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【板外編9】文法はお好きですか?──そんな物好きな人はいません

 下記の仲間。
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-category-12.html

 mixi日記2009年06月25日から
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1207215683&owner_id=5019671

 下記の続きです。
【独り言です日本語教師関連編──モゴモゴ決定戦3】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1204176509&owner_id=5019671
 ということは、このシリーズの【4】にあたります。

 下記のトピ絡みで伝言板の【板外編9】です。
【可能表現における格助詞】
 トピにリンクを張ります。コメント入れる方はその点を踏まえてお願いします。
 毒は吐きたいマイミクさんは【2】へどうぞ(黒笑)。

 おなじみの【☆日本語教師☆ 】のコミュで、助詞絡みのトピが立て続けに立った(重言か?)。
 時系列で考えると最初が下記。
【助詞「で」の意味】(2009年06月23日 11:31)
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=43858161&comm_id=19124

 一見簡単そうで、すんごくむずかしい。だいたい助詞の問題って難解だけど、これはホントにわからない。
 コメントの内容がヘンなことはわかるけど、正解がわからないorz。この問題はあとに回す。

 次が下記のトピ。
【目的地への表現について】(2009年06月24日 10:43)
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=43890120&comm_id=19124

「へ」と「に」の話は、mixi以外でも何度も目にした。ずいぶん昔からさんざん見た気がする。
 辞書に出ているし、ネットで検索すればいろいろ出てくる。トピ主は携帯ユーザーですか……。なんと申しましょうか。

 で、次に出てきたのが、下記のトピ。
【可能表現における格助詞】 (2009年06月25日06:43)
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=43919149&comm_id=19124

 あのー。これも基本的なことは辞書を見ればのっていると思うんですけど。
 トピ主の「0」のコメント中の「格助詞ヲで表現される補足語は、ガに変換できる場合が多い」は、どういう例を指しているのだろう。ヲとガが逆のような気がする。
 そう思ったんで、「1」のコメントを入れた。トピ主はログインはしているようだが、回答はない。
 例によって、回答を待たずにコメントが入る。
 それでもトピ主のコメントはなし。まさかと思うけど、「私は前者も後者も正しい文章だと思うのですが…」と考えているのに、賛成意見がないからヘソを曲げている?

 このヲとガに関しては前「赤い本」に書いた記述で大丈夫だろう。転記しておく。


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●「ガ」か「ヲ」か

 【練習問題1】
 次の2つの表現がどう違うのか考えてください。
  1)本ガ読める
  2)本ヲ読める

 文法の知識がどのようなときに役立つのか、2つの例で考えてみましょう。
 本書の★ページ★行目で、「(という応急処置で)わかりにくさが緩和できます」という表現を使いました。この表現は、「……わかりにくさを緩和できます」とすることもできます(「……わかりにくさを緩和することができます」とすることも可能ですが、ここでは除外します。「~ことができる」に関しては★ページ参照)。
 ガでもヲでもよさそうですが、本来はガにするべきです。その理由を考えるために、もう少し簡単な例を【練習問題1】にしました。
 2つの表現を見比べて、ガを使っている1)のほうが自然に感じられるかたは、すぐれた言葉の感覚の持ち主です。こう書いている当人は、ヲでもさほどヘンではない気がしています。「本当はどちらが正しいのか」と考えようとするときに役立つのが、文法の知識です。
 文法書などを見なくても、ふつうの国語辞典の「ガ」の項目に答えが出ています。用法のひとつとして「好悪、希望、可能などの対象を示す」といった記述があるはずです。具体例をあげると次のようになります。

  ・本ガ好きだ(好悪)
  ・本ガ読みたい(希望)
  ・本ガ読める(可能)

 さらに、この用法に関してはガのかわりにヲを使う例もふえている、と記載している辞書もあります。「本来はガを用いるべきで、ヲも許容される」というのが、文法的な考え方になるのでしょう。
 さすがに、「本ヲ好きだ」には抵抗を感じられるかたが多いはずです。「本ヲ読みたい」「本ヲ読める」はどう感じますか。
 このガとヲの問題は、「前後にガが目立つ」などの理由がある場合を除き、できるだけガを使うべきだとは思います。しかし、ヲはあくまで許容なのだからガを使うのが正しい、と強く主張する気にはなれません。
 もう一度はじめの例を見てみましょう。

  ・わかりにくさガ緩和できます
  ・わかりにくさヲ緩和できます

 この2つの表現は、「本ガ読める」と同様に「可能」を表しています。本来はガを用いるべきでしょうが、ヲを使ったほうが語感がよくありませんか。
 これは、ヲも使われるようになった経緯を考えると、当然なのかもしれません。本来はガを使うべきだったのに、ヲを使う例がふえてきたのには、それなりの理由があるはずです。ほかにも理由はあるにしても、語感のよさが大きな理由のひとつだったと思います(ほかの理由を説明すると長くなるので、ここでは「語感」という多少あいまいな言葉だけをあげておきます)。
 一般に、文法的には間違っていても定着する用法は、正しい用法よりも語感がよいことが多いようです。このことは、言葉の問題として取りあげられることが多い「ラ抜き言葉」(★ページ参照)のことを考えると、わかりやすいと思います。


●「ノ」か「ナ」か

【練習問題2】
 次の表現のうち、言葉の使い方が間違っているのはどれなのか考えてください。
  1)最適ノ人選
  2)最適ナ人選
  3)最悪ノ人選
  4)最悪ナ人選

 これもふつうの国語辞典で解決できる問題です。
「最適」は、名詞でもあり、形容動詞でもあります。1)の「最適ノ」は、名詞の「最適」に助詞の「ノ」がついた形です。2)の「最適ナ」が形容動詞の活用形のひとつであることは、ご存じのかたも多いでしょう。
 一方「最悪」は名詞でしかありませんから、「最悪ノ」の形では使えても、「最悪ナ」の形では使えません。したがって、4)の「最悪ナ人選」が間違った言葉の使い方ということになります。

 ここであげた「ガとヲ」の話や「ノとナ」の話は、言葉に敏感な人には無意味なものかもしれません。文法の知識などはなくても、感覚的に理解して使い分けることができているからです。
 しかし、言葉の問題で疑問を感じたときに、文法の知識をもっていたほうが解決しやすいことは理解していただけたと思います。先に文法について「知っているに越したことはない」という程度、と書いたのは、こういった理由からです。


【Coffee Break──なぜ「最適」にはノもナもつくのか】

 はじめにお断りしますが、この【Coffee Break】の内容は根拠が不確かな推論です。半信半疑でお読みください。
「最適」という言葉は、「最適ノ」の形でも「最適ナ」の形でも使われることは、本文で紹介したとおりです。名詞と形容動詞の両方の働きをもっている言葉は、ほかにもたくさんあります。ところが、「最適」のように両方の使われ方をされる言葉は、そう多くありません。たとえば、「適切」は「適切ナ(人選)」の形で使われます。名詞の働きをもっていても、「適切ノ(人選)」という表現を使う人はいないでしょう。
 そこで思いついたのが、「最適」も本来は「最適ナ」としか使われなかった言葉なのでは……という推論です。
 では、なぜ「最適ノ」が使われるようになったのでしょうか。
「最適」に似た印象の言葉を考えてみると、「最新」「最大」「最高」など、いくらでもあげられます。これらの言葉はいずれも名詞で、「〇〇ナ」の形では使われません。しかも「最新版」とか「最大公約数」という使われ方があっても、圧倒的に多いのは「〇〇ノ」の形です。この印象が強いため、「最適ノ」が許容されるようになった気がします。
「異質」も、同じように「同質」「変質」などの名詞の影響を受け、「異質ノ」が許容されたのではないでしょうか。
 特殊な例と考えられるのは「無用」です。「無用ナ」は、文法的には問題がなさそうなのに、あまり見かけません。おそらく、これは「無用」という言葉がもともと使用頻度が低いうえに、「無用ノ長物」や「無用ノ用」という慣用句の印象が強いためです。この「無用ノ」の印象の強さが、発音や意味がよく似ている「同様」や「不要」に影響を与えたと考えられます。そのため、本来は「同様ナ」や「不要ナ」の形でしか使われなかったのに、「同様ノ」や「不要ノ」も許容されるようになったのではないでしょうか。
「最適ノ」「異質ノ」「同様ノ」「不要ノ」に共通しているのは、「〇〇ノ」のほうが「〇〇ナ」よりも語感がよいことです。この点も、本来は「ナ」ではなかったのか、と思わせる一因になっています。
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 さてと、そろそろ誰も読まなくなった頃を見計らって、「で」の話に戻ろう。

 何度も書くけど、こういう場合はまず辞書をひこうよ。
『大辞泉』のほうがよさそうだ。「格助詞」の記述だけ引く。
================================

[格助]《格助詞「にて」の音変化》名詞、名詞的な語に付く。
1動作・作用の行われる場所・場面を表す。「家―勉強する」「委員会_可決する」「試験―合格点を取る」
2 動作・作用の行われる時を表す。「二〇歳―結婚する」
3 動作・作用を行う主体となる組織・団体を表す。「政府側―検討中だ」「気象庁―光化学スモッグ警報を発令した」
4 期限・限度・基準を表す。「一日―仕上げる」「五つ―一〇〇円」
5 動作・作用の行われる状態を表す。「みんな―研究する」「笑顔―あいさつする」
6 動作・作用の手段・方法・材料などを表す。…を使って。「電話―連絡する」「テレビ―知ったニュース」「紙―作った飛行機」
7 動作・作用の原因・理由を表す。「受験勉強―暇がない」「君のおかげ―助かった」
================================

 これを見ると、コメント「1」がおかしいことがわかる。

>範囲を表す「で」でしょうか。

『大辞泉』に「範囲」はない。あえて言えば4の「期限・限度・基準」が近いかもしれない。「100円から200円の範囲で考えてほしい」なら「範囲」だろう。だとすると、「このなかで」の「で」の働きも「範囲」でいいのかもしれない。

 そもそも、元の例文の意味がわかりにくい。
「新製品で、もっといいのがあったんです」ってどういう意味? 2つの解釈ができそうだ。

1)新製品のなかに、もっといいのがあったんです
2)新製品で、なおかつもっといいのがあったんです

 1)の意味で、「新製品で」ってアリだろうか。微妙な気がする。
 2)の意味と考えるのが自然だろう。「2」「3」のコメントはそういう意味でとっている。「2」であげている例文がわかりやすいので援用させてもらう。

「森鴎外は、医者で小説家だった」
 この「で」の意味は〈断定の助動詞「だ」の連用形〉で、「そして」の意味ですか。
 ちょっと待ってください。「連用形」の後ろに来るのは用言(動詞、形容詞、形容動詞など)でしょう。「で・ある」の場合は、用言に続いている。「小説家」は明らかな体言(名詞など)ですけど。
 しかも〈断定の助動詞「だ」〉には「そして」の意味もないはずです。
 ただ、先に引いた格助詞の働きのなかにはそれらしいものがない。
 ということは、この「で」は何?

【可能性1】
 下記の省略形。
「森鴎外は、医者であり小説家でもあった」
 これなら、〈断定の助動詞「だ」の連用形〉ってことになる。そんな解釈ができるのだろうか。

【可能性2】
 接続詞「で、」の接続助詞的用法。経験的に、接続詞と接続助詞はきわめて近い働きをする。
 接続詞「で」の意味を『大辞泉』から引く。
================================

[接]
1 前の話を受けて、次の話を引き出す。それで。「―、今どこにいますか」「―、どうしました」
2 そういうわけで。それで。「探したが見つからない。―、新しいのを買った」
================================
 これの「1」。
「森鴎外は、医者だった。で、小説家でもあった」→「森鴎外は、医者で小説家だった」
 相当苦しいけど、アリかもしれない。

 結論としては、わかりませんorz。

【追記】
 下記のサイトを見つけた。
http://oshiete1.goo.ne.jp/qa138095.html

 ただし、「医者で小説家だった」の「で」が形容動詞の活用語尾でないのは明らかだし、「〈名詞〉で〈名詞〉」の場合は「並列・列叙の〈て〉」の変形と考えるのも無理があるだろう。


【追記】
 昔、ある掲示板に書き込みをしたところ、下記のコメントをもらった。
【なぜ読まれる 日本語練習帳(Yeemar)】
http://kotobakai.seesaa.net/article/8174276.html
================================
>   なぜ「最適」にはノもナもつくのか(p.36)
>   「に」はなぜ使われないのか(p.228)

これはきわめて高度な問題ではないでしょうか。修飾語となりうる語に「だ」「な」「に」「の」のいずれが付くか付かないかは微妙なので、たとえば『岩波国語辞典』ではそれぞれの語ごとに「ダナ」「ダナノ」「名ノナ」「副ノナ」などと表示しています。飯豊毅一氏は『品詞別日本文法講座 形容詞・形容動詞』(明治書院)で、任意の50語を取り上げて、それらに「の」が付くか、「な」が付くか……というテストをしてみて、結局、名詞・形容動詞・副詞が画然とは分かれていないさまを示しています。いわれてみれば、さまざまな個性(意味・用法)をもったそれぞれの語を「品詞」という決まったワクに押し込めようとすること自体に無理があります。

「最適」には「だ・な・に・の」が付くのに「快適」には「だ・な・に」しか付かなかったり、また、「ふわふわ」に「だ・な・に・の・と」が付くのに「じめじめ」には「と」以外は付きにくかったりしても、どちらが正しくどちらが間違っているということではないでしょう。大まかにいえば、何も付かないか「と・に」が付く語は副詞的性格が強く、「な」が付く語は形容動詞的性格が強く、「の」が付く語は名詞的性格が強いと考えてよいと思います。
================================


【続きは】↓
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1204.html
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