表記の話8──「他人事」「人事」「人ごと」「ひとごと」「たにんごと」
下記の仲間。
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日本語アレコレの索引(日々増殖中)【5】
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mixi日記2011年05月13日から
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1720867247&owner_id=5019671
テーマトピは下記。
【質問トピック】これって正しい日本語?(22)
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=51369758&comm_id=1736067
質問の全文は下記。
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22
2011年05月09日 17:32
質問です。
「他人事」という言葉がありますよね。
これは「人事」「他人事」「人ごと」など色々な表記を見かけます。
私は意味や、人事はじんじとかぶることから
他人事が正しいのだと思っていたのですが…
先日Mixiでマイミクから、
それは現代においての正解であって、そもそもの正解は人事だ。
という指摘を受けました。
実際、どちらが正しいのでしょう。
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2つの問題を含んでいる気がする。トピの質問自体は1)のようだが、2)についても考える。
1)「ひとごと」は漢字でどう書くのが正しいか
2)「他人事」の読み方は「ひとごと」と「たにんごと」のどちらが正しいか。
1)2)とも『続弾! 問題な日本語』に一応答えが出ている。
■1)「ひとごと」は漢字でどう書くのが正しいか
================================
「ひとごと」の書き方は、「他人事・人事・ひと事・人ごと・ひとごと」のどれ?
「人事」は「じんじ」と紛れやすい。「他人事」における「他人」は熟字訓で、やや難読である。その部分をかなにした「ひと事」は「事」に多少の違和感が残る。「人ごと」「ひとごと」が穏当な書き方だろう。ちなみに、ある新聞では「人ごと・ひとごと」と書くとりきめになっている。(鳥)
*熟字訓=二字以上からなる漢字の列の意味をくみ取って、まとめて訓にして読んだもの。
(『続弾! 問題な日本語』p.156)
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これは表記の問題で、どう書いても間違いではないパターン。
表記に関するモロモロは下記参照。
●表記に関する話
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=50340503
『続弾! 問題な日本語』の記述はツッコミどころが多いが、基本的にはこういうことだろう。
「人事」は「じんじ」と読む印象が強い。熟字訓の「他人事」を読みにくいと考えるなら、「人ごと」「ひとごと」あたりが無難。
Web辞書は「他人事」も「人事」も認めている。手元の『広辞林』(1988年刊)には意外なことに「人事」しかない。やはり国語辞典は表記の問題にはあまり役に立たない。
手元の用字用語集を見る。
『朝日新聞の用語の手びき』 のってないorz。
『記者ハンドブック』(共同通信社) 他人事、人事→人ごと・ひとごと(ではない)
『例解辞典』(ぎょうせい) 人ごと ※「人事」も許容(らしい)
『記者ハンドブック』の書き方は意味がよくわからない。一般には「人ごと」で「ではない」がつくときだけ「ひとごとではない」になるってこと?
■ 2)「他人事」の読み方は「ひとごと」と「たにんごと」のどちらが正しいか。
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「他人事(たにんごとvs.ひとごと)」、どっち?
「他人事」を「たにんごと」と読む人がふえているが、本来は「ひとごと」が正しい。国語辞書では、多く、「たにんごと」を俗用としている。「ひとごと」を「他人事」と書いたのは、明治末あたりからで、それまではもっぱら「人事」だった(尾崎紅葉・泉鏡花など)。大正期に入ると、芥川・菊池・有島・里見トン・長与善郎などが好んで「他人事」と書くようになる。文学的な表記として登場した「他人(ひと)事」は、いささか難読、ふりがななしでは「たにんごと」と読まれる運命にあったのかもしれない。(鳥)(『続弾! 問題な日本語』p.154)
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あのー。この記述の大半はどっちかと言うと1)の話になってませんか。内容に関しては反論する気はない。素直に鵜呑みにします。
Web辞書(全文は↓)を見ると、『大辞泉』は「たにんごと【他人事】」の項を立てて〈◆本来は「ひとごと」と読んだ語。〉としている。
『大辞林』は問答無用で「ひとごと」にふっている。ただし、「ひとごと」の説明の中に「たにんごと」とある。どう考えているのかよくわからない。
結論を書くと、「ひとごと」と読むのが一般的だろうが、もはや「たにんごと」を誤用とするのも無理だろう。自分では「ひとごと」としか読まないけど。「たにんごと」って言葉自体が、比較的新しい言葉だと思う。
元々の質問にあった「それ(他人事)は現代においての正解であって、そもそもの正解は人事だ」という指摘は、『続弾! 問題な日本語』を読む限りそのとおりだろう。
ただ、個人的な読書体験はかなり違う。当方が昔読んだ本はほとんどが「他人事」と書いて「ひとごと」だった。「たにんごと」なんて言葉は記憶にないし、「人事」と書いて「ひとごと」と読んだ記憶もない。そりゃそうだろうな。当方が読む本なんて明治末以降に書かれたものがほとんどだから。
まあ、言葉の問題の歴史的な変遷なんてとこには足を踏み入れないようにしよう。
NHKは、1)は「ひと事」または「ひとごと」で、2)は「たにんごと」は×にしている。「ひと事」はちょっとイヤだな。
http://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/gimon/152.html
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「ひとごと(人事)」と「たにんごと(他人事)」
2005.12.12
Q「他人」に「事」と書く「他人事」について、「ひとごと」と「たにんごと」という二とおりの読み方・言い方を耳にします。放送での読み方などは、どうなっているのでしょうか。
Aまず、「他人事」「たにんごと」という表記(書き方)と言い方・読み方は、どちらも放送では原則として用いないことにしています。「自分に関係ないこと」などを意味する場合の伝統的な言い方は「ひとごと(人事)」[ヒトゴト]とされ、放送でもこの語法を採っています。表記は、「ひと事」または「ひとごと」です。 ×「他人事」「たにんごと」
解説
ご指摘の「他人事」という用語は、近年「ひとごと」に加えて「たにんごと」という読みで使われることも多く、むしろ最近では一般に後者のほうを耳にすることが多いようです。しかし、「自分には関係ないこと」「自分には利害関係のない他人(たにん)のこと」などを意味する場合の伝統的な語・ことばは「人事(ひとごと)」[ヒトゴト]とされ、多くの国語辞書が【ひとごと】「人事」を採っています。また、これについて国内の主な新聞社や通信社も、「ひとごと」または「人ごと」の表記(表現)を認めているだけで、「たにんごと」「他人事」については認めていません。このような状況の中で、NHKでも平成12年(2000年)2月に放送用語委員会でこの件について改めて審議しました。その結果、「タニンゴトということばは誤読から発生したもので、原則として使わない」ことにし、従来通り「表記は○ひと事 ×他人事 読みは○ヒトゴト ×タニンゴト」と決めています。
この用語委員会の決定の理由や戦前の国語辞書を含めた辞書調査などによりますと、「他人事」「たにんごと」ということばが生まれた背景については、次のようなことが考えられます。
《もともと「他人(たにん)のこと」を意味する語・ことばには「ひとごと」という言い方しかなく、この語に戦前の辞書は「人事」という漢字を主にあてていた。ところが「人事」は「じんじ」と区別できないので「他人事」という書き方が支持されるようになり、これを誤って読んだものが「たにんごと」である。》
上記の背景を指摘したうえで、用語委員会は決定の理由を「このような背景から考えると、いたずらに類義語を増やすものとしても、このことばの使用は勧められない」と結んでいます。 なお、「他人」を「ひと」と読むのは表外音訓(常用漢字表にない読み)です。
(『NHK日本語発音アクセント辞典』P766、『NHK新用字用語辞典 第3版』P471、『NHKことばのハンドブック第2版』P172参照)
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■Web辞書(『大辞泉』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=%E3%81%9F%E3%81%AB%E3%82%93%E3%81%94%E3%81%A8&stype=0&dtype=0
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たにん‐ごと【他人事】
自分に無関係な人についてのこと。「まるで―のような顔をしている」
◆本来は「ひとごと」と読んだ語。
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■Web辞書(『大辞林』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=%E3%81%9F%E3%81%AB%E3%82%93%E3%81%94%E3%81%A8&stype=0&dtype=0&dname=0ss
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ひとごと0 【人事・〈他人〉事】
自分に関係ない事。他人に関する事。たにんごと。
―とすましてはいられない
まるで―のような顔をしている
→(句)人事(ひとごと)言えば影がさす
→(句)人事(ひとごと)言わば筵(むしろ)敷け
→(句)人事(ひとごと)でな・い
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「他人事 たにんごと ひとごと」で検索すると、有象無象がヒットする。
下記は信頼できそう。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1315209628
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mixi日記2011年05月13日から
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1720867247&owner_id=5019671
テーマトピは下記。
【質問トピック】これって正しい日本語?(22)
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質問の全文は下記。
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22
2011年05月09日 17:32
質問です。
「他人事」という言葉がありますよね。
これは「人事」「他人事」「人ごと」など色々な表記を見かけます。
私は意味や、人事はじんじとかぶることから
他人事が正しいのだと思っていたのですが…
先日Mixiでマイミクから、
それは現代においての正解であって、そもそもの正解は人事だ。
という指摘を受けました。
実際、どちらが正しいのでしょう。
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2つの問題を含んでいる気がする。トピの質問自体は1)のようだが、2)についても考える。
1)「ひとごと」は漢字でどう書くのが正しいか
2)「他人事」の読み方は「ひとごと」と「たにんごと」のどちらが正しいか。
1)2)とも『続弾! 問題な日本語』に一応答えが出ている。
■1)「ひとごと」は漢字でどう書くのが正しいか
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「ひとごと」の書き方は、「他人事・人事・ひと事・人ごと・ひとごと」のどれ?
「人事」は「じんじ」と紛れやすい。「他人事」における「他人」は熟字訓で、やや難読である。その部分をかなにした「ひと事」は「事」に多少の違和感が残る。「人ごと」「ひとごと」が穏当な書き方だろう。ちなみに、ある新聞では「人ごと・ひとごと」と書くとりきめになっている。(鳥)
*熟字訓=二字以上からなる漢字の列の意味をくみ取って、まとめて訓にして読んだもの。
(『続弾! 問題な日本語』p.156)
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これは表記の問題で、どう書いても間違いではないパターン。
表記に関するモロモロは下記参照。
●表記に関する話
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=50340503
『続弾! 問題な日本語』の記述はツッコミどころが多いが、基本的にはこういうことだろう。
「人事」は「じんじ」と読む印象が強い。熟字訓の「他人事」を読みにくいと考えるなら、「人ごと」「ひとごと」あたりが無難。
Web辞書は「他人事」も「人事」も認めている。手元の『広辞林』(1988年刊)には意外なことに「人事」しかない。やはり国語辞典は表記の問題にはあまり役に立たない。
手元の用字用語集を見る。
『朝日新聞の用語の手びき』 のってないorz。
『記者ハンドブック』(共同通信社) 他人事、人事→人ごと・ひとごと(ではない)
『例解辞典』(ぎょうせい) 人ごと ※「人事」も許容(らしい)
『記者ハンドブック』の書き方は意味がよくわからない。一般には「人ごと」で「ではない」がつくときだけ「ひとごとではない」になるってこと?
■ 2)「他人事」の読み方は「ひとごと」と「たにんごと」のどちらが正しいか。
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「他人事(たにんごとvs.ひとごと)」、どっち?
「他人事」を「たにんごと」と読む人がふえているが、本来は「ひとごと」が正しい。国語辞書では、多く、「たにんごと」を俗用としている。「ひとごと」を「他人事」と書いたのは、明治末あたりからで、それまではもっぱら「人事」だった(尾崎紅葉・泉鏡花など)。大正期に入ると、芥川・菊池・有島・里見トン・長与善郎などが好んで「他人事」と書くようになる。文学的な表記として登場した「他人(ひと)事」は、いささか難読、ふりがななしでは「たにんごと」と読まれる運命にあったのかもしれない。(鳥)(『続弾! 問題な日本語』p.154)
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あのー。この記述の大半はどっちかと言うと1)の話になってませんか。内容に関しては反論する気はない。素直に鵜呑みにします。
Web辞書(全文は↓)を見ると、『大辞泉』は「たにんごと【他人事】」の項を立てて〈◆本来は「ひとごと」と読んだ語。〉としている。
『大辞林』は問答無用で「ひとごと」にふっている。ただし、「ひとごと」の説明の中に「たにんごと」とある。どう考えているのかよくわからない。
結論を書くと、「ひとごと」と読むのが一般的だろうが、もはや「たにんごと」を誤用とするのも無理だろう。自分では「ひとごと」としか読まないけど。「たにんごと」って言葉自体が、比較的新しい言葉だと思う。
元々の質問にあった「それ(他人事)は現代においての正解であって、そもそもの正解は人事だ」という指摘は、『続弾! 問題な日本語』を読む限りそのとおりだろう。
ただ、個人的な読書体験はかなり違う。当方が昔読んだ本はほとんどが「他人事」と書いて「ひとごと」だった。「たにんごと」なんて言葉は記憶にないし、「人事」と書いて「ひとごと」と読んだ記憶もない。そりゃそうだろうな。当方が読む本なんて明治末以降に書かれたものがほとんどだから。
まあ、言葉の問題の歴史的な変遷なんてとこには足を踏み入れないようにしよう。
NHKは、1)は「ひと事」または「ひとごと」で、2)は「たにんごと」は×にしている。「ひと事」はちょっとイヤだな。
http://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/gimon/152.html
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「ひとごと(人事)」と「たにんごと(他人事)」
2005.12.12
Q「他人」に「事」と書く「他人事」について、「ひとごと」と「たにんごと」という二とおりの読み方・言い方を耳にします。放送での読み方などは、どうなっているのでしょうか。
Aまず、「他人事」「たにんごと」という表記(書き方)と言い方・読み方は、どちらも放送では原則として用いないことにしています。「自分に関係ないこと」などを意味する場合の伝統的な言い方は「ひとごと(人事)」[ヒトゴト]とされ、放送でもこの語法を採っています。表記は、「ひと事」または「ひとごと」です。 ×「他人事」「たにんごと」
解説
ご指摘の「他人事」という用語は、近年「ひとごと」に加えて「たにんごと」という読みで使われることも多く、むしろ最近では一般に後者のほうを耳にすることが多いようです。しかし、「自分には関係ないこと」「自分には利害関係のない他人(たにん)のこと」などを意味する場合の伝統的な語・ことばは「人事(ひとごと)」[ヒトゴト]とされ、多くの国語辞書が【ひとごと】「人事」を採っています。また、これについて国内の主な新聞社や通信社も、「ひとごと」または「人ごと」の表記(表現)を認めているだけで、「たにんごと」「他人事」については認めていません。このような状況の中で、NHKでも平成12年(2000年)2月に放送用語委員会でこの件について改めて審議しました。その結果、「タニンゴトということばは誤読から発生したもので、原則として使わない」ことにし、従来通り「表記は○ひと事 ×他人事 読みは○ヒトゴト ×タニンゴト」と決めています。
この用語委員会の決定の理由や戦前の国語辞書を含めた辞書調査などによりますと、「他人事」「たにんごと」ということばが生まれた背景については、次のようなことが考えられます。
《もともと「他人(たにん)のこと」を意味する語・ことばには「ひとごと」という言い方しかなく、この語に戦前の辞書は「人事」という漢字を主にあてていた。ところが「人事」は「じんじ」と区別できないので「他人事」という書き方が支持されるようになり、これを誤って読んだものが「たにんごと」である。》
上記の背景を指摘したうえで、用語委員会は決定の理由を「このような背景から考えると、いたずらに類義語を増やすものとしても、このことばの使用は勧められない」と結んでいます。 なお、「他人」を「ひと」と読むのは表外音訓(常用漢字表にない読み)です。
(『NHK日本語発音アクセント辞典』P766、『NHK新用字用語辞典 第3版』P471、『NHKことばのハンドブック第2版』P172参照)
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■Web辞書(『大辞泉』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=%E3%81%9F%E3%81%AB%E3%82%93%E3%81%94%E3%81%A8&stype=0&dtype=0
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たにん‐ごと【他人事】
自分に無関係な人についてのこと。「まるで―のような顔をしている」
◆本来は「ひとごと」と読んだ語。
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■Web辞書(『大辞林』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=%E3%81%9F%E3%81%AB%E3%82%93%E3%81%94%E3%81%A8&stype=0&dtype=0&dname=0ss
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ひとごと0 【人事・〈他人〉事】
自分に関係ない事。他人に関する事。たにんごと。
―とすましてはいられない
まるで―のような顔をしている
→(句)人事(ひとごと)言えば影がさす
→(句)人事(ひとごと)言わば筵(むしろ)敷け
→(句)人事(ひとごと)でな・い
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「他人事 たにんごと ひとごと」で検索すると、有象無象がヒットする。
下記は信頼できそう。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1315209628
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