「200万本を超える大ヒットとなった」は、なぜ「超えた」ではないのか 日本語教師
下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
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mixi日記2010年08月28日から
下記の仲間。
【黒いコレクション──日本語教師関連28】
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テーマトピは下記。
【従属節のテンス】☆日本語教師☆ トピック
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=55708937
実におもしろい。
トピ主の質問のポイントだけを抜粋する。トピ主は日本語の過去形の使い方に疑問を感じている。
================================
1) 発売1年間で300万台を突破するヒット商品になった(すでに突破したのに、なぜル形?)
2) 分かりやすさが受けて、200万本を超える大ヒットとなった。(すでに超えたのに、なぜル形?)
================================
過去形の話はいろいろなところで見るが、日本語の時制は融通無碍らしい。いい加減とも言えるが、柔軟性に富むとも言える。
今回のテーマは時制のほかにもいくつかの要素を含んでいる気がする。
●瞬間の動詞の過去形(突破した/超えた)と「~になった」の相性の悪さ
●名詞にかかる動詞の性質
このあたりのことを書きはじめると話がゴチャゴチャになるので、極力ふれないことにする。
元の例文をちょっと書きかえると、事情がかわってくる気がする。
1)-2 発売1年間で300万台を突破するヒット商品である
1)-3 発売1年間で300万台を突破するヒット商品だった
1)-4 発売1年間で300万台を突破したヒット商品である
1)-5 発売1年間で300万台を突破したヒット商品だった
こう並べると、1)-2が少し不自然かも。発売1周年の時期の記事ならおかしくないが、その場合でも1)-4のほうが自然だろう。
1)-3と1)-5は過去の話だろう。1)-4は過去の話ともとれるし、現在(近い過去)の話ともとれる。
2)-2 分かりやすさで人気の、200万本を超える大ヒット作である
2)-3 分かりやすさで人気の、200万本を超える大ヒット作だった
2)-4 分かりやすさで人気の、200万本を超えた大ヒット作である
2)-5 分かりやすさで人気の、200万本を超えた大ヒット作だった
どれも不自然ではないと思う(読点の位置が美しくないことには目をつぶる)。1)-2と違って2)-2もおかしくない。
「1」のコメントには「なるほど」と膝を打った。
ただいろいろ考えるうちに、「時間の前後」ではない気がしてきた。言葉を返すようで心苦しいが、少し書く。
※以下の例文にはほんの少しだけ誇張があります。
3)-2 毎年のバレンタインデーに100個を超えるチョコレートをもらう
3)-3 毎年のバレンタインデーに100個を超えるチョコレートをもらった
3)-4 毎年のバレンタインデーに100個を超えたチョコレートをもらう
3)-5 毎年のバレンタインデーに100個を超えたチョコレートをもらった
3)-4と3)-5はかなり不自然だろう。理由は、当方の知識ではわからない。
これを次のようにすると少し事情がかわる。
4)-2 毎年のバレンタインデーにもらうチョコレートは100個を超える
4)-3 毎年のバレンタインデーにもらうチョコレートは100個を超えた
4)-4 毎年のバレンタインデーにもらったチョコレートは100個を超える
4)-5 毎年のバレンタインデーにもらったチョコレートは100個を超えた
これも、どれも不自然ではないと思う。
こういうふうに前後を引っくり返してもOKってことは、「時間の前後」は関係ないだろう。
ここからはかなり主観をまじえて書く。
4)-2は現在の話だろう。これはこれでアリ。
4)-3~4)-5はいずれも過去の話だろう。4)-4は現在(近い過去)の話ととれなくはない。どれもおかしくはないが、個人的な趣味だと4)-5はちょっとイヤ。おそらく、「もらった」「超えた」と過去形が2回も出てくるのがクドく感じるから。過去形が1回しか出てこない4)-3や4)-4のほうがスマートな気がする。
ちょっと見方をかえることもできる。過去のことを書く場合、一文の中に何度か動詞が出てくるなら、そのうちの1個だけを過去形にするだけで、全体が過去ことであることがわかる。むしろそうするほうが、すべてを過去形にするよりもスマートな印象になる。
これは一文の中だけの話ではない。過去のことを書く場合、時制をヘンに意識して過去形ばかり使うよりも、現在形をまじえたほうがスマートな印象になる(ほかに「臨場感が出る」などの効果もあるが、その話はパス)。
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2) 分かりやすさが受けて、200万本を超える大ヒットとなった。(すでに超えたのに、なぜル形?)
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過去形の話はいろいろなところで見るが、日本語の時制は融通無碍らしい。いい加減とも言えるが、柔軟性に富むとも言える。
今回のテーマは時制のほかにもいくつかの要素を含んでいる気がする。
●瞬間の動詞の過去形(突破した/超えた)と「~になった」の相性の悪さ
●名詞にかかる動詞の性質
このあたりのことを書きはじめると話がゴチャゴチャになるので、極力ふれないことにする。
元の例文をちょっと書きかえると、事情がかわってくる気がする。
1)-2 発売1年間で300万台を突破するヒット商品である
1)-3 発売1年間で300万台を突破するヒット商品だった
1)-4 発売1年間で300万台を突破したヒット商品である
1)-5 発売1年間で300万台を突破したヒット商品だった
こう並べると、1)-2が少し不自然かも。発売1周年の時期の記事ならおかしくないが、その場合でも1)-4のほうが自然だろう。
1)-3と1)-5は過去の話だろう。1)-4は過去の話ともとれるし、現在(近い過去)の話ともとれる。
2)-2 分かりやすさで人気の、200万本を超える大ヒット作である
2)-3 分かりやすさで人気の、200万本を超える大ヒット作だった
2)-4 分かりやすさで人気の、200万本を超えた大ヒット作である
2)-5 分かりやすさで人気の、200万本を超えた大ヒット作だった
どれも不自然ではないと思う(読点の位置が美しくないことには目をつぶる)。1)-2と違って2)-2もおかしくない。
「1」のコメントには「なるほど」と膝を打った。
ただいろいろ考えるうちに、「時間の前後」ではない気がしてきた。言葉を返すようで心苦しいが、少し書く。
※以下の例文にはほんの少しだけ誇張があります。
3)-2 毎年のバレンタインデーに100個を超えるチョコレートをもらう
3)-3 毎年のバレンタインデーに100個を超えるチョコレートをもらった
3)-4 毎年のバレンタインデーに100個を超えたチョコレートをもらう
3)-5 毎年のバレンタインデーに100個を超えたチョコレートをもらった
3)-4と3)-5はかなり不自然だろう。理由は、当方の知識ではわからない。
これを次のようにすると少し事情がかわる。
4)-2 毎年のバレンタインデーにもらうチョコレートは100個を超える
4)-3 毎年のバレンタインデーにもらうチョコレートは100個を超えた
4)-4 毎年のバレンタインデーにもらったチョコレートは100個を超える
4)-5 毎年のバレンタインデーにもらったチョコレートは100個を超えた
これも、どれも不自然ではないと思う。
こういうふうに前後を引っくり返してもOKってことは、「時間の前後」は関係ないだろう。
ここからはかなり主観をまじえて書く。
4)-2は現在の話だろう。これはこれでアリ。
4)-3~4)-5はいずれも過去の話だろう。4)-4は現在(近い過去)の話ととれなくはない。どれもおかしくはないが、個人的な趣味だと4)-5はちょっとイヤ。おそらく、「もらった」「超えた」と過去形が2回も出てくるのがクドく感じるから。過去形が1回しか出てこない4)-3や4)-4のほうがスマートな気がする。
ちょっと見方をかえることもできる。過去のことを書く場合、一文の中に何度か動詞が出てくるなら、そのうちの1個だけを過去形にするだけで、全体が過去ことであることがわかる。むしろそうするほうが、すべてを過去形にするよりもスマートな印象になる。
これは一文の中だけの話ではない。過去のことを書く場合、時制をヘンに意識して過去形ばかり使うよりも、現在形をまじえたほうがスマートな印象になる(ほかに「臨場感が出る」などの効果もあるが、その話はパス)。
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