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【実録】某生保との長~い戦い2

 パンフレットをしまうNさんを、「バカ負け」した当方はまぬけな笑いを浮かべながら見ていた。彼女と少し話した段階で、当方は自分の勘違いに気づいていた。
 電話で「こんなうるさいオヤジは放っておいたほうがいい」と当方が言っても彼女はまったく引こうとしなかった。「根性あるな」と思った。しかも、最後には「ワタシがうかがいます」とキッパリ言った態度に、バリバリの保険のプロと話ができると期待したの。ここまでイヤがってる人見知りの気弱なオヤジを引っ張り出した手腕はたいしたもんだと思った。
 まったく違った。
 責任感が強いわけでもプロ根性があるわけでも保険のプロフェッショナルでもなかった。ただ単に打たれ強いだけだった。カエル並みの防水機能を備えたツラ(しかも面皮は極厚……沖縄人大喜び!)と馬並みの防音機能を備えた耳をもち、起重機用のワイヤのような神経とレトリバー並みの長毛が生えた心臓をもった、特殊な人格の人だった。
 でもね、ダメージを負ったら、無理にがんばらないで倒れたほうが体のためよ。スタン・ハンセンのラリアットを食らった阿修羅・原がもののみごとにもんどり打ったのは、見た目を意識しただけじゃないのよ。あのほうが衝撃を流せるから……でもなかったか。泡吹いて失神してたもんな。
 ムダに打たれ強いと、パンチドランカーになるよ。ガッ●や●島を見ればわかるでしょ。そういや顔の系列でいっても……。

 で、問題の「指定代理請求人」の書類にサインをした。こんな制度ができたのは、入院保障金を払う払わないでトラブルがあったからと確信しているがその宿題に関してはNさんが開口一番「調べていません」と爽やかに断言したんでツッコミの入れようがなかった。
 で、Nさんが新しい書類を出す。生前に「余命6カ月以内」と診断されたら、生命保険を前倒しでもらえる手続きらしい。
「そんなものを先にもらってどうするんですか?」
「余命がハッキリしたら、ご自分のために使いたいと考えるかたもいらっしゃるようです」
「余命6カ月の人がそんなにお金使う元気あるのかな。フツーに考えりゃ治療費でしょうね」
「そうとは限りません。寝たきりになる人ばかりではありませんし、旅行などに行くことが可能な人もいます」
 これが文字どおりの「冥土のミヤゲ」か? ただいま戻りました、ご主人様……ああ、何を書いているんだ。フツーに考えれば治療費だと思うけど、どうしても浪費させたいわけね。まあ、そんなことで言い争っててもしかたがない。
 遺族に渡すぐらいなら、自分でかけた保険金なんだから使いきってやる……命根性きたねえな。自分がその立場になったら……この手続きはぜひしておかないと。
「こちらのメリットはわかりました。自分でかけた保険金だから、自分の好きなように使える、と。それで、そちらのメリットは?」
「とくにありません」
 あのさ。何度も同じこと言わせないで。なんのメリットもないことをわざわざやるわけないでしょ。なんかあるはずなんだけど、それを隠されるから、深読みしちゃうんだよね。
 前の担当さんともそういう話になったって話したよね。Nさんとこの前電話で話したときも、同じ話になったよね。当方はそれしか言ってないのよ。いい加減、相手を説得する方法考えてよ。
 でもさ。「そんなわけないだろ」とか言ってても話は進まないよな。お願いですから黙ってないでなんか言ってくれない?
「ブッチャケたとこ聞きます。この書類に当方がサインすると、Nさんのポイントになるんですか?」
「……」
「当方としてはどちらでもいいんですが、手続きをするとNさんの成績に影響があるんですかって訊いてるんです」
「それは、なります」
「だったらサインしますよ。わざわざ来ていただいたんだし」
 うわ、何その露骨にうれしそうな態度。なんかきょう一番の笑顔ですね。勘弁してください。
 で、こっちにもサインして、こっちにもサインが必要なのね。一回で済ませてもらえませんか……無理なんですね。
「ちょっとおうかがいしたいんですが、この手続きを踏んでいないと、保険金がおりるまでに死後どのくらいかかるもんなんですか?」ちょっと思いついたことがあったんで、サインをする合間に訊いた。
「一概に言えませんが、最短でも1週間はかかります」
「ああ、そうですか。ってことは、葬式の費用ってのが一番妥当ですね」
「……!」
 そんなにビックリした顔しないでよ。次のお客さんにはそう言ってね。「病身に鞭打って旅行に行けます」って言うよりはずっと説得力あると思うから。
「ところで、こういう制度はほかの保険会社でもやってるんですか?」
「顧客サービスとして、たいていの会社は同じような制度を設けています」
 サービス?……そうかサービスか。それは意表をつかれた。そうか、会社側にはなんの得もなくても、顧客へのサービスで新しい制度を設けることもあるのね。フツーの商売ならよくあることだよね。なんで生命保険会社が相手だと、そんなことまったく考えなかったんだろう。
「ちなみに、指定代理請求人の制度は、いまでは他社にもありますが、最初に始めたのは当社です」
 はい? いまごろ何言ってんの? そんなおいしいネタをなんで出し惜しみするのよ。
「でしたら、最初からそう言ってくださいよ。当社が他社に先駆けて始めた顧客サービスです、って」
 そう言ってくれれば、痛くもない腹(実際には「痛い腹」だと確信してるけど)を探られることもなかったのに。で、この預かり証って何?
「手続きのため、保険証書をお預かりいたします」
 聞いてねえよ、そんなこと。電話でお話ししたと思いますがだって? 聞いてません。聞いていたらこんなに驚くわけないでしょ。
「ちょっと、待ってください。Nさんとはきょう初対面ですよね。その初対面のかたに保険証書を預けるなんてできません。こんな名刺なんて簡単に作れますし、社判が押してあるわけでもないこんな預かり証は、その気になれば当方にだって簡単に偽造できるじゃないですか」
 そんなに睨まないでよ。コッチは間違ったこと言ってないと思うよ。なんでそんな恐いことをいきなり要求するのよ。
「私を信じていただけないでしょうか」 
 信じるも疑うもないでしょ。非常識だって言ってるの。保険証書は非常に重要なものだから大切に保管してください、って言ってるのはアンタたちでしょうが。
「それにその証書だけでは、悪用することも不可能です」
 そんなこと当方には判断できません。
 個人的には健康保険証でお金が借りられるってのも信じられないのよ。でも実際には借りられるでしょ。20年以上お金を払い続けた保険証書にだって、多少の担保価値があるかもしれない。
「じゃあいったいどうすれば信じていただけるんですか」
「それは、当方が要求していいことなんですか? じゃあ、いますぐ営業所長を連れてきてくれない限りは渡せないと言ったら、連れてきてくれるんですか?」
 なんなら本社の社長を呼んでもらおうかな。そういうことを顧客に言わせてはダメでしょ。こういう偏屈な顧客を説得する方法はマニュアルに書いてないの?
 ずいぶん時間をムダにしてからNさんが言った。「じゃあこの場で営業所に電話してください」
 やっとそのテを思いつきましたか。でもね。当方はすでに今日の午前中に電話してるのよ。できればそのことも思い出してほしいな。その番号といただいた名刺の番号が同じこともさっき確認してる。たしか電話にはほかの人が出たよね。
 でも、2人がグルだったらお手上げだよな……と考えていた。保険会社の名簿が流出して詐欺グループの手に渡り……。可能性がないわけじゃない。ただ、「たぶん大丈夫だな」と思いはじめている。詐欺師なら、もっと話がうまいはずだよ。これが演技だったら困っちゃうけど。もういいや。わかりました。アンタを信じる根拠は何もないけど、自分の勘を信じます。保険証書は預けますが、返却方法はどうなるんですか。
 ああ、郵送ですか。まあ、書留までは求めませんが、配達記録ぐらいの扱いにはなるんでしょうね。えっ? 普通郵便ですか? 冗談はやめてくださいよ。
「保険証書って一種の契約書ですよね。それを普通郵便で送って事故が起きたらどうするんですか」
「いままで事故が起きたことはありません」
「それは運がいいんですね」
 いったいどんな根拠があってそんなことを断言するの。いい加減にしてくれよ。「でもお願いですから普通郵便はやめてください」
「そういうことはできない規則になっています」
 あんまり強情に言い張るもんだから、当方も多少感情的になってしまった。「御社の規則がどうなってるのかは知りませんが、とにかく普通郵便はやめてください。そうしないと、間違いなく事故の第1号になりますよ」
 意味がわかんなかったみたいね。破棄して事故にするって言ってんの。そんなことまでしたくないから、お願いだから普通郵便はやめて。
「普通郵便で送って、コチラが受け取っていないと言い張ったら、どうするんですか」
「そのときは郵便局に調べてもらいます」
 えーっ! さすが民営化されると違うなぁ。最近は普通郵便でそんなことができるんだ。んなわけないだろ!
「会社に帰って調べてみてください。もしそれが事実なら、普通郵便でも構いません。でも、追跡調査ができるなら普通郵便じゃないと思いますよ」
 まあ、最近はいろいろと不思議なことが起こるから、強いことは言えないけどね。
「よけいなことかも知れませんが、もし本当に証書を普通郵便で送るなんて非常識なことをやっているのなら、絶対にやめたほうがいい。それは会社に言ったほうがいいですよ。少なくとも当方だったら、この会社はとんでもない、と思いますから」
「でも、保険証書は簡単に再発行できますから」
 なんでこういうバカなことを言うんだろうね。あんまり相手にしたくないけど、この際だからハッキリさせようか。
「簡単っておっしゃいますが、なんらかの書類は必要でしょ」
「たしか、印鑑証明が必要です」
「区役所に行って手数料払って印鑑証明もらって、それで営業所に来いって言うんでしょ? その交通費や時間給はいただけるんですか?」
「でも、証書の紛失は、お客様の過失によることが多いものですから」
「そりゃそうでしょう。大事な大事な証書だから、大切に大切に保管しなけりゃいけないんですよね。それをなくしたら客の責任でしょう。でもいま話しているのは違うケースだと思いますよ」

 細かいことを書くとキリがないのでかなりはしょったけど、2時間近くの面談で、だいたいこんな話をした。保険会社ってどうしようもないところだと思ったけど、こんなのはほんの序の口だった。
 このあと繰り広げられるバカすぎる泥仕合の序章に過ぎないことに、まだtobirisuは気づいていなかった。

【3】↓
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-3.html
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やましか

がんばれーー。

保険外交員は20年以上の付き合いでも平気で不正転換をします。ばれたら会社ぐるみで嘘をつきます。顧客は鴨です。

Re: タイトルなし

 はじめまして……ですよね。
 まあ、そのくらいのことはありそうな業界ですね。

http://kassis.blog90.fc2.com/blog-entry-303.html

保険会社の対応があまりに悪質なので、裁判をします。

m さん へ

 エート。
 もしかすると↑の無記名のコメントもm さんですか。
 裁判の経緯を興味深く見守りたいと思います。
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tobi

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フリーランスの編集者兼ライターです。

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