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「申し込み」「申し出」は謙譲語?

 下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-306.html
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1354427241&owner_id=5019671

mixi日記2010年05月22日から。

 テーマサイトは下記。
【敬語で疑問があるのですが】※リンク切れてる?
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1040569970

 質問を要約する。
================================
「申す」は謙譲語なので、「申し出る」も謙譲語ではないか。
客に「お申し出ください」と言ってもいいのか。
================================

 これと同様のことを考えたことがある。似た形でよく見聞するのは「お申し越し」「お申し付け」「お申し出」「お申し込み」あたりだろうか。
 少し前に下記の質問も見つけた。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1340226608
 回答コメントがよくわからんorz。
 やはり複合語は謙譲の意味が薄れるのか、くらいに解釈していた。でもそれって根拠はあるの?
 気になって調べてみて、意外な結果に驚いた。
 まず例によって辞書から。この段階でのけぞる。

■Web辞書(『大辞泉』から)※一部抜粋(重言)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E7%94%B3%E3%81%99&dtype=0&stype=1&dname=0na&pagenum=1&index=21234618194300
================================
もう・す〔まうす〕【申す】
[動サ五(四)]《「まおす」の音変化》
1 主として会話に用い、聞き手に対し、「言う」を改まって丁重に表現する丁寧語。
①「言う」対象が聞き手(または尊者)の場合には、対象を敬う気持ちも残るが、現在、対象を敬う謙譲語は「申し上げる」である。「昨日、先生に―・したとおりです」
②単に「言う」を改まり丁重にいう場合。この場合にも、謙譲の気持ちは残るので、敬うべき人の動作には用いない。現在、「先生が申された」のような言い方は適切でないとされる。「父がこのように―・しております」「私は鈴木と―・します」「一口に日本と―・しましても」
2 1のへりくだる気持ちが失せて、「言う」を改まり重々しくいう。「そうは―・しておらん」
3 動作の対象を敬う謙譲語。
「言う」の謙譲語。申し上げる。古くは、改まって言上する場合に多く用いられた。
================================

■Web辞書(『大辞林』から)※一部抜粋(重言)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%82%82%E3%81%86%E3%81%99&dtype=0&stype=1&dname=0ss&pagenum=1&index=119328900000
================================
もう・す[まうす] 1 【申す】
(動サ五[四])
〔補説〕 上代語「まをす」の転
[1]「言う」の謙譲語。動作の及ぶ相手を敬っていう。
・私は田中と―・します
・父がこう―・しました
[2]「言う」の丁寧語。聞き手を敬っていう。
・昔から『急がば回れ』と―・しますが…
[3]「言う」の尊大語。下位者が「言う」行為を上位者が低めて表現する。
・冗談を―・すな
・名を―・せ〔出典: 狂言・昆布柿〕
[4]「願う」「請う」などの謙譲語。
(ア)神仏にお願い申し上げる。
・母君の御行くへを知らむと、よろづの神仏に―・して〔出典: 源氏(玉鬘)〕
(イ)所望申し上げる。
・いけずきを―・さばやとは思へども〔出典: 平家 9〕
================================

「複合語は謙譲の意味が薄れる」以前の問題だった。「申す」の段階で謙譲語でない意味がいろいろある。
『大辞泉』は、「謙譲語」の意味が3番目(笑)。
『大辞泉』の「2」には〈「言う」を改まり重々しくいう〉とあり、『大辞林』の[3]にいたっては「尊大語」orz。

 まあ、「申し出る」は、「申し出てやる」とか「申し出やがって」ってニュアンスはないから「丁寧語」と考えるのが妥当だろう。
 ってことで、「申し出る」は謙譲語ではないので、客に「お申し出ください」などと言うのはまったく問題がない。
※訂正
 いかんなぁ。「丁寧語」ではない。「申し出る」自体は敬語ではないってことだろう。
 ちなみに「敬語の指針」は「申す」を「謙譲語II」(丁重語)にしている。

 ここから先は例によって余談。
『大辞泉』には〈現在、対象を敬う謙譲語は「申し上げる」である〉とある。なるほど(これも誤用なのかな?)。そこまでいくと謙譲語なのね。
 そこで気になったこと。「申し○○」って形の複合語はどんなものがあるのだろう。

申し合う/申し合い
申し合わせる/申し合わせ
申し行う/──
申し兼ねる/(申し兼ね)
申し出る/申し出
申し入れる/申し入れ
申し受ける/申し受け
申し置く/(申し置き)
申し遅れる/申し遅れ
申し送る/申し送り
申しかわす/申しかわし
申し聞かす/申し聞かし
申し聞かせる/申し聞かせ
申し越す/申し越し
申し込む/申し込み
申し立てる/申し立て
申しつぐ/申しつぎ
申し付ける/申し付け
申し伝える/申し伝え
申し出る/申し出
申し述べる/申し述べ
申し開く/申し開き
──/申し分
──/申し訳(申し分け)
申し渡す/申し渡し

 予想以上にあった(これでもいくつか省略している)。
 個々の言葉を辞書でひくと、「謙譲語」の意味がのっているものとのっていないものがある。のっていないものは、すでに謙譲のニュアンスがなくなっているんだろう。
「申し遅れる/申し遅れ」「申し兼ねる/(申し兼ね)」「申し述べる/申し述べ」あたりは謙譲のニュアンスが強いと思うけど、そんなことでゴネる気はない。


【追記】
「申す」に関しては「敬語の指針」がふれている。すっかり忘れていた。この書き方には疑問を感じる。
【文化庁「敬語の指針」に対する言いたい放題】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2220.html
================引用開始

337)【「ご持参ください」は失礼な言い方か】Yahoo!知恵袋
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1622163409&owner_id=5019671
================================
(前略)「参る」や「申す」は,謙譲語IIに当たる敬語である。しかし,「御持参ください」,「お申し出ください」,「お申し込みください」などといった表現の中に含まれる「参る」や「申す」は,謙譲語IIとしての働きは持っていないと言ってよい。したがって,これらの表現を「相手側」の行為に用いるのは問題ない。
================================
 少なくとも〈「参る」や「申す」は,謙譲語IIに当たる敬語である〉はおかしい。「申す」は謙譲語のこともあれば、そうでないこともある。「申し上げる」の形にしないと、謙譲語とは言いきれないはず。
「お申し出」の類いが謙譲語でないのは、複合語だからではなく、「申す」自体が謙譲語でないことがあるからだと思う。
================引用終了
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