伝言板 板外編17──よけいな言葉&よけいな接続詞
下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
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日本語アレコレの索引(日々増殖中)【7】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1789673749&owner_id=5019671
mixi日記2011年12月02日から
「文字どおり」についての資料として、「赤い本」の記述から抜粋します。「文字どおり」に関しては後日……。
伝言板のお品書きに関しては下記参照。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=890371504&owner_id=5019671
よけいな言葉
●「周知のとおり」は広く知られていることにしか使えない
【練習問題24】
次の文を読んで、2つの点について考えてください。「周知のとおり」のかわりに使える表現にはどのようなものがあるでしょうか。「周知のとおり」の使い方は適切でしょうか。
1)周知のとおり、「主述の入れかえ」をすれば、文末に変化つけることができます。
2)周知のとおり、接続詞は文と文とをつなぐ働きがあります。
「周知のとおり」と同じような使い方をされている言葉はたくさんあります。「ご存じのとおり」「ご承知のとおり」「知ってのとおり」あたりが、目にすることの多い例でしょうか。「のとおり」を「のように」にすることもできます。
「周知」は「広く知れわたっている」ぐらいの意味ですから、「周知のとおり」は簡単にいってしまうと、「だれでも知っているとおり」の意味になります。「ご存じのとおり」なども、ほぼ同じ意味です。
言葉の意味を考えると、1)のような使い方をするのはヘンなことがわかります。「主述の入れかえ」は本書で使われている便宜的な用語であって、だれでも知っている言葉ではないからです。しかし、1)のように広くは知られていない事柄に「周知のとおり」(「ご存じのとおり」なども同様です)をつける用法をよく見かけます。
では、2)のように常識的なことを書くときになら使ってもよいのでしょうか。使うべきではない、とまではいいませんが、使う必要はないと思います。この用法の大半は、削除してしまっても文意に影響がありません。
「周知のとおり」は、書き手の「謙遜」の気持ち(あるいは読み手に対する「尊敬」の気持ち)から出てくる表現だとは思います。しかし、読み手の立場になって考えると、そうは受けとれません。「だれでも知っていることでしょうけど」と前置きされて、知らない事柄が出てきたら、だれだって愉快な気持ちにはなれないはずです。「あってもなくても意味がかわらず」、しかも「読み手に不快感を与える可能性がある」言葉ですから、安易に使うべきではありません。
ふつうに使われている表現であっても、不要のことが多いものはほかにもいろいろあります。なかでも、次の表現は必要もないのに使われていることが多いようです。本当に必要か否かを考えてから使うようにしたほうが無難です。
文字どおり/まさに/まるで/
一人称(「私」「僕」など)/程度を表す副詞(「より」「やや」「少し」など)
●よけいな接続詞(&副詞)
接続詞という言葉は、「文章読本」のなかでよく見かけます。本書の★ページでも、注釈もつけずに使いました。
しかし、接続詞の正確な定義はむずかしく、ある言葉が接続詞か否かを見極めるのは簡単なことではありません。本書では、一般の使われ方よりも広い意味で、接続詞という言葉を使うことにします。多少あいまいな部分も出てくるかもしれませんが、文法用語の厳密な意味を考えるのは本書の役割ではないからです。
本書では、「文頭に用いられて少しでも前の文に関係するニュアンスのある言葉」を、すべて接続詞として扱います(たとえば「そのあとに」「おそらく」など)。
【練習問題25】
次の1)~4)の文には、接続詞が使われています。A群の接続詞とB群の接続詞の性質について、共通点と相違点を考えてください。
A群
1)おそらく、いくつかの接続詞はそのまま削除しても問題はないでしょう。
2)たぶん、いくつかの接続詞はそのまま削除しても問題はないでしょう。
B群
3)なぜなら、いくつかの接続詞はそのまま削除しても問題がないからです。
4)つまり、いくつかの接続詞はそのまま削除しても問題がないということです。
前後の文をつなげる働きをしている接続詞を、前の文を書かずにいきなり持ち出して性質について考えるのは無理な話かもしれません。多少ヒントになっているのは、★ページの「接続詞の減らし方」の項の記述や、この項の「よけいな接続詞」というテーマと例文の内容です。
【練習問題25】にした文の接続詞と文末の関係は、次のようになっています(1)2)の文末は★ページで紹介したようにいくつもの書きかえが可能です。3)4)の文末も書きかえが可能でしょうが、ここではこの形に限って話を進めます。文末を書きかえても、話の大筋には影響がないからです)。
A群
1)おそらく~でしょう(「推量」などを表す)
2)たぶん~でしょう(「推量」などを表す)
B群
3)なぜなら~からです(「理由」などを表す)
4)つまり~ということです(「結論」などを表す)
A群とB群に共通しているのは、そのまま削除しても文意がほとんどかわらない点です。文末だけでも、文の意味が伝えられます。
〈書きかえ文1〉
A群
1)いくつかの接続詞はそのまま削除しても問題はないでしょう。
2)いくつかの接続詞はそのまま削除しても問題はないでしょう。
B群
3)いくつかの接続詞はそのまま削除しても問題がないからです。
4)いくつかの接続詞はそのまま削除しても問題がないということです。
A群とB群の相違点は、次のように文末をふつうの形に書きかえるとはっきりします。
〈書きかえ文2〉
A群
1)おそらく、いくつかの接続詞はそのまま削除しても問題はありません。
2)たぶん、いくつかの接続詞はそのまま削除しても問題はありません。
B群
3)なぜなら、いくつかの接続詞はそのまま削除しても問題はありません。
4)つまり、いくつかの接続詞はそのまま削除しても問題はありません。
B群の〈書きかえ文2〉は、ややヘンな感じです。3)は「係り結ばず」の気配が濃厚で、4)は「前にある文章によってはヘンではないかもしれない」という微妙なところでしょう。
以上のことをまとめると、次のようになります。
A群 B群
おそらく たぶん なぜなら つまり
働き 「推量」など 「推量」など 「理由」など 「結論」など
接続詞+文末 〇 〇 〇 〇
文末だけ 〇 〇 〇 〇
接続詞だけ 〇 〇 X △
A群の接続詞は、接続詞と文末をセットで使ってもよいし、接続詞を削除して文末だけで意味を表してもよいし、接続詞だけで使っても構いません。接続詞と文末をセットで使うと意味がダブり気味になりますが、趣味の問題の範囲で、重言とまではいえないと思います。
B群の接続詞は、接続詞と文末をセットで使ってもよいし、接続詞を削除して文末だけで意味を表しても構いません。しかし、接続詞だけで使うときには、文末が「係り結ばず」にならないように注意する必要があります。
★ページで、「削除してもヘンでない接続詞が見つかることもよくあります」と書いたのは、具体的にはこういうことです。ここで例にあげた4つの接続詞は、そのまま削除しても問題がありません。
ほかの接続詞について考えてみましょう。
A群と同様に「推量」などを表す「あるいは」「もしかすると」は、用法で見ると「なぜなら」のタイプです。そのまま削除しても構いませんが、接続詞だけで使うとヘンな感じになります。「したがって」は意味的にも用法的にも「つまり」に近い感じがあり、そのまま削除できることが多い接続詞です。
しかし、当然のことながらそのまま削除できない接続詞もあります。「逆接」などを表す「しかし」「ところが」などは、通常は削除できません。
接続詞をそのまま削除できるか否かは、前後の文脈にもかかわってくるので、一概にはいえないことも多いようです。実際の文章の中で個々に考えるべきでしょう。★ページでも書いたように、文章を書いているときには神経質になる必要はありません。ただし、書きあがった文章を読み直して接続詞が多いと感じたときには、「そのまま削除できないか」「文末などを工夫すれば削除できないか」と考えてみてください。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
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「文字どおり」についての資料として、「赤い本」の記述から抜粋します。「文字どおり」に関しては後日……。
伝言板のお品書きに関しては下記参照。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=890371504&owner_id=5019671
よけいな言葉
●「周知のとおり」は広く知られていることにしか使えない
【練習問題24】
次の文を読んで、2つの点について考えてください。「周知のとおり」のかわりに使える表現にはどのようなものがあるでしょうか。「周知のとおり」の使い方は適切でしょうか。
1)周知のとおり、「主述の入れかえ」をすれば、文末に変化つけることができます。
2)周知のとおり、接続詞は文と文とをつなぐ働きがあります。
「周知のとおり」と同じような使い方をされている言葉はたくさんあります。「ご存じのとおり」「ご承知のとおり」「知ってのとおり」あたりが、目にすることの多い例でしょうか。「のとおり」を「のように」にすることもできます。
「周知」は「広く知れわたっている」ぐらいの意味ですから、「周知のとおり」は簡単にいってしまうと、「だれでも知っているとおり」の意味になります。「ご存じのとおり」なども、ほぼ同じ意味です。
言葉の意味を考えると、1)のような使い方をするのはヘンなことがわかります。「主述の入れかえ」は本書で使われている便宜的な用語であって、だれでも知っている言葉ではないからです。しかし、1)のように広くは知られていない事柄に「周知のとおり」(「ご存じのとおり」なども同様です)をつける用法をよく見かけます。
では、2)のように常識的なことを書くときになら使ってもよいのでしょうか。使うべきではない、とまではいいませんが、使う必要はないと思います。この用法の大半は、削除してしまっても文意に影響がありません。
「周知のとおり」は、書き手の「謙遜」の気持ち(あるいは読み手に対する「尊敬」の気持ち)から出てくる表現だとは思います。しかし、読み手の立場になって考えると、そうは受けとれません。「だれでも知っていることでしょうけど」と前置きされて、知らない事柄が出てきたら、だれだって愉快な気持ちにはなれないはずです。「あってもなくても意味がかわらず」、しかも「読み手に不快感を与える可能性がある」言葉ですから、安易に使うべきではありません。
ふつうに使われている表現であっても、不要のことが多いものはほかにもいろいろあります。なかでも、次の表現は必要もないのに使われていることが多いようです。本当に必要か否かを考えてから使うようにしたほうが無難です。
文字どおり/まさに/まるで/
一人称(「私」「僕」など)/程度を表す副詞(「より」「やや」「少し」など)
●よけいな接続詞(&副詞)
接続詞という言葉は、「文章読本」のなかでよく見かけます。本書の★ページでも、注釈もつけずに使いました。
しかし、接続詞の正確な定義はむずかしく、ある言葉が接続詞か否かを見極めるのは簡単なことではありません。本書では、一般の使われ方よりも広い意味で、接続詞という言葉を使うことにします。多少あいまいな部分も出てくるかもしれませんが、文法用語の厳密な意味を考えるのは本書の役割ではないからです。
本書では、「文頭に用いられて少しでも前の文に関係するニュアンスのある言葉」を、すべて接続詞として扱います(たとえば「そのあとに」「おそらく」など)。
【練習問題25】
次の1)~4)の文には、接続詞が使われています。A群の接続詞とB群の接続詞の性質について、共通点と相違点を考えてください。
A群
1)おそらく、いくつかの接続詞はそのまま削除しても問題はないでしょう。
2)たぶん、いくつかの接続詞はそのまま削除しても問題はないでしょう。
B群
3)なぜなら、いくつかの接続詞はそのまま削除しても問題がないからです。
4)つまり、いくつかの接続詞はそのまま削除しても問題がないということです。
前後の文をつなげる働きをしている接続詞を、前の文を書かずにいきなり持ち出して性質について考えるのは無理な話かもしれません。多少ヒントになっているのは、★ページの「接続詞の減らし方」の項の記述や、この項の「よけいな接続詞」というテーマと例文の内容です。
【練習問題25】にした文の接続詞と文末の関係は、次のようになっています(1)2)の文末は★ページで紹介したようにいくつもの書きかえが可能です。3)4)の文末も書きかえが可能でしょうが、ここではこの形に限って話を進めます。文末を書きかえても、話の大筋には影響がないからです)。
A群
1)おそらく~でしょう(「推量」などを表す)
2)たぶん~でしょう(「推量」などを表す)
B群
3)なぜなら~からです(「理由」などを表す)
4)つまり~ということです(「結論」などを表す)
A群とB群に共通しているのは、そのまま削除しても文意がほとんどかわらない点です。文末だけでも、文の意味が伝えられます。
〈書きかえ文1〉
A群
1)いくつかの接続詞はそのまま削除しても問題はないでしょう。
2)いくつかの接続詞はそのまま削除しても問題はないでしょう。
B群
3)いくつかの接続詞はそのまま削除しても問題がないからです。
4)いくつかの接続詞はそのまま削除しても問題がないということです。
A群とB群の相違点は、次のように文末をふつうの形に書きかえるとはっきりします。
〈書きかえ文2〉
A群
1)おそらく、いくつかの接続詞はそのまま削除しても問題はありません。
2)たぶん、いくつかの接続詞はそのまま削除しても問題はありません。
B群
3)なぜなら、いくつかの接続詞はそのまま削除しても問題はありません。
4)つまり、いくつかの接続詞はそのまま削除しても問題はありません。
B群の〈書きかえ文2〉は、ややヘンな感じです。3)は「係り結ばず」の気配が濃厚で、4)は「前にある文章によってはヘンではないかもしれない」という微妙なところでしょう。
以上のことをまとめると、次のようになります。
A群 B群
おそらく たぶん なぜなら つまり
働き 「推量」など 「推量」など 「理由」など 「結論」など
接続詞+文末 〇 〇 〇 〇
文末だけ 〇 〇 〇 〇
接続詞だけ 〇 〇 X △
A群の接続詞は、接続詞と文末をセットで使ってもよいし、接続詞を削除して文末だけで意味を表してもよいし、接続詞だけで使っても構いません。接続詞と文末をセットで使うと意味がダブり気味になりますが、趣味の問題の範囲で、重言とまではいえないと思います。
B群の接続詞は、接続詞と文末をセットで使ってもよいし、接続詞を削除して文末だけで意味を表しても構いません。しかし、接続詞だけで使うときには、文末が「係り結ばず」にならないように注意する必要があります。
★ページで、「削除してもヘンでない接続詞が見つかることもよくあります」と書いたのは、具体的にはこういうことです。ここで例にあげた4つの接続詞は、そのまま削除しても問題がありません。
ほかの接続詞について考えてみましょう。
A群と同様に「推量」などを表す「あるいは」「もしかすると」は、用法で見ると「なぜなら」のタイプです。そのまま削除しても構いませんが、接続詞だけで使うとヘンな感じになります。「したがって」は意味的にも用法的にも「つまり」に近い感じがあり、そのまま削除できることが多い接続詞です。
しかし、当然のことながらそのまま削除できない接続詞もあります。「逆接」などを表す「しかし」「ところが」などは、通常は削除できません。
接続詞をそのまま削除できるか否かは、前後の文脈にもかかわってくるので、一概にはいえないことも多いようです。実際の文章の中で個々に考えるべきでしょう。★ページでも書いたように、文章を書いているときには神経質になる必要はありません。ただし、書きあがった文章を読み直して接続詞が多いと感じたときには、「そのまま削除できないか」「文末などを工夫すれば削除できないか」と考えてみてください。
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