mixi日記2008年3月16日から
昨日の日記にもらったコメントへの返信が長くなるので、こちらに書きます。
以下の記載は手元にいっさいの資料がないため、すべて記憶で書いてます。あとで資料を確認できた段階で不備があれば随時加筆します(ホントかなぁ)。
当方は勝手に下記の3点を「よく目にする誤用の御三家」と考えている。
1)さわり
2)役不足
3)斜に構える
1)はテレビで使われるときはたいてい誤用。活字の世界で作家などが誤用する例もよく見かける。それがチェックされないってことは、編集者の間にも相当誤用が浸透しているのだろう。意味と用例は昨日の日記参照。
2)はマンガの影響が大きい。マンガの中での誤用は多すぎて例示する気にもなれない。対決シーンなどで、「キサマでは役不足だ」って感じで使う。これを正しい意味で考えると相当珍妙なことになる。考えてみると、この言葉を正しく使った例って、活字の世界でもほとんど見たことがない。「言葉の雑学」みたいな本では定番だけど(前に文章の書き方みたいな本〈俗称「赤い本」〉を書いたときも、この「役不足」については多少書いたけど、それほど詳しくはふれなかった。「言葉の正しい使い方」と「文章の書き方」は、ちょっと種類が違うと思うもので)。誤用でしか使われない言葉ってのは哀れすぎる。それだけ取り沙汰されているのに誤用が減らないのは、マンガにかかわる編集者の勉強不足としか言いようがない。カッコいいからってヤタラに使うんじゃない。
似た例で言えば、「すべからく」の誤用がよく登場するのも、カッコいいからなんだろうな。えーと。「すべて」と同じような意味で「すべからく」を使うのは誤用。本来は「すべからく……すべし」という形で使う。「すべからく……しなければならない」みたいな形も認められているようだ。なんせ、あの丸谷才一が使うくらいだから。
ちなみに、マンガの中で「役不足」が正しく使われた例を当方は1回だけ見たことがある。一部では現代版『のらくろ』と評される出世魚を描いた作品の中。作品名を書かないことに他意はなく、出世するたびに作品名がかわるので特定できないから。たぶん、「部長」のときだ。フィリピンだかの企業で働く非常に有能な女性を、ヘッドハンティングだか単なるナンパだかが目的で口説く。「君には○○みたいな仕事は役不足だ」
見本にしたいような使い方(してるじゃん)だった。
3)はもはや誤用とはいえない気もする。1)や2)の誤用は目にしたことがない天下の朝日新聞様でも、3)に関してはもっぱら誤用のほうを使っている。これに関しては「○月の朝日新聞から」のシリーズで何度か書いているので、興味のある方はご確認いただきたい。
言葉ってのはナマモノだから、誤用が定着してしまえば、それは誤用ではなくなる。問題は過渡期をどう乗り切るか。個人的には、別にどっちが正しいと強く主張する気はないから、どっちでもいいから早く統一してくれ、と思う。誤用が一般的になればなるほど、正しい意味では使いにくくなる。かと言って誤用のほうで使うのには抵抗がある。その結果、使えない言葉がどんどん増えていくことが悲しい。
あと、コメントにあった「的を得る」。さすがにまともな知識レベルの人は誤用しないだろう(現段階では)。「的を射る」と「当を得る」の混用だろう。「的を射る」と同様の言葉に、「正鵠を射る」なんてのもある。どこかのトピで「正鵠を得る」も間違いとはいいきれないとか書いてあったけど、真偽のほどは不明。とりあえず「射る」にしとくほうが無難だろう。「正鵠」は的の中心にある黒丸のことなんで、厳密に言えばこちらのほうがずっと正確ってことになる。いまYahooの辞書を索いてみたら、「セイコク」のほかに「セイコウ」って慣用読みがあるらしい。初めて知った。どう勘違いしたらそんな読み方になるんだ。