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読書感想文『裏声で歌へ君が代』(丸谷才一/新潮文庫/平成2年7月25日発行)

 下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2020.html
日本語アレコレの索引(日々増殖中)【8】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1821744441&owner_id=5019671

mixi日記2012年03月25日から

 平成2年発行ってことは1990年か。なんでこんな本をもっていて、なんでこの時期に読みはじめたのか書きだすと長くなるのでパス。こういう名人のレベルの文章にナンクセをつけるほどの度胸はなく、主として語彙を増やすためにメモしている。

【引用部】 
 秋も終りに近い日の午後五時だから外はもう宵闇(よいやみ)だから地下鉄の駅のなかは螢光燈(けいこうとう)の白い光で扁平に染められてゐて、どこにも影はない。(P.5)
 書き出しの一文にビックリする。何にビックリしたかと言うと「ゐて」。旧かなを使っている……ではなく、「いて」と書いても事情はかわらない。古い世代の物書きは、こういうときには「おり」と書くのだとばかり思っていた。

【引用部】
目まぜした(P.25)
■Web辞書『大辞泉』から
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=%E7%B9%A7%E2%88%9A%E2%88%AA%E7%B8%BA%EF%BF%BD&stype=0&dtype=0
================================引用開始
め‐まぜ【目交ぜ/▽瞬】
[名](スル)
1 目で合図をすること。目くばせ。
  「無言で―して帰り仕度をはじめ」〈太宰・新釈諸国噺〉
2 まばたきすること。
  「―せはしくたちすくみ」〈浮・男色大鑑・三〉
================================引用終了
 当方の語彙だと「目配せ」はあっても「目まぜ」はない。

【引用部】
高度成長経済のせいで(P.85)
高度成長経済がはじまり(P.107)
高度成長経済はうまくゆきましたね(P.495)
高度成長経済ではさういふ存在を認めた(P.495)
 たぶんあえて「確信犯的」に(重言?)使っている。
 当方の語感だと「高度経済成長」。もちろんどちらも間違いではないだろう。意味が微妙に違う気もするが、正確なところはわからない。
“高度成長経済”のGoogle検索結果 約 120,000 件
“高度経済成長”のGoogle検索結果 約 2,950,000 件
 ヒット数はかなり差がある。しかも前者にはあやしいものがゴロゴロ。

【引用部】
これは一つには、騒ぎをまったく傍観してゐた父が珍しく口を出して、いちおう大田黒の意見を聞いてみるのもよかろうと賛成したからである。(P.133)
「一つには」があって、「もう一つ」はない。これは同じ著者の評論の類いでも目にした。別に間違いではないけど……。

【引用部】
鶴見祐輔の文章を違って口調も悪いのに。(P.166)
 うーん。鶴見祐輔ってそんなに名文家だったろうか。

【引用部】
常日ごろ(P.176)
 丸谷才一が「地の文」で使うんだから、「常日頃は重言」なんて言っちゃダメなんだろうな。

【引用部】
肩書のほうは細い万年筆で見せ消ちになってゐる(P.232)
■Web辞書『大辞泉』から
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=%E8%A6%8B%E3%81%9B%E6%B6%88%E3%81%A1&stype=0&dtype=0
================================引用開始
みせ‐けち【見せ▽消ち】
《「けち」は動詞「け(消)つ」の連用形から》誤写・誤記の文字の訂正のしかたの一。写本などで、もとの文字が読めるように、傍点をつけたり、その字の上に細い線を引いたりするなどして、誤りであることを示す。
================================引用終了
 ひとつ勉強になった。

【引用部】
 これを聞いて梨田が、
「うーむ」
 と唸ったきり絶句したのは、一つにはペルリと明治維新と神武天皇といふ取合せに意表を衝(つ)かれたせいもあるが、それだけではなく、むしろ、この台湾人が明治維新に対していだいてゐる尊敬の念、日本が近代国家を作りあげたことへの羨望(せんぼう)の思ひがをかしな議論のせいでよくわかって、ひどく感銘を受けたためであったろう。(P.236)
 一文が長い、とインネンをつけてもムダだな。多少長くても、わかりにくくも読みにくくもない。ただ、だから長い一文もOK、と考えるのはきわめて危険。
「一つには」を「それだけではなく」で受けている。これはこれでアリなんだろうな。ただ、「一つには」の必要性は感じない。

【引用部】
仕方話(P.329)
■Web辞書『大辞泉』から
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=%E4%BB%95%E6%96%B9%E8%A9%B1&stype=0&dtype=0
================================引用開始
しかた‐ばなし【仕方話/仕方×噺】
身ぶり・手ぶりをまじえてする話。また、それを取り入れた落語。
================================引用終了
 ひとつ勉強になった。

【引用部】
理非曲直(P.332)
■Web辞書『大辞泉』から
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=%E7%90%86%E9%9D%9E%E6%9B%B2%E7%9B%B4&stype=0&dtype=0
================================引用開始
りひ‐きょくちょく【理非曲直】
道理に合っていることと合っていないこと。不正なことと正しいこと。「―を正す」
================================引用終了
 これはさすがに記憶にはあるけど、自分で使ったことはない。

【引用部】
 それをぎごちなく笑ってから、女は急にすらすらと語りだした。(P.354)
 この時代になっても、ちゃんと「ぎごちなく」を使う人は使う(笑)。

【引用部】
揣摩憶測(P.361)
 Macintoshの「ことえり」は一発変換した。なんか負けた気分。
■Web辞書『大辞泉』から
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=%E6%8F%A3%E6%91%A9%E6%86%B6%E6%B8%AC&stype=0&dtype=0
================================引用開始
しま‐おくそく【×揣摩憶測/×揣摩臆測】
[名](スル)自分だけの判断で物事の状態や他人の心中などを推量すること。当て推量。
  「恐らくは―に過ぎないであろう」〈谷崎・春琴抄〉
================================引用終了

【引用部】
しかし陸軍二等兵としての彼は、もう、敵を殺すことを(そして自分が敵として殺されることを)肯定してゐなかったのに、軍隊は彼にさうすることを命じてゐたし、その命令はもとをたどれば国家から下されてゐて、それに背くことは許されない。(P.378~379)
 冒頭と同じ「ゐて」の形。ほかにもあったか否かまったく自信がない。ただこの形は「いたので」などにすれば(多少ニュアンスはかわるが)避けることができるので、使わなくても問題はない。

【引用部】
学会に出たり、家族そろつて食事するのは日曜だけだったり。(P.438)
 相当崩した形にしても、「片たり」にしないのはサスガ。(←誰に向かって!)

【引用部】
排気ガス(P.473)
 これも厳密に言えば重言らしいが、「排ガス」はみっともないので個人的には「排気ガス」を使う気がする。

【引用部】
やはりお話しなくちゃ(P.540)
 これもあえてやっているのだろう。一般的なルールだと「お話ししなくちゃ」だと思う。格調高い(「古くさい」とも言える)文章を書く人ほど送り仮名が少ない傾向がある気がする。送り仮名が多いと「文章にしまりがなくなる」って意見を読んだことがある。共感を覚えなくはない。

【引用部】
日本人らしい少女がゐて、所在なげに画集を見てゐた。(P.571)
 3回目(?)の「ゐて」。
■Web辞書『大辞泉』から
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=%E3%81%97%E3%82%87%E3%81%96%E3%81%84%E3%81%AA%E3%81%84&stype=0&dtype=0
================================引用開始
しょざい‐な・い【所在無い】
[形][文]しょざいな・し[ク]することがなくて退屈だ。手持ちぶさただ。「―・く週刊誌をめくる」
[派生] しょざいなげ[形動]しょざいなさ[名]
================================引用終了
 さすがにこれは知っている(笑)。自分で使ったことはあるかなぁ。
 素朴な疑問なんだけど、辞書にあるような「所在なく~」なんて使い方もあるのだろうか。記憶では「所在なげ」しかない。
 あれ? 漢字で書くと「所在無い」なの? だとしたら「所在なさげ」じゃないの。
 Googleの検索結果。
“所在なく” 約 60,000 件
“所在なさげ” 約 359,000 件
“所在なげ” 約 88,900 件
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