「かなり」 「ずいぶん」 「とても」
【日本語アレコレ】
下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-306.html
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1486031711&owner_id=5019671
mixi日記2010年06月25日から
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1522086553&owner_id=5019671
テーマトピは下記。
【「かなり」と「ずいぶん」】日本語しつもん箱 トピック
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=54200537
ムダとは思いつつ辞書をひく。
長くなるので辞書の記述は最後。
o( ̄ー ̄;)ゞううむ
『大辞泉』クンに謝らないといけない。いろいろなことを教えてもらった。
これは日本語学習者のレベルによって答えが違ってくる。
●第1段階 「かなり」「ずいぶん」「とても」は同じようなもの
3つとも「very」の意味でOK。辞書にも「実に」多くの類語が出てくるが、副詞の程度の差を考えるのは「とんでもなく」むずかしい。あまり厳密には考えないほうがいい。
●第2段階 3つのうちでは「とても」の程度が著しい
辞書の「かなり」の注に細かい解説がある。この注によると、程度は以下のようになる。
非常に/とても/大変>かなり/だいぶ
さらに、「ずいぶん(随分)」も「かなり/だいぶ」と相通じる、とある。これはちょっと疑問で、当方の語感だと、「ずいぶん」は2つのグループの中間くらい。このあたりは、それぞれの主観によってもかわってくるだろう。
いずれにしても、こういう程度の違いは大雑把な目安でしかないことが多い。下記参照。
【「もしかしたら」「たぶん」「きっと」の違い】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=40393863
●第3段階 3つの細かいニュアンスの違い
「ずいぶん」
「ずいぶんと」の形で使われることもある。意味はほぼ同じ。「ずいぶん」と「ずいぶんと」の違いに関しては下記参照。
【日本語アレコレ──「自然に」と「自然と」の違い】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1127505631&owner_id=5019671
辞書にあるように、「多く、予想外だとか不本意だとかいう気持ちをこめて用いる」。「多く」だから「いつも」ではないが、「予想外だとか不本意だとか」(当方は「否定的」と呼んでいる)ってことが多い。
もうひとつ、直接形容詞にかかる(主観的な感想などをダイレクトに述べる?)のには向かない傾向がある気がする。
どちらも相当微妙な話で、キッチリ説明するのはむずかしい。
「ずいぶん楽しかった」のような使い方が不自然になるのは、二重の意味ヘンだからだろう(非文とまで言えるか否かは不明)。
否定的な意味の「苦しい」とあわせて考えてみる。
「ずいぶん苦しかった」(直接形容詞にかかるので不自然)
「ずいぶん苦しい思いをした」(否定的な言葉で、「苦しい思い」にかかるのでOK)
「ずいぶん楽しい思いをした」(肯定的な「楽しい」だと微妙)
いろいろ例外もありそうだ。「ずいぶん苦しんだ」がOKで「ずいぶん楽しんだ」が不自然な理由は、こうとでも考えないと説明できない。
これが他者に対する「ずいぶん楽しい思いをしたんじゃないか?」「ずいぶん楽しんだんじゃないか?」だと、揶揄っぽくてかなり嫌味な感じになるが、言葉の使い方としては自然だろう。
これが「ずいぶん楽をさせてもらった」だとなぜ自然なのかは不明。
「とても」
本来はうしろに否定語を伴う(辞書の「1」の用法)。現代では肯定でも否定でもOK。
【「並々ならぬ」の使い方】(19)
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=42432983
================================
「とても」に関しては、かつて芥川龍之介が書いて物議をかもした記憶がありました。
【芥川龍之介の「とても」】
http://kokugosi.g.hatena.ne.jp/kuzan/20070616/p1
現在の出版・編集の現場では基本的に肯定でも否定でも○です。
================================
■Web辞書(『大辞泉』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%8B%E3%81%AA%E3%82%8A&stype=1&dtype=0
================================
か‐なり【可成り/可×也】
《許し認める意の「可なり」から》
【1】[形動][文][ナリ]相当の程度まで行っているさま。また、相当の程度以上に達しているさま。「―な収入がある」「―な数にのぼる」
【2】[副]極端ではないが、並の程度を超えているさま。思ったより以上に。相当。「今日は―人が出ている」「―酔っているようだ」
[用法] かなり・だいぶ――「台風の影響で海はかなり(だいぶ)荒れている」「病気はかなり(だいぶ)重い」などでは相通じて用いられ、物事の程度が「非常に」「とても」「大変」ほどではないが、平均以上であることを表す。◇「かなり」は「かなりな金額」「かなり出来る」のように、平均を超えたある程度を示すが、「だいぶ」は「夜になって、気温がだいぶ下がってきた」「だいぶ片付いた」のように、進行している事柄でさらに程度が進む可能性のある場合にぴったりする。◇類似の語に「相当」がある。「相当」は「かなり」「だいぶ」と同じように用いるが、より程度が上回っている感じがあり、「相当金のかかる大学だ」「相当な切手マニアだ」などでは、驚きあきれる感情がこもっている。◇また、類似の語「随分」の用法には「かなり」「だいぶ」と相通じるものがある。
================================
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%9A%E3%81%84%E3%81%B6%E3%82%93&stype=1&dtype=0
※副詞の「2」「3」「4」は現代ではあまり使わない?
================================
ずい‐ぶん【随分】
【1】[形動][文][ナリ]
1 ふさわしい程度を超えているさま。また、いちじるしいさま。並でないさま。過分。相当。「―な御見舞をいただきました」「貯金も―な額になった」
2 人に対する態度や言動が度を過ぎているさま。非常識。「そんなことを言うなんて―な奴だ」
【2】[副]
1 いちじるしいさま。多く、予想外だとか不本意だとかいう気持ちをこめて用いる。非常に。だいぶ。かなり。「年の割には―(と)老(ふ)けて見える」「― (と)大げさなことをいう人だ」
2 その人の能力・身分・立場などにふさわしいさま。また、事態がある状況にふさわしくなっていくさま。分相応に。それなりに。「しっかり勉強すれば、成績も ―(と)よくなるものだ」
・「将来立派な者にさえなれば、―照子の婿(むこ)にもしてやる」〈谷崎・悪魔〉
3 その人の置かれている状況の中で最善を尽くすさま。できるだけ。なるべく。「―(と)養生してください」「―(と)努力してみましょう」
4 (別れの挨拶などで用いる、古い言い方)せいぜい。
・「もう御別れになるかもしれません。―御機嫌よう」〈漱石・坊っちゃん〉
[名]その人の能力・身分・立場などにふさわしいこと。
・「我は此の宗に帰すれども、人はまた彼の宗に志す。共に―の益(やく)あるべし」〈神皇正統記・嵯峨〉
[類語] 【2】[副]「1」「2」かなり・相当・なかなか・大分(だいぶ・だいぶん)・大層・頗(すこぶ)る・いやに・やけに・えらく・馬鹿(ばか)に・余程・余っ程
================================
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%A8%E3%81%A6%E3%82%82&stype=1&dtype=0
================================
とて‐も【×迚も】
[副]《「とてもかくても」の略》
1 (あとに打消しの表現を伴って用いる)どのようにしても実現しない気持ちを表す。どうしても。とうてい。「―食べられない量」「―無理な相談」
2 程度のはなはだしいさま。非常に。たいへん。とっても。「空が―きれいだ」
3 結局は否定的な結果になるという投げやりな気持ちを表す。どうせ。しょせん。
・「―お留守だろうと思ったんですけどね」〈里見・多情仏心〉
・「―、地獄は一定すみかぞかし」〈歎異抄〉
4 よりよい内容を望む気持ちを表す。どうせ…なら。
・「―我をあはれみ給ふ上は」〈仮・伊曾保・上〉
◆「迚」は国字。
[類語] (1)到底(とうてい)・どうしても・何としても・まず/(2)大層・大変・極めて・至って・非常に・甚(はなは)だ・頗(すこぶ)る・至極(しごく)・極(ごく)・いとも・実に・まことに・大いに・いたく・ひどく・恐ろしく・すごく・ものすごく・滅法(めっぽう)
================================
下記の原文を引いておく。
http://kokugosi.g.hatena.ne.jp/kuzan/20070616/p1
================================引用開始
■ 芥川龍之介の「とても」
http://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/3745_27318.html
二十三 「とても」
「とても安い」とか「とても寒い」と云ふ「とても」の東京の言葉になり出したのは数年以前のことである。勿論「とても」と云ふ言葉は東京にも全然なかつた訣ではない。が従来の用法は「とてもかなはない」とか「とても纏
まとまらない」とか云ふやうに必ず否定を伴つてゐる。
肯定に伴ふ新流行の「とても」は三河の国あたりの方言であらう。現に三河の国の人のこの「とても」を用ゐた例は元禄四年に上梓された「猿蓑」の中に残つてゐる。
秋風やとても芒はうごくはず 三河、子尹
すると「とても」は三河の国から江戸へ移住する間に二百年余りかかつた訳である。「とても手間取つた」と云ふ外はない。
二十七 続「とても」
肯定に伴ふ「とても」は東京の言葉ではない。東京人の古来使ふのは「とても及ばない」のやうに否定に伴ふ「とても」である。近来は肯定に伴ふ「とても」も盛んに行はれるやうになつた。たとへば「とても綺麗だ」「とてもうまい」の類である。この肯定に伴ふ「とても」の「猿蓑」の中に出てゐることは「澄江堂雑記」(随筆集「百艸」の中)に辯じて置いた。その後島木赤彦さんに注意されて見ると、この「とても」も「とてもかくても」の「とても」である。
秋風やとても芒はうごくはず 三河、子尹
しかしこの頃又乱読をしてゐると、「続春夏秋冬」の春の部の中にもかう言ふ「とても」を発見した。
市雛やとても数ある顔貌 化羊
元禄の子尹は肩書通り三河の国の人である。明治の化羊は何国の人であらうか。
田中章夫「東京語の時代区分」(『国語と国文学』1988.11「東京語の歴史」)
播磨桂子 1993 「とても」「全然」などにみられる副詞の用法変遷の一類型、『語文研究』75、九州大学
新野直哉 "全然"+肯定について、『国語論究 第6集 近代語の研究』明治書院
================================引用終了
下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-306.html
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1486031711&owner_id=5019671
mixi日記2010年06月25日から
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1522086553&owner_id=5019671
テーマトピは下記。
【「かなり」と「ずいぶん」】日本語しつもん箱 トピック
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=54200537
ムダとは思いつつ辞書をひく。
長くなるので辞書の記述は最後。
o( ̄ー ̄;)ゞううむ
『大辞泉』クンに謝らないといけない。いろいろなことを教えてもらった。
これは日本語学習者のレベルによって答えが違ってくる。
●第1段階 「かなり」「ずいぶん」「とても」は同じようなもの
3つとも「very」の意味でOK。辞書にも「実に」多くの類語が出てくるが、副詞の程度の差を考えるのは「とんでもなく」むずかしい。あまり厳密には考えないほうがいい。
●第2段階 3つのうちでは「とても」の程度が著しい
辞書の「かなり」の注に細かい解説がある。この注によると、程度は以下のようになる。
非常に/とても/大変>かなり/だいぶ
さらに、「ずいぶん(随分)」も「かなり/だいぶ」と相通じる、とある。これはちょっと疑問で、当方の語感だと、「ずいぶん」は2つのグループの中間くらい。このあたりは、それぞれの主観によってもかわってくるだろう。
いずれにしても、こういう程度の違いは大雑把な目安でしかないことが多い。下記参照。
【「もしかしたら」「たぶん」「きっと」の違い】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=40393863
●第3段階 3つの細かいニュアンスの違い
「ずいぶん」
「ずいぶんと」の形で使われることもある。意味はほぼ同じ。「ずいぶん」と「ずいぶんと」の違いに関しては下記参照。
【日本語アレコレ──「自然に」と「自然と」の違い】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1127505631&owner_id=5019671
辞書にあるように、「多く、予想外だとか不本意だとかいう気持ちをこめて用いる」。「多く」だから「いつも」ではないが、「予想外だとか不本意だとか」(当方は「否定的」と呼んでいる)ってことが多い。
もうひとつ、直接形容詞にかかる(主観的な感想などをダイレクトに述べる?)のには向かない傾向がある気がする。
どちらも相当微妙な話で、キッチリ説明するのはむずかしい。
「ずいぶん楽しかった」のような使い方が不自然になるのは、二重の意味ヘンだからだろう(非文とまで言えるか否かは不明)。
否定的な意味の「苦しい」とあわせて考えてみる。
「ずいぶん苦しかった」(直接形容詞にかかるので不自然)
「ずいぶん苦しい思いをした」(否定的な言葉で、「苦しい思い」にかかるのでOK)
「ずいぶん楽しい思いをした」(肯定的な「楽しい」だと微妙)
いろいろ例外もありそうだ。「ずいぶん苦しんだ」がOKで「ずいぶん楽しんだ」が不自然な理由は、こうとでも考えないと説明できない。
これが他者に対する「ずいぶん楽しい思いをしたんじゃないか?」「ずいぶん楽しんだんじゃないか?」だと、揶揄っぽくてかなり嫌味な感じになるが、言葉の使い方としては自然だろう。
これが「ずいぶん楽をさせてもらった」だとなぜ自然なのかは不明。
「とても」
本来はうしろに否定語を伴う(辞書の「1」の用法)。現代では肯定でも否定でもOK。
【「並々ならぬ」の使い方】(19)
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=42432983
================================
「とても」に関しては、かつて芥川龍之介が書いて物議をかもした記憶がありました。
【芥川龍之介の「とても」】
http://kokugosi.g.hatena.ne.jp/kuzan/20070616/p1
現在の出版・編集の現場では基本的に肯定でも否定でも○です。
================================
■Web辞書(『大辞泉』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%8B%E3%81%AA%E3%82%8A&stype=1&dtype=0
================================
か‐なり【可成り/可×也】
《許し認める意の「可なり」から》
【1】[形動][文][ナリ]相当の程度まで行っているさま。また、相当の程度以上に達しているさま。「―な収入がある」「―な数にのぼる」
【2】[副]極端ではないが、並の程度を超えているさま。思ったより以上に。相当。「今日は―人が出ている」「―酔っているようだ」
[用法] かなり・だいぶ――「台風の影響で海はかなり(だいぶ)荒れている」「病気はかなり(だいぶ)重い」などでは相通じて用いられ、物事の程度が「非常に」「とても」「大変」ほどではないが、平均以上であることを表す。◇「かなり」は「かなりな金額」「かなり出来る」のように、平均を超えたある程度を示すが、「だいぶ」は「夜になって、気温がだいぶ下がってきた」「だいぶ片付いた」のように、進行している事柄でさらに程度が進む可能性のある場合にぴったりする。◇類似の語に「相当」がある。「相当」は「かなり」「だいぶ」と同じように用いるが、より程度が上回っている感じがあり、「相当金のかかる大学だ」「相当な切手マニアだ」などでは、驚きあきれる感情がこもっている。◇また、類似の語「随分」の用法には「かなり」「だいぶ」と相通じるものがある。
================================
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%9A%E3%81%84%E3%81%B6%E3%82%93&stype=1&dtype=0
※副詞の「2」「3」「4」は現代ではあまり使わない?
================================
ずい‐ぶん【随分】
【1】[形動][文][ナリ]
1 ふさわしい程度を超えているさま。また、いちじるしいさま。並でないさま。過分。相当。「―な御見舞をいただきました」「貯金も―な額になった」
2 人に対する態度や言動が度を過ぎているさま。非常識。「そんなことを言うなんて―な奴だ」
【2】[副]
1 いちじるしいさま。多く、予想外だとか不本意だとかいう気持ちをこめて用いる。非常に。だいぶ。かなり。「年の割には―(と)老(ふ)けて見える」「― (と)大げさなことをいう人だ」
2 その人の能力・身分・立場などにふさわしいさま。また、事態がある状況にふさわしくなっていくさま。分相応に。それなりに。「しっかり勉強すれば、成績も ―(と)よくなるものだ」
・「将来立派な者にさえなれば、―照子の婿(むこ)にもしてやる」〈谷崎・悪魔〉
3 その人の置かれている状況の中で最善を尽くすさま。できるだけ。なるべく。「―(と)養生してください」「―(と)努力してみましょう」
4 (別れの挨拶などで用いる、古い言い方)せいぜい。
・「もう御別れになるかもしれません。―御機嫌よう」〈漱石・坊っちゃん〉
[名]その人の能力・身分・立場などにふさわしいこと。
・「我は此の宗に帰すれども、人はまた彼の宗に志す。共に―の益(やく)あるべし」〈神皇正統記・嵯峨〉
[類語] 【2】[副]「1」「2」かなり・相当・なかなか・大分(だいぶ・だいぶん)・大層・頗(すこぶ)る・いやに・やけに・えらく・馬鹿(ばか)に・余程・余っ程
================================
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%A8%E3%81%A6%E3%82%82&stype=1&dtype=0
================================
とて‐も【×迚も】
[副]《「とてもかくても」の略》
1 (あとに打消しの表現を伴って用いる)どのようにしても実現しない気持ちを表す。どうしても。とうてい。「―食べられない量」「―無理な相談」
2 程度のはなはだしいさま。非常に。たいへん。とっても。「空が―きれいだ」
3 結局は否定的な結果になるという投げやりな気持ちを表す。どうせ。しょせん。
・「―お留守だろうと思ったんですけどね」〈里見・多情仏心〉
・「―、地獄は一定すみかぞかし」〈歎異抄〉
4 よりよい内容を望む気持ちを表す。どうせ…なら。
・「―我をあはれみ給ふ上は」〈仮・伊曾保・上〉
◆「迚」は国字。
[類語] (1)到底(とうてい)・どうしても・何としても・まず/(2)大層・大変・極めて・至って・非常に・甚(はなは)だ・頗(すこぶ)る・至極(しごく)・極(ごく)・いとも・実に・まことに・大いに・いたく・ひどく・恐ろしく・すごく・ものすごく・滅法(めっぽう)
================================
下記の原文を引いておく。
http://kokugosi.g.hatena.ne.jp/kuzan/20070616/p1
================================引用開始
■ 芥川龍之介の「とても」
http://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/3745_27318.html
二十三 「とても」
「とても安い」とか「とても寒い」と云ふ「とても」の東京の言葉になり出したのは数年以前のことである。勿論「とても」と云ふ言葉は東京にも全然なかつた訣ではない。が従来の用法は「とてもかなはない」とか「とても纏
まとまらない」とか云ふやうに必ず否定を伴つてゐる。
肯定に伴ふ新流行の「とても」は三河の国あたりの方言であらう。現に三河の国の人のこの「とても」を用ゐた例は元禄四年に上梓された「猿蓑」の中に残つてゐる。
秋風やとても芒はうごくはず 三河、子尹
すると「とても」は三河の国から江戸へ移住する間に二百年余りかかつた訳である。「とても手間取つた」と云ふ外はない。
二十七 続「とても」
肯定に伴ふ「とても」は東京の言葉ではない。東京人の古来使ふのは「とても及ばない」のやうに否定に伴ふ「とても」である。近来は肯定に伴ふ「とても」も盛んに行はれるやうになつた。たとへば「とても綺麗だ」「とてもうまい」の類である。この肯定に伴ふ「とても」の「猿蓑」の中に出てゐることは「澄江堂雑記」(随筆集「百艸」の中)に辯じて置いた。その後島木赤彦さんに注意されて見ると、この「とても」も「とてもかくても」の「とても」である。
秋風やとても芒はうごくはず 三河、子尹
しかしこの頃又乱読をしてゐると、「続春夏秋冬」の春の部の中にもかう言ふ「とても」を発見した。
市雛やとても数ある顔貌 化羊
元禄の子尹は肩書通り三河の国の人である。明治の化羊は何国の人であらうか。
田中章夫「東京語の時代区分」(『国語と国文学』1988.11「東京語の歴史」)
播磨桂子 1993 「とても」「全然」などにみられる副詞の用法変遷の一類型、『語文研究』75、九州大学
新野直哉 "全然"+肯定について、『国語論究 第6集 近代語の研究』明治書院
================================引用終了
スポンサーサイト