「濃いくない」「好きくない」「違くない」
下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-306.html
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1486031711&owner_id=5019671
mixi日記2010年11月日から
テーマサイトは下記。
【「濃い」の正しい過去形は、「濃いかった」ではなく「濃かった」ですよね?】
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1350305518
「濃い」の過去形は「濃かった」だろう。
「濃い」の方言(主として関西だと思う)で、「濃ゆい」「濃いい」というのもあるようだ。そうなると過去形は「濃ゆかった」「濃いかった」になるのだろう。どちらも標準的な言葉ではないと思う。
もっとまぎらわしいのは「濃め」か「濃いめ」かって話。これは下記に書いた。
【濃いめ 濃い目 濃め 濃目 濃さそう 濃そう】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1610.html
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
【濃<こ>いめ? 濃<こ>め?】
http://www.nhk.or.jp/bunken/research/kotoba/qa/kotoba_qa_01050101.html
================================
Q 「味が濃いめ」という言い方をしたところ、「濃め」が正しいのではないか、という指摘を受けました。
A 放送では、「こいめ」(表記「濃いめ」)を使うようにしています。
【解説】
ただし、「『濃め』が正しいのではないか」という考えがあることにも、それなりの理由があります。
形容詞に「~め」が付く場合には、その「語幹」に付くのがふつうです(「ことばのハンドブック」P.63)。「語幹」とは、形容詞から「い」を除いた部分のことです。
(例)「大きい」
→語幹は「大き」
→「大きめ」(×大きいめ)
これは、「少ない→少なめ」「多い→多め」「かたい→かため」のように、規則的になっています。ここからすると、「濃い」の場合は「濃め」が正しいことになってしまいます。
ただし、ことばの全国調査の結果から、「濃め」という言い方をする人はたいへん少ないことが分かっています。このため、「濃い」の場合には例外的に「濃いめ」を使うことになっています。
「甘い→甘口」「辛い→辛口」のような「~口」も、語幹に付きます。これも、「濃い」の場合は例外的に「濃い口」となります。「薄茶」に対して「濃い茶」と言うのも、同じ理由です。ただし、「~すぎる」の場合は「濃いすぎる」ではなく「濃すぎる」となります。
なお、「濃口」「濃茶」と書くと、「こくち」「こちゃ」と読むことになってしまうので、「濃い口」「濃い茶」と「い」を入れて書くようにしましょう。
================================
念のためWeb辞書をひいておく。『大辞泉』には「濃いめ」の項目があるが、「濃め」に関する記述はない。
■Web辞書(『大辞林』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%93%E3%81%84%E3%82%81&dtype=0&dname=0ss&stype=0
================================
こいめ30 【濃いめ】
〔補説〕 「め」は接尾語
普通より少し濃い程度。濃め。
―の味付け
口紅を―につける
================================
法則性で考えれば「濃め」になるはずだが、Web辞書を見る限り、「濃いめ」が本線扱い。
ちなみにWeb辞書では接尾語の「目」に関しては「形容詞の語幹」につくとしている。だったら「濃め」のはず。
たぶんWeb辞書は、「濃い」の語幹に「め」がついた「濃め」も認めている。認めない理由がない。ただし、そんなものはいちいち立項しない。それとは別に例外的に「濃いめ」という言葉も認めている。
……と思ったのだが、ちょっと違うみたい。「薄め」「厚め」「大きめ」など、「形容詞の語幹+め」を片っ端から立項してる。信じらんない。だったら「濃め」も立項しなよ。やっぱりWeb辞書ってホニャララなんだろうか。
Web辞書の編集方針はよくわからないが、とにかく「濃いめ」も「濃め」もアリのようだ。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
さらに妙な方向に話をもっていく。
「濃いくない」に似た印象の言葉に、「好きくない」「違くない」がある。
似ているようで微妙に違う。
濃いくない 好きくない 違くない
原形 濃い 好き 違う
品詞 形容詞 形容動詞 動詞
一般的な否定形 濃くない 好きではない 違わない
「濃いくない」は余計な「い」が入っている。
「好きくない」は「では(じゃ)」が「く」になっている。
「違くない」は「わ」が「く」になっている。
「好きくない」は方言でもあるだろうが、幼児語って気もする。
「違くない」にも同様のニュアンスがあるが、意味は「違わない」より「違うんじゃない」に近い気がする。さらに言えば、語尾を上げて疑問形で使うことが多い気がする。
これに関しては、下記でコメントしたことがある。
【「全然」「いちいち」「違わない?」の使い方】
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1449225064
リンク先の全文を転載しておく。いつリンクが切れるかわかったもんじゃない。
http://www.nhk.or.jp/bunken/research/kotoba/kotoba_qa_0100101.html
やっぱり切れた ↓
https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/term/045.html
================================
ことばQ&A
違くない?
00.10.01
「違<ちが>くない」という言い方は、なぜいけないのでしょうか。私は自然に使ってしまいますが。
「違くない」「違かった」「違くて」という言い方は、最近とても増えています。これがふさわしくない理由は、「違う」が形容詞ではなくて動詞だからです。
【解説】
中学校の国語の授業を思い出してください。「違う」などの動詞は、
違ワない・違ウ・違エば・違ッた・違ッて
というふうに活用します。「違くない」などの形は出てきません。
いっぽう形容詞は、
白クない・白イ・白ケレば・白カッた・白クて
と活用します。
ただし、「違う」は活用の上では動詞でも、何かが動いたり止まったりするものではなく、「同じではない」という状況を説明するときに用いられるものなので、意味の上では形容詞に非常に近いのです(英語のdifferentは形容詞です)。そこで、動詞である「違う」を形容詞ふうに「違い」とし、無理やり活用させたのが「違クない、違カッた、違クて」なのです。
Mr.Childrenの曲の歌詞にも「…例えばこれが恋とは違くても」という表現がありました。また、首都圏の若者の間では「違うよ」の意味で「ちげーよ。」と言う人が増えています。これは、「近いよ」を「ちけーよ。」というのと同じく「違いよ」というものを「ちげーよ。」と言っているのだと考えることができます。
放送では、ことばの変化をあえて先取りする必要はありません。伝統的な形を強くお勧めします。
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日本語アレコレの索引(日々増殖中)
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mixi日記2010年11月日から
テーマサイトは下記。
【「濃い」の正しい過去形は、「濃いかった」ではなく「濃かった」ですよね?】
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1350305518
「濃い」の過去形は「濃かった」だろう。
「濃い」の方言(主として関西だと思う)で、「濃ゆい」「濃いい」というのもあるようだ。そうなると過去形は「濃ゆかった」「濃いかった」になるのだろう。どちらも標準的な言葉ではないと思う。
もっとまぎらわしいのは「濃め」か「濃いめ」かって話。これは下記に書いた。
【濃いめ 濃い目 濃め 濃目 濃さそう 濃そう】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1610.html
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【濃<こ>いめ? 濃<こ>め?】
http://www.nhk.or.jp/bunken/research/kotoba/qa/kotoba_qa_01050101.html
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Q 「味が濃いめ」という言い方をしたところ、「濃め」が正しいのではないか、という指摘を受けました。
A 放送では、「こいめ」(表記「濃いめ」)を使うようにしています。
【解説】
ただし、「『濃め』が正しいのではないか」という考えがあることにも、それなりの理由があります。
形容詞に「~め」が付く場合には、その「語幹」に付くのがふつうです(「ことばのハンドブック」P.63)。「語幹」とは、形容詞から「い」を除いた部分のことです。
(例)「大きい」
→語幹は「大き」
→「大きめ」(×大きいめ)
これは、「少ない→少なめ」「多い→多め」「かたい→かため」のように、規則的になっています。ここからすると、「濃い」の場合は「濃め」が正しいことになってしまいます。
ただし、ことばの全国調査の結果から、「濃め」という言い方をする人はたいへん少ないことが分かっています。このため、「濃い」の場合には例外的に「濃いめ」を使うことになっています。
「甘い→甘口」「辛い→辛口」のような「~口」も、語幹に付きます。これも、「濃い」の場合は例外的に「濃い口」となります。「薄茶」に対して「濃い茶」と言うのも、同じ理由です。ただし、「~すぎる」の場合は「濃いすぎる」ではなく「濃すぎる」となります。
なお、「濃口」「濃茶」と書くと、「こくち」「こちゃ」と読むことになってしまうので、「濃い口」「濃い茶」と「い」を入れて書くようにしましょう。
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念のためWeb辞書をひいておく。『大辞泉』には「濃いめ」の項目があるが、「濃め」に関する記述はない。
■Web辞書(『大辞林』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%93%E3%81%84%E3%82%81&dtype=0&dname=0ss&stype=0
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こいめ30 【濃いめ】
〔補説〕 「め」は接尾語
普通より少し濃い程度。濃め。
―の味付け
口紅を―につける
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法則性で考えれば「濃め」になるはずだが、Web辞書を見る限り、「濃いめ」が本線扱い。
ちなみにWeb辞書では接尾語の「目」に関しては「形容詞の語幹」につくとしている。だったら「濃め」のはず。
たぶんWeb辞書は、「濃い」の語幹に「め」がついた「濃め」も認めている。認めない理由がない。ただし、そんなものはいちいち立項しない。それとは別に例外的に「濃いめ」という言葉も認めている。
……と思ったのだが、ちょっと違うみたい。「薄め」「厚め」「大きめ」など、「形容詞の語幹+め」を片っ端から立項してる。信じらんない。だったら「濃め」も立項しなよ。やっぱりWeb辞書ってホニャララなんだろうか。
Web辞書の編集方針はよくわからないが、とにかく「濃いめ」も「濃め」もアリのようだ。
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さらに妙な方向に話をもっていく。
「濃いくない」に似た印象の言葉に、「好きくない」「違くない」がある。
似ているようで微妙に違う。
濃いくない 好きくない 違くない
原形 濃い 好き 違う
品詞 形容詞 形容動詞 動詞
一般的な否定形 濃くない 好きではない 違わない
「濃いくない」は余計な「い」が入っている。
「好きくない」は「では(じゃ)」が「く」になっている。
「違くない」は「わ」が「く」になっている。
「好きくない」は方言でもあるだろうが、幼児語って気もする。
「違くない」にも同様のニュアンスがあるが、意味は「違わない」より「違うんじゃない」に近い気がする。さらに言えば、語尾を上げて疑問形で使うことが多い気がする。
これに関しては、下記でコメントしたことがある。
【「全然」「いちいち」「違わない?」の使い方】
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1449225064
リンク先の全文を転載しておく。いつリンクが切れるかわかったもんじゃない。
http://www.nhk.or.jp/bunken/research/kotoba/kotoba_qa_0100101.html
やっぱり切れた ↓
https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/term/045.html
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ことばQ&A
違くない?
00.10.01
「違<ちが>くない」という言い方は、なぜいけないのでしょうか。私は自然に使ってしまいますが。
「違くない」「違かった」「違くて」という言い方は、最近とても増えています。これがふさわしくない理由は、「違う」が形容詞ではなくて動詞だからです。
【解説】
中学校の国語の授業を思い出してください。「違う」などの動詞は、
違ワない・違ウ・違エば・違ッた・違ッて
というふうに活用します。「違くない」などの形は出てきません。
いっぽう形容詞は、
白クない・白イ・白ケレば・白カッた・白クて
と活用します。
ただし、「違う」は活用の上では動詞でも、何かが動いたり止まったりするものではなく、「同じではない」という状況を説明するときに用いられるものなので、意味の上では形容詞に非常に近いのです(英語のdifferentは形容詞です)。そこで、動詞である「違う」を形容詞ふうに「違い」とし、無理やり活用させたのが「違クない、違カッた、違クて」なのです。
Mr.Childrenの曲の歌詞にも「…例えばこれが恋とは違くても」という表現がありました。また、首都圏の若者の間では「違うよ」の意味で「ちげーよ。」と言う人が増えています。これは、「近いよ」を「ちけーよ。」というのと同じく「違いよ」というものを「ちげーよ。」と言っているのだと考えることができます。
放送では、ことばの変化をあえて先取りする必要はありません。伝統的な形を強くお勧めします。
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