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慣用句の話──「腹をくくる」「腹をすえる」「肝をすえる」「腰をすえる」

 下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2020.html
日本語アレコレの索引(日々増殖中)【6】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1737578274&owner_id=5019671

mixi日記2011年11月07日から

 下記の続き。
【突然ですが問題です【日本語編80】──「腹をくくる」「腹をすえる」「肝をすえる」……etc.】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1791639461&owner_id=5019671

 ある表現が「アリ」ってことを示すには、辞書などの用例を示せばいいだろう。その際、ネット検索はあまりアテにならない。曲がりなりにも辞書のようなものなら別だが、一般のブログだなんだに関しては「ネット上にはゴマンと使用例があっても誤用」なんてことがある。「7割が誤用したらもはや正用」なんて●●なことを口走る気はない。メンドーなんで「直裁」の例をあげておこうか。
 ただ、通常の形を微妙にズラした慣用句が「ナシ」と示すのはむずかしい。「悪魔の証明」い近い。「使いたい人は使えば……」って気持ちになる。
 ってことで1)~4)に関して、2種類のWeb辞書と当方が信頼している『成語林』(1992年刊)で調べてみる。5)と6)は員数合わせ(最近「人数合わせ」にする例を目にする。「間違い」とは言い切れない気がするが、ちょっとヘン)みたいなもんだから無視する。(←オイ!)
 
         『大辞泉』 『大辞林』 『成語林』 
  1)腹をくくる   ―     ○     ○
  2)腹をすえる   ―     ○     ○
  3)肝をすえる   ○     ―     ○
  4)腰をすえる   ○     ○     ○

 Web辞書に関しては、ちゃんと探せば違う結果になるかもしれない。すでに目的は果たしたので、そこまでやる気はない。(←オイ!)
 要は1)~4)はいずれもアリ。よい子は辞書には逆らいません(今回はね)。辞書の記述は末尾に。
 ただ、個人的な感覚で言わせてもらうと、1)~3)には相当異和感がある。順番に見ていこう。


1)腹をくくる──個人的には異和感なし。自分でも使うことがあるかも
【参考サイト】http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1074601485に〈腹をくくる…は、腹をすえる+高をくくる…が混同してしまっている言葉〉とある。これって根拠があるんだろうか。検索するといろいろ出てくる。真っ先に出てくるのが下記のサイト。
http://www.sipec-square.net/~mt-home/alumni/ando/answer2.html
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「腹をくくる」は「腹をすえる」と「高をくくる」の混同

これは「腹をすえる」「腹を決める」「腹を固める」など、決意した、観念した、という意味の言葉と、相手をあなどるという意味を持つ「高をくくる」という言葉がいっしょになってしまったものである。昭和51年夏の甲子園で、PL学園と柳川商業が対戦したときの監督談話を伝えた新聞記事に、「ピンチのときには、同点にされてもいいと、腹をくくっていた・・・」というものがあった。その結果、次の日からその新聞社に投書が山積し、一騒動が起こったという。「天下の公器たる新聞がなんたる文章を書くか!」というものから「どうやって腹をくくったらよろしいのでしょうか?」といった皮肉たっぷりのものまで様々だった。
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「一騒動が起こった」んだから、当時は言わなかったのだろう。手元にあるイチバン古い辞書『新選国語辞典』(小学館/昭和34年初版)には2)はあるけど1)はない。比較的新しい言葉なのかもしれない。ただ、現行の辞書がフツーに採用しているものをこの程度の根拠で「誤用」と断ずる勇気はない。まったく実感もないから、「本来は……」と言う気もない。
 混用だとしても「高をくくる」が出てくる理由が想像できない。体つながりで「鼻をくくる」「首をくくる」が出てくるならわまだわかるけど。だって〈相手をあなどるという意味を持つ「高をくくる」という言葉〉なんだから、「腹をくくる」とは関係ないだろう。
 元々混用から生まれた表現だとすると、【参考サイト】にある「帯を締め直して事に当たる」は後づけだろう。何を根拠に断言しているのかは関知したくない。


2)腹をすえる──個人的には使わない
「腹をすえる」は初めて聞いた。さすが『成語林』は2つの意味をのせたうえでちゃんと注記している。辞書はこうでなくっちゃ。
 この形ならよく目にするし、自分でも「腹に~」の形で使う可能性がある。当方の感覚だと「腹に据えかねる」は、「自分の腹におさめておけなくて……」くらいのニュアンス。
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2)は「腹を据えかねる」または「腹に据えかねる」の形で、「我慢できない」意で使われることが多い。
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3)肝をすえる──個人的には使わない
「肝が据わる」(「座る」ではない)ならアリ(ちょっと古風かな)で、Web辞書も両方が採用している。「肝をすえる」なんて初めて見た。このニュアンスの違いはけっこう大きいかも。なんか鰻が食べたくなる。

 で、改めて【参考サイト】を見る。
 コメントは控えます(黒笑)。
 さて、「高」の話が残った。これはまたそのうち。


■Web辞書(『大辞林』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=%E8%85%B9%E3%82%92%E3%81%8F%E3%81%8F%E3%82%8B&stype=0&dtype=0
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腹(はら)を括(くく)・る
覚悟を決める。いかなる事態にもひるまないよう心を固める。
  ―・って難局に臨む
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■Web辞書(『大辞林』から)
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腹(はら)を据(す)・える
[1] 覚悟を決める。決心する。
  ―・えてかかる
[2] 怒りをおさえる。我慢してこらえる。
  入道猶―・ゑかねて〔出典: 平家 2〕
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■Web辞書(『大辞泉』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=%E8%82%9D%E3%82%92%E6%8D%AE%E3%81%88%E3%82%8B&stype=0&dtype=0
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肝(きも)を据・える
覚悟を決める。腹を据える。
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