助詞の話──「ヲ」
【日本語アレコレ】
下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-306.html
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1486031711&owner_id=5019671
mixi日記2010年06月26日から
テーマトピは下記。
【2つ目の信号を】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=54200579
トピ主の「0」の全文。
================================
こんにちは。
「2つ目の信号を50メートルぐらい行った所です。」の文章の「を」は何の「を」だと文法的に説明することができますか。
教えてください。
================================
これ、そもそもの文がちょっとヘンな気がする。下記の2)~4)くらいではないだろうか。おそらく、フツーに解釈すると2)か3)になる。
1)2つ目の信号を50メートルぐらい行った所です。
2)この道をずーっと真っすぐ行ってください。2つ目の信号を50メートルぐらい行った所です。
3)2つ目の信号を通り過ぎて50メートルぐらい行った所です。
4)2つ目の信号を右折して(左折して)50メートルぐらい行った所です。
結論だけ書こう。
2)3)の意味なら「通過」。4)の意味なら「通過」ととれなくもないが、「分離」のほうが素直だろう。
コメント見て行く。「1」「2」はよくわかる。
「2」のコメントにあるリンク先はなかなか興味深い。これって誰がなんのために運営しているサイトなんだろう。中国語版アルクみたいなものかな。通過の「ヲ」に関する記述は下記。
================================
2) 通過する場所を表す
鳥は空を飛びます。
信号のところを右へ曲がってください。
毎朝、近くの公園を散歩します。
================================
ちょっと待って。「鳥は空を飛びます」「毎朝、近くの公園を散歩します」って「通過」なのか?
「信号のところを右へ曲がってください。」って「通過」なのか?
この疑問はあとに回す。
内容に関しては、国語辞書の範疇を出ていない気がする。ただ、ネットでこういうことを調べても何がなんだかわからない話ばかりなので、助けにはなる。困ったときの庭三郎先生も、助詞に関してはあまりふれていない。
当方はmixi内で目についた助詞の話を蒐集しているが、「ヲ」の話は下記くらい。明らかに違うorz。
【関連トピ紹介】14──助詞の話2「本ガ読める」か「本ヲ読める」か
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=48204026
「3」の段階で文法音痴の当方にはクエスチョンマークがつく。これが「4」になると何がなんだか……。
とりあえず辞書をひく。
かなり省略しても記述が長くなるので、末尾に回す。
Web辞書を見る限り、「出発」と「分離」を区別していない。基本的に「から」にできるのが「出発」で、「で」にできるのが「分離」だろう。
東京―離れる→「から」にできるので「出発」
席―立つ→「から」にできるので「出発」
※ちょっと不自然なのはおそらく「から」と「立つ」の相性の問題。
「席―離れる」なら「から」で問題がない。
毎朝九時に家―出ます→「から」にできるので「出発」
バス―降りてから五分ほど歩く→「から」にできるので「出発」
故郷―離れる→「から」にできるので「出発」
あれ、辞書には分離の例文がない。
次の交差点―右折する→「で」にできるのが「分離」
元々の例題は「で」にはできないから「分離」とは考えにくい。「から」にはできるが、意味から考えると「出発」ではなさそう。うんと理屈っぽく考えると、その地点まで到達したうえで再出発、ととれなくもない。それは「通過」だろう、と思うが断定する気はない。
たとえば、下記のような例で考えてみる。
マラソンの記事と考えてほしい。
A 第2給水所を約200m過ぎた地点で2位と3位が入れかわった。
B 第2給水所を約200m行った地点で2位と3位が入れかわった。
C 第2給水所から約200m行った地点で2位と3位が入れかわった。
D 第2給水所から約200mの地点で2位と3位が入れかわった。
Aは「通過」で、何も不自然ではない。
Bはちょっと不自然。
そう考えると、元の1)も「行って」だと曖昧なので、「過ぎて」とか3)の「通り過ぎて」とかにするべきなのだろう。
もしくはCのように「~から~行った」の組み合わせでもOK。
ただ、厳密に言うとCはほんの少しクドい気がする。
「から」を使うならDのように「の」にしたくなる。この場合も、形は「出発」とほぼ同じでも、意味としては「通過」。
一応本題は解決したと思うんで、「2」のリンク先の例文の話に戻る。
[1]鳥は空を飛びます。
[2]信号のところを右へ曲がってください。
[3]毎朝、近くの公園を散歩します。
[2]は↑の4)と同じで「分離」だろう。
「通過」に関して、Web辞書は呼び方少し違う。『大辞泉』は3「経由」で、『大辞林』は[3]「経過」? 「経過」は時間的な意味合いが強いからちょっと違う気がする。
『大辞林』に「[1]鳥は空を飛びます」とほぼ同じ「大空―飛ぶ」がある。これって「通過」(「経過」?)なのかな。「北に向かって空を飛んでいく」なら「通過」だけど……相当微妙な場合がありそう。
「飛行機が大阪―東京間を飛ぶ」は「通過」?
「太郎は第3コースを走る」は「通過」?
このあたりは全部まとめて「動作の目的・対象」ではダメなんだろうか。
「[3]毎朝、近くの公園を散歩します」も微妙。そりゃ公園への往復も「散歩」だろうけど。「刑事が公園を探索する」とどう違うのかわからない。
このあたりになると微妙すぎる。
辞書の例文を見てみよう。
「山道―行く」「廊下―走る」「山―越す」「いつもの道―通る」「大空―飛ぶ」
やはり、「廊下―走る」「大空―飛ぶ」は微妙な気がする。
■Web辞書(『大辞泉』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%82%92&dtype=0&stype=1&dname=0na&pagenum=1&index=23244919897900
================================
を
[格助]名詞、名詞に準じる語に付く。
1 動作・作用の目標・対象を表す。「家―建てる」「寒いの―がまんする」「水―飲みたい」
・「ただ月―見てぞ、西東をば知りける」〈土佐〉
2 移動の意を表す動詞に応じて、動作の出発点・分離点を示す。…から。「東京―離れる」「席―立つ」
・「さびしさに宿―立ち出でてながむればいづくも同じ秋の夕暮」〈後拾遺・秋上〉
3 移動の意を表す動詞に応じて、動作の経由する場所を示す。…を通って。「山道―行く」「廊下―走る」「山―越す」
・「また住吉のわたり―こぎゆく」〈土佐〉
================================
■Web辞書(『大辞林』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%82%92&dtype=0&stype=1&dname=0ss&pagenum=1&index=121158300000
================================
を
1 (格助)
体言またはそれに準ずる語に付く。
[1]動作・作用の対象を表す。
・本―読む
・講演―終わる
・太刀が緒もいまだ解かずて襲(おすひ)―もいまだ解かねば〔出典: 古事記(上)〕
[3]移動性の動作の経過する場所を表す。
・いつもの道―通る
・大空―飛ぶ
・新治筑波―過ぎて幾夜か寝つる〔出典: 古事記(中)〕
[5]動作の出発点・分離点を表す。
・毎朝九時に家―出ます
・バス―降りてから五分ほど歩く
・故郷―離れる
・たらちねの母―別れてまこと我旅の仮廬(かりほ)に安く寝むかも〔出典: 万葉 4348〕
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mixi日記2010年06月26日から
テーマトピは下記。
【2つ目の信号を】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=54200579
トピ主の「0」の全文。
================================
こんにちは。
「2つ目の信号を50メートルぐらい行った所です。」の文章の「を」は何の「を」だと文法的に説明することができますか。
教えてください。
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これ、そもそもの文がちょっとヘンな気がする。下記の2)~4)くらいではないだろうか。おそらく、フツーに解釈すると2)か3)になる。
1)2つ目の信号を50メートルぐらい行った所です。
2)この道をずーっと真っすぐ行ってください。2つ目の信号を50メートルぐらい行った所です。
3)2つ目の信号を通り過ぎて50メートルぐらい行った所です。
4)2つ目の信号を右折して(左折して)50メートルぐらい行った所です。
結論だけ書こう。
2)3)の意味なら「通過」。4)の意味なら「通過」ととれなくもないが、「分離」のほうが素直だろう。
コメント見て行く。「1」「2」はよくわかる。
「2」のコメントにあるリンク先はなかなか興味深い。これって誰がなんのために運営しているサイトなんだろう。中国語版アルクみたいなものかな。通過の「ヲ」に関する記述は下記。
================================
2) 通過する場所を表す
鳥は空を飛びます。
信号のところを右へ曲がってください。
毎朝、近くの公園を散歩します。
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ちょっと待って。「鳥は空を飛びます」「毎朝、近くの公園を散歩します」って「通過」なのか?
「信号のところを右へ曲がってください。」って「通過」なのか?
この疑問はあとに回す。
内容に関しては、国語辞書の範疇を出ていない気がする。ただ、ネットでこういうことを調べても何がなんだかわからない話ばかりなので、助けにはなる。困ったときの庭三郎先生も、助詞に関してはあまりふれていない。
当方はmixi内で目についた助詞の話を蒐集しているが、「ヲ」の話は下記くらい。明らかに違うorz。
【関連トピ紹介】14──助詞の話2「本ガ読める」か「本ヲ読める」か
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=48204026
「3」の段階で文法音痴の当方にはクエスチョンマークがつく。これが「4」になると何がなんだか……。
とりあえず辞書をひく。
かなり省略しても記述が長くなるので、末尾に回す。
Web辞書を見る限り、「出発」と「分離」を区別していない。基本的に「から」にできるのが「出発」で、「で」にできるのが「分離」だろう。
東京―離れる→「から」にできるので「出発」
席―立つ→「から」にできるので「出発」
※ちょっと不自然なのはおそらく「から」と「立つ」の相性の問題。
「席―離れる」なら「から」で問題がない。
毎朝九時に家―出ます→「から」にできるので「出発」
バス―降りてから五分ほど歩く→「から」にできるので「出発」
故郷―離れる→「から」にできるので「出発」
あれ、辞書には分離の例文がない。
次の交差点―右折する→「で」にできるのが「分離」
元々の例題は「で」にはできないから「分離」とは考えにくい。「から」にはできるが、意味から考えると「出発」ではなさそう。うんと理屈っぽく考えると、その地点まで到達したうえで再出発、ととれなくもない。それは「通過」だろう、と思うが断定する気はない。
たとえば、下記のような例で考えてみる。
マラソンの記事と考えてほしい。
A 第2給水所を約200m過ぎた地点で2位と3位が入れかわった。
B 第2給水所を約200m行った地点で2位と3位が入れかわった。
C 第2給水所から約200m行った地点で2位と3位が入れかわった。
D 第2給水所から約200mの地点で2位と3位が入れかわった。
Aは「通過」で、何も不自然ではない。
Bはちょっと不自然。
そう考えると、元の1)も「行って」だと曖昧なので、「過ぎて」とか3)の「通り過ぎて」とかにするべきなのだろう。
もしくはCのように「~から~行った」の組み合わせでもOK。
ただ、厳密に言うとCはほんの少しクドい気がする。
「から」を使うならDのように「の」にしたくなる。この場合も、形は「出発」とほぼ同じでも、意味としては「通過」。
一応本題は解決したと思うんで、「2」のリンク先の例文の話に戻る。
[1]鳥は空を飛びます。
[2]信号のところを右へ曲がってください。
[3]毎朝、近くの公園を散歩します。
[2]は↑の4)と同じで「分離」だろう。
「通過」に関して、Web辞書は呼び方少し違う。『大辞泉』は3「経由」で、『大辞林』は[3]「経過」? 「経過」は時間的な意味合いが強いからちょっと違う気がする。
『大辞林』に「[1]鳥は空を飛びます」とほぼ同じ「大空―飛ぶ」がある。これって「通過」(「経過」?)なのかな。「北に向かって空を飛んでいく」なら「通過」だけど……相当微妙な場合がありそう。
「飛行機が大阪―東京間を飛ぶ」は「通過」?
「太郎は第3コースを走る」は「通過」?
このあたりは全部まとめて「動作の目的・対象」ではダメなんだろうか。
「[3]毎朝、近くの公園を散歩します」も微妙。そりゃ公園への往復も「散歩」だろうけど。「刑事が公園を探索する」とどう違うのかわからない。
このあたりになると微妙すぎる。
辞書の例文を見てみよう。
「山道―行く」「廊下―走る」「山―越す」「いつもの道―通る」「大空―飛ぶ」
やはり、「廊下―走る」「大空―飛ぶ」は微妙な気がする。
■Web辞書(『大辞泉』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%82%92&dtype=0&stype=1&dname=0na&pagenum=1&index=23244919897900
================================
を
[格助]名詞、名詞に準じる語に付く。
1 動作・作用の目標・対象を表す。「家―建てる」「寒いの―がまんする」「水―飲みたい」
・「ただ月―見てぞ、西東をば知りける」〈土佐〉
2 移動の意を表す動詞に応じて、動作の出発点・分離点を示す。…から。「東京―離れる」「席―立つ」
・「さびしさに宿―立ち出でてながむればいづくも同じ秋の夕暮」〈後拾遺・秋上〉
3 移動の意を表す動詞に応じて、動作の経由する場所を示す。…を通って。「山道―行く」「廊下―走る」「山―越す」
・「また住吉のわたり―こぎゆく」〈土佐〉
================================
■Web辞書(『大辞林』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%82%92&dtype=0&stype=1&dname=0ss&pagenum=1&index=121158300000
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を
1 (格助)
体言またはそれに準ずる語に付く。
[1]動作・作用の対象を表す。
・本―読む
・講演―終わる
・太刀が緒もいまだ解かずて襲(おすひ)―もいまだ解かねば〔出典: 古事記(上)〕
[3]移動性の動作の経過する場所を表す。
・いつもの道―通る
・大空―飛ぶ
・新治筑波―過ぎて幾夜か寝つる〔出典: 古事記(中)〕
[5]動作の出発点・分離点を表す。
・毎朝九時に家―出ます
・バス―降りてから五分ほど歩く
・故郷―離れる
・たらちねの母―別れてまこと我旅の仮廬(かりほ)に安く寝むかも〔出典: 万葉 4348〕
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