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2008年9月の朝日新聞から

9-1
1日
官と民のせめぎあい(朝刊1面)
 1面に記載されている「目次」みたいな部分にあった表現。「五輪後の中国」の話らしい。1面の文中に「都市と農村で広がる官と民のせめぎあいを見る。」って文もある。この「見る」って間の抜けた表現は何? 「レポートする」くらいじゃないの? って話はおいておく。
 で、11面の当該記事を見る。インタビュー記事だった。だったら「見る」じゃなくて「聞く」だろう、って話はおく。聞き手は刀祢館正明記者。ちなみに11面の記事の見出しは「権利意識高まり官と対立」。「せめぎあう」なんて物騒な言葉は出てこない。なあんだ、「対立」って言葉は知ってるのね。
 さて、tobirisuはどこにインネンをつけようとしているかおわかりですね。「せめぎあう」です。まずネット辞書を引く。
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『大辞泉』
せめぎ‐あ・う〔‐あふ〕【×鬩ぎ合う】
[動ワ五(ハ四)]互いに争う。対立して争う。「春闘で労使が―・う」

『大辞林』
せめぎあ・う[―あふ] 40 【▼鬩ぎ合う】
(動ワ五[ハ四])
対抗して互いに争う。
・新しい市場獲得をめぐって二社が―・う
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 まあ、ほぼ同じだ。手元の『広辞林』だと「せめぎあう」の項目がない。一瞬慌てたけど、要は「せめぐ」に集約させている。で、今度はネット辞書で「せめぐ」を索く。「責め具」の意味は……よしなさい!

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『大辞泉』
せめ・ぐ【×鬩ぐ】
[動ガ五(四)]《古くは「せめく」とも》
1 互いに憎み争う。
・「我が先へ汝(そなた)は後にと兄弟争い―・いだ末」〈露伴・五重塔〉
2 責め苦しめる。
・「老いぬとてなどかわが身を―・ぎけむ老いずは今日にあはましものか」〈古今・雑上〉

『大辞林』
せめ・ぐ2 【▼鬩ぐ】
(動ガ五[四])
〔補説〕 古くは「せめく」と清音
[1]互いに恨む。争い合う。
・公の心には、既に二つの力が相―・いで居た〔出典: 麒麟(潤一郎)〕
[2]うらみ嘆く。
・老いぬとてなどか我が身を―・ぎけむ〔出典: 古今(雑上)〕
〔慣用〕 兄弟(けいてい)墻(かき)に―
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 手元の『広辞林』もほぼ同義。これで「せめぎあう」が二重の意味でおかしいことがわかるだろう。わかりませんか。そりゃそうだ。
1)正直に書きます。この点はtobirisuもついさっき知りました。「せめぐ」にはそれだけで「互いに~」の意味があるんだから、「せめぎあう」は重言。そんなことは知らずに、昔1回だけ使ったことがある。
2)「せめぐ」は本来かなり重い意味でしか使えない。『大辞林』に「慣用」とある「兄弟墻に鬩ぐ」は『広辞林』にものっている。原典は『詩経』らしい。『詩経』について語り出すと長くなるのでパス。まあ中国の『万葉集』みたいなもんだ(ホントか?)。
 この用例が象徴的なんだけど、身内などの深刻な争いに使うべき言葉らしい。「骨肉の争い」と考えればいいだろう(ホントか?)。官と民が「骨肉の争い」はヘンでしょ。
 まあ、現代ではもう少し軽い争いに使っても、「せめぎあい」としても誤用とは言い切れないだろうな。


9-2
5日
 岡部は、あくまでキザでソフト。普段「やんちゃなマッチ」とのイメージが強いが、今回は演技力抜群の八木を見守る穏やかな父性がいい。(朝刊36面)
 テレビ欄。柏木友紀記者。「とのイメージ」がの「との」って何? そりゃ「という」だとちょっとかたい、なんてこういう書き手が思うわけはなく。単に字数の問題だろう。フツーに「の」じゃいけなかったの? なんて話はどうでもいい。文中の八木は、天才子役として知られる八木優希。なんで、近藤真彦は岡部で、八木優希は八木なの? って話はどうでもいい。この書き手は近藤真彦に恨みでももっているのだろうか。
 だって、なんで「演技力抜群」ってわざわざ書くの? 一読して、「八木優希に助けられている」ってことか、と思った。だって岡部のキャラについて、書き手は冒頭で「かなり変わった刑事である」と書いてるのよ。スリーピース着て真っ赤なポルシェに乗り、被害者にバラの花束を手向けるのよ。それが他人の子供に対して「穏やかな父性」って、あからさまにヘンでしょ。こういうのを「とってつけたような」と言う。どんなに隠しても悪意や偏見は出てしまうのよ、って話でした。


9-3
5日
一方でコーエー側もテクモに秋波をおくったという。(朝刊13面)
 http://ja.wiktionary.org/wiki/秋波
「秋波」ですか。ラブコールとかエールとか、言い方はいくらでもあるでしょう。へー。「秋波」には「秋の澄んだ水の流れ」なんて意味もあるんだ。勉強になった。


9-4
8日
その電撃的な勝ちっぷりは、まるで北京五輪のウサイン・ボルトの走りを見るようだった。(朝刊25面)
 将棋の観戦記。青記者。別に悪くないけどさ。「安易に比喩を使ってはいけない」って心得の見本にしたくなるような比喩。比喩を使う意味がまったくない。
1)ギャグになっているわけではない
2)わかりやすくなるわけでもない
3)情景が浮かぶわけでもない
4)表現として目新しいわけでもない
5)ウマい比喩ってわけでもない
6)クダクダ書くより簡潔になるわけでもない
 唯一の効果は、「この書き手が自分の文章に酔いやすい」ってわかることくらいかな。ただでさえ記事スペース小さいんだから、ムダに使うなよ。


9-5
7日
 朝刊33面に、「漫画人気でも雑誌苦戦」って記事が出ている。マンガ界が直面する問題を多岐にわたって紹介している。箇条書きにする。
1)少年マガジンと少年サンデーが異例のタッグを組んだ。「出版社は公式に認めないものの」、背景には両誌の苦戦があるという。
2)1998年に450万部の部数を誇った少年マガジンは現在187万部
3)1982~83年に220万部だった少年サンデーは現在その半数以下
4)出版科学研究所によると、マンガ雑誌全体の部数のピークは1995年の13億4300万部。12年連続で減少した2007年は7億1700万部
5)ここ10年ほど、大手でもマンガ誌単体での黒字は数誌になった。その一方で単行本の売り上げは堅調。出版科学研究所によると、2005年に単行本の販売金額が雑誌を上回り、その差は拡大しつつある
6)携帯コミックは急成長しつつある
7)編集者と作者の関係の悪化が表面化しつつある


9-6
12日
中国 金メダル量産(夕刊3面)
 北京パラリンピックの記事。阿久津篤史記者。下記の「8-3」参照。誰か教えてやれよ。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=919439265&owner_id=5019671


9-7
15日
「底が知れるだけに、腹が立つわね」。敗れたマリナーズのイチローが嫌みを言いたくなるほど、派手な喜び方だった。(朝刊9面)
 アナハイムの山田佳毅記者。なんで、朝刊9面がスポーツ面なんだ? って話はおいておく。対戦相手のエンゼルスの守護神がセーブのメジャー新記録を達成したことを伝える記事。イチローのコメントがまったく理解できない。しかも「立つわね」はないだろう。「立つ」「立つわ」「立つわな」ならわかるけど。勘弁してください。書き手がバカだと、コメントした人間までバカに見えてくる。


9-8
15日
 朝刊18面のテレビ欄に「TVレビュー」ってコラムがある。書き手は日本大学芸術学部の中町綾子准教授。タイトルは〈人の行動の理由が薄い「恋空」〉。内容はそのまま。
「登場人物の行動にはもう少し理由が欲しい」
「登場人物は結構、理由を大事に生きている。このドラマでは違う」
 あのー。ドラマを批判したいんですか。原作を批判したいんですか。こういうことを書くからには当然原作は読んでいるんですよね。当方はもちろん読んでいません。でも、たぶん原作がそうなってるんだと思う。それは作品の欠点ではなくて「持ち味」では。
 要するに書き手の感覚がズレてんのよ。この人は前にマンガ原作のドラマについても「リアリティがない」とか書いてた人だと思う。それも相当ズレていると思う。すべてを知ったうえで、「原作がどうであれ、ドラマ化するなら」ってことならまだ少しマシだけど。それでもやっぱりズレてると思う。


9-9
16日
 夕刊1面で、リーマン・ブラザーズの経営破綻を伝えている。アメリカって国はこういうときに政府が援助なんてことは絶対しないよなー、と思ってたら援助したからビックリした。やはり放置してはマズいんですね……ってそんなことは当方が書くべきことではない。なんか無知をサラす危険を感じるけど、かなり大きめの小見出しが目についた。
「メリルは身売り バンカメに」
 バンカメって。新聞社では警察なんかを担当する記者を「番記者」と呼ぶと記憶している。その記者と一緒に行動するカメラマンが……。どうやら「バンク・オブ・アメリカ」のことらしい。調べてみるとそういう風に略すみたい。まあ、発音で考えると、
  バンク・オブ・アメリカ→バンカメリカ→バンカメ
 ってのはわからなくはない。でも当方は初めて見ました。しかもこの記事中「バンカメ」なんて略称は1回も出てこない。勘弁してください。


9-10
21日
 朝刊1面の「天声人語」。ネット上に本文があったので転載する。
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http://www.ikugo.com/blog/?p=855
『ユダヤ・ジョーク集』(講談社)に、ヒトラーが占星術師に死期を問う話がある。ユダヤ人の祭りの日だと聞いた総統、該当する日の護衛を100倍にせよと命じる。「安心はできません」と占師。「いつお亡くなりになっても、それが祭日になります」▼スターリンは暗殺を恐れ、そっくりの影武者を用意していたという。独裁者の孤独は底なしだ。勝手を重ねるたびに敵が増え、疑心に暗鬼が群がる。側近や身内も信じられず、やがて占師のご託宣を仰ぐ日が訪れる▼この人は今、誰とどんな話をしているのだろう。北朝鮮の金正日総書記に健康不安説が流れている。脳卒中で倒れたとの見方がもっぱらだが、かの国のこと、突然にこやかに現れるかもしれない。他方、「本物」は数年前から公の場に出ていないといった憶測もにぎやかだ▼情報鎖国の小穴から漏れ伝わってくる「金王朝」の後継問題。権力の移行があるのなら、混乱はどれほどで収まり、核や拉致の懸案はどう転ぶのか。「たら」と「れば」でつなぐ見通しは堂々巡りとなる▼早大教授の重村智計氏は近著『金正日の正体』で、総書記は思想家マキャベリの「君主論」に従ってきたと説く。例えば〈愛されるよりも恐れられる方がはるかに安全である〉の教えだ▼遅かれ早かれ、恐怖支配の悪運は尽きる。気がかりは、世界の実相も知らされず、飢えと密告におびえる民衆のことである。独裁者たちは、己の運命に民を巻き込むのが常。一朝ことあれば生身の2千万人が嵐に放り込まれると、心にとめておく。
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 冒頭のジョークは非常によくできている。いつかどこかで使ってやる。
 で、気になったのは以下の一文。

>側近や身内も信じられず、やがて占師のご託宣を仰ぐ日が訪れる。

 こういうときに「訪れる」を使うのはちょっと異和感がある。「来る」とか「やってくる」あたりのほうが自然では、って話はおく。なんかまたしても無知をサラす危険を感じるけど、問題は「ご託宣」。こういうときは「ご宣託」と言うもんだとばかり思っていた。両方あるんだけど、ネット辞書で見る限り、「ご託宣」のほうが一般的みたい。ちなみにことえりくんは「宣託」は変換してくれない。グーグル君に訊いてみる。
  託宣……約14万2000件
  宣託……約3万200件
  ご託宣……約5万9800件
  ご宣託……約8190件
 (≧∇≦)/□☆□\(≧∇≦ )カンパーイ!! ではなく完敗orz。
 一応両方あるのは知ってたけど、「ご託宣」だと「ご託を並べる」みたいで失礼だろ、と考えていた。どうやら話は逆らしい。

【語源由来辞典】
http://gogen-allguide.com/ko/gotaku.html

 本文も転載しようとしたら、ガードがかかっていた(泣)。コピーする方法はありそうだけど、ダメって書いてあるからやめとこ。
 もともと「ご託宣」の「宣」がとれて「ご託」になり、そこから「ご託を並べる」って言葉が出たらしい。
 なんか、今回は「初めて聞いた」みたいなことがやたら目立つな。まあ、tobirisuの知識なんてそんなもんってことです(泣)。こうやって恥をかくことによって、バカがほんの少しずつでも賢くなっていくのです(大泣)。そう信じています。

9-11
30日
芸能レポーターの梨元勝さんは「役者不足。論争してみせて盛り上げようとしているけど、結論の見えているレコード大賞」(朝刊1面)
 総裁選を話題にした「天声人語」。「役者不足」って言葉を朝日新聞で目にしたのは何回目だろう。正しい日本語ではないという説が有力だが、誤用の「役不足」にかわる表現として、もっと広まってほしい。
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