バイト敬語の話──「~から」「~からお預かりします」考〈1〉~〈3〉

 下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-306.html
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1486031711&owner_id=5019671

mixi日記2010年10月08日から

 下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)【4】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1583890705&owner_id=5019671

「バイト敬語」に関してはいろいろ書いてきた。
http://1311racco.blog75.fc2.com/?q=%A5%D0%A5%A4%A5%C8%B7%C9%B8%EC
 とくに重要なのは下記だろう。
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1326.html

 近年問題視されている言葉づかいのなかでもとくに喧しい(「かまびすしい」って読んでね)のがいわゆる「バイト敬語」だろう。話が錯綜気味なことは、呼称ひとつをとってもわかる。↑を見てもわかるように、「バイト敬語」以外にもさまざまな呼称がある。
「バイト敬語」が具体的にはどのような言葉を指すのかもよくわからない。とりあえず、Wikipediaを信用しておこう。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%82%A4%E3%83%88%E6%95%AC%E8%AA%9E

 オイオイ。
 以前確認したときには、以下のものがあげられたいた。
================================
  2.1 名詞+の+ほう(方)
  2.2 名詞/金額+になります
  2.3 金額+から
  2.4 よろしかったでしょうか
  2.5 いらっしゃいませこんにちは
  2.6 ~する形になります
   2.7 「お」の多用
  2.8 お返しになります
   2.9 お召し上がりですか
  2.10 温めますか
  2.11 複合型
================================

 さっき確認したら、大幅に減って、下記になっている。 ほかのはどうしたんだー!
================================
2.1 金額+から
2.2 よろしかったでしょうか
================================

 とりあえずいったん2つにしぼって、コツコツやっていくつもりなんだろうか。
 いつ消えるかわからないので、とりあえず「金額+から」の全文を転載する。
================================
金額+から [編集]
会計時に金銭を受け取る際、「○円(を)お預かりします」ではなく「○円からお預かりします」と言う。
1万円からお預かりします。
[2]「1万円からお預かりします」の場合、客が端数の細かい金額を足し合わせようと財布の中を覗き込んでいながら、どうも足りなさそうなので店員がわで「もう1万円から計算してしまいますよ」と確認するニュアンスを持つ。このため「急かされている」「決め付けられている」と不快に感じる聞き手がいるようである。
森山(2001)によると「~から」は計算の起点を表すとする。このばあい「~から」が使用されるとかならずお釣りが出る場面であると考えられる。この説によればお釣りが出ない場面「9650円ちょうどからお預かりします」は説明できない。「クレジットカードからお預かりします」の用法も報告されている(飯田2002a)。
岩松(2001:26-28)によると、「~から」は「1万円からでよろしいですか」と「それでは1万円お預かりします」の両者がつながった物であるとされる。「1万円からお預かりします」の用法は個人商店が多かったかつての日本にはなかった表現である。個人商店では受け取ったお金は店主のものになるので「(9650円頂きますがそのまえに)1万円お預かりします」と直接的な語法となっていた。ところがアルバイトはあくまで「店主と客のお金をめぐる仲介人」であるためこのような曖昧な語法が生じたとする。
北原(2005:10-16)は「~から」は「まずは1万円から」「とりあえず1万円から」という意味である可能性を指摘する。「1万円からお預かりします」は「まずは1万円から、代金を仮にお預かりします」という店員の気持ちからの発言とする。
================================

 もっともらしい説明が並んでいるけど、当方はまったく別の考え方をしている。いえその、昨日たまたま思いついたなんてことは決して断じて絶対にない。
 ここに並んでいるのは、ほとんどが学者のような人物の「説」だろう。素人がおいそれと反論できるようなものではない(はずだよね)。という前提ですんで、そこんとこよろしく。
「1万円からお預かりします」がヘンだとすると、どう言うべきなのか。
 おそらく、文法的には「1万円をお預かりします」が正しい。もしくは「1万円、お預かりします」もアリだろう。どちらも、「1万円からお預かりします」と比べると、語感が悪い気がする。
「1万円をお預かりします」は語呂が悪い。
「1万円、お預かりします」は言葉足らずで、文字にしてみると相当不自然。
 そこで生まれてきたのが「1万円からお預かりします」ではないか。
 この「から」はかなりタチが悪く、文法的に多少おかしくても広まってしまう。
 昔、下記の例を「赤い本」に書いた。
 以下は一部の抜粋(重言)。
【7月の朝日新聞から】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=886931303&owner_id=5019671

================================
  1)来年4月から発売する
  2)来年4月から販売を始める
  3)来年4月から販売する
 
 1)は明らかにヘンで、「来年4月に発売する」とするべきでしょう。時間的な始まりを示す「から」には、始まった事柄がそのあとも「継続」するニュアンスがあるので(継続期間の長短はあまり関係ないようです)、瞬間的な事柄の「発売する」に使うのはヘンです。「〇〇から発売が開始される」という「三重言」に近い表現を目にしたこともあります。
 2)は1)よりはマシな気がしますが、論理的に考えるとやはり「来年4月に販売を始める」にしないとヘンです。しかし、「から」の用例として「1時から始まる」を掲載している辞書もあるので、許容されていると考えざるをえません。
「来年4月から販売を始める」がさほどヘンではないのは、「始める」も瞬間的な事柄ではあっても、「販売」がそのあとも継続するからでしょう。「発売する」と「販売を始める」は、意味はほとんどかわらないと思いますが、「から」と組み合わせると継続性の違いが出てくるようです。
 3)は「から」の使い方としては問題がありませんが、使われる頻度は1)~3)のなかでいちばん低い気がします。「発売」や「始める」という言葉を使うほうが、新製品であることを強調する感じが出るからでしょうか。
================================

 事情はかなり違う気もするが、現象としては似ている。
 時期が近くなると、「に」はますます使いにくくなる。
  来週に発売。
  来週から発売。
  来週、発売。
 文法的には正しいはずの「来週に発売」は相当ヘン。むしろ、「来週から発売」のほうが自然で、「来週、発売」もおかしくない。
 このことを考えると、「1万円からお預かりします」はヘン、という主張はどんどんすたれていく気がしないでもない。


【バイト敬語の話──「~から」「~からお預かりします」考】〈2〉
mixi日記2010年12月02日から

 先日、近所のコンビニ(さしさわりがあるかもしれないので、ファミリーマートって具体名は伏せる)で雑誌を買った。
 店員が「千円、お預かりします」と言った。
 ほかに客がいない時間だったので、思わず訊いてしまった。これじゃ、あやしいアンチャンだよな。
「いま、〈千円、お預かりします〉って言いましたよね。〈千円からお預かりします〉って言い方はやめたのですか?」
 アルバイトの名札をつけた20代の女性はメンクイらしく(こればっかし)、やや頬を染めて困惑した表情をした。隣の正社員の男性が助け舟(死語?)を出す。
「上からお達しが出たわけではありませんが、最近、その言い方が批判されるんで……」
「やめる、というルールではないんですね」
「ルールではありません。ただ、社内のC級ナンチャラ(たぶん昇進試験)でも、その言い方は好ましくない、ってことになってます」
 (´ρ`)ヘー
 そういうことになりつつあるのか。


【バイト敬語の話──「~から」「~からお預かりします」考】〈3〉
mixi日記2011年03月09日から

 当方がちょっと勘違いしていた部分もあるので、追記しておく。
「~からお預かりします」の類似表現に「~から頂戴します」がある。
 お釣りがあるなら「~(から)お預かりします」で、お釣りがないなら「~(から)頂戴します」と主張する人がいる。何を言いたいのかよくわからなかった。
 よく考えると、「~から頂戴します」の場合は「から」の有無によって意味がかわる。

1)1000円の買い物で1000円を受け取った場合(お釣りがない場合)
「1000円(を)頂戴します」が正しい表現(らしい)。「1000円(を)頂戴しました」も間違いではない。
「を」はあってもなくてもほぼ同様。接客なんだから省略形(たいていゾンザイな感じになる)は避けるべき。しかし、この場合は「を」が入るとどうにも語感が悪い。

2)900円の買い物で1000円を受け取った場合(お釣りがある場合)
「1000円から頂戴します」が正しい表現(らしい)。
 正確に言うなら「1000円から900円を頂戴します」ってことらしい。こちらは、「1000円から頂戴しました」だとちょっとおかしいはず。お釣りを渡すときに「1000円から頂戴しました。100円のお釣りです」ならおかしくはない。でも相当クドい。

 1)2)のような使い分けが正確にできるのなら、「1000円(を)頂戴します」「1000円から頂戴します」は間違いではない。
 でもオススメはしない。まず、「頂戴する」の語感が古くさい。若い人が口にしたらけっこう異和感がある。
 もっと問題なのは、使い分けがメンドーなこと。1)のときに「1000円から頂戴します」と言うのは罪が軽い。「1000円からお預かりします」と同様だが、古くさい分だけ異様。
 2)のときに「1000円(を)頂戴します」と言うと相当マズい。クレーマーなら「頂戴されては困る」と言い兼ねない。もっと極端に、100円の買い物で10000円を出して「頂戴します」って言われたドキッとする(笑)。

 もちろん現実問題としては、どう言ったってたいした問題じゃない。ただ、こんなに重箱の隅をつつく人が多い世の中なんだから、メンドーな使い分けはしないほうがいいよ。
 とりあえず、「~(を)お預かりします」って言っておくのが無難。
 すでに書いたように、「から」を使うほうが語呂がいいので、今後は「~からお預かりします」が主流になっていく気がする。

【続き(と言うか「まとめ」と言うか)は】↓
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2014.html

 要点だけをまとめると、下表のようになる。
お預かり

●バイト敬語/若者言葉のコレクション
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1818.html
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