突然ですが問題です【日本語編10】──「~させていただく」【解答編】

 下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-306.html
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1486031711&owner_id=5019671

mixi日記2010年05月29日から。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1500159854&owner_id=5019671

 下記の仲間でもある。
【突然ですが問題です お品書き】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1429470515&owner_id=5019671

 まず問題を再掲する。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1497663174&owner_id=5019671
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 問題と言うよりアンケートに近いかもしれない。

【問1】下記の「~させていただく」のなかで、文法的に間違っているのではどれでしょうか。
【問2】下記の「~させていただく」のなかで、感覚的に許容できるのはどれですか。

1)相手が所有している本をコピーするため,許可を求めるときの表現
  コピーを取らせていただけますか。
2)研究発表会などにおける冒頭の表現
  それでは,発表させていただきます。
3)店の休業を張り紙などで告知するときの表現
  本日,休業させていただきます。
4)結婚式における祝辞の表現
  私は,新郎と3年間同じクラスで勉強させていただいた者です。
5)自己紹介の表現
  私は,○○高校を卒業させていただきました。
6)ビストロSMAPでの中居クンの口上
  なんでも作らさせていただきます。
================================

【問1】
 6)がいわゆる「サ入れ言葉」になっている。
■Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E3%81%AE%E4%B9%B1%E3%82%8C
================================
使役の助動詞は、下記のように使う者が多いことから、五段活用動詞とサ行変格活用動詞の後では「せる」が使われ、上一段活用、下一段活用、カ行変格活用の動詞の後では「させる」が使われるという規則が見出されてきた。

  やる(五段) → やら+せる
  叩く(五段) → 叩か+せる
  降りる(上一段) → 降り+させる
  受ける(下一段) → 受け+させる

しかし、一部では、下記のように五段活用動詞とサ行変格活用の動詞の後でも「させる」を使うことがある。これがいわゆる「さ入れ言葉」である。

  やる(五段) → やら+させる
  叩く(五段) → 叩か+させる

敬語(特に謙譲語)に不慣れな人が、過剰に敬意表現を並べてしまうために使われるのではないか、ということから若い世代に多いと言われる[要出典]。

「ら抜き」は以前から乱れの代表格として指摘されているものの、こちらは2000年代に入ってから取り沙汰されるようになった。特にバラエティ番組「SMAP×SMAP」のコーナー「ビストロSMAP」で中居正広が「(ゲストが注文した料理を)作らさせていただきます」と言っているのはおかしいのではないかと新聞に投書が掲載されたことがある。
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【問2】
「~させていただく」に関して詳しくは下記を見てほしい。ポイントだけ抜き書きする。
【関連トピ紹介】10──敬語の話2 「~させていただく」は是か否か
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=45983063

↑の1)~5)は文化庁のサイトからそのままいただいた。「,。」になっているのはそのせい。で、1)~5)に関して文化庁では以下のように解説している。
 基本的には「ア)相手側又は第三者の許可を受けて行い,イ)そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある場合に使われる」とのこと。
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 上記の例1)の場合は,ア),イ)の条件を満たしていると考えられるため,基本的な用法に合致していると判断できる。2)の例も同様だが,ア)の条件がない場合には,やや冗長な言い方になるため,「発表いたします。」の方が簡潔に感じられるようである。3)の例は,条件を満たしていると判断すれば適切だが,2)と同様に,ア)の条件がない場合には「休業いたします。」の方が良いと言えるだろう。4)の例は,ア)とイ)の両方の条件を満たしていないと感じる場合には,不適切だと判断される。5)の例も,同様である。ただし,4)については,結婚式が新郎や新婦を最大限に立てるべき場面であることを考え合わせれば許容されるという考え方もあり得る。5)については,「私は,卒業するのが困難だったところ,先生方の格別な御配慮によって何とか卒業させていただきました。ありがとうございました。」などという文脈であれば,必ずしも不適切だとは言えなくなる。
 なお,ア),イ)の条件を実際には満たしていなくても,満たしているかのように見立てて使う用法があり,それが「…(さ)せていただく」の使用域を広げている。上記の2)~5)についても,このような用法の具体例としてとらえることもできる。その見立てをどの程度自然なものとして受け入れるかということが,その個人にとっての「…(さ)せていただく」に対する「許容度」を決めているのだと考えられる。
================================

 し、しまった。
 これをコピペすれば説明になるとばかり思っていた。これって結局何も言ってないじゃん。ヒデえ文章だな。

 そうなると例によって主観で書くしかないのか。
 ポイントのなるのは2点らしい。
  ア)許可
  イ)受益

 どうもこの受益というのが耳慣れない。カブトムシ採りしか思いつかない。
 文化庁に逆らう気はないけど、↑の【関連トピ紹介】に出てきた、「ウ)名誉」も加えたい(こっちのほうが考えやすいことが多い気がする)。
 1)~6)に関して考える(6)は「サ」を抜いた前提で考える)。

  ア)許可  イ)受益  ウ)名誉
1)   ○     ○     X
2)   ○     X     ○
3)   ○     X     X
4)   X     ?     ? 
5)   △     ○     ? 
6)   ○     X     ○

 こう見比べてみると、○が2つつく1)2)6)あたりが許容範囲かな?
 出題文のコメント欄http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1497663174&owner_id=5019671もご参照ください。

【20111214追記】
 当然のことながら、それなりの文脈を用意すれば不自然でなくなることもある。
 たとえば、5)。相当の問題児がお目こぼしで卒業させてもらい(とっとと追い出した、とも言う)、10年ぶりに会った学校関係者に言うなら「卒業させていただきました」で何もおかしくない。4)も、新郎が大会社の御曹司(もっと適切な例がありそうだけど自粛)なんてときには何もおかしくない。3)も、店主が刑事事件を起こしたときならアリ。
 このあたりはケースバイケースだろう。


「~させていただく」〈2〉

mixi日記2011年03月19日から

「~させていただく」〈2〉

 妙なことに気づいてしまった。画期的な発見か否かは不明。常識的なことにいまさら気づいて小躍りしているだけ……って危険は感じる。
 これだけ批判されながら「~させていただく」が衰退しない理由。
 それは日本語に欠陥があるから。←大きく出たもんだ。
 なんでもいいけど、「出たもんだ」にちなんで?「出る」と「出場する」で比較する。以下、下表を参照してほしい。

させていただきます

「出場する」なら、「出場させていただきます」までへりくだらなくても「出場いたします」で十分ってことがある。ところが「出る」には「もっと丁寧な形」がないから、いきなり「出させていただきます」になりがちなのでは。
「出ます」では敬度が低いと感じるときに使える「もっと丁寧な形」がないからこんなことになる。
 文化庁の例文で見てみよう。
 要するに、「熟語動詞」(仮称)http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1854.htmlなら「もっと丁寧な形」がある。たいていの場合、これを使えば「~させていただく」なんて使わなくて済む。
 よく指摘される歌手の口上「それでは歌わせていただきます」も、「歌います」じゃちょっと敬度不足と思うからこうなってしまうのだろう。仮に原形が「歌唱する」だったら、「歌唱いたします」でOKって気がする。
 さて、「出ます」「歌います」の類いの「もっと丁寧な形」ってあるんだろうか。

 似た例で、「お/ご~いたします」が使えるならそっちに逃げるテがある。下記あたりは「回答いたします」で十分って気はする。
  答えさせていただきます
  →お答えいたします
  →ご回答いたします

 このあたりの表現をうまく使えば、書き言葉ではかなりの部分「~させていただきます」を回避できる気がする。話し言葉だと……イチイチ考えるのメンドーだから「~させていただきます」って言っちゃいそうだな。(←オイ!)

●遠慮がちな結論
「~させていただく」は文法的には間違っていない。連発するのは問題だが、程度問題だろう。
 ただ、コミュニケーションの基本を考えてほしい。これだけ「~させていただく」が問題視されてしまうと、たとえ正当化する論理があっても使うべきではない。よけいなトラブルの元だもん。「それはおかしい」と指摘する人を論破して何かいいことあるの?
 どこかで読んだ気がある人は記憶力を誇っていい。下記で書いた結論をベースにしている。
693)【バイト敬語の話──「よろしかったでしょうか?」考 3】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2303.html
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1819433261&owner_id=5019671



【20120624追記】
『敬語再入門』に重要な記述があった。
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2327.html
================引用開始
【引用部】
 ところが、謙譲語IIの代表選手「──いたす」は、「──する」型(サ変)の動詞でなければ使えない、また、文末以外では使いにくい、という制約があります。つまり、先程の例なら「開発いたしました」と言えますが、「新製品を作りました」は、「──する」型動詞でないので「作りいたしました」と言えないし、「新製品を開発した業者です」も、文末ではないので「開発いたしました業者です」は不自然です。この「いたす」の守備範囲の不足を補うように「作らせていただきました」「開発させていただいた業者です」と言う、という面がありそうです。「守備範囲の広い謙譲語IIの形」を求める心理が潜在的にあって、そこに「させていただく」が入り込もうとしているのです。(P.196)
 つまりそのなんだ。こういうのを読んでしまうと、「プチ発見」のはずが単なる勉強不足になるってことだ(泣)。
================引用終了

【20130124追記】
『敬語再入門』の元本とも言える『敬語』ではP.220〜227でこの問題について詳細に解説している。たとえば、よく目にする「本日休業させていただきます」についてだと、下記のように書いている。

================引用開始
  ヤ 本日休業させていただきます。
という掲示を出すのも、あたかも相手の許可を得て休むかのように捉えての表現である。実際には許可など関係なく、店が勝手に休むのだから、「休業いたします」でもよいところだが、ヤのほうが、許しを請うているようで、敬度が高い印象を与えるという感覚なのだろう。(P.222〜P.223)
(中略)
「……(さ)せていただく」のこうした過剰使用への批判は、最近新聞の投書欄などでも目にすることがあるが、しかし、中には逆に過剰な批判もあるように思われる。たとえばヤの「本日休業させていただきます」程度のものまで「卑屈だ」と槍玉にあげている新聞記事を見たが、右に解説したように、ヤのように述べる感覚も十分うなずけるものがある。「……(さ)せていただく」がすべて過剰敬語であるかのように思っている向きもあるかのようだが、そうではない。用法によってはおかしい、ということなのである。(P.224)
================引用終了


【20151022追記】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-3272.html
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
 ちょっと補足する。『敬語再入門』のP.191〜に〈「させていただく」の「乱れ」とその正体〉という項がある。これがわかりやすいだろう。
「させていただく」の本来の用法は、〈相手から許可・恩恵を受ける意味であること〉〈その「恩恵の与え手」を高めること〉という〈二重の意味で敬度の高い表現〉としている。
 だが違う側面もあるらしい。
==============引用開始
 ところで、日本語には、「実際はそうでなくても、あたかも相手から恩恵や許可を得たかのように見立てて述べるのが、相手を立てることになる」という発想があります(→§4)。実際には「案内してやる」のでも、「ご案内させていただきます」と言うようなのが一例で(謙譲語I「ご案内する」に「させていただく」が続いたもの)、これは、相手を貴人に見立て、許しを得て案内させてもらう光栄に浴するという発想です。パーティーの案内を受けて「出席させていただきます」と答えたり、「本日休業させていただきます」と掲示したりするのも、パーティーの案内を“出席許可の恩恵”ととらえ、実際には自分で勝手にする休業を“お客様のお許しを得て”と捉える発想です。
==============引用終了
「ご指摘させていただく」も単なる「見立て」だろう。実際には「指摘してやる」。さらに過激に言えば「指摘して恥をかかす」だから。
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●バイト敬語/若者言葉のコレクション
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1818.html
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