読書感想文/『敬語再入門』(菊地康人/講談社学術文庫/2010年3月10日第1刷発行)
下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2020.html
日本語アレコレの索引(日々増殖中)【8】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1821744441&owner_id=5019671
mixi日記2012年02月日から
『敬語再入門』のamazonデータ。
http://www.amazon.co.jp/%E6%95%AC%E8%AA%9E%E5%86%8D%E5%85%A5%E9%96%80-%E8%AC%9B%E8%AB%87%E7%A4%BE%E5%AD%A6%E8%A1%93%E6%96%87%E5%BA%AB-%E8%8F%8A%E5%9C%B0-%E5%BA%B7%E4%BA%BA/dp/4062919842
いやぁ、すごいわ。
敬語に関するいいテキストはないかと考えていたところ、偶然教えてもらった。
おおざっぱな感想に関しては下記に書いた。
【学者の言葉〈3〉── 専門用語の誘惑】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1821238682&owner_id=5019671
================================引用開始
最近、『敬語再入門』(菊地康人)を読んでいる。1項目ずつ噛み締めているからなかなか進まない。もう少しで読み終わるので、『敬語』のほうに進みたい。「進みたい」は正確には「戻りたい」にするべきだろう。元々あったのは『敬語』で、その入門編とも言えるのが『敬語再入門』。『敬語』のほうがボリュームが倍近くあり、内容も盛りだくさん。当方の手に負えるのだろうか?
それはさておき『敬語再入門』いついて。いやー、スゴいわ。訳のわからないバイト敬語を別にすれば、各種の質問板でとびかっている敬語関係の疑問のほとんどが解決する気がする。手元にある敬語関係の本がいかにいい加減かよくわかる。ネットでとびかっている珍説が哀れにさえ思える。
言語学の専門家であることが随所にうかがえ、解説がイチイチ論理的で深みが感じられる。
しかも、むずかしい言葉はほとんで出てこないので、当方のレベルが読んでもよくわかる。不明点もいくつかあるが、それは単に当方の勉強不足だろう。一般人がわからない言葉は使っていない。こういうのが「貴重な学者」の業績なんだろう。
むずかしい文法用語や、一般人がわからない専門用語なんか使わなくてもあれだけの文章が書けるのは驚異なのかもしれない。あやかりたい、あやかりたい。
================================引用終了
少しテクニカルなことを書くと、本書は原則1項目2ページで構成されている。行が余って余白が出ているところはほとんどない。編集関係の仕事をしている当方から見ると、こういうちゃんとした内容の本でこういう体裁にするのはとんでもない力業。神業と言ってもいいかも。
それとちょっと余計なことを書くと、巻末の「敬語便利帳」を見て驚いた。当方が「不規則敬語」と呼んでいる(本書では「特定形」などと呼んでいる)動詞の一覧がのっている。これって、Wikipediaの「不規則動詞一覧」の表とよく似ている。まあ、同じような形になるのはしかたがない気もするけど……。ちなみにWikipediaの参考文献には『敬語』のほうが入っている。
パクったとするとWikipediaのほうだろうな……と思いながら見比べてみると、中身はかなり違う。興味のあるかたはご確認ください。
【引用部】
「くださる」「おっしゃる」「いらっしゃる」も変則的五段活用です(P.49)
深い意味はなく、ちょっとしたメモ。
【20140222追記】
ところが、「なさる」の場合、一般的法則の通りではなく、すでに江戸時代のうちに下二段から四段活用に変わりました。四段活用は現在は五段活用になり、「なさる」も、
② なさらない、なさろう(とする)、なさいます、
なさり(中止形=テン(、)の前の形)、なさって、
なさった、なさる、なされば、なさい
と活用するようになりました。普通の五段活用とは少し違うので(普通の五段活用なら「なさいます」「なさい」でなく「なさります」「なされ」となりところです)、変則的五段活用とでもいえるでしょう。「くださる」「おっしゃる」「いらっしゃる」も変則五段活用です。
現代の標準的な使い方は、この②です。(P.48〜49)
【引用部】
Q.「読んでいる」を尊敬語でいうとどうなりますか。(P.52)
イチバン敬度が高いのは「読んで」と「いる」の両方を尊敬語にする「お読みになっていらっしゃる」。これは「敬語連結」なので「二重敬語」ではない。
片方だけを敬語にした下記の形も一般的。
読んでいらっしゃる
お読みになっている
どちらかと言うと、後半だけを敬語にする「読んでいらっしゃる」のほうが一般的らしい。
このほかに「レル敬語」系の「読まれている」はあまりこなれていない。「読んでおられる」は誤用の疑いアリとのこと。
著者がすすめているのは、「お読みだ/お読みです」の類い。「お読みでいらっしゃる」にするとさらに敬度が上がる。
この言い方は少なくとも2つの問題にかかわる。
ひとつは「お召し上がりですか?」。もうひとつは後出の「○○住み」。
【引用部】
「くださる」は本来は恩恵を受ける場合の表現ですが、実際にはそうでない場合にも拡張して使われることがあります。(→§4)。「ください」は文法的には「くださる」の命令形ですが、恩恵を得るという原義とは無関係に、たとえば道を尋ねられて「そこを右に曲がってください」というように(この場合、話手には何の恩恵もないわけですが)広く使われ、依頼、要求などの表現として定着しています。(P.57)
この説明を見る限り、「~ください」は「尊敬語の命令形」で間違いないようだ。「尊敬語の命令形」なんてアリなの?
【引用部】
Q.「いい所にお住みですね」……少し変でしょうか。
§20の「お~です」の形で、理屈上は誤りではないはずですが、普通、「お住みです」ではなく「お住まいです」と言います。ナル敬語も「お住まいになる」が普通です。古語「住まふ」に由来し、名詞「住まい」も同源です。(P.60)
さすがに最近の「○○住み」の話は知らないらしい。関係ないか。
仮に「お住まいですか」に異和感をもつ(「知らない」という可能性も否定できない)と、「お住みですか」になる。敬語でない表現にすると「○○住みです」まであと一歩って気がする。
【引用部】
Q.「なくなる」は「死ぬ」の尊敬語ですか。
「死ぬ」という直接的な表現を避けて婉曲に述べた故人への配慮の表現ですが、身内にも使うので、普通の意味での尊敬語とはいえません。むしろ美化語(→§52)系でしょう。「なくなられる」「おなくなりになる」と言って初めて尊敬語になり、これは身内には使えません。(P.61)
ひとつ疑問が解けた。「なくなる」自体はやはり尊敬語ではない。
【「なくなる」「亡くなる」考 】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1600713314&owner_id=5019671
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1684998175&owner_id=5019671
【引用部】
なお「貴社」の意で「御社」と使う人がいますが、これは比較的新しい言い方で、一種の社会方言なのでしょう(私自身の語感では抵抗があります)。(P.65)
これは初めて聞いた。一般には「貴社は書き言葉的で、御社は話し言葉的」とか言うはず。それはなんとなくわかる。「キシャ」は耳で聞くとけっこうわかりにくい。だから「御社」が広まったのかもしれない。
【引用部】
なお、「使いやすい」のような「動詞+やすい(にくい)」型のものは「お使いやすい」でなく「お使いになりやすい」です。「お求めやすい」は「安い」意の婉曲表現として定着しつつありますが、本当はおかしい表現で、「お求めになりやすい」というべきところです。(P.66)
この書き方はちょっと不満。これだと「お求めやすい」は定着しつつあるから「許容」ともとれなくはない。まあ、たしかに通販番組などでよく耳にする。
【引用部】
Q.「失礼ですが、田中さんでございますか」というのは、少しおかしくありませんか。(P.111)
P.110~111の§54のテーマは〈「ございます」と人称〉。「田中さんでいらっしゃいますか」が望ましいらしい。
言われてみると、たしかに「田中さんでございますか」には異和感がある。しかし、「そんなヘンな言い回しは使ったことがない」と強気に言えるほどの自信もない(泣)。
【引用部】
なお、一つの語がいくつかの用法をもつ場合もあります。§48では、「お手紙」のように尊敬語・謙譲語I両方の用法をもつ主な語をリストしましたが、その中でも「おみやげ」などは、「先生からのおみやげ」(尊敬語)・「先生へのおみやげ」(謙譲語I)のほか「子どもへのおみやげ」のように美化語としても使います(あるいは、初めの二つも美化語と見てしまったほうがよいのかもしれません)。(P.124)
接頭語の「お/ご」の解説のなかにある記述。「お/ご」は〈機能〉の面から見ると4種類ある。
1)尊敬語
2)謙譲語I
3)丁寧語
「お暑いですね」「お寒うございます」
4)美化語
下記に書いたように、3つの〈機能〉をもつ「お/ご」はほかにもありそう。
673)緊急! 突然ですが問題です【日本語編92】──「お料理」「お手紙」の「お」の意味 【解答?編】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1813769245&owner_id=5019671
本書の解説中にあるようにすべてを「美化語」と考えるほうがいいのかもしれない。
【引用部】
また、社外の人に同僚のことを「○○は休暇をいただいておりまして」などと言うのも、休暇は会社なり上司なりからもらうわけですから、会社/上司を高めることになってしまいます。「休暇をとっておりまして」と言うべきところです。(P.137)
やっぱりこれが正論なのね。それはわかってるんだけど、「休暇をいただいておりまして」を×にするのはちょっと気が引ける。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1251284337
================================引用開始
1)「休みをいただいております」(「頂」はひらがなにします)
これは微妙な問題ですね。たしかにその客の主張にも一理あります。
正確に言うなら「会社から休みをもらって、休ませていただいております」なのかもしれません。いくらなんでも冗長ですからそこまでする必要はないでしょう。ただし、「お」をつけて「お休みをいただいております」のほうが一層丁寧な気がします。
もうひとつの【修正案】は、↑の後半にある「休ませていただいております」でしょう。これは「~させていいただく」の形なので、2)の問題とかかわってきます。
================================引用終了
たとえば、取引先の偉いさんから連絡があったのに、担当者が休んでいる場合。「(お)休みをいただいております」じゃダメかな。偉いさんでなくても、「せっかく連絡いただいたのに……」という気持ちがあるなら「(お)休みをいただいております」でもいいと思う。
ただ、発言者は年配の女性のイメージになるってことは、やはり過剰敬語なのかもしれない。
【引用部】
Q.「先生が指導していただいた」……どこか変ですね。(P.144)
これ、けっこう基本的な問題だと思う。
本書の解説は先生が大先生に指導してもらった場合を別にすると、おかしいとしている。
下記のどちらかになるらしい。
先生が指導してくださった。(尊敬語)
先生に指導していただいた。(謙譲語I)
それはわかるんだけど、世間でよく話題になるのはもう少しヒネった形。
ご来店{ください/いただき}まして)(誠に)ありがとうございます。
これだと主語(的なもの)は「お客様が」でも「お客様に」でもおかしくない。さて、正しいのはどっち?
【引用部】
Q.「では田中社長のほうからご挨拶をいただきます」のように「……のほう」を付けると丁寧になるんですね(P.151)
典型的な「バイト敬語/若者言葉」。例外的に1ページの項目なので、丸々転載したくなる(笑)。要点だけを箇条書きにする。
・元々が方向を表わす言葉が敬意を表わす表現になることはある(「こちら・そちら・あちら」)
・しかし、著者の語感では「……のほう」は余計で不必要な印象を受ける
・こんな言い方で丁寧になると思うのはずいぶん浅薄
・概して敬語の使い方が得意でない人が使うことが多い
・過剰な「……のほう」は敬語でもなんでもなく、ないほうがよほどスッキリする
本書では「バイト敬語/若者言葉」はあまり扱っていない。「あんなものは敬語ではない」ということではなく、問題意識が違うのだろう。できればこういう著者に詳細に解説してほしい。
【引用部】
もっとも、ありうることと使うことは別ですし、過度にかばう気もありません。そもそも「とんでもない」は何かを難じるか、相手の言動を強く打ち消す語なので、概して敬語になじまない(相手から過分な贈答・評価・申し出などを受けた際の受け答えとしてならまだしも、という面はあり、「とんでもございません」もそうした場合に使われるようですが、それにしても相手を否定することが敬語と合わない)、というのが不自然な一因ではないでしょうか。「おきれいですね」と言われたら「とんでもございません」などと言うより、ただ「いいえ、そんな……」とはじらっているほうがよほど好感がもてるというものです。それにしても、“正解”とされる「とんでもないことでございます」は、受け答えとしてはかなり変ではないでしょうか。(P.161)
歯切れの悪さに著者の迷いが見える、なんて書いたら怒られるかな。「ありうる形なので間違いではないが、積極的には支持できない」ってところだろうか。最後の書き方は、総理に醤油をとってもらう話を想起させる。
この【引用部】の前にあるのは、「とんでもない」の分析。
【引用部】
①「とん」が名詞性の語で、「Nで(も)ない」式のでき方なら、丁寧形として「Nで(も)ございません」はありうる形です。
②「とんで」が「動詞+て」、つまり「Vて(も)ない」なら、さらに二つの場合に分かれます。
(a)「Vてある」の否定なら「Vて(も)ございません」はありうる形です。
(b)「Vている」の否定(「Vていない」の「い」の脱落)なら、「Vて(も)いません」/おりません」となるはずで、「Vて(も)ございません」とはなりません。(P.160)
と分析しているが、結論はよくわからない。「とん」の語源が不明だからしかたがない。不明ながらも、もし名詞性で①なら「とんでもございません」はありうる形、としながら、先のP.161の【引用部】に続く。
結局、専門家が見てもよくわからないってことだろう。素人にわかるわけがない(笑)。
【関連トピ紹介】1──「申し訳ございません」「とんでもございません」
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=41472470
【引用部】
不快感/違和感を感じますか(P.183)
単なるメモです。
【引用部】
Q.「させていただく」、乱れてませんか。(P.191)
「バイト敬語/若者言葉」にふれた貴重な項目。2項目6ページにわたっているから相当力が入っている。イマイチ要領を得ない(←オイ!)のは、それだけ厄介な問題なのだろう。
内容を箇条書きにしてみる。
・〈相手が、持っている資料を、好意で、私がコピーすることを許してくれる〉場合なら「コピーさせていただく」は適切な使い方
・パーティーの誘いを受けて「出席させていただきます」はやや拡張した使われ方
・「本日休業させていただきます」はやや拡張した使われ方
・結婚式のスピーチで「私は神父と三年間一緒にテニスをさせていただいた田中と申します」は、新郎新婦が特別な貴人でない限り異和感
・押しかけたセールスマンが「このたび新製品を開発させていただきまして」と言うのは「乱れ」の典型
・「乱れ」の正体は〈謙譲語Iから謙譲語IIへの変化〉
※ここがこの項目の骨子のはずだが、当方には説明しきれない(泣)。
・敬語の現状を見ると、「させていただく」の「変化」に加勢するファクターがいろいろある。
→聞手への低調さを醸し出す謙譲語IIは広まりやすい
【引用部】
ちなみに、五段活用の場合は本来「せていただく」ですが、「読まさせていただく」式の誤用も聞きます。これも、もはや使役の原義をとどめていないということでしょう。原義を忘れて謙譲語IIに向かうのなら、むしろ、一律に「さ」を入れるほうが簡単でいいのかもしれません。(P.195)
うなってしまった。当然、その形が「サ入れ言葉」と呼ばれていることを踏まえている。それでいてこういう怖いことをアッサリ書けるのは、思考に柔軟性があるから。
【引用部】
ところが、謙譲語IIの代表選手「──いたす」は、「──する」型(サ変)の動詞でなければ使えない、また、文末以外では使いにくい、という制約があります。つまり、先程の例なら「開発いたしました」と言えますが、「新製品を作りました」は、「──する」型動詞でないので「作りいたしました」と言えないし、「新製品を開発した業者です」も、文末ではないので「開発いたしました業者です」は不自然です。この「いたす」の守備範囲の不足を補うように「作らせていただきました」「開発させていただいた業者です」と言う、という面がありそうです。「守備範囲の広い謙譲語IIの形」を求める心理が潜在的にあって、そこに「させていただく」が入り込もうとしているのです。(P.196)
つまりそのなんだ。こういうのを読んでしまうと、「プチ発見」のはずが単なる勉強不足になるってことだ(泣)。
446)【「~させていただく」〈2〉──プチ発見か単なる●●か?】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1692229571&owner_id=5019671
【引用部】
ごぞんじ(ご存じ) 「知っている」の尊敬語(P.257)
巻末の「敬語ミニ辞典」に「ご存じ」の項がある。「ご存知」の表記に関してはいっさいふれていない。まあ、そういうことだ(笑)。
【20120224追記】
書き忘れたが、本書では「敬度」という言葉が使われている。この言葉はWeb辞書にはない。そのことに気がついて以来、当方は単語登録をして遠慮がちに使っていた。これからは堂々と使う。辞書にはなくてもわかりやすい(意味を説明する必要さえ感じられない)し、「敬度が高い/低い」など、用途も多い。
ひとつ重要なテーマを抜かしていた。本書の中に何度も出てくるが、一応理解済みの事項としてパスしていた。
【引用部】
Q.「ご利用してください」「先生もまいりますか」……どこか間違っていますか。(P.94)
問題は前半の「ご利用してください」がなぜ誤りか。本書の解説がどうもピンと来ない。要は「お/ご~する」が謙譲語Iなので、「ご利用してください」だと聞き手に謙譲を強いることになるからだろう。解決策はむずかしくない。
【引用部】
②③④の「お/ご~くださる」は「お/ご~になってくださる」の縮約形で、正しい敬語です。(→§22)。つまり、「お/ご~してくださる(ください)」は一般に誤りで、正しくは「して」を取り払って、ただ「お/ご~くださる(ください)」と言えばいいわけです。(P.95)
一般にはこれが正解。
ちなみに、「お/ご」をつけない「~してください」の話は出てこない。やはり敬語でもなんでもないのだろうな。「~くださいませ」にしてもダメなのかな……。
それはさておき一般に「正解」なのに例外を示しているのが下記のトピの話。これはけっこうレアケースなんだろうな。
235)【「お○○してください」「ご○○してください」「お~してください」「ご~してください」☆日本語教師☆】玉石混交
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1332.html
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1515394161&owner_id=5019671
『敬語再入門』補遺編
事情があって詳しいことは書けないが、先月下旬から18日までサラリーマンのような生活をしていた。
後半の通勤電車内で『敬語再入門』を再読していた。以前書いた読書感想文で書き落としていることがいくつもあることに気づいた。
実は元本とも言えるに『敬語』もなんとか読み終えたのだが、チェックした事項が多すぎてまとめる気になれない(泣)。
ってことで、『敬語再入門』のメモを追加しておく。
そもそもこの本を書棚から引っ張り出したのは、「ご利用できます」がなぜ誤用なのかを確認するため。P.146にわかりやすく書いてある。
「ご利用できます」とか「ご乗車できます」はよく目にする誤用らしい。そもそも可能形でない形の「ご利用する/ご利用します」がかなり異様。「ご~する」は謙譲語Iの基本形とも言える形だが、「ご利用する」ってフツーの文脈では使わないだろう。
話し手側を主語にする謙譲の形で「ご用意できます」「ご案内できます」ならもちろんアリ。しかし、聞き手側を主語にする「ご利用できます」「ご乗車できます」は×。
ほかにも気になった点を追加でメモしておく。
P.91〈「申す」を含む語〉では、「申す」を含む複合動詞をいくつかに分類している。
1)謙譲語Iの性質をもつ……申し上げる/申し受ける
2)謙譲語IIの性質をもつ……申し伝える
3)謙譲語ないし改まった趣きが感じられる……申し添える
4)多少改まった趣きが感じられる……申し付ける
5)謙譲語も改まった趣きもすでにない……申し合わせる/申し込む
「お申し付けください」は間違いではないが、同義で本来の尊敬語の「お仰せつけください」「ご用命ください」のほうが無難な気がするとしている。「お仰せ」ってなんて読むんだろう?
突然ですが問題です【日本語編7】──「言う」を謙譲語にすると「申す」なのか
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=54493030
P.158で「おられる」の適否にふれている。これがまた微妙で、かなりメンドー。これはYahoo!知恵袋の頻出問題で、詳しく見ていくと激痛の頭痛が激しく痛くなる。課題にしたい。
突然ですが問題です【日本語編82】──おられる
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=67212521
あと、二重敬語の問題をまとめる方法が少し見えてきた気がする。これも課題にしたい。
【20120521追記】
P.41~のテーマは〈「お/ご~になるといえない語」〉。ナル敬語はレル敬語と並んで尊敬語の基本とも言える形だが、いくつか制約がある。この制約を眺めていると、「特定形」になる動詞の傾向がボンヤリと見えてくる。
【引用部】
(1)~部が一拍(かな一字分の長さ)の場合や、言い換え形がある場合
A. ~部が一拍で言い換え形(対応する特定形)がある場合(P.40)
例としてあげられている動詞と、その「特定形」は下記のとおり。
する→なさる
見る→ご覧になる
着る→お召しになる
寝る→お休みになる
来る→いらっしゃる/おいでになる
いる(居る)→いらっしゃる/おいでになる
「煮る」は「お煮になる」とは言わないが、「特定形」もない。「出る」は「外にお出になる」と使われることもある。
ほかの例を見ると、「似る」は「煮る」とほぼ同様。
上はいずれも五段活用ではない動詞。このあたりは、「ラ抜き言葉」になる動詞に近いものがある。
【引用部】
B. ~部が二拍だが、言い換えがある場合(P.40)
例としてあげられている動詞と、その「特定形」は下記のとおり。
する→なさる
くれる→くださる
食べる→召しあがる
言う→おっしゃる
行く→いらっしゃる/おいでになる
死ぬ→おなくなるになる
何気なく並べているが、後ろの3つは五段活用の動詞。ちょっと違ってくる気がする。さらに言うと、「死ぬ→おなくなるになる」をここに入れていいのだろうか。「おなくなりになる」は「なくなる」をナル敬語にしたもの。「死ぬ」と「なくなる」の関係はちょっと微妙で、忌み言葉の一種って気がする。
いずれにしても、ここに出てくるのは音節が少ない動詞ばかり(これが「使用頻度の高い動詞」とも言えるのは偶然なのか必然なのか)。そのなかでも、五段活用以外の動詞が「特定形」をもっている気がする。
たとえば、「会う→お会いになる」「買う→お買いになる」などを見ると、音節の数だけでは判断できない気がする。さらに言うと「お合いになる」はどう考えればいいのだろう。
ちょっと気になって調べたのは、熟語動詞(仮)の類いを本書でどう呼んでいるかってこと。どうやら〈「──する」型の動詞(サ変動詞)〉と呼んでいるようだ(P.46ほか)。索引を見ると、「サ変動詞」は〈「──する」型の動詞〉を参照する形にしている。
めったにないほどの「釈迦に説法」になるが、一般には「サ変動詞」と言うと「サ行変格活用」のことだろう。
■Wikipediaから
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E8%A1%8C%E5%A4%89%E6%A0%BC%E6%B4%BB%E7%94%A8
「熟語+する」のことはなんと呼ぶべきなんだろう。Wikipediaにも書いてあるが、「サ変名詞」と言うのは単語登録などのときに用いられる造語だろう。
【引用部】
その上、「もらう」を謙譲語I「いただく」に変えるわけですから、「書け」の意の相当丁寧な表現になるわけです。「お書きいただけません(でしょう)か」とすれば、まさに最大級です。(P.90)
これはたしかにMAX敬語かもしれない。MAX敬語のルールに従うなら、「書く」よりも古風な「認(したた)める」を使うべきなのかもしれない(知らんわ)。
こちらは索引にないので探すのに苦労した。問題は、「~ませんでしょうか」の可否。おそらく最高クラスに敬度の高い表現なんだろう。裏を返せば相当クドい。これが「敬語連結」か否かはちょっと疑問だけど、「間違い」ではないんだろうな。
これも課題にしたい。
198【「~ますでしょうか」 「~ませんでしょうか」】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1483085125&owner_id=5019671
下記は「二重敬語」と考えているが、それはちょっと違うと思う。
http://dora0.blog115.fc2.com/blog-entry-47.html
【20120626追記】
【読書感想文/『敬語』(菊地康人/講談社学術文庫/1997年2月10日第1刷発行)──予想していたことではあるが……。】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2415.html
================================引用開始
【引用部】
(2)の例としては、「いつご出発ですか」・「こちらでお召しあがりですか」(たとえば外食産業の販売員が客に、店で食べるか持ち帰るかを聞くときに使う)/「ご使用の際は説明書をお読みください」(後略)(P.236)
いきなり(2)と書いてもなんのことかわからんよな。こういう引用のしかたはいけません。テーマになっているのは、『敬語再入門』の読書感想文で少し書いた「お/ご~~だ(です)」の形。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1824714512&owner_id=5019671
(略)
「お/ご~~だ(です)」は、一般には(1)「……している」という意味。そのほかに(2)「……する」、(3)「……した」の意味もある。(3)「……した」の典型は帰宅途中の人に近所の人が言う「いまお帰りですか」。
(2)「……する」の典型が「こちらでお召しあがりですか」。本書では「たとえば」とあるが、これ以外の用法があるのだろうか。奥さんが旦那にこう言ったら、ほとんど喧嘩腰だろうな。
「こちらでお召しあがりですか」を問題視する意見もよく目にする。お手本になるような敬語だとは思わないが「間違い」ではない(こればっかり)。ちょっと言葉足らずな気はするけど、適切な言いかえが思い浮かばない。「こちらでお召しあがりになりますか?」だろうか。この形は二重敬語だけど、文化庁が許容しているのでOKだろう。ただ、セットになっている(ポテトとコーラじゃなく)慣用句が妙なことになる。「お持ち帰りになりますか?」かな。
「お持ち帰りになりますか? こちらでお召しあがりになりますか?」か……相当クドいな。
================================引用終了
この本に関してはいろいろ追記する必要がある。
詳しくは下記をご参照ください。
【【読書感想文/『敬語再入門』(菊地康人/講談社学術文庫/2010年3月10日第1刷発行)】〈2〉メモ1「お/ご〜だ(です)」 教えて! goo】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-3120.html
【【読書感想文/『敬語再入門』(菊地康人/講談社学術文庫/2010年3月10日第1刷発行)】〈2〉メモ1「お/ご〜だ(です)」 教えて! goo】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-3120.html
【【読書感想文/『敬語再入門』(菊地康人/講談社学術文庫/2010年3月10日第1刷発行)】〈2〉メモ1「お/ご〜だ(です)」 教えて! goo】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-3120.html
メモ1「お/ご〜だ(です)
テーマサイトは下記。
【尊敬語「お+です」の意味について】
http://oshiete.goo.ne.jp/qa/8768483.html
質問の趣旨は簡潔。
「お~です」はどういう意味で、「お~になる」とはどう違うか。
この質問に答えるなら、『敬語再入門』P.251の記述をひくのが早いだろう。例によってII・III人称は一般の二・三人称とはちょっと違うが無視する。
==============引用開始
お/ご〜〜だ(です) 尊敬語。主語〈II・III人称〉を高める。形としては、同じ尊敬語「お/ご〜〜になる」の「になる」を「だ(です)」に変えた形にあたる。意味としては、「……ている」の意をあらわすのが一般的。「……ている」意のスマートな尊敬語として重宝。「用紙をお持ちですか」「社長は今週ご出張です」 ただし、「……ている」意でなく使う場合もある。
(中略)
さらに敬度の高い表現として「お/ご〜〜でいらっしゃる」(次項)がある。
(略)
==============引用終了
以下、現在進行形とか過去とかあやしげな言葉を使う。日本語の文法では相当微妙な話になるはずだが、わかりやすければなんでもいい、の精神で書く。
基本的には、「……ている」(現在進行形)の意味。問題は、動詞の性質によっては違う意味になること。
「社長は昨日お戻りです」(過去)
「社長は明日お戻りです」(未来)
うんとひねくれて、
「先ほど連絡がありました。もうすぐお戻りです」
だと、現在進行形かもしれない。まあ、未来と考えるのが無難だろう。
このあたりは継続系の動詞(持つ……etc.)と瞬間系の動詞(戻る……etc.)の違いってことになりそうだが、深入りするのはやめる。
『敬語再入門』が「スマートな尊敬語」としているのはいささか言葉足らずで、このあたりは同書のP.52〜を読んでもらうしかない。
簡単に言うと、
「お持ちになっていらっしゃいます」
「お持ちでいらっしゃいます」
「お持ちになっています」
が長いと感じる人やうまく使えない人は「お持ちです」のほうが簡便ということ。
簡便なだけあって制約もあり、↑のように時制があいまいになるのが弊害のひとつだろう。もうひとつは敬度が低く感じられること。
この点に関しては『敬語再入門』は言及していない。↑のテーマサイトのNo.3のかたの説明が適確な気がする(このかたのコメントはかなり信頼できる)。
40分
メモ2「読んでいる」の尊敬語
以下、主として『敬語再入門』のP.52を参考に。
「読んでいる」を尊敬語にするとどうなるのか。丁寧形の「読んでいます」で考えてもよいが、煩雑になるので、丁寧形は無視する。
まず、「レル敬語」を使うか「ナル敬語」を使うか、という問題がある。
「読む」の「レル敬語」は「読まれる」
「読む」の「ナル敬語」は「お読みになる」
「レル敬語」は間違いではないが、
1)受身などとまぎらわしいことがある
2)敬度が低い
などの理由から、基本的には避けたい。「制約が少ない」「初心者でも使いやすい」といったメリットはあるが、ここでは無視する。
「読んでいる」は「読む」と「いる」の複合動詞と言っていいだろう。「ナル敬語」の尊敬語の形には下記がある。
1)お読みになっている(「読む」を尊敬語にした形)
2)読んでいらっしゃる(「いる」を尊敬語にした形)
3)お読みになっていらっしゃる(「読む」と「いる」を尊敬語にした形)
1)や2)のように一方を敬語にする場合、2)のように後半を敬語にするのが一般的なので、2)が一番多く使われるらしい。
3)は尊敬語を2つつなげているが、「二重敬語」ではない。「敬語連結」という形で、多少クドくはあっても、問題のない敬語の使い方。
詳しくは下記をご参照ください。
【よくある誤用34──敬語編4 二重敬語】
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n133372
1)〜3)を長いと感じる人に『敬語再入門』がすすめているのが「お読みです」の形。敬度が低く感じられるなら「お読みでいらっしゃる」にすればいい。
ちなみにレル敬語を使うなら、
4)読まれている(「読む」を尊敬語にした形)
5)読んでいらっしゃる(「いる」を尊敬語にした形。2)と同形)
6)読まれていらっしゃる(「読む」と「いる」を尊敬語にした形)
たしかにかなりヘンな感じがする。
メモ3 「お答えできる」の尊敬語 教えて! goo
テーマサイトは下記。
【「答えができる」の尊敬語】
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14138056579
大前提として、原形の「答えができる」はおかしのでは。ここがおかしいので、「お答えができる」はいろいろな意味でおかしくなる。
原形は「答えられる」「答えることができる」あたりだろう。
「答えられる」の尊敬語に関しては、『敬語再入門』のP.50〜に「可能表現・複合動詞の尊敬語」の解説がある。正解は「お答えになれる」と明記されている。
可能表現の尊敬語は〈尊敬語を作ってから可能形にする〉ものらしい。ナル敬語を使ってもレル敬語をつかっても同じ形になるのか? なんて美しい。
答える→お答えになる→お答えになれる(ナル敬語の場合)
答える→答えられる(尊敬)→お答えになれる(レル敬語の場合)
順番が逆になった下記はおかしい。
答える→答えられる(可能)→お答えられになる
ほかの例で考える。
読む→お読みになる→お読みになれる
読む→読める→お読めになれる×
「答えることができる」も先に可能形にしているので、このままでは尊敬語にしにくい。
ちょっと気になるのは「できる」をナル敬語にした「おできになる」。「できる」はレル敬語にしにくいので無視する。
これは「する」の可能形ではなく、そこから派生した「うまい」「堪能」などの意味だろう。「勉強がおできになる」「英語がおできになる」……etc.
【「できる」「得意」「上手(じょうず)」「うまい」──ほめ言葉の迷宮 日本語】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1805.html
これはこれでアリだろう。ザアマス言葉のにおいがしてかなり気持ちが悪いので、自分では使えない。
ここから類推して「答えることがおできになる」も間違いではないのかもしれないが、あえて使う理由は見当たらない。
質問の本題に関して。
①お答えができる方はいらっしゃいますか。
↑の話にあてはめると、「お答えになれる方はいらっしゃいますか」。
これが敬語として自然かというと……いったいどんな場面で使うのか想像できない
たとえばセミナーで講師が参加者に訊く場合。
「お答えになれる方はいらっしゃいますか」よりも「おわかりの方はいらっしゃいますか」くらいのほうが自然に感じる。このあたりは、文脈がないと判断できない。
相手に「できるか否かを訊くのが失礼」という考え方もあるが、↑くらいなら大丈夫だろう。
②全問お答えができ(た)ら、賞品を進呈します。
↑の話にあてはめると、「全問お答えになれたら、賞品を進呈します」。
これも間違いではないだろうが、見慣れない。
「全問正解の方には賞品を進呈します」くらいだろう。
メモ4「お/ご~~申し上げる」にできる言葉 Yahoo!知恵袋
テーマサイトは下記。
【「感謝申し上げます」は問題なしで、「ご感謝申し上げます」はだめな理由】
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11138590471
以下、主として『敬語再入門』のP.239から抜粋。
「お/ご~~申し上げる」の形にできる言葉は意外に少ない。
同書には、以下の言葉があげられている。
お祈り・お祝い・お悔やみ……etc.
ご挨拶・ご暗示・ご依頼……etc.
特記事項としては下記があげられている。
・「お」の場合、「お/ご~する」がつくれる語よりかなり少ない
・「お悔やみ」は「申し上げる」のほうがなじむ。
・「ご」の場合、「ご依頼・ご助言・ご注意・ご同情・ご了承」など、「ご~する」より「ご~申し上げる」のほうが落ち着く語もある。
・漢語の熟語に「ご」をつけずに「挨拶申し上げる」という人もいる(敬度は下がる)。
・「感謝申し上げる」「尊敬申し上げる」「失礼申し上げる」など、「ご」のつかない形でのみ使う語もある。
o( ̄ー ̄;)ゞううむ
「ご尊敬申し上げる」なら使えそうな気がするが……。
メモ5「ございます」 Yahoo!知恵袋
「ございます」の意味は2つに大別できる。
クダクダ書くよりも『敬語再入門』P.257から転載するほうが早い。
==============引用開始
ございます・……でございます
「ございます」は「あります」の、「でございます」は「です」の、さらに敬度の高い丁寧語。「こちらに書類がございます」「私が責任者でございます」。その他、「うれしゅうございます」のように「形容詞+ございます」の形も作れる。II人称者について「(あなたは)明日はお仕事がございますか」「(あなたは)田中さんでございますか」と使うのは、誤りとまではいえないが、違和感を感じる人もいて、それぞれ「明日はお仕事がおありですか」「田中さんでいらっしゃいますか」のほうが無難。
==============引用終了
同じ「ございます」に見えるが、意味が違う。
「明日はお仕事がございますか」の通常形は「明日は仕事がありますか」。
「田中さんでございますか」の通常形は「田中さんですか」。
だから無難な高敬度形(なんじゃ?)にも違いが生じる。
素朴な疑問なんだけど、「でございます」の元々の原形(重言だな)は「であります」だった気がする。
軍隊映画なんかで聞く「田中であります」の類い。これだと「ございます」⇔「あります」で一本化できる。
「田中であります」がしだいに崩れて「田中です」になったので、2つの意味になったような。こう考えるとスッキリする。
こちらからたどっていくと、「田中さんですか」の敬度を上げた形は「田中さんであられますか」になりそうだけど、さすがに現代語としては不自然かもしれない。
辞書の記述でこのことが読み取れたら達人クラスだと思う。
https://kotobank.jp/word/%E5%BE%A1%E5%BA%A7%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99-265952#E5.A4.A7.E8.BE.9E.E6.9E.97.20.E7.AC.AC.E4.B8.89.E7.89.88
==============引用開始
大辞林 第三版の解説
ございます【御座います】
( 動サ特活 )
〔動詞「ござる」に助動詞「ます」の付いた「ござります」の転。近世江戸語以降の語〕
①
「ある」の意の丁寧語。 「お探しの本はここに-・す」
②
(補助動詞) 「ある」の意の丁寧語。 「明けましておめでとう-・す」 「ただいま帰りまして-・す」 「どなた様で-・すか」 〔活用は「-・せ(-・しょ)|-・し |-・す |-・す |-・すれ |○」〕
==============引用終了
==============引用開始
デジタル大辞泉の解説
ござい‐ま・す 【御座います】
[動サ特活]《「ござります」の音変化。近世江戸以来の語》
1 「ある」の意の丁寧語。「あります」より丁寧な言い方。「おあつらえ向きのお品が―・す」「何も―・せんが、どうぞ召し上がれ」
2 (補助動詞)補助動詞「ある」の意の丁寧語。「すでにお願いして―・す」「いかがお過ごしで―・しょうか」「ただ今ご紹介いただいた田中で―・す」「おめでとう―・す」「いっそ死にとう―・す」
◆活用は「ございませ(ございましょ)・ございまし・ございます・ございます・ございますれ・〇」。「ござります」より丁寧の度合いが低く、打ち解けたときに用いられ、さらに、なまって「ござえます」「ごぜえます」ともなる。また、「さようでござい」などの「ござい」は「ございます」のぞんざいな言い方。2の「…でございます」の形は口語文体の敬体の一で、「です」体・「ます」体・「であります」体に対して「でございます」体とよばれることがある。
==============引用終了
メモ6 「お高くとまっている」の「お」の働き
テーマサイトは下記。
【お高くとまっているという言い方がありますが、これは尊敬語ですか?】
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13140810993
質問内容は、タイトルのまんま。
答えは専門書に明記されている。
結論を先に書くと、一般の「お高い」なら尊敬語。過剰敬語気味なので個人的には使わない。
「お高くとまる」は〈皮肉や茶化した表現として固定化〉した例で、分類としては美化語。ちょっと無理も感じるが、定評のある書籍なので逆らいません。
尊敬語にはならないので、「あえて言うなら美化語」ということなのだろう。
2つの側面から考える必要がありそう。
●形容詞・形容動詞につく「お/ご」
P.123〜に〈「お/ご」の整理〉という項目がある。
接頭語の「お/ご」を機能の面から4つに分けている。
1)尊敬語
2)謙譲語I
3)丁寧語
4)美化語
敬語を旧来の3分類で考えるなら、「美化語」は「丁寧語」の一種になる。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%95%AC%E8%AA%9E
あげられている例のうち、形容詞・形容動詞が出てくるのは下記。
1)尊敬語
お若い/おきれい/ご熱心
3)丁寧語
お暑いですね/お寒うございます
※これは特殊な例と考えるほうがいいだろう。
ちょっと意外だったが、同書を見る限り、形容詞・形容動詞を美化語として使う例はなさそう。
「最近お野菜がお高いですこと」
「もう少しお安くなりませんと買う気になりませんわ」
相当気持ちが悪いけど、美化語もアリじゃないかな。
一般的な「高い」の意味で「お高い」と使うのは尊敬語になる。これも過剰敬語気味なので個人的には使わない。
「背のお高いかただったのですね」
「さすがにお高いご洋服をお召しでした」
●美化語の醜化語?用法
P.108〜のテーマは〈美化語になる語・ならない語〉。
詳細な分類がある。
〈③「お/ご」の付かない形が、同じ意味の語として成り立つもの〉の(f)をひく。
==============引用開始
(f)付けると皮肉や茶化した表現になるもの 皮肉や茶化した表現として固定化した例として「おあいにくさま・ご大層・ご乱行」など。
==============引用終了
「ご乱心」などもそうだろう。
「同じ意味」はちょっと疑問だが、スルーしておく。
これは前に書いた「醜化語」の話だろう。
【「醜化語」の「ご」「お」】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2138.html
メモ7 「お述べする」が不自然な理由
mixi日記2015年01月24日から
直接的には下記の続きだろうな。
【読書感想文/『敬語再入門』(菊地康人/講談社学術文庫/2010年3月10日第1刷発行)】〈2〉メモ1「お/ご~だ(です)」 教えて! goo
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-3120.html
テーマサイトは下記。
【「述べる」の謙譲語は「お述べする」が不自然なのはなぜか】
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11141000336/a350089689
==============引用開始
「述べる」の謙譲語は「お述べする」が不自然なのはなぜか
「話す」の謙譲語は「お話しする」
「書く」の謙譲語は「お書きする」
「読む」の謙譲語は「お読みする」
ならば
「述べる」の謙譲語は「お述べする」ではないのか、という疑問です。
尊敬語には質問が過去に出ているのですが、謙譲語については質問が出ていないこともあり質問させていただきました。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1179216646
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1427472759...
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1163159341...
「述べる」は「自説的(話す内容ではなく、話すという行為に重きがおかれているという意味だと思います)」であるため、相手を必要とする敬意表現にはなじまないという説明も見られますが、それでは尊敬語に不自然さを感じないことを説明できません。
どうか詳しい方にご教授いただければと思います。
【補足】
コメントありがとうございます。補足させてください。
美化語の「お」と「ご」、また、慣用的に「お」がついている表現についてはここでは問題にしません。
主な質問である「『お述べする』が不自然なのか」につきましても、引き続きご指導いただければと思います。
==============引用終了
「述べる」を謙譲語にすると。
結論を先に書くと、一般に尊敬語の「お述べになる」は使われますが、謙譲語の「お述べする」はほとんど使われないようです。理由は「慣習」としか言えません。論理的な理由があるとは思えません。
当方がバイブルにしている『敬語再入門』の記述を基本にして、デアル体で失礼します。
『敬語再入門』の詳細に関しては下記をご参照ください。
【読書感想文/『敬語再入門』(菊地康人/講談社学術文庫/2010年3月10日第1刷発行) 】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2327.html
【読書感想文/『敬語再入門』(菊地康人/講談社学術文庫/2010年3月10日第1刷発行)】〈2〉メモ1「お/ご~だ(です)」 教えて! goo
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-3120.html
まず、通常の動詞を尊敬語にする形。P.38~。
●レル敬語
述べられる
●ナル敬語
お述べになる
一般にレル敬語のほうが制約が少なく、習熟しやすい。
ただし、ナル敬語に比べて敬度が低い。
個人的には、このほかに受身とまぎらわしい場合があることが大きな問題だと思う。「見られる」「食べられる」etc.……
これらの動詞に「特定形」(P.226~)(ご覧になる、召しあがる)があるには、偶然ではないかも。
通常の動詞を謙譲語にする形。P.68~
●お/ご~する
お述べする
●お/ご~いたす
お述べいたす
●お/ご~申し上げる
お述べ申し上げる
※このほかに「~なさる」「~なされる」という形もある。
話を簡略化するために、「ナル敬語」と「お/ご~する」に限って書く。ほかの形もほぼ同様。
まず「お述べになる」について。
P.40~に〈「お/ご~になる」といえない語〉という項目がある。それを見る限り「お述べになる」を×にする理由は見当たらない。
ただし、下記の記述がある。
==============引用開始
C.慣習的になる敬語が(「お/ご」が)なじまない語
「ねじる・ほどく・運転する・運動する・営業する・実験する・優勝する」(これも「運転なさる」以下は可)。
この(3)-Cは理屈では説けないだけに、慣れない人には最も厄介かもしれません。
==============引用終了
次に「お述べする」について。
P.74~に〈「お/ご~する」といえる語〉という項目がある。詳細なリストがある。
[「…に」を高める]語のなかに「お答えする」「お伝えする」「お話しする」「ご説明する」「ご報告する」など、同じような意味の言葉はありますが、「お述べする」はない。
言えるか言えないかは慣習によるところが大きいようです。
個人的には、「お述べになる」は基本的に使わない気がする。
「おっしゃる」「お話しになる」などのほうが自然に感じるから。
「お述べする」は、使わない。
「申し上げる」「お話しする」などのほうが自然に感じるから。
基本的には、〈「お/ご~になる」といえる語〉と〈「お/ご~する」といえる語〉は共通することが多いと思う。
たとえば、↑にあげた「ねじる・ほどく・運転する・運動する・営業する・実験する・優勝する」はどちらも×だろう。
↑であげた「食べる」は「お食べになる」は△ですが(フツーは「召しあがる」)、「お食べする」は×だろう。
理由は、「慣習」しか考えられない。
あえて言うなら、「まず結論を述べる」などと書く(「言う」はなおさら)と偉そうな印象がある。そんな偉そうな言葉は謙譲語になじみにくい気がする。
【メモ8 ご利用する・ご利用してください・ご添削してください 教えて! goo】
mixi日記2015年04月21日へ
テーマサイトは下記。
【ご利用する・ご利用してください・ご添削してください】
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/8964463.html
==============引用開始
下記のページにあるごとく「ご○○する」は謙譲語の表現であり、謙譲語の主語は自分や身内ということになっています。
http://d.hatena.ne.jp/kazsa/20140323/1395564359
しかし下記のページには、「ご利用する」という謙譲語はない旨が記されています。その理由は動詞の種類が違うということなのでしょうか(意味を考えると、「ご利用する」が尊敬語であろうことはわかります)。「ご提供する」ならば、確実に謙譲語であろうこともわかります。
http://bizkeigo.koakishiki.com/henkan-riyousuru. …
さらに、目上の人に何かを「利用してください」と言う場面で、「ご利用してください」という言い方を聞きますが、これは誤用であって「して」は不要だとも記されています。「ご利用ください」が自然に通じることはわかりますが、なぜ「ご利用してください」が誤用になるのでしょうか。個人的には違和感がないため、理由を明示していただかなければ納得できません。
問題点を明らかにするために、「ご添削してください」についても誤用になるのかどうか、ご教示いただければ幸いです(「ご利用してください」ならば便益を得るのは相手、「ご添削してください」ならば便益を得るのは自分であることに注目して質問しています)。
==============引用終了
ときどき興味深い質問する人と認識している。
質問がかなりむずかしい問題を含んでいるが、どう転がるのだろう。
とりあえず、当方のコメントを回収しておく。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
質問が複数ありますね。
以下の3つだと思いますが、当方に勘違いがあるようならご指摘ください。問題が複雑なので、ちゃんと説明できるかどうか……。
1)「ご利用する」という謙譲語がない理由
2)「ご利用してください」が誤用になる理由
3)「ご添削してください」は誤用か否か
1)「ご利用する」という謙譲語がない理由
〈「ご利用する」という謙譲語がない〉というのは少し違うと思います。
「利用する」は「ご〜する」の形の謙譲語にしにくいということでは。
これは理屈では説明できません。「慣例」としか……。
詳しくは下記をご参照ください。
【「袋にお入れいたしますか」「お/ご~いたします」は二重敬語か Yahoo!知恵袋】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2405.html
『敬語再入門』(菊地康人)のP.74~に〈「お/ご~する」といえる語〉の話が詳しく出ています。
リストに「ご利用する」「ご使用する」「お使いする」などはありません。
たとえば目上の人の何かを使わせてもらう場合、↑のような言葉は使わないでしょう。
「お使いする」を見ればわかるように、「熟語動詞」(仮にこう呼びます)か否かは関係ないはずです。
「便益」などの考え方でも説明できません。同じような場合でも「お借りする」「拝借する」なら使えるのですから。
あくまでも「慣例」でしょう。
かわりに、(悪名高い)「利用させていただく」「使わせていただく」などを使うことになります。
2)「ご利用してください」が誤用になる理由
ほかの人の回答で解決しているようなので省略します。
当方は下記のように考えています。
235)【「お○○してください」「ご○○してください」「お~してください」「ご~してください」☆日本語教師☆】玉石混交
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1332.html
3)「ご添削してください」は誤用か否か
「して」が入るのは2)と同様の理由で誤用とされます。「便益を得る」のが先方でも自分でも関係ないでしょう。
>・丁寧語の「ご」をつける場合は「ご○○」を目上の人の動作・作業を表す名詞として扱っているため、「する」は不要
>・丁寧語「ご」をつけない場合は目上の人による一連の動作・作業の想定しておらず、サ行変格活用動詞として扱っているため、適切に活用させる必要がある
そういう考え方はしないと思います。
たとえば『敬語再入門』のP.45に主な尊敬語の4つの形を整理した表があります(添付写真参照。見にくければ下記のリンク先をご参照ください)。
すべて動詞として扱っています。
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-3271.html
漢語Aと漢語Bの違いは、以下のとおりです。理由は「慣例」です。
==============引用開始
漢語Aとは「利用・卒業」など「ご」と結びつきうるもの、漢語Bは「運転・退学」など「ご」と結びつくことのできないものです。(P.44)
==============引用終了
ちなみにP.43には下記の記述があります。
==============引用開始
このように「──なさる」と「お/ご〜なさる」は、使える動詞の範囲が違うので、本書では、片や──、片や〜で示します。もちろん、両方とも使える語も多く、その場合は「ご卒業なさる」のほうが「卒業なさる」より高い敬度ですが、それほど大きな差でもないでしょう。
==============引用終了
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
ちょっと補足しておく。
「敬語の指針」はネット上にあるので、多くの人が参照しているが、内容には不備も感じられる。当方レベルが読んでもいろいろ問題を感じるってことは相当ヤバいのでは。
【文化庁「敬語の指針」に対する言いたい放題】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2220.html
何より文章がヒドすぎる。ただ、下記だと遊びすぎって気もする。
【敬語おもしろ相談室】
http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/keigo/index.html
No.5でご紹介いただいた下記は興味深い。ただ、ちゃんと読むとたいへんそうだな。
http://web.ydu.edu.tw/~uchiyama/bunpo/keigo.pdf
今回の問題についても、肝心の部分が……。
〈「お/ご~する」といえる語〉って問題だとどうにもならないだろう。
なんせ、最大の決め手が「慣例」なんだから、最終的には『敬語再入門』のようにリスト化するしかテがない。
先行コメントでさまざまな説が飛び交っているが、あれで質問者が判断できるのだろうか。
「慣例」であることをうまく伝えるための例がないだろうか。
したう→お慕いする
愛する→×お愛する
漢語系はとくに「お/ご」がつきにくいものが多い気がするので、なんとも……。
【20150419追記】
「利用する」を敬語にするとどうなるか考えてみる。
●丁寧語
「利用します」。
丁寧語を敬語ではないようなことを書く人もいる。敬度が低いから誤解しているのだろう。3分類で見ても5分類でも見ても、丁寧語は敬語のひとつのはず。
●謙譲語
もっとも基本的なのは「お/ご〜する」の形だろう。
「利用する」はこれがつくれない(泣)。理由は……やはり「慣例」としか言えない。おそらく、そもそも使用例が少ないからでは……と思わなくはない。
具体的を考えてみる。
バスツアー会社がツアー参加者に告知する。
原形 ○○PAのトイレを利用します
謙譲語II ○○PAのトイレを利用いたします
謙譲語I、謙譲語IIの話はできるだけしたくないのだが……。
この場合「いたします」は聞き手(ツアー参加者)に対する謙譲語(II)。「○○PAのトイレ」(の所有者)に対する敬語ではない。
特別な計らいで△△美術館のトイレを利用させてもらうとする。
△△美術館に対する謙譲語Iは……想定できない(泣)。
やはり、「△△美術館のトイレを利用させていただきます」あたりだろう。
この場合ほぼ同じことを「借りる」とも言える。意味はほぼ同じだが、「借りる」なら「お借りします」にできる。やはり理屈ではなく「慣例」なのだろう。
・丁寧語
「借ります」(「拝借します」なら謙譲語I+丁寧語)
・謙譲語
謙譲語I
△△美術館のトイレをお借りします
△△美術館のトイレを拝借します
謙譲語II&謙譲語II(敬度が高くなる)
△△美術館のトイレをお借りいたします
△△美術館のトイレを拝借いたします
●尊敬語
これは↑に書いたとおり。
「ご利用になる」「ご利用なさる」「利用なさる」「利用される」の4パターンがすべて使える。
……とここまで書いて質問板を見たら、No.9のコメントが入っていた。
そうか。さすがだな。
「受け手尊敬」ですか。これは下記で教えてもらった渡辺実の用語。その節はお世話になりました。
「謙譲語A」は『敬語』(菊地康人)などで使われている用語。「敬語の指針」などで言う謙譲語I。
【「かしこまりました」は謙譲語なのでしょうか】コメントNo.13参照
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/8499357.html
ただ、〈「話す」←→「話される」・「渡す」←→「渡される」〉と考えると、「利用する」←→「利用される」と考えることもできるような……。
さらに厄介なのは、いろいろなパターンがあること。
詳しくは下記をご参照ください。
【「袋にお入れいたしますか」「お/ご~いたします」は二重敬語か Yahoo!知恵袋】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2405.html
以下は一部の抜粋(重言)。
================================引用開始
[「……を」を高める]
お諌めする・お祝いする(「XのYを祝う」のXを高める。美化語用法も)・お送りする(人を送り届ける)(以下略)
[「……に」を高める]
お会いする(「お目にかかる」のほうが好まれるが、「お会いする」も可)・お祈りする(神仏に。美化語用法も)(以下略)
[「……から」を高める]
お預かりする・おいとまする・お受けする(「XのYを受ける」のXを高める用法も)・お受け取りする・お借りする・お習いする
[「……と」を高める]
お分かれする(美化語的用法も)
(以下略)
[「……のために」を高める]
お開けする・お祈りする・お書きする・
(以下略)
[「……について」を高める]
お噂する(「Xのお噂をする」とも)
(以下略)
================================引用終了
[「……を」を高める] [「……から」を高める] あたりは対応関係がわかりやすいけど、[「……に」を高める] だと微妙な気が……。
[「……のために」を高める] だと、何がなんだか。
「〜られる」と言うより「〜てもらう」と考えるほうがいいかな。
【メモ9 ご指摘させていただいた Yahoo!知恵袋】
mixi日記2015年04月21日へ。
テーマサイトは下記。
【『ご指摘させていただいた』と言う日本語はおかしいのでしょうか?】
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14144392654/a357102938
質問内容はタイトルのとおり。
結論を先に書くと、「誤用」か否かという質問なら、「誤用ではない」。
おかしいか否かという質問なら、文脈しだいとしか言えない。
基本的にはおかしい場合が多いと思うが、100%ナシではない。
「ご指摘させていただいた」を分解する必要があるだろう。
以降、基本的に現在形の「ご指摘させていただく」で考える。
おそらく「指摘する+させてもらう」が原形と考えるのがわかりやすい。
敬語連結であることを説明するのなら、「指摘させる+て+もらう」と考えるほうがよいと思うが、ここではやめておく。
●「ご指摘する」と言えるか否か
まず考える必要があるのは、「ご指摘する」と言えるか否か。これは「慣例」によるところが大きく、理屈で考えてもどうにもならない部分がある。『敬語再入門』に頼るのが無難。
【「袋にお入れいたしますか」「お/ご~いたします」は二重敬語か Yahoo!知恵袋】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2405.html
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
【追記】
『敬語再入門』のP.236~238の「敬語便利帳」からひく(こちらのほうがP.75より例が多い)。
「お/ご~する」にできるものは、ほぼ「お/ご~いたす」にできるらしい(例外が何かはのっていない)。
==============引用開始
[「……を」を高める]
お諌めする・お祝いする(「XのYを祝う」のXを高める。美化語用法も)・お送りする(人を送り届ける)(以下略)
[「……に」を高める]
お会いする(「お目にかかる」のほうが好まれるが、「お会いする」も可)・お祈りする(神仏に。美化語用法も)(以下略)
[「……から」を高める]
お預かりする・おいとまする・お受けする(「XのYを受ける」のXを高める用法も)・お受け取りする・お借りする・お習いする
[「……と」を高める]
お分かれする(美化語的用法も)
(以下略)
[「……のために」を高める]
お開けする・お祈りする・お書きする・
(以下略)
[「……について」を高める]
お噂する(「Xのお噂をする」とも)
(以下略)
==============引用終了
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
この[「……に」を高める]語のリスト中に、「ご指摘する」がある。ちょっと引っかかるのは、相手のミスなどを「指摘する」場合に使えるか否か。
同じリストに下記の記述がある。
==============引用開始
ご注意する(高めるべき相手に「注意する」はやや不自然だが、時に使う)
==============引用終了
「ご指摘する」も同様だろう。
つまり、「指摘する+させてもらう」の両方を謙譲語にしたものが、「ご指摘させていただく」。
後半だけを謙譲語にしたのが「指摘させていただく」ということ。当然、「ご」がつくほうが敬度が高い。
●「させていただく」の働き
これがまたややこしい話で、諸説が流れている。当方の考えは下記参照。
【よくある誤用32──敬語編2「~させていただく」「~させていただきます」「~(さ)せていただく」「~(さ)せていただきます」】
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n132890
ちょっと補足する。『敬語再入門』のP.191〜に〈「させていただく」の「乱れ」とその正体〉という項がある。これがわかりやすいだろう。
「させていただく」の本来の用法は、〈相手から許可・恩恵を受ける意味であること〉〈その「恩恵の与え手」を高めること〉という〈二重の意味で敬度の高い表現〉としている。
だが違う側面もあるらしい。
==============引用開始
ところで、日本語には、「実際はそうでなくても、あたかも相手から恩恵や許可を得たかのように見立てて述べるのが、相手を立てることになる」という発想があります(→§4)。実際には「案内してやる」のでも、「ご案内させていただきます」と言うようなのが一例で(謙譲語I「ご案内する」に「させていただく」が続いたもの)、これは、相手を貴人に見立て、許しを得て案内させてもらう光栄に浴するという発想です。パーティーの案内を受けて「出席させていただきます」と答えたり、「本日休業させていただきます」と掲示したりするのも、パーティーの案内を“出席許可の恩恵”ととらえ、実際には自分で勝手にする休業を“お客様のお許しを得て”と捉える発想です。
==============引用終了
「ご指摘させていただく」も単なる「見立て」だろう。実際には「指摘してやる」。さらに過激に言えば「指摘して恥をかかす」だから。
●「ご指摘させていただく」を使う例
「ご指摘させていただく」は間違いではない。だが、高めるべき相手に使うにはやや不自然な「指摘する」を、非常に敬度が高い言い回しの中で使うので、自然な状況はきわめて限られるだろう。
たとえば社長(うんと偉い人って意味)が書いた文章に関して「忌憚のない意見を聞かせてほしい」と言われる。いろいろ不備があるので、しかたがなく覚悟を決める。
「どうしてもということでしたら、僭越ではありますが、ご指摘させていただきます」
これならさほどおかしくないだろう。
おかしくはないだろうが、社長の文章の不備を指摘してどんな禍根が残るのかは知らない。
王様の素行の悪さを見かねて「ご注意させていただいた」家来が幸せになるとは思えない。
【電話の敬語「お伝えします」「お代わりします」「おつなぎします」(メモ10扱い)】
mixi日記2012年08月02日から
テーマサイトは下記。
【ある会社に、外部の人から電話がありました。電話を受けた従業員が……】
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1491291189
よくわからないんでトピも立ててみた。
【電話の敬語「お代わりします」「おつなぎします」】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=70747813
かなり微妙な話なんで、いつも以上にオネオネと書く。
Aさんが電話で顧客と話していて、上司のことが話題になったとする……。
●お伝えします
「上司への伝言を顧客に頼まれたとき」に「お伝えします」と言うのはアリか。
相当微妙だけど、やはり×だろう。信頼に値する書籍にそういう記述がある。
【言葉の取扱説明書3 ○○のわりに(は) お伝えしておきます 協力するにやぶさかでない 】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1837388275&owner_id=5019671
================================引用開始
1つ目が「お伝えします」の是非。典型的なのは、外部の人から連絡を貰い、「(席を外している社内の人間に)お伝えします」と言う場合。『問題な日本語4』で扱っていた(先日書店で手にしたけど、内容が薄くて買う気にはなれなかった)。
「お伝えします」は謙譲語I(+丁寧語の話は省略)。伝える人の、伝える相手への敬意(菊地康人流に言うなら「主語の補語に対する敬意」?)を示す。したがって、身内を高めることになるので×。
だと思うが、「お伝えします」だとアリって気もするのは「定着しているから」なのかもしれない(なんの基準もなく「定着しているから」OKとか言われるとどうしようもない)。「あなた様の伝言」を伝えるんだから、「お」をつけるべきって論理も筋が通っている気になる。「伝えます」と「お伝えします」を比べると、後者のほうが丁寧な感じになる。
これを〈外部の人に対して「(身内と)ご相談します」〉にすると、相当ヘンなことがわかる。理由は不明。理屈としては「あなた様の案件」を相談するんだから……と言えなくはないけどさ。
================================引用終了
【読書感想文/『敬語』(菊地康人/講談社学術文庫/1997年2月10日第1刷発行)3】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1854649541&owner_id=5019671
================================引用開始
【引用部】
敬語を使い慣れた人でも、話題にしようとする人物を身内扱いすべきかどうか迷うことは少なくないし、使い慣れないと、つい、主婦が家族以外の人に、あるいは会社員や公務員が部外の人に
主人(部長)がそうおっしゃいました。/主人の母(部長)にそうお伝えしました。
などと言ってしまう──それが誤りになってしまうのが相対敬語なのである。(P.426)
やはりそういうことなのだろう。
余計な部分を省略して、当方の積年の課題に限って書きかえると、下記のようになる。
会社員が部外の人に「部長にそうお伝えしました」などと言ってしまう──それが誤りになってしまうのが相対敬語なのである。
「絶対敬語」と「相対敬語」に関しては本書を読んでもらうほうがいいだろう。現代の敬語は「相対敬語」と考えてよいはず。ただ、部外の人に「部長にご相談します」がヘンなのはスンナリ理解できるが、「部長にお伝えします」だと異和感がぐんと弱くなる理由は不明のまま。
================================引用終了
●お代わりします
「上司に電話を代わるように顧客に頼まれたとき」に、「お代わりします」と言うのはアリか。
2つのポイントがある。
1つ目は、↑の「お伝えします」と同様の問題。もうひとつは、「代わる」を「お~する」の形にできるのか、という問題。
『敬語再入門』のP.236~の「お/ご~する」にできる動詞のリストのなかに、「おかわりする」はない。
【「袋にお入れいたしますか」「お/ご~いたします」は二重敬語か Yahoo!知恵袋】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1853506079&owner_id=5019671
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【追記】
『敬語再入門』のP.236~238の「敬語便利帳」からひく(こちらのほうがP.75より例が多い)。
「お/ご~する」にできるものは、ほぼ「お/ご~いたす」にできるらしい(例外が何かはのっていない)。
================================引用開始
[「……を」を高める]
お諌めする・お祝いする(「XのYを祝う」のXを高める。美化語用法も)・お送りする(人を送り届ける)(以下略)
[「……に」を高める]
お会いする(「お目にかかる」のほうが好まれるが、「お会いする」も可)・お祈りする(神仏に。美化語用法も)(以下略)
[「……から」を高める]
お預かりする・おいとまする・お受けする(「XのYを受ける」のXを高める用法も)・お受け取りする・お借りする・お習いする
[「……と」を高める]
お分かれする(美化語的用法も)
(以下略)
[「……のために」を高める]
お開けする・お祈りする・お書きする・
(以下略)
[「……について」を高める]
お噂する(「Xのお噂をする」とも)
(以下略)
================================引用終了
これだけあげているのに「お入れする」がないってことは、同書は「お入れする」を認めていないのだろう。だから「お入れする」なんて絶対に言わない、と主張する気はないが。
ちなみに上の分類にあてはめるなら、「お入れする」は[「……のために」を高める]だろう。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■引用終了
「おかわりする」がないのは、「ご飯をお代わりする」との混同を避けたものか否かは、言葉の神様に訊かないとわからない。
ちなみに、↑の「お伝えする」は[「……に」を高める] に入っている。[「……を」を高める] ではない。やはり「お客様の伝言を上司にお伝えします」は×ってこと。
●おつなぎします
元々のYahoo!知恵袋のサブテーマとして登場した。
同様の状況で「おつなぎします」と言えるか否か。
「お伝えします」と同様と考えるなら×だろう。しかし、「おつなぎします」のほうがずっと異和感が弱い。
↑のリストに「おつなぎする」はない。そんなに使用頻度が低いかな?
■Web辞書『大辞泉』から
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%A4%E3%81%AA%E3%81%90&dtype=0&dname=0na&stype=0
================================引用開始
つな・ぐ【×繋ぐ】
《名詞「綱」の動詞化》
【1】[動ガ五(四)]
1
①ひも・綱などで物を結びとめて、そこから離れたり、逃げたりしないようにする。「犬を―・ぐ」「鎖で―・ぐ」
②相手の気持ちなどが離れていかないようにする。「彼女の心を―・ぐために一芝居打つ」
2 一定の所に留め置いて外へ出さないようにする。拘禁したり、拘束したりする。「獄に―・がれる」
3 結びつけてひと続きのものにする。「車両を―・ぐ」
4 離れているもの、切れているものを続け合わせて一つにする。また、そのようにして通じるようにする。「手を―・ぐ」「電話を―・ぐ」
5 なんとか長く、切れないようにたもたせる。たえないようにする。「望みを―・ぐ」「命を―・ぐ」「座を―・ぐ」
6 足跡などをたどって行方を追い求める。
「射ゆ鹿(しし)を―・ぐ川辺のにこ草の」〈万・三八七四〉
[可能] つなげる
================================引用終了
もしかすると、「電話をつなぐ」という言い回しがイレギュラーなのかもしれない。『大辞泉』を見ると、ほかに「おつなぎする」と言えそうな例はない。「犬をつなぐ」「獄につなぐ/つながれる」のイメージが強いせいだろうか。
そうは言っても、現実に「電話をつなぐ」って言い回しはあり、「電話をおつなぎする」と言えそうなんだからしかたがない(泣)。
ここで考えなければならないのは、逆方向の可能性があること。
「あなたの電話を上司におつなぎします」ではなく、
「上司をあなたの電話におつなぎします」ってこと。
これなら何も問題はないけど、この解釈はさすがに苦しいかな。
もうひとつ考える必要があるのは、「上司に」をつけて「上司におつなぎします」にすると、異和感が強くなること(これは「お伝えします」も同様)。
おそらく、単に「おつなぎします」だと「顧客(の電話)をおつなぎします」と解釈できそうだからだろう。これなら顧客に対する敬語になっている感じがある。
現実には、省略されていても「伝える」先にあたるのは「上司」だから、やはり避けたほうがいい表現なんだろう。
論理的に考えると下記が正解ってことになってしまう。
「(顧客の)ご伝言」を「上司」に「伝える」
「(顧客の)お電話」を「上司」に「つなぐ」
『敬語再入門』の親本とも言える『敬語』に関しては下記。
【読書感想文/『敬語』(菊地康人/講談社学術文庫/1997年2月10日第1刷発行)──予想していたことではあるが……。】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2415.html
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2020.html
日本語アレコレの索引(日々増殖中)【8】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1821744441&owner_id=5019671
mixi日記2012年02月日から
『敬語再入門』のamazonデータ。
http://www.amazon.co.jp/%E6%95%AC%E8%AA%9E%E5%86%8D%E5%85%A5%E9%96%80-%E8%AC%9B%E8%AB%87%E7%A4%BE%E5%AD%A6%E8%A1%93%E6%96%87%E5%BA%AB-%E8%8F%8A%E5%9C%B0-%E5%BA%B7%E4%BA%BA/dp/4062919842
いやぁ、すごいわ。
敬語に関するいいテキストはないかと考えていたところ、偶然教えてもらった。
おおざっぱな感想に関しては下記に書いた。
【学者の言葉〈3〉── 専門用語の誘惑】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1821238682&owner_id=5019671
================================引用開始
最近、『敬語再入門』(菊地康人)を読んでいる。1項目ずつ噛み締めているからなかなか進まない。もう少しで読み終わるので、『敬語』のほうに進みたい。「進みたい」は正確には「戻りたい」にするべきだろう。元々あったのは『敬語』で、その入門編とも言えるのが『敬語再入門』。『敬語』のほうがボリュームが倍近くあり、内容も盛りだくさん。当方の手に負えるのだろうか?
それはさておき『敬語再入門』いついて。いやー、スゴいわ。訳のわからないバイト敬語を別にすれば、各種の質問板でとびかっている敬語関係の疑問のほとんどが解決する気がする。手元にある敬語関係の本がいかにいい加減かよくわかる。ネットでとびかっている珍説が哀れにさえ思える。
言語学の専門家であることが随所にうかがえ、解説がイチイチ論理的で深みが感じられる。
しかも、むずかしい言葉はほとんで出てこないので、当方のレベルが読んでもよくわかる。不明点もいくつかあるが、それは単に当方の勉強不足だろう。一般人がわからない言葉は使っていない。こういうのが「貴重な学者」の業績なんだろう。
むずかしい文法用語や、一般人がわからない専門用語なんか使わなくてもあれだけの文章が書けるのは驚異なのかもしれない。あやかりたい、あやかりたい。
================================引用終了
少しテクニカルなことを書くと、本書は原則1項目2ページで構成されている。行が余って余白が出ているところはほとんどない。編集関係の仕事をしている当方から見ると、こういうちゃんとした内容の本でこういう体裁にするのはとんでもない力業。神業と言ってもいいかも。
それとちょっと余計なことを書くと、巻末の「敬語便利帳」を見て驚いた。当方が「不規則敬語」と呼んでいる(本書では「特定形」などと呼んでいる)動詞の一覧がのっている。これって、Wikipediaの「不規則動詞一覧」の表とよく似ている。まあ、同じような形になるのはしかたがない気もするけど……。ちなみにWikipediaの参考文献には『敬語』のほうが入っている。
パクったとするとWikipediaのほうだろうな……と思いながら見比べてみると、中身はかなり違う。興味のあるかたはご確認ください。
【引用部】
「くださる」「おっしゃる」「いらっしゃる」も変則的五段活用です(P.49)
深い意味はなく、ちょっとしたメモ。
【20140222追記】
ところが、「なさる」の場合、一般的法則の通りではなく、すでに江戸時代のうちに下二段から四段活用に変わりました。四段活用は現在は五段活用になり、「なさる」も、
② なさらない、なさろう(とする)、なさいます、
なさり(中止形=テン(、)の前の形)、なさって、
なさった、なさる、なされば、なさい
と活用するようになりました。普通の五段活用とは少し違うので(普通の五段活用なら「なさいます」「なさい」でなく「なさります」「なされ」となりところです)、変則的五段活用とでもいえるでしょう。「くださる」「おっしゃる」「いらっしゃる」も変則五段活用です。
現代の標準的な使い方は、この②です。(P.48〜49)
【引用部】
Q.「読んでいる」を尊敬語でいうとどうなりますか。(P.52)
イチバン敬度が高いのは「読んで」と「いる」の両方を尊敬語にする「お読みになっていらっしゃる」。これは「敬語連結」なので「二重敬語」ではない。
片方だけを敬語にした下記の形も一般的。
読んでいらっしゃる
お読みになっている
どちらかと言うと、後半だけを敬語にする「読んでいらっしゃる」のほうが一般的らしい。
このほかに「レル敬語」系の「読まれている」はあまりこなれていない。「読んでおられる」は誤用の疑いアリとのこと。
著者がすすめているのは、「お読みだ/お読みです」の類い。「お読みでいらっしゃる」にするとさらに敬度が上がる。
この言い方は少なくとも2つの問題にかかわる。
ひとつは「お召し上がりですか?」。もうひとつは後出の「○○住み」。
【引用部】
「くださる」は本来は恩恵を受ける場合の表現ですが、実際にはそうでない場合にも拡張して使われることがあります。(→§4)。「ください」は文法的には「くださる」の命令形ですが、恩恵を得るという原義とは無関係に、たとえば道を尋ねられて「そこを右に曲がってください」というように(この場合、話手には何の恩恵もないわけですが)広く使われ、依頼、要求などの表現として定着しています。(P.57)
この説明を見る限り、「~ください」は「尊敬語の命令形」で間違いないようだ。「尊敬語の命令形」なんてアリなの?
【引用部】
Q.「いい所にお住みですね」……少し変でしょうか。
§20の「お~です」の形で、理屈上は誤りではないはずですが、普通、「お住みです」ではなく「お住まいです」と言います。ナル敬語も「お住まいになる」が普通です。古語「住まふ」に由来し、名詞「住まい」も同源です。(P.60)
さすがに最近の「○○住み」の話は知らないらしい。関係ないか。
仮に「お住まいですか」に異和感をもつ(「知らない」という可能性も否定できない)と、「お住みですか」になる。敬語でない表現にすると「○○住みです」まであと一歩って気がする。
【引用部】
Q.「なくなる」は「死ぬ」の尊敬語ですか。
「死ぬ」という直接的な表現を避けて婉曲に述べた故人への配慮の表現ですが、身内にも使うので、普通の意味での尊敬語とはいえません。むしろ美化語(→§52)系でしょう。「なくなられる」「おなくなりになる」と言って初めて尊敬語になり、これは身内には使えません。(P.61)
ひとつ疑問が解けた。「なくなる」自体はやはり尊敬語ではない。
【「なくなる」「亡くなる」考 】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1600713314&owner_id=5019671
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1684998175&owner_id=5019671
【引用部】
なお「貴社」の意で「御社」と使う人がいますが、これは比較的新しい言い方で、一種の社会方言なのでしょう(私自身の語感では抵抗があります)。(P.65)
これは初めて聞いた。一般には「貴社は書き言葉的で、御社は話し言葉的」とか言うはず。それはなんとなくわかる。「キシャ」は耳で聞くとけっこうわかりにくい。だから「御社」が広まったのかもしれない。
【引用部】
なお、「使いやすい」のような「動詞+やすい(にくい)」型のものは「お使いやすい」でなく「お使いになりやすい」です。「お求めやすい」は「安い」意の婉曲表現として定着しつつありますが、本当はおかしい表現で、「お求めになりやすい」というべきところです。(P.66)
この書き方はちょっと不満。これだと「お求めやすい」は定着しつつあるから「許容」ともとれなくはない。まあ、たしかに通販番組などでよく耳にする。
【引用部】
Q.「失礼ですが、田中さんでございますか」というのは、少しおかしくありませんか。(P.111)
P.110~111の§54のテーマは〈「ございます」と人称〉。「田中さんでいらっしゃいますか」が望ましいらしい。
言われてみると、たしかに「田中さんでございますか」には異和感がある。しかし、「そんなヘンな言い回しは使ったことがない」と強気に言えるほどの自信もない(泣)。
【引用部】
なお、一つの語がいくつかの用法をもつ場合もあります。§48では、「お手紙」のように尊敬語・謙譲語I両方の用法をもつ主な語をリストしましたが、その中でも「おみやげ」などは、「先生からのおみやげ」(尊敬語)・「先生へのおみやげ」(謙譲語I)のほか「子どもへのおみやげ」のように美化語としても使います(あるいは、初めの二つも美化語と見てしまったほうがよいのかもしれません)。(P.124)
接頭語の「お/ご」の解説のなかにある記述。「お/ご」は〈機能〉の面から見ると4種類ある。
1)尊敬語
2)謙譲語I
3)丁寧語
「お暑いですね」「お寒うございます」
4)美化語
下記に書いたように、3つの〈機能〉をもつ「お/ご」はほかにもありそう。
673)緊急! 突然ですが問題です【日本語編92】──「お料理」「お手紙」の「お」の意味 【解答?編】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1813769245&owner_id=5019671
本書の解説中にあるようにすべてを「美化語」と考えるほうがいいのかもしれない。
【引用部】
また、社外の人に同僚のことを「○○は休暇をいただいておりまして」などと言うのも、休暇は会社なり上司なりからもらうわけですから、会社/上司を高めることになってしまいます。「休暇をとっておりまして」と言うべきところです。(P.137)
やっぱりこれが正論なのね。それはわかってるんだけど、「休暇をいただいておりまして」を×にするのはちょっと気が引ける。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1251284337
================================引用開始
1)「休みをいただいております」(「頂」はひらがなにします)
これは微妙な問題ですね。たしかにその客の主張にも一理あります。
正確に言うなら「会社から休みをもらって、休ませていただいております」なのかもしれません。いくらなんでも冗長ですからそこまでする必要はないでしょう。ただし、「お」をつけて「お休みをいただいております」のほうが一層丁寧な気がします。
もうひとつの【修正案】は、↑の後半にある「休ませていただいております」でしょう。これは「~させていいただく」の形なので、2)の問題とかかわってきます。
================================引用終了
たとえば、取引先の偉いさんから連絡があったのに、担当者が休んでいる場合。「(お)休みをいただいております」じゃダメかな。偉いさんでなくても、「せっかく連絡いただいたのに……」という気持ちがあるなら「(お)休みをいただいております」でもいいと思う。
ただ、発言者は年配の女性のイメージになるってことは、やはり過剰敬語なのかもしれない。
【引用部】
Q.「先生が指導していただいた」……どこか変ですね。(P.144)
これ、けっこう基本的な問題だと思う。
本書の解説は先生が大先生に指導してもらった場合を別にすると、おかしいとしている。
下記のどちらかになるらしい。
先生が指導してくださった。(尊敬語)
先生に指導していただいた。(謙譲語I)
それはわかるんだけど、世間でよく話題になるのはもう少しヒネった形。
ご来店{ください/いただき}まして)(誠に)ありがとうございます。
これだと主語(的なもの)は「お客様が」でも「お客様に」でもおかしくない。さて、正しいのはどっち?
【引用部】
Q.「では田中社長のほうからご挨拶をいただきます」のように「……のほう」を付けると丁寧になるんですね(P.151)
典型的な「バイト敬語/若者言葉」。例外的に1ページの項目なので、丸々転載したくなる(笑)。要点だけを箇条書きにする。
・元々が方向を表わす言葉が敬意を表わす表現になることはある(「こちら・そちら・あちら」)
・しかし、著者の語感では「……のほう」は余計で不必要な印象を受ける
・こんな言い方で丁寧になると思うのはずいぶん浅薄
・概して敬語の使い方が得意でない人が使うことが多い
・過剰な「……のほう」は敬語でもなんでもなく、ないほうがよほどスッキリする
本書では「バイト敬語/若者言葉」はあまり扱っていない。「あんなものは敬語ではない」ということではなく、問題意識が違うのだろう。できればこういう著者に詳細に解説してほしい。
【引用部】
もっとも、ありうることと使うことは別ですし、過度にかばう気もありません。そもそも「とんでもない」は何かを難じるか、相手の言動を強く打ち消す語なので、概して敬語になじまない(相手から過分な贈答・評価・申し出などを受けた際の受け答えとしてならまだしも、という面はあり、「とんでもございません」もそうした場合に使われるようですが、それにしても相手を否定することが敬語と合わない)、というのが不自然な一因ではないでしょうか。「おきれいですね」と言われたら「とんでもございません」などと言うより、ただ「いいえ、そんな……」とはじらっているほうがよほど好感がもてるというものです。それにしても、“正解”とされる「とんでもないことでございます」は、受け答えとしてはかなり変ではないでしょうか。(P.161)
歯切れの悪さに著者の迷いが見える、なんて書いたら怒られるかな。「ありうる形なので間違いではないが、積極的には支持できない」ってところだろうか。最後の書き方は、総理に醤油をとってもらう話を想起させる。
この【引用部】の前にあるのは、「とんでもない」の分析。
【引用部】
①「とん」が名詞性の語で、「Nで(も)ない」式のでき方なら、丁寧形として「Nで(も)ございません」はありうる形です。
②「とんで」が「動詞+て」、つまり「Vて(も)ない」なら、さらに二つの場合に分かれます。
(a)「Vてある」の否定なら「Vて(も)ございません」はありうる形です。
(b)「Vている」の否定(「Vていない」の「い」の脱落)なら、「Vて(も)いません」/おりません」となるはずで、「Vて(も)ございません」とはなりません。(P.160)
と分析しているが、結論はよくわからない。「とん」の語源が不明だからしかたがない。不明ながらも、もし名詞性で①なら「とんでもございません」はありうる形、としながら、先のP.161の【引用部】に続く。
結局、専門家が見てもよくわからないってことだろう。素人にわかるわけがない(笑)。
【関連トピ紹介】1──「申し訳ございません」「とんでもございません」
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=41472470
【引用部】
不快感/違和感を感じますか(P.183)
単なるメモです。
【引用部】
Q.「させていただく」、乱れてませんか。(P.191)
「バイト敬語/若者言葉」にふれた貴重な項目。2項目6ページにわたっているから相当力が入っている。イマイチ要領を得ない(←オイ!)のは、それだけ厄介な問題なのだろう。
内容を箇条書きにしてみる。
・〈相手が、持っている資料を、好意で、私がコピーすることを許してくれる〉場合なら「コピーさせていただく」は適切な使い方
・パーティーの誘いを受けて「出席させていただきます」はやや拡張した使われ方
・「本日休業させていただきます」はやや拡張した使われ方
・結婚式のスピーチで「私は神父と三年間一緒にテニスをさせていただいた田中と申します」は、新郎新婦が特別な貴人でない限り異和感
・押しかけたセールスマンが「このたび新製品を開発させていただきまして」と言うのは「乱れ」の典型
・「乱れ」の正体は〈謙譲語Iから謙譲語IIへの変化〉
※ここがこの項目の骨子のはずだが、当方には説明しきれない(泣)。
・敬語の現状を見ると、「させていただく」の「変化」に加勢するファクターがいろいろある。
→聞手への低調さを醸し出す謙譲語IIは広まりやすい
【引用部】
ちなみに、五段活用の場合は本来「せていただく」ですが、「読まさせていただく」式の誤用も聞きます。これも、もはや使役の原義をとどめていないということでしょう。原義を忘れて謙譲語IIに向かうのなら、むしろ、一律に「さ」を入れるほうが簡単でいいのかもしれません。(P.195)
うなってしまった。当然、その形が「サ入れ言葉」と呼ばれていることを踏まえている。それでいてこういう怖いことをアッサリ書けるのは、思考に柔軟性があるから。
【引用部】
ところが、謙譲語IIの代表選手「──いたす」は、「──する」型(サ変)の動詞でなければ使えない、また、文末以外では使いにくい、という制約があります。つまり、先程の例なら「開発いたしました」と言えますが、「新製品を作りました」は、「──する」型動詞でないので「作りいたしました」と言えないし、「新製品を開発した業者です」も、文末ではないので「開発いたしました業者です」は不自然です。この「いたす」の守備範囲の不足を補うように「作らせていただきました」「開発させていただいた業者です」と言う、という面がありそうです。「守備範囲の広い謙譲語IIの形」を求める心理が潜在的にあって、そこに「させていただく」が入り込もうとしているのです。(P.196)
つまりそのなんだ。こういうのを読んでしまうと、「プチ発見」のはずが単なる勉強不足になるってことだ(泣)。
446)【「~させていただく」〈2〉──プチ発見か単なる●●か?】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1692229571&owner_id=5019671
【引用部】
ごぞんじ(ご存じ) 「知っている」の尊敬語(P.257)
巻末の「敬語ミニ辞典」に「ご存じ」の項がある。「ご存知」の表記に関してはいっさいふれていない。まあ、そういうことだ(笑)。
【20120224追記】
書き忘れたが、本書では「敬度」という言葉が使われている。この言葉はWeb辞書にはない。そのことに気がついて以来、当方は単語登録をして遠慮がちに使っていた。これからは堂々と使う。辞書にはなくてもわかりやすい(意味を説明する必要さえ感じられない)し、「敬度が高い/低い」など、用途も多い。
ひとつ重要なテーマを抜かしていた。本書の中に何度も出てくるが、一応理解済みの事項としてパスしていた。
【引用部】
Q.「ご利用してください」「先生もまいりますか」……どこか間違っていますか。(P.94)
問題は前半の「ご利用してください」がなぜ誤りか。本書の解説がどうもピンと来ない。要は「お/ご~する」が謙譲語Iなので、「ご利用してください」だと聞き手に謙譲を強いることになるからだろう。解決策はむずかしくない。
【引用部】
②③④の「お/ご~くださる」は「お/ご~になってくださる」の縮約形で、正しい敬語です。(→§22)。つまり、「お/ご~してくださる(ください)」は一般に誤りで、正しくは「して」を取り払って、ただ「お/ご~くださる(ください)」と言えばいいわけです。(P.95)
一般にはこれが正解。
ちなみに、「お/ご」をつけない「~してください」の話は出てこない。やはり敬語でもなんでもないのだろうな。「~くださいませ」にしてもダメなのかな……。
それはさておき一般に「正解」なのに例外を示しているのが下記のトピの話。これはけっこうレアケースなんだろうな。
235)【「お○○してください」「ご○○してください」「お~してください」「ご~してください」☆日本語教師☆】玉石混交
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1332.html
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1515394161&owner_id=5019671
『敬語再入門』補遺編
事情があって詳しいことは書けないが、先月下旬から18日までサラリーマンのような生活をしていた。
後半の通勤電車内で『敬語再入門』を再読していた。以前書いた読書感想文で書き落としていることがいくつもあることに気づいた。
実は元本とも言えるに『敬語』もなんとか読み終えたのだが、チェックした事項が多すぎてまとめる気になれない(泣)。
ってことで、『敬語再入門』のメモを追加しておく。
そもそもこの本を書棚から引っ張り出したのは、「ご利用できます」がなぜ誤用なのかを確認するため。P.146にわかりやすく書いてある。
「ご利用できます」とか「ご乗車できます」はよく目にする誤用らしい。そもそも可能形でない形の「ご利用する/ご利用します」がかなり異様。「ご~する」は謙譲語Iの基本形とも言える形だが、「ご利用する」ってフツーの文脈では使わないだろう。
話し手側を主語にする謙譲の形で「ご用意できます」「ご案内できます」ならもちろんアリ。しかし、聞き手側を主語にする「ご利用できます」「ご乗車できます」は×。
ほかにも気になった点を追加でメモしておく。
P.91〈「申す」を含む語〉では、「申す」を含む複合動詞をいくつかに分類している。
1)謙譲語Iの性質をもつ……申し上げる/申し受ける
2)謙譲語IIの性質をもつ……申し伝える
3)謙譲語ないし改まった趣きが感じられる……申し添える
4)多少改まった趣きが感じられる……申し付ける
5)謙譲語も改まった趣きもすでにない……申し合わせる/申し込む
「お申し付けください」は間違いではないが、同義で本来の尊敬語の「お仰せつけください」「ご用命ください」のほうが無難な気がするとしている。「お仰せ」ってなんて読むんだろう?
突然ですが問題です【日本語編7】──「言う」を謙譲語にすると「申す」なのか
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=54493030
P.158で「おられる」の適否にふれている。これがまた微妙で、かなりメンドー。これはYahoo!知恵袋の頻出問題で、詳しく見ていくと激痛の頭痛が激しく痛くなる。課題にしたい。
突然ですが問題です【日本語編82】──おられる
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=67212521
あと、二重敬語の問題をまとめる方法が少し見えてきた気がする。これも課題にしたい。
【20120521追記】
P.41~のテーマは〈「お/ご~になるといえない語」〉。ナル敬語はレル敬語と並んで尊敬語の基本とも言える形だが、いくつか制約がある。この制約を眺めていると、「特定形」になる動詞の傾向がボンヤリと見えてくる。
【引用部】
(1)~部が一拍(かな一字分の長さ)の場合や、言い換え形がある場合
A. ~部が一拍で言い換え形(対応する特定形)がある場合(P.40)
例としてあげられている動詞と、その「特定形」は下記のとおり。
する→なさる
見る→ご覧になる
着る→お召しになる
寝る→お休みになる
来る→いらっしゃる/おいでになる
いる(居る)→いらっしゃる/おいでになる
「煮る」は「お煮になる」とは言わないが、「特定形」もない。「出る」は「外にお出になる」と使われることもある。
ほかの例を見ると、「似る」は「煮る」とほぼ同様。
上はいずれも五段活用ではない動詞。このあたりは、「ラ抜き言葉」になる動詞に近いものがある。
【引用部】
B. ~部が二拍だが、言い換えがある場合(P.40)
例としてあげられている動詞と、その「特定形」は下記のとおり。
する→なさる
くれる→くださる
食べる→召しあがる
言う→おっしゃる
行く→いらっしゃる/おいでになる
死ぬ→おなくなるになる
何気なく並べているが、後ろの3つは五段活用の動詞。ちょっと違ってくる気がする。さらに言うと、「死ぬ→おなくなるになる」をここに入れていいのだろうか。「おなくなりになる」は「なくなる」をナル敬語にしたもの。「死ぬ」と「なくなる」の関係はちょっと微妙で、忌み言葉の一種って気がする。
いずれにしても、ここに出てくるのは音節が少ない動詞ばかり(これが「使用頻度の高い動詞」とも言えるのは偶然なのか必然なのか)。そのなかでも、五段活用以外の動詞が「特定形」をもっている気がする。
たとえば、「会う→お会いになる」「買う→お買いになる」などを見ると、音節の数だけでは判断できない気がする。さらに言うと「お合いになる」はどう考えればいいのだろう。
ちょっと気になって調べたのは、熟語動詞(仮)の類いを本書でどう呼んでいるかってこと。どうやら〈「──する」型の動詞(サ変動詞)〉と呼んでいるようだ(P.46ほか)。索引を見ると、「サ変動詞」は〈「──する」型の動詞〉を参照する形にしている。
めったにないほどの「釈迦に説法」になるが、一般には「サ変動詞」と言うと「サ行変格活用」のことだろう。
■Wikipediaから
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E8%A1%8C%E5%A4%89%E6%A0%BC%E6%B4%BB%E7%94%A8
「熟語+する」のことはなんと呼ぶべきなんだろう。Wikipediaにも書いてあるが、「サ変名詞」と言うのは単語登録などのときに用いられる造語だろう。
【引用部】
その上、「もらう」を謙譲語I「いただく」に変えるわけですから、「書け」の意の相当丁寧な表現になるわけです。「お書きいただけません(でしょう)か」とすれば、まさに最大級です。(P.90)
これはたしかにMAX敬語かもしれない。MAX敬語のルールに従うなら、「書く」よりも古風な「認(したた)める」を使うべきなのかもしれない(知らんわ)。
こちらは索引にないので探すのに苦労した。問題は、「~ませんでしょうか」の可否。おそらく最高クラスに敬度の高い表現なんだろう。裏を返せば相当クドい。これが「敬語連結」か否かはちょっと疑問だけど、「間違い」ではないんだろうな。
これも課題にしたい。
198【「~ますでしょうか」 「~ませんでしょうか」】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1483085125&owner_id=5019671
下記は「二重敬語」と考えているが、それはちょっと違うと思う。
http://dora0.blog115.fc2.com/blog-entry-47.html
【20120626追記】
【読書感想文/『敬語』(菊地康人/講談社学術文庫/1997年2月10日第1刷発行)──予想していたことではあるが……。】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2415.html
================================引用開始
【引用部】
(2)の例としては、「いつご出発ですか」・「こちらでお召しあがりですか」(たとえば外食産業の販売員が客に、店で食べるか持ち帰るかを聞くときに使う)/「ご使用の際は説明書をお読みください」(後略)(P.236)
いきなり(2)と書いてもなんのことかわからんよな。こういう引用のしかたはいけません。テーマになっているのは、『敬語再入門』の読書感想文で少し書いた「お/ご~~だ(です)」の形。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1824714512&owner_id=5019671
(略)
「お/ご~~だ(です)」は、一般には(1)「……している」という意味。そのほかに(2)「……する」、(3)「……した」の意味もある。(3)「……した」の典型は帰宅途中の人に近所の人が言う「いまお帰りですか」。
(2)「……する」の典型が「こちらでお召しあがりですか」。本書では「たとえば」とあるが、これ以外の用法があるのだろうか。奥さんが旦那にこう言ったら、ほとんど喧嘩腰だろうな。
「こちらでお召しあがりですか」を問題視する意見もよく目にする。お手本になるような敬語だとは思わないが「間違い」ではない(こればっかり)。ちょっと言葉足らずな気はするけど、適切な言いかえが思い浮かばない。「こちらでお召しあがりになりますか?」だろうか。この形は二重敬語だけど、文化庁が許容しているのでOKだろう。ただ、セットになっている(ポテトとコーラじゃなく)慣用句が妙なことになる。「お持ち帰りになりますか?」かな。
「お持ち帰りになりますか? こちらでお召しあがりになりますか?」か……相当クドいな。
================================引用終了
この本に関してはいろいろ追記する必要がある。
詳しくは下記をご参照ください。
【【読書感想文/『敬語再入門』(菊地康人/講談社学術文庫/2010年3月10日第1刷発行)】〈2〉メモ1「お/ご〜だ(です)」 教えて! goo】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-3120.html
【【読書感想文/『敬語再入門』(菊地康人/講談社学術文庫/2010年3月10日第1刷発行)】〈2〉メモ1「お/ご〜だ(です)」 教えて! goo】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-3120.html
【【読書感想文/『敬語再入門』(菊地康人/講談社学術文庫/2010年3月10日第1刷発行)】〈2〉メモ1「お/ご〜だ(です)」 教えて! goo】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-3120.html
メモ1「お/ご〜だ(です)
テーマサイトは下記。
【尊敬語「お+です」の意味について】
http://oshiete.goo.ne.jp/qa/8768483.html
質問の趣旨は簡潔。
「お~です」はどういう意味で、「お~になる」とはどう違うか。
この質問に答えるなら、『敬語再入門』P.251の記述をひくのが早いだろう。例によってII・III人称は一般の二・三人称とはちょっと違うが無視する。
==============引用開始
お/ご〜〜だ(です) 尊敬語。主語〈II・III人称〉を高める。形としては、同じ尊敬語「お/ご〜〜になる」の「になる」を「だ(です)」に変えた形にあたる。意味としては、「……ている」の意をあらわすのが一般的。「……ている」意のスマートな尊敬語として重宝。「用紙をお持ちですか」「社長は今週ご出張です」 ただし、「……ている」意でなく使う場合もある。
(中略)
さらに敬度の高い表現として「お/ご〜〜でいらっしゃる」(次項)がある。
(略)
==============引用終了
以下、現在進行形とか過去とかあやしげな言葉を使う。日本語の文法では相当微妙な話になるはずだが、わかりやすければなんでもいい、の精神で書く。
基本的には、「……ている」(現在進行形)の意味。問題は、動詞の性質によっては違う意味になること。
「社長は昨日お戻りです」(過去)
「社長は明日お戻りです」(未来)
うんとひねくれて、
「先ほど連絡がありました。もうすぐお戻りです」
だと、現在進行形かもしれない。まあ、未来と考えるのが無難だろう。
このあたりは継続系の動詞(持つ……etc.)と瞬間系の動詞(戻る……etc.)の違いってことになりそうだが、深入りするのはやめる。
『敬語再入門』が「スマートな尊敬語」としているのはいささか言葉足らずで、このあたりは同書のP.52〜を読んでもらうしかない。
簡単に言うと、
「お持ちになっていらっしゃいます」
「お持ちでいらっしゃいます」
「お持ちになっています」
が長いと感じる人やうまく使えない人は「お持ちです」のほうが簡便ということ。
簡便なだけあって制約もあり、↑のように時制があいまいになるのが弊害のひとつだろう。もうひとつは敬度が低く感じられること。
この点に関しては『敬語再入門』は言及していない。↑のテーマサイトのNo.3のかたの説明が適確な気がする(このかたのコメントはかなり信頼できる)。
40分
メモ2「読んでいる」の尊敬語
以下、主として『敬語再入門』のP.52を参考に。
「読んでいる」を尊敬語にするとどうなるのか。丁寧形の「読んでいます」で考えてもよいが、煩雑になるので、丁寧形は無視する。
まず、「レル敬語」を使うか「ナル敬語」を使うか、という問題がある。
「読む」の「レル敬語」は「読まれる」
「読む」の「ナル敬語」は「お読みになる」
「レル敬語」は間違いではないが、
1)受身などとまぎらわしいことがある
2)敬度が低い
などの理由から、基本的には避けたい。「制約が少ない」「初心者でも使いやすい」といったメリットはあるが、ここでは無視する。
「読んでいる」は「読む」と「いる」の複合動詞と言っていいだろう。「ナル敬語」の尊敬語の形には下記がある。
1)お読みになっている(「読む」を尊敬語にした形)
2)読んでいらっしゃる(「いる」を尊敬語にした形)
3)お読みになっていらっしゃる(「読む」と「いる」を尊敬語にした形)
1)や2)のように一方を敬語にする場合、2)のように後半を敬語にするのが一般的なので、2)が一番多く使われるらしい。
3)は尊敬語を2つつなげているが、「二重敬語」ではない。「敬語連結」という形で、多少クドくはあっても、問題のない敬語の使い方。
詳しくは下記をご参照ください。
【よくある誤用34──敬語編4 二重敬語】
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n133372
1)〜3)を長いと感じる人に『敬語再入門』がすすめているのが「お読みです」の形。敬度が低く感じられるなら「お読みでいらっしゃる」にすればいい。
ちなみにレル敬語を使うなら、
4)読まれている(「読む」を尊敬語にした形)
5)読んでいらっしゃる(「いる」を尊敬語にした形。2)と同形)
6)読まれていらっしゃる(「読む」と「いる」を尊敬語にした形)
たしかにかなりヘンな感じがする。
メモ3 「お答えできる」の尊敬語 教えて! goo
テーマサイトは下記。
【「答えができる」の尊敬語】
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14138056579
大前提として、原形の「答えができる」はおかしのでは。ここがおかしいので、「お答えができる」はいろいろな意味でおかしくなる。
原形は「答えられる」「答えることができる」あたりだろう。
「答えられる」の尊敬語に関しては、『敬語再入門』のP.50〜に「可能表現・複合動詞の尊敬語」の解説がある。正解は「お答えになれる」と明記されている。
可能表現の尊敬語は〈尊敬語を作ってから可能形にする〉ものらしい。ナル敬語を使ってもレル敬語をつかっても同じ形になるのか? なんて美しい。
答える→お答えになる→お答えになれる(ナル敬語の場合)
答える→答えられる(尊敬)→お答えになれる(レル敬語の場合)
順番が逆になった下記はおかしい。
答える→答えられる(可能)→お答えられになる
ほかの例で考える。
読む→お読みになる→お読みになれる
読む→読める→お読めになれる×
「答えることができる」も先に可能形にしているので、このままでは尊敬語にしにくい。
ちょっと気になるのは「できる」をナル敬語にした「おできになる」。「できる」はレル敬語にしにくいので無視する。
これは「する」の可能形ではなく、そこから派生した「うまい」「堪能」などの意味だろう。「勉強がおできになる」「英語がおできになる」……etc.
【「できる」「得意」「上手(じょうず)」「うまい」──ほめ言葉の迷宮 日本語】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1805.html
これはこれでアリだろう。ザアマス言葉のにおいがしてかなり気持ちが悪いので、自分では使えない。
ここから類推して「答えることがおできになる」も間違いではないのかもしれないが、あえて使う理由は見当たらない。
質問の本題に関して。
①お答えができる方はいらっしゃいますか。
↑の話にあてはめると、「お答えになれる方はいらっしゃいますか」。
これが敬語として自然かというと……いったいどんな場面で使うのか想像できない
たとえばセミナーで講師が参加者に訊く場合。
「お答えになれる方はいらっしゃいますか」よりも「おわかりの方はいらっしゃいますか」くらいのほうが自然に感じる。このあたりは、文脈がないと判断できない。
相手に「できるか否かを訊くのが失礼」という考え方もあるが、↑くらいなら大丈夫だろう。
②全問お答えができ(た)ら、賞品を進呈します。
↑の話にあてはめると、「全問お答えになれたら、賞品を進呈します」。
これも間違いではないだろうが、見慣れない。
「全問正解の方には賞品を進呈します」くらいだろう。
メモ4「お/ご~~申し上げる」にできる言葉 Yahoo!知恵袋
テーマサイトは下記。
【「感謝申し上げます」は問題なしで、「ご感謝申し上げます」はだめな理由】
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11138590471
以下、主として『敬語再入門』のP.239から抜粋。
「お/ご~~申し上げる」の形にできる言葉は意外に少ない。
同書には、以下の言葉があげられている。
お祈り・お祝い・お悔やみ……etc.
ご挨拶・ご暗示・ご依頼……etc.
特記事項としては下記があげられている。
・「お」の場合、「お/ご~する」がつくれる語よりかなり少ない
・「お悔やみ」は「申し上げる」のほうがなじむ。
・「ご」の場合、「ご依頼・ご助言・ご注意・ご同情・ご了承」など、「ご~する」より「ご~申し上げる」のほうが落ち着く語もある。
・漢語の熟語に「ご」をつけずに「挨拶申し上げる」という人もいる(敬度は下がる)。
・「感謝申し上げる」「尊敬申し上げる」「失礼申し上げる」など、「ご」のつかない形でのみ使う語もある。
o( ̄ー ̄;)ゞううむ
「ご尊敬申し上げる」なら使えそうな気がするが……。
メモ5「ございます」 Yahoo!知恵袋
「ございます」の意味は2つに大別できる。
クダクダ書くよりも『敬語再入門』P.257から転載するほうが早い。
==============引用開始
ございます・……でございます
「ございます」は「あります」の、「でございます」は「です」の、さらに敬度の高い丁寧語。「こちらに書類がございます」「私が責任者でございます」。その他、「うれしゅうございます」のように「形容詞+ございます」の形も作れる。II人称者について「(あなたは)明日はお仕事がございますか」「(あなたは)田中さんでございますか」と使うのは、誤りとまではいえないが、違和感を感じる人もいて、それぞれ「明日はお仕事がおありですか」「田中さんでいらっしゃいますか」のほうが無難。
==============引用終了
同じ「ございます」に見えるが、意味が違う。
「明日はお仕事がございますか」の通常形は「明日は仕事がありますか」。
「田中さんでございますか」の通常形は「田中さんですか」。
だから無難な高敬度形(なんじゃ?)にも違いが生じる。
素朴な疑問なんだけど、「でございます」の元々の原形(重言だな)は「であります」だった気がする。
軍隊映画なんかで聞く「田中であります」の類い。これだと「ございます」⇔「あります」で一本化できる。
「田中であります」がしだいに崩れて「田中です」になったので、2つの意味になったような。こう考えるとスッキリする。
こちらからたどっていくと、「田中さんですか」の敬度を上げた形は「田中さんであられますか」になりそうだけど、さすがに現代語としては不自然かもしれない。
辞書の記述でこのことが読み取れたら達人クラスだと思う。
https://kotobank.jp/word/%E5%BE%A1%E5%BA%A7%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99-265952#E5.A4.A7.E8.BE.9E.E6.9E.97.20.E7.AC.AC.E4.B8.89.E7.89.88
==============引用開始
大辞林 第三版の解説
ございます【御座います】
( 動サ特活 )
〔動詞「ござる」に助動詞「ます」の付いた「ござります」の転。近世江戸語以降の語〕
①
「ある」の意の丁寧語。 「お探しの本はここに-・す」
②
(補助動詞) 「ある」の意の丁寧語。 「明けましておめでとう-・す」 「ただいま帰りまして-・す」 「どなた様で-・すか」 〔活用は「-・せ(-・しょ)|-・し |-・す |-・す |-・すれ |○」〕
==============引用終了
==============引用開始
デジタル大辞泉の解説
ござい‐ま・す 【御座います】
[動サ特活]《「ござります」の音変化。近世江戸以来の語》
1 「ある」の意の丁寧語。「あります」より丁寧な言い方。「おあつらえ向きのお品が―・す」「何も―・せんが、どうぞ召し上がれ」
2 (補助動詞)補助動詞「ある」の意の丁寧語。「すでにお願いして―・す」「いかがお過ごしで―・しょうか」「ただ今ご紹介いただいた田中で―・す」「おめでとう―・す」「いっそ死にとう―・す」
◆活用は「ございませ(ございましょ)・ございまし・ございます・ございます・ございますれ・〇」。「ござります」より丁寧の度合いが低く、打ち解けたときに用いられ、さらに、なまって「ござえます」「ごぜえます」ともなる。また、「さようでござい」などの「ござい」は「ございます」のぞんざいな言い方。2の「…でございます」の形は口語文体の敬体の一で、「です」体・「ます」体・「であります」体に対して「でございます」体とよばれることがある。
==============引用終了
メモ6 「お高くとまっている」の「お」の働き
テーマサイトは下記。
【お高くとまっているという言い方がありますが、これは尊敬語ですか?】
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13140810993
質問内容は、タイトルのまんま。
答えは専門書に明記されている。
結論を先に書くと、一般の「お高い」なら尊敬語。過剰敬語気味なので個人的には使わない。
「お高くとまる」は〈皮肉や茶化した表現として固定化〉した例で、分類としては美化語。ちょっと無理も感じるが、定評のある書籍なので逆らいません。
尊敬語にはならないので、「あえて言うなら美化語」ということなのだろう。
2つの側面から考える必要がありそう。
●形容詞・形容動詞につく「お/ご」
P.123〜に〈「お/ご」の整理〉という項目がある。
接頭語の「お/ご」を機能の面から4つに分けている。
1)尊敬語
2)謙譲語I
3)丁寧語
4)美化語
敬語を旧来の3分類で考えるなら、「美化語」は「丁寧語」の一種になる。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%95%AC%E8%AA%9E
あげられている例のうち、形容詞・形容動詞が出てくるのは下記。
1)尊敬語
お若い/おきれい/ご熱心
3)丁寧語
お暑いですね/お寒うございます
※これは特殊な例と考えるほうがいいだろう。
ちょっと意外だったが、同書を見る限り、形容詞・形容動詞を美化語として使う例はなさそう。
「最近お野菜がお高いですこと」
「もう少しお安くなりませんと買う気になりませんわ」
相当気持ちが悪いけど、美化語もアリじゃないかな。
一般的な「高い」の意味で「お高い」と使うのは尊敬語になる。これも過剰敬語気味なので個人的には使わない。
「背のお高いかただったのですね」
「さすがにお高いご洋服をお召しでした」
●美化語の醜化語?用法
P.108〜のテーマは〈美化語になる語・ならない語〉。
詳細な分類がある。
〈③「お/ご」の付かない形が、同じ意味の語として成り立つもの〉の(f)をひく。
==============引用開始
(f)付けると皮肉や茶化した表現になるもの 皮肉や茶化した表現として固定化した例として「おあいにくさま・ご大層・ご乱行」など。
==============引用終了
「ご乱心」などもそうだろう。
「同じ意味」はちょっと疑問だが、スルーしておく。
これは前に書いた「醜化語」の話だろう。
【「醜化語」の「ご」「お」】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2138.html
メモ7 「お述べする」が不自然な理由
mixi日記2015年01月24日から
直接的には下記の続きだろうな。
【読書感想文/『敬語再入門』(菊地康人/講談社学術文庫/2010年3月10日第1刷発行)】〈2〉メモ1「お/ご~だ(です)」 教えて! goo
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-3120.html
テーマサイトは下記。
【「述べる」の謙譲語は「お述べする」が不自然なのはなぜか】
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11141000336/a350089689
==============引用開始
「述べる」の謙譲語は「お述べする」が不自然なのはなぜか
「話す」の謙譲語は「お話しする」
「書く」の謙譲語は「お書きする」
「読む」の謙譲語は「お読みする」
ならば
「述べる」の謙譲語は「お述べする」ではないのか、という疑問です。
尊敬語には質問が過去に出ているのですが、謙譲語については質問が出ていないこともあり質問させていただきました。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1179216646
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1427472759...
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1163159341...
「述べる」は「自説的(話す内容ではなく、話すという行為に重きがおかれているという意味だと思います)」であるため、相手を必要とする敬意表現にはなじまないという説明も見られますが、それでは尊敬語に不自然さを感じないことを説明できません。
どうか詳しい方にご教授いただければと思います。
【補足】
コメントありがとうございます。補足させてください。
美化語の「お」と「ご」、また、慣用的に「お」がついている表現についてはここでは問題にしません。
主な質問である「『お述べする』が不自然なのか」につきましても、引き続きご指導いただければと思います。
==============引用終了
「述べる」を謙譲語にすると。
結論を先に書くと、一般に尊敬語の「お述べになる」は使われますが、謙譲語の「お述べする」はほとんど使われないようです。理由は「慣習」としか言えません。論理的な理由があるとは思えません。
当方がバイブルにしている『敬語再入門』の記述を基本にして、デアル体で失礼します。
『敬語再入門』の詳細に関しては下記をご参照ください。
【読書感想文/『敬語再入門』(菊地康人/講談社学術文庫/2010年3月10日第1刷発行) 】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2327.html
【読書感想文/『敬語再入門』(菊地康人/講談社学術文庫/2010年3月10日第1刷発行)】〈2〉メモ1「お/ご~だ(です)」 教えて! goo
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-3120.html
まず、通常の動詞を尊敬語にする形。P.38~。
●レル敬語
述べられる
●ナル敬語
お述べになる
一般にレル敬語のほうが制約が少なく、習熟しやすい。
ただし、ナル敬語に比べて敬度が低い。
個人的には、このほかに受身とまぎらわしい場合があることが大きな問題だと思う。「見られる」「食べられる」etc.……
これらの動詞に「特定形」(P.226~)(ご覧になる、召しあがる)があるには、偶然ではないかも。
通常の動詞を謙譲語にする形。P.68~
●お/ご~する
お述べする
●お/ご~いたす
お述べいたす
●お/ご~申し上げる
お述べ申し上げる
※このほかに「~なさる」「~なされる」という形もある。
話を簡略化するために、「ナル敬語」と「お/ご~する」に限って書く。ほかの形もほぼ同様。
まず「お述べになる」について。
P.40~に〈「お/ご~になる」といえない語〉という項目がある。それを見る限り「お述べになる」を×にする理由は見当たらない。
ただし、下記の記述がある。
==============引用開始
C.慣習的になる敬語が(「お/ご」が)なじまない語
「ねじる・ほどく・運転する・運動する・営業する・実験する・優勝する」(これも「運転なさる」以下は可)。
この(3)-Cは理屈では説けないだけに、慣れない人には最も厄介かもしれません。
==============引用終了
次に「お述べする」について。
P.74~に〈「お/ご~する」といえる語〉という項目がある。詳細なリストがある。
[「…に」を高める]語のなかに「お答えする」「お伝えする」「お話しする」「ご説明する」「ご報告する」など、同じような意味の言葉はありますが、「お述べする」はない。
言えるか言えないかは慣習によるところが大きいようです。
個人的には、「お述べになる」は基本的に使わない気がする。
「おっしゃる」「お話しになる」などのほうが自然に感じるから。
「お述べする」は、使わない。
「申し上げる」「お話しする」などのほうが自然に感じるから。
基本的には、〈「お/ご~になる」といえる語〉と〈「お/ご~する」といえる語〉は共通することが多いと思う。
たとえば、↑にあげた「ねじる・ほどく・運転する・運動する・営業する・実験する・優勝する」はどちらも×だろう。
↑であげた「食べる」は「お食べになる」は△ですが(フツーは「召しあがる」)、「お食べする」は×だろう。
理由は、「慣習」しか考えられない。
あえて言うなら、「まず結論を述べる」などと書く(「言う」はなおさら)と偉そうな印象がある。そんな偉そうな言葉は謙譲語になじみにくい気がする。
【メモ8 ご利用する・ご利用してください・ご添削してください 教えて! goo】
mixi日記2015年04月21日へ
テーマサイトは下記。
【ご利用する・ご利用してください・ご添削してください】
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/8964463.html
==============引用開始
下記のページにあるごとく「ご○○する」は謙譲語の表現であり、謙譲語の主語は自分や身内ということになっています。
http://d.hatena.ne.jp/kazsa/20140323/1395564359
しかし下記のページには、「ご利用する」という謙譲語はない旨が記されています。その理由は動詞の種類が違うということなのでしょうか(意味を考えると、「ご利用する」が尊敬語であろうことはわかります)。「ご提供する」ならば、確実に謙譲語であろうこともわかります。
http://bizkeigo.koakishiki.com/henkan-riyousuru. …
さらに、目上の人に何かを「利用してください」と言う場面で、「ご利用してください」という言い方を聞きますが、これは誤用であって「して」は不要だとも記されています。「ご利用ください」が自然に通じることはわかりますが、なぜ「ご利用してください」が誤用になるのでしょうか。個人的には違和感がないため、理由を明示していただかなければ納得できません。
問題点を明らかにするために、「ご添削してください」についても誤用になるのかどうか、ご教示いただければ幸いです(「ご利用してください」ならば便益を得るのは相手、「ご添削してください」ならば便益を得るのは自分であることに注目して質問しています)。
==============引用終了
ときどき興味深い質問する人と認識している。
質問がかなりむずかしい問題を含んでいるが、どう転がるのだろう。
とりあえず、当方のコメントを回収しておく。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
質問が複数ありますね。
以下の3つだと思いますが、当方に勘違いがあるようならご指摘ください。問題が複雑なので、ちゃんと説明できるかどうか……。
1)「ご利用する」という謙譲語がない理由
2)「ご利用してください」が誤用になる理由
3)「ご添削してください」は誤用か否か
1)「ご利用する」という謙譲語がない理由
〈「ご利用する」という謙譲語がない〉というのは少し違うと思います。
「利用する」は「ご〜する」の形の謙譲語にしにくいということでは。
これは理屈では説明できません。「慣例」としか……。
詳しくは下記をご参照ください。
【「袋にお入れいたしますか」「お/ご~いたします」は二重敬語か Yahoo!知恵袋】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2405.html
『敬語再入門』(菊地康人)のP.74~に〈「お/ご~する」といえる語〉の話が詳しく出ています。
リストに「ご利用する」「ご使用する」「お使いする」などはありません。
たとえば目上の人の何かを使わせてもらう場合、↑のような言葉は使わないでしょう。
「お使いする」を見ればわかるように、「熟語動詞」(仮にこう呼びます)か否かは関係ないはずです。
「便益」などの考え方でも説明できません。同じような場合でも「お借りする」「拝借する」なら使えるのですから。
あくまでも「慣例」でしょう。
かわりに、(悪名高い)「利用させていただく」「使わせていただく」などを使うことになります。
2)「ご利用してください」が誤用になる理由
ほかの人の回答で解決しているようなので省略します。
当方は下記のように考えています。
235)【「お○○してください」「ご○○してください」「お~してください」「ご~してください」☆日本語教師☆】玉石混交
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1332.html
3)「ご添削してください」は誤用か否か
「して」が入るのは2)と同様の理由で誤用とされます。「便益を得る」のが先方でも自分でも関係ないでしょう。
>・丁寧語の「ご」をつける場合は「ご○○」を目上の人の動作・作業を表す名詞として扱っているため、「する」は不要
>・丁寧語「ご」をつけない場合は目上の人による一連の動作・作業の想定しておらず、サ行変格活用動詞として扱っているため、適切に活用させる必要がある
そういう考え方はしないと思います。
たとえば『敬語再入門』のP.45に主な尊敬語の4つの形を整理した表があります(添付写真参照。見にくければ下記のリンク先をご参照ください)。
すべて動詞として扱っています。
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-3271.html
漢語Aと漢語Bの違いは、以下のとおりです。理由は「慣例」です。
==============引用開始
漢語Aとは「利用・卒業」など「ご」と結びつきうるもの、漢語Bは「運転・退学」など「ご」と結びつくことのできないものです。(P.44)
==============引用終了
ちなみにP.43には下記の記述があります。
==============引用開始
このように「──なさる」と「お/ご〜なさる」は、使える動詞の範囲が違うので、本書では、片や──、片や〜で示します。もちろん、両方とも使える語も多く、その場合は「ご卒業なさる」のほうが「卒業なさる」より高い敬度ですが、それほど大きな差でもないでしょう。
==============引用終了
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
ちょっと補足しておく。
「敬語の指針」はネット上にあるので、多くの人が参照しているが、内容には不備も感じられる。当方レベルが読んでもいろいろ問題を感じるってことは相当ヤバいのでは。
【文化庁「敬語の指針」に対する言いたい放題】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2220.html
何より文章がヒドすぎる。ただ、下記だと遊びすぎって気もする。
【敬語おもしろ相談室】
http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/keigo/index.html
No.5でご紹介いただいた下記は興味深い。ただ、ちゃんと読むとたいへんそうだな。
http://web.ydu.edu.tw/~uchiyama/bunpo/keigo.pdf
今回の問題についても、肝心の部分が……。
〈「お/ご~する」といえる語〉って問題だとどうにもならないだろう。
なんせ、最大の決め手が「慣例」なんだから、最終的には『敬語再入門』のようにリスト化するしかテがない。
先行コメントでさまざまな説が飛び交っているが、あれで質問者が判断できるのだろうか。
「慣例」であることをうまく伝えるための例がないだろうか。
したう→お慕いする
愛する→×お愛する
漢語系はとくに「お/ご」がつきにくいものが多い気がするので、なんとも……。
【20150419追記】
「利用する」を敬語にするとどうなるか考えてみる。
●丁寧語
「利用します」。
丁寧語を敬語ではないようなことを書く人もいる。敬度が低いから誤解しているのだろう。3分類で見ても5分類でも見ても、丁寧語は敬語のひとつのはず。
●謙譲語
もっとも基本的なのは「お/ご〜する」の形だろう。
「利用する」はこれがつくれない(泣)。理由は……やはり「慣例」としか言えない。おそらく、そもそも使用例が少ないからでは……と思わなくはない。
具体的を考えてみる。
バスツアー会社がツアー参加者に告知する。
原形 ○○PAのトイレを利用します
謙譲語II ○○PAのトイレを利用いたします
謙譲語I、謙譲語IIの話はできるだけしたくないのだが……。
この場合「いたします」は聞き手(ツアー参加者)に対する謙譲語(II)。「○○PAのトイレ」(の所有者)に対する敬語ではない。
特別な計らいで△△美術館のトイレを利用させてもらうとする。
△△美術館に対する謙譲語Iは……想定できない(泣)。
やはり、「△△美術館のトイレを利用させていただきます」あたりだろう。
この場合ほぼ同じことを「借りる」とも言える。意味はほぼ同じだが、「借りる」なら「お借りします」にできる。やはり理屈ではなく「慣例」なのだろう。
・丁寧語
「借ります」(「拝借します」なら謙譲語I+丁寧語)
・謙譲語
謙譲語I
△△美術館のトイレをお借りします
△△美術館のトイレを拝借します
謙譲語II&謙譲語II(敬度が高くなる)
△△美術館のトイレをお借りいたします
△△美術館のトイレを拝借いたします
●尊敬語
これは↑に書いたとおり。
「ご利用になる」「ご利用なさる」「利用なさる」「利用される」の4パターンがすべて使える。
……とここまで書いて質問板を見たら、No.9のコメントが入っていた。
そうか。さすがだな。
「受け手尊敬」ですか。これは下記で教えてもらった渡辺実の用語。その節はお世話になりました。
「謙譲語A」は『敬語』(菊地康人)などで使われている用語。「敬語の指針」などで言う謙譲語I。
【「かしこまりました」は謙譲語なのでしょうか】コメントNo.13参照
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/8499357.html
ただ、〈「話す」←→「話される」・「渡す」←→「渡される」〉と考えると、「利用する」←→「利用される」と考えることもできるような……。
さらに厄介なのは、いろいろなパターンがあること。
詳しくは下記をご参照ください。
【「袋にお入れいたしますか」「お/ご~いたします」は二重敬語か Yahoo!知恵袋】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2405.html
以下は一部の抜粋(重言)。
================================引用開始
[「……を」を高める]
お諌めする・お祝いする(「XのYを祝う」のXを高める。美化語用法も)・お送りする(人を送り届ける)(以下略)
[「……に」を高める]
お会いする(「お目にかかる」のほうが好まれるが、「お会いする」も可)・お祈りする(神仏に。美化語用法も)(以下略)
[「……から」を高める]
お預かりする・おいとまする・お受けする(「XのYを受ける」のXを高める用法も)・お受け取りする・お借りする・お習いする
[「……と」を高める]
お分かれする(美化語的用法も)
(以下略)
[「……のために」を高める]
お開けする・お祈りする・お書きする・
(以下略)
[「……について」を高める]
お噂する(「Xのお噂をする」とも)
(以下略)
================================引用終了
[「……を」を高める] [「……から」を高める] あたりは対応関係がわかりやすいけど、[「……に」を高める] だと微妙な気が……。
[「……のために」を高める] だと、何がなんだか。
「〜られる」と言うより「〜てもらう」と考えるほうがいいかな。
【メモ9 ご指摘させていただいた Yahoo!知恵袋】
mixi日記2015年04月21日へ。
テーマサイトは下記。
【『ご指摘させていただいた』と言う日本語はおかしいのでしょうか?】
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14144392654/a357102938
質問内容はタイトルのとおり。
結論を先に書くと、「誤用」か否かという質問なら、「誤用ではない」。
おかしいか否かという質問なら、文脈しだいとしか言えない。
基本的にはおかしい場合が多いと思うが、100%ナシではない。
「ご指摘させていただいた」を分解する必要があるだろう。
以降、基本的に現在形の「ご指摘させていただく」で考える。
おそらく「指摘する+させてもらう」が原形と考えるのがわかりやすい。
敬語連結であることを説明するのなら、「指摘させる+て+もらう」と考えるほうがよいと思うが、ここではやめておく。
●「ご指摘する」と言えるか否か
まず考える必要があるのは、「ご指摘する」と言えるか否か。これは「慣例」によるところが大きく、理屈で考えてもどうにもならない部分がある。『敬語再入門』に頼るのが無難。
【「袋にお入れいたしますか」「お/ご~いたします」は二重敬語か Yahoo!知恵袋】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2405.html
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
【追記】
『敬語再入門』のP.236~238の「敬語便利帳」からひく(こちらのほうがP.75より例が多い)。
「お/ご~する」にできるものは、ほぼ「お/ご~いたす」にできるらしい(例外が何かはのっていない)。
==============引用開始
[「……を」を高める]
お諌めする・お祝いする(「XのYを祝う」のXを高める。美化語用法も)・お送りする(人を送り届ける)(以下略)
[「……に」を高める]
お会いする(「お目にかかる」のほうが好まれるが、「お会いする」も可)・お祈りする(神仏に。美化語用法も)(以下略)
[「……から」を高める]
お預かりする・おいとまする・お受けする(「XのYを受ける」のXを高める用法も)・お受け取りする・お借りする・お習いする
[「……と」を高める]
お分かれする(美化語的用法も)
(以下略)
[「……のために」を高める]
お開けする・お祈りする・お書きする・
(以下略)
[「……について」を高める]
お噂する(「Xのお噂をする」とも)
(以下略)
==============引用終了
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
この[「……に」を高める]語のリスト中に、「ご指摘する」がある。ちょっと引っかかるのは、相手のミスなどを「指摘する」場合に使えるか否か。
同じリストに下記の記述がある。
==============引用開始
ご注意する(高めるべき相手に「注意する」はやや不自然だが、時に使う)
==============引用終了
「ご指摘する」も同様だろう。
つまり、「指摘する+させてもらう」の両方を謙譲語にしたものが、「ご指摘させていただく」。
後半だけを謙譲語にしたのが「指摘させていただく」ということ。当然、「ご」がつくほうが敬度が高い。
●「させていただく」の働き
これがまたややこしい話で、諸説が流れている。当方の考えは下記参照。
【よくある誤用32──敬語編2「~させていただく」「~させていただきます」「~(さ)せていただく」「~(さ)せていただきます」】
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n132890
ちょっと補足する。『敬語再入門』のP.191〜に〈「させていただく」の「乱れ」とその正体〉という項がある。これがわかりやすいだろう。
「させていただく」の本来の用法は、〈相手から許可・恩恵を受ける意味であること〉〈その「恩恵の与え手」を高めること〉という〈二重の意味で敬度の高い表現〉としている。
だが違う側面もあるらしい。
==============引用開始
ところで、日本語には、「実際はそうでなくても、あたかも相手から恩恵や許可を得たかのように見立てて述べるのが、相手を立てることになる」という発想があります(→§4)。実際には「案内してやる」のでも、「ご案内させていただきます」と言うようなのが一例で(謙譲語I「ご案内する」に「させていただく」が続いたもの)、これは、相手を貴人に見立て、許しを得て案内させてもらう光栄に浴するという発想です。パーティーの案内を受けて「出席させていただきます」と答えたり、「本日休業させていただきます」と掲示したりするのも、パーティーの案内を“出席許可の恩恵”ととらえ、実際には自分で勝手にする休業を“お客様のお許しを得て”と捉える発想です。
==============引用終了
「ご指摘させていただく」も単なる「見立て」だろう。実際には「指摘してやる」。さらに過激に言えば「指摘して恥をかかす」だから。
●「ご指摘させていただく」を使う例
「ご指摘させていただく」は間違いではない。だが、高めるべき相手に使うにはやや不自然な「指摘する」を、非常に敬度が高い言い回しの中で使うので、自然な状況はきわめて限られるだろう。
たとえば社長(うんと偉い人って意味)が書いた文章に関して「忌憚のない意見を聞かせてほしい」と言われる。いろいろ不備があるので、しかたがなく覚悟を決める。
「どうしてもということでしたら、僭越ではありますが、ご指摘させていただきます」
これならさほどおかしくないだろう。
おかしくはないだろうが、社長の文章の不備を指摘してどんな禍根が残るのかは知らない。
王様の素行の悪さを見かねて「ご注意させていただいた」家来が幸せになるとは思えない。
【電話の敬語「お伝えします」「お代わりします」「おつなぎします」(メモ10扱い)】
mixi日記2012年08月02日から
テーマサイトは下記。
【ある会社に、外部の人から電話がありました。電話を受けた従業員が……】
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1491291189
よくわからないんでトピも立ててみた。
【電話の敬語「お代わりします」「おつなぎします」】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=70747813
かなり微妙な話なんで、いつも以上にオネオネと書く。
Aさんが電話で顧客と話していて、上司のことが話題になったとする……。
●お伝えします
「上司への伝言を顧客に頼まれたとき」に「お伝えします」と言うのはアリか。
相当微妙だけど、やはり×だろう。信頼に値する書籍にそういう記述がある。
【言葉の取扱説明書3 ○○のわりに(は) お伝えしておきます 協力するにやぶさかでない 】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1837388275&owner_id=5019671
================================引用開始
1つ目が「お伝えします」の是非。典型的なのは、外部の人から連絡を貰い、「(席を外している社内の人間に)お伝えします」と言う場合。『問題な日本語4』で扱っていた(先日書店で手にしたけど、内容が薄くて買う気にはなれなかった)。
「お伝えします」は謙譲語I(+丁寧語の話は省略)。伝える人の、伝える相手への敬意(菊地康人流に言うなら「主語の補語に対する敬意」?)を示す。したがって、身内を高めることになるので×。
だと思うが、「お伝えします」だとアリって気もするのは「定着しているから」なのかもしれない(なんの基準もなく「定着しているから」OKとか言われるとどうしようもない)。「あなた様の伝言」を伝えるんだから、「お」をつけるべきって論理も筋が通っている気になる。「伝えます」と「お伝えします」を比べると、後者のほうが丁寧な感じになる。
これを〈外部の人に対して「(身内と)ご相談します」〉にすると、相当ヘンなことがわかる。理由は不明。理屈としては「あなた様の案件」を相談するんだから……と言えなくはないけどさ。
================================引用終了
【読書感想文/『敬語』(菊地康人/講談社学術文庫/1997年2月10日第1刷発行)3】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1854649541&owner_id=5019671
================================引用開始
【引用部】
敬語を使い慣れた人でも、話題にしようとする人物を身内扱いすべきかどうか迷うことは少なくないし、使い慣れないと、つい、主婦が家族以外の人に、あるいは会社員や公務員が部外の人に
主人(部長)がそうおっしゃいました。/主人の母(部長)にそうお伝えしました。
などと言ってしまう──それが誤りになってしまうのが相対敬語なのである。(P.426)
やはりそういうことなのだろう。
余計な部分を省略して、当方の積年の課題に限って書きかえると、下記のようになる。
会社員が部外の人に「部長にそうお伝えしました」などと言ってしまう──それが誤りになってしまうのが相対敬語なのである。
「絶対敬語」と「相対敬語」に関しては本書を読んでもらうほうがいいだろう。現代の敬語は「相対敬語」と考えてよいはず。ただ、部外の人に「部長にご相談します」がヘンなのはスンナリ理解できるが、「部長にお伝えします」だと異和感がぐんと弱くなる理由は不明のまま。
================================引用終了
●お代わりします
「上司に電話を代わるように顧客に頼まれたとき」に、「お代わりします」と言うのはアリか。
2つのポイントがある。
1つ目は、↑の「お伝えします」と同様の問題。もうひとつは、「代わる」を「お~する」の形にできるのか、という問題。
『敬語再入門』のP.236~の「お/ご~する」にできる動詞のリストのなかに、「おかわりする」はない。
【「袋にお入れいたしますか」「お/ご~いたします」は二重敬語か Yahoo!知恵袋】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1853506079&owner_id=5019671
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■引用開始
【追記】
『敬語再入門』のP.236~238の「敬語便利帳」からひく(こちらのほうがP.75より例が多い)。
「お/ご~する」にできるものは、ほぼ「お/ご~いたす」にできるらしい(例外が何かはのっていない)。
================================引用開始
[「……を」を高める]
お諌めする・お祝いする(「XのYを祝う」のXを高める。美化語用法も)・お送りする(人を送り届ける)(以下略)
[「……に」を高める]
お会いする(「お目にかかる」のほうが好まれるが、「お会いする」も可)・お祈りする(神仏に。美化語用法も)(以下略)
[「……から」を高める]
お預かりする・おいとまする・お受けする(「XのYを受ける」のXを高める用法も)・お受け取りする・お借りする・お習いする
[「……と」を高める]
お分かれする(美化語的用法も)
(以下略)
[「……のために」を高める]
お開けする・お祈りする・お書きする・
(以下略)
[「……について」を高める]
お噂する(「Xのお噂をする」とも)
(以下略)
================================引用終了
これだけあげているのに「お入れする」がないってことは、同書は「お入れする」を認めていないのだろう。だから「お入れする」なんて絶対に言わない、と主張する気はないが。
ちなみに上の分類にあてはめるなら、「お入れする」は[「……のために」を高める]だろう。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■引用終了
「おかわりする」がないのは、「ご飯をお代わりする」との混同を避けたものか否かは、言葉の神様に訊かないとわからない。
ちなみに、↑の「お伝えする」は[「……に」を高める] に入っている。[「……を」を高める] ではない。やはり「お客様の伝言を上司にお伝えします」は×ってこと。
●おつなぎします
元々のYahoo!知恵袋のサブテーマとして登場した。
同様の状況で「おつなぎします」と言えるか否か。
「お伝えします」と同様と考えるなら×だろう。しかし、「おつなぎします」のほうがずっと異和感が弱い。
↑のリストに「おつなぎする」はない。そんなに使用頻度が低いかな?
■Web辞書『大辞泉』から
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%A4%E3%81%AA%E3%81%90&dtype=0&dname=0na&stype=0
================================引用開始
つな・ぐ【×繋ぐ】
《名詞「綱」の動詞化》
【1】[動ガ五(四)]
1
①ひも・綱などで物を結びとめて、そこから離れたり、逃げたりしないようにする。「犬を―・ぐ」「鎖で―・ぐ」
②相手の気持ちなどが離れていかないようにする。「彼女の心を―・ぐために一芝居打つ」
2 一定の所に留め置いて外へ出さないようにする。拘禁したり、拘束したりする。「獄に―・がれる」
3 結びつけてひと続きのものにする。「車両を―・ぐ」
4 離れているもの、切れているものを続け合わせて一つにする。また、そのようにして通じるようにする。「手を―・ぐ」「電話を―・ぐ」
5 なんとか長く、切れないようにたもたせる。たえないようにする。「望みを―・ぐ」「命を―・ぐ」「座を―・ぐ」
6 足跡などをたどって行方を追い求める。
「射ゆ鹿(しし)を―・ぐ川辺のにこ草の」〈万・三八七四〉
[可能] つなげる
================================引用終了
もしかすると、「電話をつなぐ」という言い回しがイレギュラーなのかもしれない。『大辞泉』を見ると、ほかに「おつなぎする」と言えそうな例はない。「犬をつなぐ」「獄につなぐ/つながれる」のイメージが強いせいだろうか。
そうは言っても、現実に「電話をつなぐ」って言い回しはあり、「電話をおつなぎする」と言えそうなんだからしかたがない(泣)。
ここで考えなければならないのは、逆方向の可能性があること。
「あなたの電話を上司におつなぎします」ではなく、
「上司をあなたの電話におつなぎします」ってこと。
これなら何も問題はないけど、この解釈はさすがに苦しいかな。
もうひとつ考える必要があるのは、「上司に」をつけて「上司におつなぎします」にすると、異和感が強くなること(これは「お伝えします」も同様)。
おそらく、単に「おつなぎします」だと「顧客(の電話)をおつなぎします」と解釈できそうだからだろう。これなら顧客に対する敬語になっている感じがある。
現実には、省略されていても「伝える」先にあたるのは「上司」だから、やはり避けたほうがいい表現なんだろう。
論理的に考えると下記が正解ってことになってしまう。
「(顧客の)ご伝言」を「上司」に「伝える」
「(顧客の)お電話」を「上司」に「つなぐ」
『敬語再入門』の親本とも言える『敬語』に関しては下記。
【読書感想文/『敬語』(菊地康人/講談社学術文庫/1997年2月10日第1刷発行)──予想していたことではあるが……。】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2415.html
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