「~してもらっていいですか」【1】&【2】

 下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-306.html
日本語アレコレの索引(日々増殖中)【4】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1583890705&owner_id=5019671

mixi日記2011年01月11日から
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1655401921&owner_id=5019671

【読書感想文/『続弾! 問題な日本語』3】の続きでもある。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1647996281&owner_id=5019671

●誤用の3つの側面
 最近取り沙汰される言葉のひとつに、「~してもらっていいですか」がある。
 これがなぜ不自然なのかを説明するのは難題。
 大前提として、ある表現が誤用であると考えるには、3つの側面がある気がする(相当荒っぽいことを書こうとしている(笑)。

1)文法的に誤用
 助詞の使い方が不適切、接続の形が不適切、など。文脈しだいでOKになることも多いが、どう見ても明らかに誤用ってことはある。「太郎は本が読んだ」とかは明らかにヘン。無理に自然な文脈をつくれるかな。

2)慣例的に誤用
 通常の慣用句を微妙に離れた場合など。論理的には正しくても現実にそうは言わないんだから×なんて例もある。「的を得る」でも意味は通じるけど、やはり一般的には「的を射る」。「正鵠」に場合は「得る」が本来の形……なんて話になると泥沼になりかねない(笑)。
【的を射る/的を得る/正鵠をめぐって】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-913.html

3)文脈的に誤用
 言い回し自体は間違っていないが、使い方がおかしい例。これがイチバン微妙で、説明がしにくいことが多い、たとえば、「ご苦労様でした」は文法的には何も問題はない。しかし、目上の人に使うのは不適切とされる。使い方によってはゴロツキのインネンになる。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1448301518&owner_id=5019671

「よろしかったでしょうか?」「~させていただく」あたりも、TPOさえ守ればフツーの言い回しになる。
バイト敬語の話──「よろしかったでしょうか?」考1&2
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1572.html
突然ですが問題です【日本語編10】──「~させていただく」【解答編】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1286.html

 今回のテーマの「~してもらっていいですか」もイチバン厄介な3)の仲間だろう。

●『続弾! 問題な日本語』の記述
『続弾! 問題な日本語』のp.84~のテーマは「ご住所書いてもらっていいですか」。6ページにわたって解説しているが、まわりくどいだけで見当はずれじゃないかな。ちなみに、読書感想文の【2】http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1647366686&owner_id=5019671でふれた「だろうと思います」が結びに出てくる。書き手は砂川有里子・筑波大学教授。
 この『問題な日本語』のシリーズは、いわゆる学者が書いた文章としてはかなりわかりやすい。だからこそ価値がある。ただ、この項目に限るといただけない(ほかにもホニャララはヘニャララだけど)。
 末尾にある「ポイント」が全体の要約と思われるので、転載する。

【引用部】
「してもらっていいですか?」は、依頼するのではなく、許可を求める表現で、イエス・ノーを言う権限のある人にそのどちらかを尋ねる表現です。
相手に許可を求める場面でなく、お願いをする依頼の場面では、「~してください」「~してくださいますか」「~していただけませんか」「~お願いします」などと言うのが適当です。(p.89)
 これでわかる人はわかるのだろうか。当方は何もわからない。「依頼する」と「お願いをする依頼の場面」はどう違うのだろう、などとつまらないインネンを書く気はない。ただ、仮に「してもらっていいですか?」が「許可」なら、「~していただけませんか」あたりも「許可」だと思う。「~していただいてよろしいでしょうか」あたりは明らかに「許可」だろう。
 根本的におかしいと思う。
 たとえば「~してください」は「依頼」(丁寧な「命令」とも言える)。これをもっと丁寧にしていくと、「~いただけませんか」「~いただいて(も)よろしいでしょうか」になる。つまり、「依頼」を丁寧にしていくと「許可」のような形になるだけ。それは「(形式だけでも)相手の都合を確認する」から。http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1459.html
 そのことは、「してもらっていいですか?」の不自然さには関係ないだろう。
 少し前から考えていてどうにもハッキリしないので、下記のトピを掘り起こしてみた。
 またグダグダになるのだろうか?
【「てくれる」、「てもらっていい?」「てもらえる?」の違い】日本語
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=20378735&comm_id=398881

 参考サイトは下記あたりかな。
1)【「~してもらっていいですか」は敬語ですか?】
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1150979556
2)【「○○してもらってもいいですか」というのは、表現として間違いはないのでしょうか。】
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1212746822
※〈「もらう」の語は目下の人に対する言葉です〉は、根拠はあるのだろうか。感覚的には賛成だけど……。
 下記も参考トピかな?
3)【どうしても気になる「~してもらっていいですか?」】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=46447092&comm_id=11312


「~してもらっていいですか」【2】

mixi日記2011年01月15日から
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1657595745&owner_id=5019671

 ↑の【1】を書いてから、ずっと気になっていた。気になって気になって、南国のフルーツみたいにたわわに気に(「に」の3連発は珍しい)なっていた。
 バックアップ用のブログに、知り合いがコメントをくれた。

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して、そこ、もっと

ニュアンスとかコンテキストとかは抜きにして。
「してもらっていいですか?」が「許可を求める表現」である、というのは、まあ、間違いではないと思います。「いいですか」に対する回答としては「いいっすよー」とか「よろしい」とか、「あきまへん」辺りになると思いまし。
それに対して「していただけませんか?」は「可能かどうかを尋ねる表現」とでも言うべきか、「許可を求める表現」とは違うと思います。

ただ、「していただいてよろしいでしょうか」に違和感がない事からも、「許可云々」は関係ないというのは、その通りだと思います。
「してもらっていいですか?」に不快感を覚えるのは、例によって中途半端なへりくだりや、不完全に丁寧な言い回しこそが原因ではないかと。
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 けっ。何がコンテキストだ。こちとら品評会のことも狐の教科書のことも考えてねえよ。日本語の話なんだから「文脈」って言えよ。文脈を無視して言葉の問題を考えることができるのか? ニュアンスも抜くのかよ。そんなことして大丈夫なのか? まあ、そのうちエイキュアンスが生えてくるから大丈夫か。
 ……要するにそういうことだと思う。なにが「そういうこと」なのかはちょっとメンドーな話になるので、とりあえず以下のコメントを返した。
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Re: して、そこ、もっと
「上手な例」の上の句?は「好きそこもっと」です!
 ってソコじゃないか。

> ただ、「していただいてよろしいでしょうか」に違和感がない事からも、「許可云々」は関係ないというのは、その通りだと思います。
> 「してもらっていいですか?」に不快感を覚えるのは、例によって中途半端なへりくだりや、不完全に丁寧な言い回しこそが原因ではないかと。

 その方向だと思いますが、まだいろいろゴチャゴチャと悩んでいて。
 少しお時間を……。<(_ _)>
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「依頼」だの「許可」だのと考えるとドツボにはまるので、敬度?の進化という考え方をする。ふっふっふっ。こういう無手勝流(死語?)ができるのはシロウトの強みだぜ。
 敬度最下級の原形が1)。敬度最上級の最終形が8)になる。この間にスーパサイヤ人化だのフージョンだのといった寄り道をしないように。こういう書き方をしていると話が進まないので、囲碁は将棋より少しだけまじめに書く。

1)~してもらえる?
2)~してもらえるかな
3)~してもらって(も)いい?
4)~してもらって(も)いいかな

5)~していただけます?
6)~していただけるでしょうか
7)~していただいて(も)よろしい?
8)~していただいて(も)よろしいでしょうか

 これでも図式をかなり簡略化している。「?」の有無、「でしょうか」と「ですか」の違いなど、細かな違いは無視する。ちなみに、「?」の有無は、ないとどうしてもヘンな気がするものにだけつけた。「でしょうか」のほうが言葉を曖昧にしているぶん「ですか」よりも丁寧な感じになるはず。
 1)~4)は常体の範囲での敬度の進化。当然、あとのほうほど敬度が高い。
 これを敬体(丁寧語)にすると、当然敬度は高くなる。常体の最終形の4)と、敬体の最下級5)で、どちらが敬度が高いのかは不明。一応どんなに敬度を高めても常体ではゾンザイな感じになる、ということにしておく。
 言っていることはほとんど同じなのだが、1)から8)になると敬度は相当上がる(当たり前だ)。
 問題の「~してもらっていいですか」は、常体の最上級の末尾だけを敬体の「ですか」にしている。
 1)~4)を見ていくと、敬度があがるほかに、もうひとつの傾向が感じられる。もって回った感じで、押し付けがましさが増している。慇懃無礼とも言えるかもしれない。
 そこにとってつけたように敬体の「ですか」をつけるから、非常にバランスの悪い表現になる。これはよく考えるとギャグ寸前で、もう一歩で「ぶち殺してさしあげましょうか」になりかねない。そりゃそうだろう。ゾンザイな言い方で敬度を上げたうえに無理矢理敬体で結んでいるんだから。まともな言葉づかいになるわけがない。

 ここから先はさらに主観的な書き方になる。
 1)~4)の表現を使う状況を考えると、真っ先に浮かぶのが上司が部下にものを頼むとき。
「○○君、お茶いれてもらえる?」
「○○君、お茶いれてもらえるかな」
 これは依頼の皮をかぶった命令。これがもう少し無理を頼むときは、もう少し丁寧になる。
「○○君、きょう残業してもらって(も)いい?」
「○○君、きょう残業してもらって(も)いいかな」
 一応意向を訊いているようで、実際にはNOとは言えない観が強い。
 これに「ですか」をつけるからチグハグな印象になるのは当然だよ。元々の『続弾! 問題な日本語』の質問にあるように、役所でこんな言い方をされたら、相当カチンと来る。無理にでも「NO」とこたえたくなる。

【追記】
 1)~してもらえる? →8)~していただいて(も)よろしいでしょうか
 の敬度変化に関して修正した。
 詳しくは下記参照。
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1459.html

●バイト敬語/若者言葉のコレクション
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1818.html
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して、そこ、もっと

ニュアンスとかコンテキストとかは抜きにして。
「してもらっていいですか?」が「許可を求める表現」である、というのは、まあ、間違いではないと思います。「いいですか」に対する回答としては「いいっすよー」とか「よろしい」とか、「あきまへん」辺りになると思いまし。
それに対して「していただけませんか?」は「可能かどうかを尋ねる表現」とでも言うべきか、「許可を求める表現」とは違うと思います。

ただ、「していただいてよろしいでしょうか」に違和感がない事からも、「許可云々」は関係ないというのは、その通りだと思います。
「してもらっていいですか?」に不快感を覚えるのは、例によって中途半端なへりくだりや、不完全に丁寧な言い回しこそが原因ではないかと。

Re: して、そこ、もっと

「上手な例」の上の句?は「好きそこもっと」です!
 ってソコじゃないか。

> ただ、「していただいてよろしいでしょうか」に違和感がない事からも、「許可云々」は関係ないというのは、その通りだと思います。
> 「してもらっていいですか?」に不快感を覚えるのは、例によって中途半端なへりくだりや、不完全に丁寧な言い回しこそが原因ではないかと。

 その方向だと思いますが、まだいろいろゴチャゴチャと悩んでいて。
 少しお時間を……。<(_ _)>

No title

こんにちは。
日頃から「~してもらっていいですか」に悩まされている中高年です。
(今頃になって、これが若者言葉と気づくあたりは、やはり中高年ですね)

現在、自分の年齢と雰囲気にまったくあわない某外資系カフェで
アルバイトをしていますが、この言葉、毎日、必ず一度は聞きます。
それも、使い方としては、同僚に対する、純然たる「命令」です。

「それ、ここに置かないでもらっていいですか」
「そんなことは言わないようにしてもらっていいですか?」

わたしもtobiさんと同様、これは敬語の使い方を知らない人の、
中途半端なへりくだりだと思います。
命令文としては非常に不快です。
しかし、それだけに、効果は絶大なのか、反省なく繰り返されます。

春から日本語教育の大学院に行く予定ですが、これを修論のテーマにしようか、
と思うほどです。
しかし、3年も前にtobiさんが考察していらっしゃることに
びっくりしました。その洞察の深さは大学教授なみ!
すっかりファンになってしまいました。
これからも日本語について、たくさんのお話を聞かせてください。




Re: Hyuuga さん

> こんにちは。
> 日頃から「~してもらっていいですか」に悩まされている中高年です。
 はじめまして……ですかね。

 当方の親戚の回し者でしょうか?
 ヨイショが過ぎます(笑)。

 いえその。ブログにもらうコメントはインネンみたいなものが多くて、まともなコミュニケーションができることはめったにありません(泣)。当方だけかもしれませんが(大泣)。
 末尾にリンクを張ったとおり、近年「バイト敬語/若者言葉」と呼ばれるものが急増し、それに対するムチャクチャな批判が流布しています。どんどん増殖し、収拾がつきません。
「~してもらっていいですか」は「若者言葉」の一種でしょう。年配者なら、非常に失礼なことはわかります。しかし、「なぜ?」となると、ちゃんとした解説を見聞したことがありません。
 典型的なのは『続弾! 問題な日本語』で、あれでは何がなんだか当方にはわかりません。ネット検索するとスゴい量がヒットしますが……。

 グチャグチャ書いているうちに、不快感の原因が少しだけわかった気がします。
 そうか。もうそんなにたつのか。
 機会があれば、あらためて書いてみたいテーマです。
>
> 現在、自分の年齢と雰囲気にまったくあわない某外資系カフェで
> アルバイトをしていますが、この言葉、毎日、必ず一度は聞きます。
> それも、使い方としては、同僚に対する、純然たる「命令」です。
>
> 「それ、ここに置かないでもらっていいですか」
> 「そんなことは言わないようにしてもらっていいですか?」
>
> わたしもtobiさんと同様、これは敬語の使い方を知らない人の、
> 中途半端なへりくだりだと思います。
> 命令文としては非常に不快です。
> しかし、それだけに、効果は絶大なのか、反省なく繰り返されます。
>
> 春から日本語教育の大学院に行く予定ですが、これを修論のテーマにしようか、
> と思うほどです。
> しかし、3年も前にtobiさんが考察していらっしゃることに
> びっくりしました。その洞察の深さは大学教授なみ!
> すっかりファンになってしまいました。
> これからも日本語について、たくさんのお話を聞かせてください。

~してもらっていいですか?。。。は丁寧なようで相手を対等以下に見ている現代独特の心理状態が窺えますね。プライドを保ちたい一方でズバッと言い切って相手に嫌われたくない、言い返されたくない、変な噂を立てられたくないetc。。。などの思惑から定着した無難な言い回しなのではないでしょうか。 

Re: あほん鱈 さん

 はじめまして……ですよね。
 はじめてのかたなら、それなりの書き方をしていただけませんかね。
 このテーマに関しては、サブブログのほうでホニャララされたりしたもので、極力かかわりたくありません。
 当方は「ドツボに嵌まっている」そうです。ヤレヤレ。
http://ameblo.jp/kuroracco/entry-12030250248.html

 まだ「定着」はしていないと思います。
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tobi

Author:tobi
フリーランスの編集者兼ライターです。

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