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2010年4月の朝日新聞から

【索引】
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朝日新聞から──番外編 よく目にする誤用の御三家
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-122.html

朝日新聞から──ではない 世に誤用の種は尽きまじ
「7割以上が間違ったら、もうそれは誤用ではない」のか?
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-194.html

●2010年4月の朝日新聞から
10-4-1
1日
よりが戻る(朝刊29面)
 (青)記者。将棋の観戦記。文中にも「これでよりがもどったのである」とある。これは前にも見た。これが4例目。
08-01-01剣記者
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-56.html
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 将棋欄。書き手は剣記者。ニュアンスはわかる。形勢互角になっていたという意味だろう。しかし、「ヨリが戻る」にこんな用法があるのだろうか。ネット辞書を索いてみた。
 より【縒り・撚り】
 よること。また、よったもの。「糸に―をかける」
 縒りが戻・る【縒りが戻る】
 1かけた縒りが、もとに戻る。
 2物事が元通りになる。特に、男女の仲が元通りになる。「別れた恋人と―・る」
 では「よる」とは何かと調べようとすると、該当項目がない。なめとんのか! 手元の紙の辞書を繙くと、「より」の欄に「2本以上の糸を組み合わせること。組み合わせた糸」とある。こうでないと辞書じゃねえよ。こうして辞書を見ると、形勢互角になったんなら「ヨリが戻る」でも間違いとは言い切れない気がしてくる。でもなあ。そもそもこんな表現使う必要がないだろう。「先手のリードが消えていたのだ」で意味は通じるんだから。ゲスな勘ぐりをすると、「ヨリが戻る」と「寄り返す」の混用じゃないだろうか。
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08-08-04大川慎太郎記者
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08-12-2内藤由起子記者
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-212.html

10-4-2
5日
 足技の応酬に担ぎ技を交えたせめぎ合いは互角。(朝刊21面)
 柴田真宏記者。これも定番(笑)。探すのがメンドくさい。
http://1311racco.blog75.fc2.com/?q=%A4%BB%A4%E1%A4%AE%B9%E7%A4%A4

10-4-3
5日
「なし崩しリーダー」が増殖(朝刊30面)
『AERA』の広告。朝日新聞の記事じゃないけど、紙面で見つけたもんで。しかも『AERA』だから(笑)。下記参照。
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-292.html

10-4-4
9日
事業に手を出しては失敗する破天荒な父・時次郎(西田敏行=同前列左)、しっかり者の長女・政子(柴咲コウ=同後列中央)らが、貧しくとも笑顔を失わず、歴史上の人物や出来事と様々なかかわりを持ちながら生き抜いていく。(朝刊36面)
 丸山玄則記者。番組紹介欄。どうでもいいけど長い一文だな。さほどおかしくはないけど、読み手を拒んでいるよ。問題は「破天荒」。
■Web辞書(『大辞泉』から)
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は‐てんこう〔‐テンクワウ〕【破天荒】
[名・形動]前人のなしえなかったことを初めてすること。また、そのさま。前代未聞。未曾有(みぞう)。「―の試み」「―な大事業」
◆「天荒」は未開の荒蕪地(こうぶち)の意。唐の時代、官吏登用試験の合格者が1名も出なかった州は人々から「天荒」といわれていたが、劉蛻(りゅうぜい)が初めて合格して「天荒を破った」といわれたという、「唐※言」「北夢瑣言」の故事から。
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 これは、前にどこかで話題になっていた。
http://1311racco.blog75.fc2.com/?q=%C7%CB%C5%B7%B9%D3
 要は「やぶれかぶれ」とか「メチャクチャ」の意味で使うのは誤用だろう。「型破り」だとどうか、というのはまた別の問題(笑)。

10-4-5
9日
三浦さんの指し手は名人の手を全部否定するようで、非常に強い。(朝刊34面)
 村上耕司記者。将棋の名人戦の記事。間違いではないだろうが、ヘンなものはヘン。「強い」は「力強い」「強気」あたりだろう。勝負事なんだから、「強い」と書くと「じゃあ当然勝ったんだろうな」というインネンがつく。

10-4-6
21日
 黒87のツギを、趙はたいそう嘆いた。(朝刊17面)
 内藤由起子記者。囲碁の観戦記。「たいそう」に驚いた。こんな言葉をフツーの紙面で見るとは。当時新入社員だったtobiクンが、「それは死語」と言って社長にドヤされてから何年たっていると思うの。フツーは「たいへん」にするところ。この文脈なら「大いに」「ヒドく」「のちのち」「しきりに」「えらく」「おおげさに」……いくらでもあるだろうに。

10-4-7
21日
腕に覚えのある読者なら、ぴんとくるはずだ。
「10-4-6」の続き。最後の一文。よく見る書き方だが、妙に気になった。こうなると筆者との負の信頼関係なのかもしれない。「ピンと来ないよ。ヘボで悪かったね」と思った。これが「死活の得意な読者ならぴんとくるはずだ」「アマ有段者クラスの読者ならぴんとくるはずだ」くらいならさほど気にならないかも。何よりダメなのは、こう振っておいて、翌日の記事で何もフォローしてないこと(してたかなぁ?)。

10-4-8
23日
 白56が手づよい抵抗だった。(朝刊18面)
 内藤由起子記者。ウーン。またこの記者か。思わず辞書をひく。
■Web辞書(『大辞泉』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%A6%E3%81%A5%E3%82%88%E3%81%84&stype=1&dtype=0
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て‐づよ・い【手強い】
[形][文]てづよ・し[ク]強い態度である。てきびしい。「―・い反論」
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 やはりこういう言葉があるのね。でも「手強い」って書いてあったら、フツーの人は「てごわい」って読まないかな。それが常用漢字表外なら、「手ごわい」って書けばいいと思う。


●今月の読書から
『お言葉ですが…10) ちょっとヘンだぞ四字熟語』高島俊男
 2009年3月に出ている。ちょっと事情があって、これは単行本をもっている。しかし、なんとも恐ろしいことに内容はほとんど覚えていないorz。お陰で非常に新鮮な気持ちで読めた。

10-4-9 p.17~のテーマは〈官官接待 言語道断〉。
【引用部】
 最も語数が多いらしく「類書を凌ぐ約五、六〇〇項目」といばっている三省堂編集所編『新明解四字熟語辞典』は、凡例で六分類してある。ごく圧縮してご紹介すると、①現代社会、②日本の成句、③中国典籍、④仏教語、⑤之(の)入り、⑥訓読語、である。
 右の⑤は「背水之陣」のように之がはいっているもの、⑥は「灯火可親」のような通常は訓読みするものである。この⑤⑥あたりが境界線らしく、和語(訓読み)を含むものはとらない、ときめてある辞典もある。たしかにどこかで歯どめをかける必要はあるでしょうね。(p.19)
 下記を書いたときには当然これを読んでいるはずだが、何も覚えていないことがよくわかる(泣)。なんかいまとなっては懐かしい話だな。
独り言です──9 「好ましい日本語」をめぐって【順次追記予定】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1147541985&owner_id=5019671
 結局、熟語って、「音読み」だろうが「訓読み」だろうが構わないみたい。ホントにそうなのかなぁ?
 ↑のときにも書いたけど、「水魚之交」とかも四字熟語なのかな。かなり疑問。「背水之陣」も相当ヤだな。

10-4-10 p.70~のテーマは〈茂吉と兼常博士の大ゲンカ〉。
【引用部】
菓子は喰ふてうまかつたら、その上何にもいふ事はありません。菓子がわかるといふやうな事は意味のない事です。音楽は耳で喰ふ菓子のやうなものです。(p.70) 
 音楽学者兼常清佐(かねつねすけきよ)の文章。芸術論などでよく目にする話だが、文章がえらくわかりやすい。
 で、この兼常清佐に対する高島先生の評。
【引用部】
 もっとも、小生が好きだというくらいだから、こんな穏健なことばかり言っていた先生ではない。しょっちゅう過激なことを言っては物議をかもした。右の発言だってみようによってはかなり過激なのである。(p.70)
 なんて正しい自覚(笑)。
 で、この兼常先生が斎藤茂吉とも舌戦を繰り広げている。なんか、論争の方向性が子供の喧嘩のようで、その意味でタイトルの「大ゲンカ」はきわめて正しい。

10-4-11 p.167~のテーマは〈補助動詞が多すぎる〉。
 補助動詞(もしくは「形式動詞」)とは、「~ている」「~てやる」「~でみる」「~てしまう」などで、なかでも使用例が多いのは「~ている」ではないかとのこと。
 下記は、ちょっと関係あると言えばあるかもしれない。
【「~ていません」「~ませんでした」】☆日本語教師☆
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1453802950&owner_id=5019671
 で、昔の人は、いまほど補助動詞を使わなかったらしい。

【引用部】
 衝撃的と申したのは、いまの人は補助動詞を多用する、むかしの人はめったにもちいない、という事実を、自分がこれまで意識したことがなかったからです。たしかに、「とんぼがとまる」は「とまっている」をも包含していたのでした。(p.169)
 それがなぜ「~ている」を多用するようになったか。筆者は、英語の現在進行形の影響ではないか、と推論している。
 明治期には、「つつある」と訳していた。これがいかにも書き言葉っぽので、だんだん「~ている」になった。いったん「~ている」が定着すると、「雨が降る」では物足りなくて、「雨が降っている」と書くようになった。
 たしかに、「雨が降る」だと中途半端な感じがある。
 過去なら「雨が降った」。現在だと「雨が降る」でもいいはずだが、「雨が降っている」としたくなる。
 実は、当方は書き癖で「~ている」とする傾向があるらしい。昔校閲者に指摘されて気がついた。「~ている」は現在進行形を表わすだけではない。
 たとえば、過去形も「○○は、△△と書いている」と書くほうが、なんとなく落ち着きがいい。あるいは「△△と書くことにしている」なんかもよく使う。
 要は、当方の語感が現代的ってことなんだな。(←違ーーう!)

10-4-12 p.174~のテーマは〈連中、老中、女中〉。
 聞いたこともない話がズラズラ並んでいて、全文を書き写したい衝動に駆られる(笑)。
・「女中」の元々の意味とか
・「○中」が「複数の人たち」を表わすとか
・「御中」は元々「人々御中」(ひとびとおんなか)だったとか
【引用部】
 人を呼ぶ(指して言う)語にふくまれる敬意は時とともに減ずる。人は他人を呼ぶにしばしばその実際の身分よりすこし上の呼称をもってし、やがてそれが一般化する故である。「奥様」がよい例である。(p.178)
「貴様」だの「お前」だのになると、敬意が減ずるが済まなくなっている(笑)。

10-4-13【引用部】
 いま日本で、だれでも知っていて名が体をあらわしていない言葉の双璧は「小説」と「高等学校」でありましょう。(p.190)
 清水の舞台から飛び降りる覚悟(誤用だな)で、インネンをつける。蛮勇をふるって……これもちょっと違うな。
 こういうときに「双璧」と呼んでいいのだろうか。
 双璧、両雄、両輪、竜虎……どれもいい意味限定の気がする。
 個人的には、「双璧?」といった形でギャグとして使う。「バカの二大巨頭」とかならもっとハッキリする。

10-4-14【引用部】
  山峡のとおく入りきていでる湯の丘のはずれにけうも親しむ(p.213)
 斎藤茂吉の作として産経新聞のエッセイ中に引用されたらしい。
 これが、文語がわかる人にはものすごく滑稽らしい。この一首の中に、ありえない数の不自然な点や間違いがある(笑)。

10-4-15【引用部】
 なお日本には、マウリッツより先に織田信長が長篠で「三段射ち」をやったという話があるが、それは大ウソなのだそうですよ。(p.245)
 へーへーへー。

10-4-16【引用部】
 隊員たちが幅広にきりりと締めた鉢巻の、日の丸の右(向って左)に大きな「誠」の字が見える。(p.271~272)
 p.271~のテーマは〈陸軍特攻誠第百十九飛行隊〉。
 これも俎上にのせられているのは産経新聞。あまりにもボロボロで、笑うしかない。
 メモをしたのはまったく別件。H多勝一なら「鉢巻の、」の読点に噛み付くかもしれないが、そんなことをする気はない。この文のようにほかに読点がない文なら問題を感じない。何よりこの文はエッセイだから芸術文の範疇だろう。他者がトヤカク言うようなことではない。
 気になったのは〈日の丸の右(向って左)〉の部分。
 写真の被写体の右横に関して、昔はこういう書き方をしていた。ふと気がつくと、「向って左」のことを「左」と言うようになっていた。
 ガイドブックは写真の説明をすることが多いので、このテの表現が出てくる。
 ただ、少年時代(いつのことだよ)には「向って左」の類いを目にしたけど、仕事でガイドブックにかかわるようになってから見ていない。ってことはこれも死語の類いなのかな。
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