」と第4の幻の動詞について】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=56252538&comm_id=398881
別にこういうトピがあってもいいのかもしれない。当方は分をわきまえているから近づかない。できればヨソでやってほしいけど。
困るのは、一般の人のやり取りに学者が口を挟むこと。繰り返すが、専門的な話をわかりやすく解説してくれるなら大歓迎だが、そんな「貴重な学者」はめったにいない。
その結果、一般人のやり取りの間になんだかわからん念仏が剥き出しのまま投げ込まれる。そりゃ浮くでしょ。当然のことながら、書いてる当人は自分の文章が一般人には理解できないことを自覚していない。その自覚があって書いているなら、単なる迷惑行為だよ。
多少わかりにくくても正しいことが書いてあるならまだ救われる。ヒドいのは、コンスタントにピント外れのコメントを書くあのおかた。当方の日記の中には消し逃げ癖のある人として何回か登場しているので、ご推察ください。
難解なピント外れも困るけど、実はもっと困るのは、一見わかりやすそうにピント外れのことを書いてあるコメント。難解なことを噛み砕くにはそれなりのテクニックが必要で、ヘタに噛み砕くとかえってわかりづらくなり、先に書いたようにウソになることも多い。
ウソにはならなくても、まるで小学生に語りかけるような口調で冗長になる。それでいて噛み砕くポイントが違うから、ちっともわかりやすくない。妙な表記を使っていると、その傾向がさらに強くなる。
ここに悪意までついてくると、単なる荒らしよりはるかにタチが悪い。末期の糖尿病って呼んであげよう。
あ~あ。せっかく少しまじめなことを書こうとしたのに、飽きてくるとこんなしょうもないオチになるのね。
学者の言葉〈3〉
── 専門用語の誘惑
mixi日記2012年02月11日から
直接的には下記の続きだろうな。
【「そのようにおっしゃられても困ります」〈2〉毒抜き編 規範文法と記述文法】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1799904762&owner_id=5019671
【学者の言葉〈1〉──無助詞文あるいは助詞の省略】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1813322718&owner_id=5019671
【学者の言葉〈2〉──「わからない」「わかりにくい」ということ】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1816531968&owner_id=5019671
最近、『敬語再入門』(菊地康人)を読んでいる。1項目ずつ噛み締めているからなかなか進まない。もう少しで読み終わるので、『敬語』のほうに進みたい。「進みたい」は正確には「戻りたい」にするべきだろう。元々あったのは『敬語』で、その入門編とも言えるのが『敬語再入門』。『敬語』のほうがボリュームが倍近くあり、内容も盛りだくさん。当方の手に負えるのだろうか?
それはさておき『敬語再入門』いついて。いやー、スゴいわ。訳のわからないバイト敬語を別にすれば、各種の質問板でとびかっている敬語関係の疑問のほとんどが解決する気がする。手元にある敬語関係の本がいかにいい加減かよくわかる。ネットでとびかっている珍説が哀れにさえ思える。
言語学の専門家であることが随所にうかがえ、解説がイチイチ論理的で深みが感じられる。
しかも、むずかしい言葉はほとんで出てこないので、当方のレベルが読んでもよくわかる。不明点もいくつかあるが、それは単に当方の勉強不足だろう。一般人がわからない言葉は使っていない。こういうのが「貴重な学者」の業績なんだろう。
むずかしい文法用語や、一般人がわからない専門用語なんか使わなくてもあれだけの文章が書けるのは驚異なのかもしれない。あやかりたい、あやかりたい。
●使ってみたい専門用語集
文法に関係するようなことを読んでいると、「この言葉をキッチリ使えたら便利だろうな」と思う言葉がある。
使ってみたい誘惑に駆られるが、ヘタに使うとそれだけで文章が難解に見えてしまう恐れがある。微妙に使い方を間違うと恥さらしなる恐れさえある。
完全な的外れかもしれないが、算数と数学の話を思い出す。
算数の問題で、連立方程式を使えば簡単に解ける問題がある(鶴亀算とか?)。それを算数の解法でなんとかしようと思うと、けっこう難問になる。未知数が3個以上出てきたりすると、すんごい難問になる。だからと言って、算数の問題を連立方程式で解くのは反則だろう。小学生に円周率がなんで3.14かと訊かれて、高等数学を用いた証明を語り始めたら単なる●●だろう。
文法の問題も、難解な専門用語を使うほうが説明が簡単なケースもあるだろう。「それは○○的に考えれば△△だから」で済むことがあるのかもしれない。そのほうがずっと簡潔で正確なんだと思う。でも「○○」も「△△」も知らない者には呪文でしかない。
呪文が通じる相手には呪文を使い、呪文が通じない相手にはそれなりの説明をする。そういうことができる知恵者を当方はバイリンガル?と呼んでいる。「貴重な学者」も、バイリンガルの一種ってことになる。相手構わず呪文を唱える人はなんて呼べばよいのだろう。
「規範文法」「記述文法」
使ってみたいけど、禁じ手にしている。一応辞書にはのっているけど、こんな言葉を素人が使ってもロクなことがない。下記などで教えてもらったからなんとなくわかった気になっているけど、そういうのは「生兵法」と言う。
【デス・マス体が書きにくいワケ4──デス・マス体のナゾを考えるヒント】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1539218404&owner_id=5019671
ちなみに、『敬語再入門』には当方が読んだ限りそんな言葉は出てこない。「規範的に」という表現は何回か出てくる。これは「規範文法」とも読めるが、一般の言葉(「ルール」くらいの意味)と解釈しても支障がない。このへんのサジ加減は見事。
「共起(する)」
これは使える気がしたけど、辞書をひいてあきらめた。
■Web辞書『大辞泉』から
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=%E5%85%B1%E8%B5%B7&stype=0&dtype=0
================================
きょうき1 【共起】
(名)
スル
〔専門〕 言
〔補説〕 co-occur
複数の言語現象が同一の発話・文・文脈などの言語的環境において生起すること。「しとしと」は「雨が降る」とは共起するが、「雪が降る」とは共起しないといえる。アメリカの言語学者ハリス(Z. S. Harris (1909- ))の用語。
================================
国語辞書が専門用語にしている。文法音痴の素人がそんな言葉を使ってはいけない気がして尻込みしている。
初めてこの言葉を聞いたときにはたしかに異和感があったが、いまはない。ひとつ賢くなったとも言えるが、一種の感覚麻痺とも言える。やはり、一般の辞書が専門語扱いしているような言葉は使うべきではない。でも便利そうなんだよな~(泣)。
「非文」なんかも国語辞書にはのっていない。やはり使っちゃダメなんだろう。しかも「非文」は「規範文法」の用語ではなく「記述文法」の用語らしい。そりゃ避けといたほうが無難だ。
「コンテクスト」「コンテキスト」
「文脈」にしておくべきだろうな。ちなみに「前後の文脈」ってよく目にするけど……やはり重言だろう。
「逆接」「順接」
以前、「専門用語」だと指摘を受けた。でもフツーの国語辞書にのっているしなー。非常にわかりやすい言葉だし、よく目にする。そんな言葉まで避ける気はない。専門用語ではどういう意味なのかは知りません。
「蓋然性」
これはどちらかと言うと数学系の言葉だと思う。国語辞書にものっているので専門用語ではないのだろうが、要注意。「蓋」は常用漢字に追加されたらしい。字面が森駅の名物弁当っぽいし、なじみが薄い。当方なら「必然性」とか「確率」に書きかえる。微妙なニュアンスの違いはあえて無視する(わかってないだけ?)。
「恣意的」
「恣」も新たに常用漢字に加わったらしいけど、なじみが薄い。これは一般語だと思うけど、個人的には使えない。「(自分)勝手」とか書いてしまう。微妙なニュアンスの違いはあえて無視する(わかってないだけ?)。
【新常用漢字(常用漢字に追加された196字)】
http://www.kanjijiten.net/joyo/newjoyo.html
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2020.html
日本語アレコレの索引(日々増殖中)【7】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1789673749&owner_id=5019671
mixi日記2012年01月12日から
直接的には下記の続き。
【完全毒日記──全方位毒吐き30 公開制限あり】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1808391282&owner_id=5019671
公開制限のある日記なので、関係箇所だけ転載する。
==============引用開始
で、引用?されていた論文http://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/3498/1/34014.pdfを読んでちょっと驚く。当方のレベルでもすらすら読める。ほぼ理解できるから、内容がムチャクチャだということもよくわかる。
少なくとも、「助詞なしでなければならない場合」はこんなにないよ。「助詞なしでもOK」ならわかるけど。本気で書いているのだろうか?
この論文に関しては、改めて書いてみたい。
わかりやすいムチャクチャがいいのか、わかりにくい正論がいいのか……究極の選択だな。
==============引用終了
一部訂正する。「当方のレベルでもすらすら読める」はオーバーだった。わからないところがけっこうある。それでもいままで目にした(とても「読んだ」とは言えない)学者の論文よりはずっとマシだろう。
ただ、問題は内容。ヒトサマの文章を「内容がムチャクチャ」などと書きっぱなしにするのは失礼なので、少し具体的に書く。どちらが失礼なのかは微妙かもしれない。(←オイ!)
「4.無助詞文の分類」(p.81~)で、「無助詞文」(「助詞がないほうが自然な文」の意味。「助詞なしでなければならない場合」とまでは書いてないと思う。じゃあそもそも誰が誤読したんだ?)の例をあげている。とりあえず「4.2.1. 」だけ引用する。「無助詞(文)」と「助詞の省略」は厳密には違うようだ。一応理解したつもりだが、当方に厳密な使い分けができているとは思えない。詳しくは論文をお読みください。
なお、〈助詞のない部分はφの記号で示し、「*」は不適当、「?」は文法判断が揺れるものである〉とのこと。
==============引用開始
4.2. 文単位からの分類
4.2.1. 聞き手の情報を求める文
「聞き手の情報を求める文」とは、話し手が聞き手に能力、知識、所有、嗜好、経験、 聞き手の行為の完了等を尋ねる文である。
(15)〔バスの中で高校生が友人に大学入試試験の過去問を見せながら言う。〕
なあ、これ (φ/ * ハ/ * ガ/ )、わかる? (ケ)
(16)〔弁護士探しをしている村長と役場職員だったが、上手く引き受けてもらえず落
胆している。今日はもうあきらめようということになって、村長が言う。〕
どっか、いいホテル(φ/ * ハ/ * ヲ )知ってる? (合)
(17)〔旅行先で、シャワーを浴びようと思ったが石鹸を持ってくるのを忘れてしまっ
た。友人の部屋をノックしながら言う。〕
柴田 せっけん(φ/ * ハ/ * ヲ )持ってねーか (継)
(18)〔コーヒーをいれながら友人に尋ねる。〕
ミルク(φ/ * ハ/ * ヲ )入れる? (ビ)
(19)〔小売店の娘が客の友人に尋ねる。〕
ねえ、ニコちゃんストアー、行ったこと(φ/ * ハ/ * ガ )ある? (合)
(20)〔図書館司書が親しい利用者に声を掛ける。〕
『岩窟王』(φ/ * ハ/ * ヲ )読破?
(ビ)
本稿は、無助詞文の出現理由を、主題の重なりという点から分析する。久野(1973:30- 31)が以下のように述べているように、一文の中で最も述語から遠くにある名詞句、つま り最も文頭に近い名詞句は主題として捉えられる。しかし、それ以外の名詞句に「ハ」が付く場合、それは対比として捉えられる。
==============引用終了
「自然」か否かは主観にかかわることが多いのであまり強くは言えないが、ちょっとヘンじゃないか?
とりあえず、(16)(17)(18)は助詞アリでもおかしくないと思う。無助詞とどちらが自然なのか、当方には判断できない。
(16)どっか、いいホテル(φ/ * ハ/ * ヲ )知ってる?
「ヲ」はなぜ * なの? 「ハ」はたしかに少しヘンかも。
(17)柴田 せっけん(φ/ * ハ/ * ヲ )持ってねーか
「ヲ」はなぜ * なの? 「ハ」は微妙かな……。
(18)ミルク(φ/ * ハ/ * ヲ )入れる?
「ハ」はなぜ * なの? 「ヲ」は微妙かな……なんでだろう。
(15)(19)(20)あたりはたしかにφのほうが自然な気がするが、別の理由があるのでは。
何も考えずに思いつくことをあげていく。
●「無助詞文」になりやすいのは話し言葉である。
これは大前提で、論文の冒頭に書いてある。ただ、文字で書かれている小説のセリフは話し言葉か書き言葉か、と厳密に考えると泥沼にはまる可能性が高いのでスルーする(個人的には話し言葉だと思う)。
●「呼びかけ」(「注意喚起」と考えるほうがいいらしい)は「無助詞」になりやすい。
●「目上の人」に対しては「無助詞文」になりにくい。
同じ内容でも、「親しい同格以下の人に話す場合」は「無助詞文」になることがある。言葉づかいがラフになればなるほど、その傾向が強くなる。相手が子供だと、「無助詞文」だらけになることもある。
●「省略」(もしくは「無助詞」)が「省略」(もしくは「無助詞」)を呼ぶ傾向がある。
●「聞き手の情報を求める文」と言うか、要するに疑問文だと「無助詞文」になる傾向が強い。
こういうことをどこかに書いてあるのかな。
あとは考えはじめると泥沼が待っている予感。
(15)(19)(20)は同じ意味でも言葉づかいをもう少し丁寧にするとかなりかわる。
(15)なあ、これ (φ/ * ハ/ * ガ/ )、わかる?
「なあ、」と「わかる?」がタメ口なんで、φが自然なのだろう。しかも直後に読点があるから、無助詞文のほうがずっと自然になる。
(15)’ 済みませんが、これ (φ/ * ハ/ * ガ)わかりますか?
これなら「ハ」が自然だろう。(「ガ」の近接の影響もある?)
(19)ねえ、ニコちゃんストアー、行ったこと(φ/ * ハ/ * ガ )ある?
「ねえ、」があるうえに直前の「に」が省略されている。
(19)’ (つかぬことをうかがいますが、)ニコちゃんストアーに行ったこと(φ/ * ハ/ * ガ)ありますか?
これなら「ハ」「ガ」もアリだろう。
(20)『岩窟王』(φ/ * ハ/ * ヲ )読破?
「読破?」だもん。相当ラフ。あれ、このセリフは図書館司書だから常磐貴子だよね。このなれなれしさはキムタクっぽいけど(これは『ビューティフルライフ』のセリフらしい)。
(20)’ 『岩窟王』(φ/ * ハ/ * ヲ)もう読破したのですか?
これなら一番自然なのは「ハ」だろう。「ヲ」もアリかな。
以下、論文の例文を読み進めていくと、同様の疑問がブクブクと湧き立ってくる。なかには、φのほうが自然ってケースもあるけど、割合としては……。どなたか検証してください。
何か当方が大きな勘違いをしているのだろうか……。
ちなみに、無助詞の話は過去にトピも立っている。
【「助詞」の有る無し】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=30473460
上記の論文よりはずっとまともな気がするが、当方にはむずかしいorz。「呼びかけ」ではなく「注意喚起」ってコメントには感心した。例によって、おひとかた以外のコメントが……。
「無助詞文あるいは助詞の省略」に関しては下記参照。
【学者の言葉〈外伝〉──無助詞文あるいは助詞の省略〈2〉】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2447.html
学者の言葉〈2〉
──「わからない」「わかりにくい」ということ
mixi日記2012年01月24日から
下記が公開制限のある日記なので、関係箇所だけ転載する。
以下は、とある「学者の卵」が書いたものから抜粋している。
著作権? まあ厳密に言えば問題があるだろうな。(←オイ!)
【完全毒日記──全方位毒吐き30 公開制限あり】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1808391282&owner_id=5019671
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●キーワード集
1)「学者の言っていることがわからん」のはある程度当たり前
2)ある程度の知識がある事を前提としてアカデミックな議論というものは成り立っている
3)知識が無い人間にとって学者のいう事がわからないのは当たり前
4)専門知識が無い一般人向けに専門分野を紹介する文献(新書に多い)も存在する
5)一般人にもわかりやすく理論を単純化し、それでいて本質を外れない記述というのはなかなか難しく、普通の学者に出来る事ではない
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「●キーワード集」の1)~3)は一種の居直りでしかない。
こういう考え方をしている限り学者と一般人の間の溝は埋まらず、コミュニケーションはむずかしい。編集の世界で「学者と医者の原稿は使いものにならない」と言われるのは、そのせいだろう。
ただ、4)5)にあるように、一般人に通じる文章が書ける学者も存在する。当方が仕事で読んだ原稿のなかにも、そういう例はいくつもあった。
おもしろいもので、まともな文章を書ける人は、不明点を指摘すると理解して修正してくれる。文章が書ける人は読解力もあるから、こういうまともなコミュニケーションができる。
まともな原稿を書けない人に「わかりにくい点」「わからない点」(場合によっては「間違っている点」)を指摘しても、理解できない。妙な理屈をこねて言い訳をすることはあっても修正はしない、と言うよりできない。理解できたら、そもそもそんな原稿は書かないか(これは学者でもライターでも同じかも)。
しかもそういう人に限ってプライドが高いから、ウカツなことを指摘すると逆ギレする。こうなると泥沼。「こんな原稿は使えない」と突き返すしかなくなる。そういうめったにない扱いをしてしまった人が、最近テレビで講釈を垂れているのを見ると、ちょっとホニャララな気持ちになる。
やさしく書こうとしても限界があるジャンルもある。たとえば医学。これはきわめてむずかしい。病名ひとつとっても、素人が理解できるように書くのはむずかしい。「くも膜下出血」あたりだと、脳の構造から始まってクダクダ書くと、それだけで数百字は必要になる。
もっと身近な病名だって、簡単に説明するのはむずかしい。いまでも覚えているのは「頭の片側がズキズキと痛む偏頭痛」ってフレーズ。これはギャグではなく某健康雑誌の常套句になっていた。ちなみに、その編集部では医者に原稿を書かせることはハナからあきらめていた。誌面の体裁としては医者の記名原稿だが、実際に書くのは取材したライター。きわめて正しい態度だと思う。
IT関係(例によっていい加減なイメージで、「コンピュータ関連」とほぼ同義)の記事あたりも、素人にわかるように書くのはむずかしいかも。そのテのマニュアルがむずかしいのは仕方がないかも。
●そもそも「わかりにくい」とはどういうことか
「わかりにくい」とか「わからない」とはどういうことか。
これを厳密に考えはじめると、禅問答に近くなる。うんと意地悪に考えると下記のようになる。
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「わかりやすく書け」という、だれにも反対できないように思える理屈にも、落とし穴はある。「わかりやすい」かどうかは、たぶんに書く人と読む人との関係性によるのである。極端な話、数式や楽譜は「わかやすく」(ママ)するために発案された書法である。しかし、わからない人にはわからない。万人にわかりやすい文章など、厳密にいえばありえないのだ。(『文章読本さん江』)
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ここまで考えはじめると、グチャグチャになりそうだ。なかにはツワモノもいて、ごくフツーのショップ紹介を、ものすごくわかりにくく書く人もいる。それはそれで一種の才能なのかもしれない。
そういう話を別にすると、要は「専門用語の使い方のサジ加減」ってことになると思う。「くも膜下出血」という病名も一種の専門用語だろう。医者同士の会話なら当然通じる(別の呼称がありそうだな)。一般人でも、少し医学の知識のある人ならわかる(知識が正確か否かは別問題)。しかし、どんな病気かまったく知らない人に伝えようとすると、かなりむずかしい。ヘタに噛み砕くとかえってわかりづらくなり、ウソになってしまうことも多い。専門分野に特化したライターでもむずかしい話なんだから当然だ。このあたりは↑の「キーワード集」の5)に通じる。
このへんのサジ加減がむずかしく、どの程度なら一般人にも理解できるのかわかったうえで解説できるのが、「普通の学者」にない能力をもった「貴重な学者」なんだろう。
「普通の学者」が書いた文章は、一般の人には通じない。たいていの学者はそのことを自覚しているから、一般の人に向かって講釈を垂れたりしない。
したがって、フツーの生活をしている人は「普通の学者」の念仏に出会うことはめったにない。新書の類いで目にするのは「貴重な学者」の文章だから、一般人でも理解できる(例外は多々ある)。
これがインターネットの世界だとちょっと事情がかわってくる。
本来は学者の世界の内部資料とでも言うべき論文(紀要)や念仏が飛び交っている。ちゃんとした論文のpdfが手軽に手に入るのは喜ばしいことなのだろう。基本的に一般人はそういうものに近づかないから、ある意味棲み分けができている。
学者が参加する掲示板にどんな専門用語がとびかっても、それはそれ。どうぞご自由としか言えない。
困るのは、一般人に世界に「普通の学者」(「もどき」を含む)が進出してくること。専門的な話をわかりやすく解説してくれるなら大歓迎だが、そんな「貴重な学者」はめったにいない。
「全方位毒吐き30」で紹介した「学者の卵」が困ったちゃんなのは、一般人の話に学者の理論を持ち込んできたから。それで居直られたら、コミュニケーションにならない。
質問サイトの掲示板のホニャララぶりは何度かレポートしてきたたが、不思議なことに学者の言葉で回答する人は見かけない。
本能的に避けているのか、バカバカしくて寄り付かないのかはわからない。もしかすると、そういう勇敢な人もいたのかもしれない。でも誰にも相手にされないからフェードアウトしたのかもしれない。
そういう意味では、ああいう質問板は自分の言葉の「わかりやすさ」や「正し(いっぽ)さ」を判定するのに適したツールかもしれない。Yahoo!知恵袋でBAが50%を超えている人のコメントなら、かなり信頼できる。もちろん、もっともらしいウソって可能性はある。
●mixiで見かける学者(もどき)
これがmixiのコメントになると、そういう判定の基準がないせいか、偉そうに専門用語をふりかざすホニャララがけっこういる。
当方が首を突っ込んでいる日本語関係だと、何人か思い当たる。
少数ではあるが、学者の言葉と一般の言葉の両方を使い分けている人もいる。当方がこの面で信頼しているのは、SさんとOさん。この2人のコメントはよくわかるし、間違いもない。通常のコメントは当方でもわかる書き方をする一方、学者とのやり取りになれば、当方にはチンプンカンプンの書き方もする。簡単に言えばバイリンガル? ほかにもバイリンガルが何人かいるようだが、コメントすることが少ないので存在感がない。
「学者同士のやり取り」がどのようなものかは、当方が「コミュズレ3部作」と呼んでいる下記を見てほしい。
【独り言です56くらい──日本語教師関連編27 モゴモゴ王決定か※公開制限あり】K
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1417110060&owner_id=5019671
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以下のコミュズレ3部作はあまりにもレベルが高すぎて、当方には何がなんだかわからない。たぶん「こどもの学習者」なら理解できるのだろう。「言語学」あたりのコミュならそう悪くないやり取りなのかもしれない。
一部、コメントを入れてるマイミクさん。こんな書き方してゴメンナサイ。でも、この3部作はコミュのフツーの参加者には理解できないと思う。
【総記でしょうか中立叙述でしょうか】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=48489573
これってコミュズレだと思う。
【~おいてもらう VS ~もらっておく】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=49551162
コミュズレ気味のうえ、何が論点なのか……
【格と副の交渉】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=50361254
これもコミュズレだと思う。
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下記だと少しマシかもしれないが、やはりコミュズレだと思う。
【「あげる」「くれる」「もらう」と第4の幻の動詞について】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=56252538&comm_id=398881
別にこういうトピがあってもいいのかもしれない。当方は分をわきまえているから近づかない。できればヨソでやってほしいけど。
困るのは、一般の人のやり取りに学者が口を挟むこと。繰り返すが、専門的な話をわかりやすく解説してくれるなら大歓迎だが、そんな「貴重な学者」はめったにいない。
その結果、一般人のやり取りの間になんだかわからん念仏が剥き出しのまま投げ込まれる。そりゃ浮くでしょ。当然のことながら、書いてる当人は自分の文章が一般人には理解できないことを自覚していない。その自覚があって書いているなら、単なる迷惑行為だよ。
多少わかりにくくても正しいことが書いてあるならまだ救われる。ヒドいのは、コンスタントにピント外れのコメントを書くあのおかた。当方の日記の中には消し逃げ癖のある人として何回か登場しているので、ご推察ください。
難解なピント外れも困るけど、実はもっと困るのは、一見わかりやすそうにピント外れのことを書いてあるコメント。難解なことを噛み砕くにはそれなりのテクニックが必要で、ヘタに噛み砕くとかえってわかりづらくなり、先に書いたようにウソになることも多い。
ウソにはならなくても、まるで小学生に語りかけるような口調で冗長になる。それでいて噛み砕くポイントが違うから、ちっともわかりやすくない。妙な表記を使っていると、その傾向がさらに強くなる。
ここに悪意までついてくると、単なる荒らしよりはるかにタチが悪い。末期の糖尿病って呼んであげよう。
あ~あ。せっかく少しまじめなことを書こうとしたのに、飽きてくるとこんなしょうもないオチになるのね。
学者の言葉〈3〉
── 専門用語の誘惑
mixi日記2012年02月11日から
直接的には下記の続きだろうな。
【「そのようにおっしゃられても困ります」〈2〉毒抜き編 規範文法と記述文法】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1799904762&owner_id=5019671
【学者の言葉〈1〉──無助詞文あるいは助詞の省略】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1813322718&owner_id=5019671
【学者の言葉〈2〉──「わからない」「わかりにくい」ということ】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1816531968&owner_id=5019671
最近、『敬語再入門』(菊地康人)を読んでいる。1項目ずつ噛み締めているからなかなか進まない。もう少しで読み終わるので、『敬語』のほうに進みたい。「進みたい」は正確には「戻りたい」にするべきだろう。元々あったのは『敬語』で、その入門編とも言えるのが『敬語再入門』。『敬語』のほうがボリュームが倍近くあり、内容も盛りだくさん。当方の手に負えるのだろうか?
それはさておき『敬語再入門』いついて。いやー、スゴいわ。訳のわからないバイト敬語を別にすれば、各種の質問板でとびかっている敬語関係の疑問のほとんどが解決する気がする。手元にある敬語関係の本がいかにいい加減かよくわかる。ネットでとびかっている珍説が哀れにさえ思える。
言語学の専門家であることが随所にうかがえ、解説がイチイチ論理的で深みが感じられる。
しかも、むずかしい言葉はほとんで出てこないので、当方のレベルが読んでもよくわかる。不明点もいくつかあるが、それは単に当方の勉強不足だろう。一般人がわからない言葉は使っていない。こういうのが「貴重な学者」の業績なんだろう。
むずかしい文法用語や、一般人がわからない専門用語なんか使わなくてもあれだけの文章が書けるのは驚異なのかもしれない。あやかりたい、あやかりたい。
●使ってみたい専門用語集
文法に関係するようなことを読んでいると、「この言葉をキッチリ使えたら便利だろうな」と思う言葉がある。
使ってみたい誘惑に駆られるが、ヘタに使うとそれだけで文章が難解に見えてしまう恐れがある。微妙に使い方を間違うと恥さらしなる恐れさえある。
完全な的外れかもしれないが、算数と数学の話を思い出す。
算数の問題で、連立方程式を使えば簡単に解ける問題がある(鶴亀算とか?)。それを算数の解法でなんとかしようと思うと、けっこう難問になる。未知数が3個以上出てきたりすると、すんごい難問になる。だからと言って、算数の問題を連立方程式で解くのは反則だろう。小学生に円周率がなんで3.14かと訊かれて、高等数学を用いた証明を語り始めたら単なる●●だろう。
文法の問題も、難解な専門用語を使うほうが説明が簡単なケースもあるだろう。「それは○○的に考えれば△△だから」で済むことがあるのかもしれない。そのほうがずっと簡潔で正確なんだと思う。でも「○○」も「△△」も知らない者には呪文でしかない。
呪文が通じる相手には呪文を使い、呪文が通じない相手にはそれなりの説明をする。そういうことができる知恵者を当方はバイリンガル?と呼んでいる。「貴重な学者」も、バイリンガルの一種ってことになる。相手構わず呪文を唱える人はなんて呼べばよいのだろう。
「規範文法」「記述文法」
使ってみたいけど、禁じ手にしている。一応辞書にはのっているけど、こんな言葉を素人が使ってもロクなことがない。下記などで教えてもらったからなんとなくわかった気になっているけど、そういうのは「生兵法」と言う。
【デス・マス体が書きにくいワケ4──デス・マス体のナゾを考えるヒント】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1539218404&owner_id=5019671
ちなみに、『敬語再入門』には当方が読んだ限りそんな言葉は出てこない。「規範的に」という表現は何回か出てくる。これは「規範文法」とも読めるが、一般の言葉(「ルール」くらいの意味)と解釈しても支障がない。このへんのサジ加減は見事。
「共起(する)」
これは使える気がしたけど、辞書をひいてあきらめた。
■Web辞書『大辞泉』から
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=%E5%85%B1%E8%B5%B7&stype=0&dtype=0
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きょうき1 【共起】
(名)
スル
〔専門〕 言
〔補説〕 co-occur
複数の言語現象が同一の発話・文・文脈などの言語的環境において生起すること。「しとしと」は「雨が降る」とは共起するが、「雪が降る」とは共起しないといえる。アメリカの言語学者ハリス(Z. S. Harris (1909- ))の用語。
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国語辞書が専門用語にしている。文法音痴の素人がそんな言葉を使ってはいけない気がして尻込みしている。
初めてこの言葉を聞いたときにはたしかに異和感があったが、いまはない。ひとつ賢くなったとも言えるが、一種の感覚麻痺とも言える。やはり、一般の辞書が専門語扱いしているような言葉は使うべきではない。でも便利そうなんだよな~(泣)。
「非文」なんかも国語辞書にはのっていない。やはり使っちゃダメなんだろう。しかも「非文」は「規範文法」の用語ではなく「記述文法」の用語らしい。そりゃ避けといたほうが無難だ。
「コンテクスト」「コンテキスト」
「文脈」にしておくべきだろうな。ちなみに「前後の文脈」ってよく目にするけど……やはり重言だろう。
「逆接」「順接」
以前、「専門用語」だと指摘を受けた。でもフツーの国語辞書にのっているしなー。非常にわかりやすい言葉だし、よく目にする。そんな言葉まで避ける気はない。専門用語ではどういう意味なのかは知りません。
「蓋然性」
これはどちらかと言うと数学系の言葉だと思う。国語辞書にものっているので専門用語ではないのだろうが、要注意。「蓋」は常用漢字に追加されたらしい。字面が森駅の名物弁当っぽいし、なじみが薄い。当方なら「必然性」とか「確率」に書きかえる。微妙なニュアンスの違いはあえて無視する(わかってないだけ?)。
「恣意的」
「恣」も新たに常用漢字に加わったらしいけど、なじみが薄い。これは一般語だと思うけど、個人的には使えない。「(自分)勝手」とか書いてしまう。微妙なニュアンスの違いはあえて無視する(わかってないだけ?)。
【新常用漢字(常用漢字に追加された196字)】
http://www.kanjijiten.net/joyo/newjoyo.html
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