逆接の接続助詞「ものの」と「のに」の違い

 下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-306.html

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1354427241&owner_id=5019671

mixi日記2010年02月25日から
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1422834518&owner_id=5019671

 今回のトピは、下記。
【ものの と のに の違い】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=50796690

 下記の続きと考えることもできなくはない。ただ、下記はあまり参考にならないだろうな。
逆接接続助詞「ものの」「ながら」「つつ」「にもかかわらず」「のに」の微妙なニュアンスの違い】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1067.html
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1422492752&owner_id=5019671
 本気で調べるなら、下記のトピの「20」の参考文献を読むことをおすすめする。そのくらいトンデモナイ問題なんだから。
日本語の難しさはここだ】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=48876406

 今回は「ものの」と「のに」限っているので、少し調べる気になる。
 前回のように5つもあると手に負えない(笑)。
 それでも辞書の引用と説明が長いので後ろに回す。

 トピ主の「0」の要約。
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「ものの」と「のに」の違いって何でしょうか?

「ものの」には「意外」という意味があると思うのです。

  大学は卒業したものの、まだ就職先は決まっていない。

 でも、「ものの」に不平、不満を表す意味もあるような気がします。

  あの店の料理は高いものの、おいしくない。

 この例文は不平、不満を表す「のに」に置き換え可能ではありませんか?

 私は「ものの」は「のに」に比べて、不平、不満の気持が小さいのではないか?(「ものの」の方が「のに」に比べて客観的な感じがするという語感からの判断なのですが。)という考えに達したのですが、あっているのでしょうか?
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 ちゃんと考えようと思うと、たいへんな問題になると思う。
 細かいニュアンスは、部分的には「1」のコメントに賛成。

  ものの→やや書き言葉的
  のに→やや話し言葉的

 これは間違いないだろう(根拠をあげろ、と言われたら困るけど)。たいへんなのはそれから先。
「ものの」と「のに」がどう違うのかの答えは、いくつかの段階があると思う。

●第1段階の答え……「のに」は「意外・不平」の意味があり、「ものの」にはない
 辞書の意味を見比べればわかるが、「のに」には「意外・不平」の意味がある。「ものの」にはない。これは明らかに違う。
 これが辞書の記述を信じた第1段階の答え。

●第2段階の答え……「のに」と「ものの」はほとんど同じ
「のに」は「意外・不平」を表すことがある。じゃあ、そもそも「意外」と「不平」はどう違うか。
 これは「意外」の一部が「不平」ってことだと思う。簡単な例をあげる。

  来ると言ったのに彼は来なかった。(不平)
  来ないと言ったのに彼は来た。(喜び?)※「来てくれた」にするともっとハッキリする。

「意外」が好ましくない方向なら「不平」だが、好ましい方向なら「喜び?」ってこと。どちらになるのかは文脈しだい。両方をまとめると「意外」ってことだろう。
 ただし、「意外」の意味をもつのは「のに」だけではない。辞書には記載がないが、「ものの」だって「意外」のニュアンスをもつことがある。それは逆接接続助詞だから当然のこと。「けれども」でも「が」でも同じことだろう。逆接なんだから、「予想どおり」よりも「意外」に決まっている。

 ここで考える必要があるのは終助詞の「のに」の働き。辞書を見てもこちらは「不平」を表わす感が強い。その影響を受けて、接続助詞の「のに」もそういうイメージが強くなっている気がする。

 ただし、個人的には「ものの」と「のに」の意味にほとんど差はないと考えている。そういう厳密な考え方をするのがメンドーなだけかもしれない。
 トピ主があげた例文で見てみる。
 
  1)大学は卒業したものの、まだ就職先は決まっていない。
  2)大学は卒業したのに、まだ就職先は決まっていない。
  3)あの店の料理は高いものの、おいしくない。
  4)あの店の料理は高いのに、おいしくない。

 1)と2)では、意味はほとんどかわらないだろう。
 3)と4)でも、意味はほとんどかわらないだろう。
「けれども」や「が」にしても、ほとんどかわらないと思う。
 ちなみに、不平とは限らないことは「あの店の料理は安いのに、おいしい」とすればわかる。「あの店の料理は安いものの、おいしい」は少しヘンな気がするが、理由はわからない。
「のに」と「ものの」はほとんど同じ。ほかの逆接接続助詞も意味に大きな違いはない。
 これが第2段階の答え。

●第3段階の答え……「のに」と「ものの」にはやはり微妙な違いがある
 じゃあ、「のに」と「ものの」は意味も用法もまったく同じかと言うと、微妙な違いはある。違う言葉なんだから、当然だろう。
 でもそんな厳密なことを考えるのは国語学者の仕事だと思う。それこそ、↑にあげた参考文献を読まないとわからない。
 とりあえず当方がわかるのは、最初にあげたこと。

  ものの→やや書き言葉的
  のに→やや話し言葉的

 似たような例を↑のリンク先から引用する。
逆接接続助詞「ものの」「ながら」「つつ」「にもかかわらず」「のに」の微妙なニュアンスの違い】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1422492752&owner_id=5019671
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 たとえば、「逆接の接続詞」をどう使い分けるのか、と訊かれたらどう答えるべきか。「基本的には同じだけど、文脈による」としか言えないと思う。違う言葉なんだから、微妙なニュアンスは違うだろう。文脈によってAは入るけどBは入らない、ってことはある。
 ものすごく簡単な例をあげると、かたい文体なら「でも」より「しかし」のほうがふさわしい。でも意味はかわらないし、「でも」が間違いってわけではない。それもこれも文脈しだい。
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 たとえば先にあげた例文で考えてみる。

  来ると言ったのに彼は来なかった。(不平)
  来ないと言ったのに彼は来た。(意外)

 これは「のに」を「ものの」にはしにくい。「ものの」にしても間違いではないだろうが、少しヘン。
 このように、「のに」と「ものの」の一方しか使えない例文をいくつもあげれば、「のに」と「ものの」がわかるかもしれない。当方にはそこまで考える知識がない。

●第4段階の答え(仮説)……「のに」のほうが用途が広いのかもしれない
 正確なところはわからないが、なんとなく予想できるのは「のに」のほうが用途が広いだろうな、ってこと。辞書で「ものの」の例文になっているのは下記の2つ(古文は除く)。

  「習いはした―、すっかり忘れてしまった」
  「新機軸を打ち出した―、採用はされなかった」

 どちらも「のに」に書きかえ(「言いかえ」も含む)ることできる。しかし、「のに」のほうの例文のなかには「ものの」にしにくいものがある。個人的にも「ものの」を使うことはめったにない(たぶん、「ものの」が「やや書き言葉的」だから)し、「のに」の使い方だけ知っていれば十分じゃないだろうか。さすがに乱暴かな(笑)。

●第5段階の答え(仮説)……一部「のに」に書きかえにくい「ものの」もある
 たいていの「ものの」は「のに」に書きかえられる。
 ただ、一部「のに」に置きかえにくい例もある。
 下記の例などは「ものの」を「のに」にしにくい。

  1)「のに」のほうが用途が広いとはいうものの、例外はある。

 この場合、もし書きかえるなら「いうものの」→「いっても」くらいだろう。このあたりの理由を考えはじめると、ホントにトンデモナイことになりかねない。
 たぶん、『大辞泉』の末尾の注にある「慣用的に用いられる」場合は「のに」にしにくいってことだと思う。
 トピの「2」で出てきた下記の例も「のに」にはしにくい。

  2)途中で気がついたから良かったものの、そうじゃなかったら
   今頃火事になっていたわ。

 この場合、もし書きかえるなら「良かったものの」→「良かったが」くらいだろうか。
 1)や2)がなぜ「のに」にしにくいのか、理由はよくわからない。そういうむずかしい話は専門家におまかせする。そのうち改めて考えてみたい。


【辞書の引用と説明】■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 まず例によって、まずネット辞書(『大辞泉』)をひく。

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http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%AE&dtype=0&stype=1&dname=0na&pagenum=1&index=21369918313700

ものの
[接助]《形式名詞「もの」+格助詞「の」から》活用語の連体形に付く。逆接の確定条件を表す。…けれども。…とはいえ。「習いはした―、すっかり忘れてしまった」「新機軸を打ち出した―、採用はされなかった」
・「をかしき―、さすがにあはれと聞き給ふ節もあり」〈源・明石〉

◆現代語で「ものの」は、「とはいうものの」「いいような(よかった)ものの」などの形で慣用的に用いられることが多い。
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http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%AE%E3%81%AB&stype=1&dtype=0

のに
[接助]《準体助詞「の」+接続助詞「に」から》活用語の連体形に付く。内容的に矛盾する二つの事柄を、意外・不服の気持ちを込めてつなげる意を表す。「東京は晴れな―大阪は雨だ」「十分言い聞かせた―理解していない」「九月だという―真夏の暑さだ」
・「それはまあ、よく忙しい―、気をつけておくれだ」〈人・娘節用・後〉

[終助]《の文末用法から》活用語の連体形に付く。不平・不満・恨み・非難などの気持ちを表す。「これで幸せになれると思った―」「いいかげんにすればいい―」
・「あれほど待って居てくんなといふ―」〈滑・浮世風呂・二〉

◆近世以降用いられ、近代になって多用されはじめた。他の逆接の助詞「けれども」「が」などに比べると逆接の意が強い。
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 まあこんな感じだ。「のに」の終助詞に関しては、とりあえず考えなくていいだろう。
「のに」の末尾の注に関して疑問が湧く。〈他の逆接の助詞「けれども」「が」などに比べると逆接の意が強い〉なんてことが言えるのだろうか。

 今度は『大辞林』をひく。
================================
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%AE%E3%81%AB&dtype=0&stype=1&dname=0ss

のに
〔補説〕 接続助詞「に」の前に準体助詞「の」が挿入されてできたもの。近世以降の語
活用語の連体形に接続する。形容動詞型活用の場合、終止形に接続することもある。
1(接助)
[1]既定の逆接条件を表す。意味内容の対立する二つの事柄を、意外・不服の気持ちをこめてつなぐ。
・昔は静かだった―、今は自動車の洪水だ
・一生懸命勉強した―、だれもほめてくれない
・もうすっかり丈夫な(だ)―、旅行を許してくれない

また、「というのに」「いいのに」の形で慣用的に用いられることもある。
・正月だという―、晴れ着も作れない
・よせばいい―、無理するからよ

[2]逆接的な意味がほとんどなく、ただ二つの事柄をつらねて言い表す場合に用いられることもある。
・併しお前は上品だ―肌目が細かいから、汗なんぞをおかきではないね〔出典:人情本・英対暖語〕

2(終助)
〔補説〕 1 における、前件に対する後件が省略されたもの
[1]意外な結果に対する、恨み・不服の気持ちを表す。
・欲しいと言えば、買ってあげた―
・ああ、せっかく学校が休みな―なあ
[2]相手の非を責め、なじる気持ちを表す。
・知りませんって言えばいい―
・以前からのお知り合いでいらっしゃった―ねえ
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〈他の逆接の助詞「けれども」「が」などに比べると逆接の意が強い〉なんてことは書いていない。むしろ「逆接的な意味がほとんどなく、ただ二つの事柄をつらねて言い表す場合に用いられる」こともあるとのこと。
 どちらが正解なのかはわからない。ただ、逆接の接続助詞を並べてどれが「逆接の意」が強いかなんて、簡単には決められないと思う。

【続きは】↓
133【逆接の接続助詞「ものの」と「のに」の違い2】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1092.html
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