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「ご挨拶にお伺いさせていただきます」

 下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2020.html
日本語アレコレの索引(日々増殖中)【8】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1821744441&owner_id=5019671

mixi日記2012年04月03日から
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1835110167&owner_id=5019671

 テーマサイトは下記。
【これって正しいですか? 「ご挨拶にお伺いさせていただきます」】
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1383384438

 テーマトピは下記。
【「ご挨拶にお伺いさせていただきます」はなぜヘンな言い方ですか】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=68622653

 当方が立てたテーマトピの「0」を一部省略して転載する。
================================引用開始
「ご挨拶にお伺いさせていただきます」はなぜヘンな言い方ですか

 下記のサイトを読んで疑問に思いました。
【これって正しいですか? 「ご挨拶にお伺いさせていただきます」】
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1383384438

1)ご挨拶にお伺いさせていただきます
2)ご挨拶にお伺いいたします
3)ご挨拶にお伺いします
4)ご挨拶に伺わせていただきます

 1)~4)のうち、どれがダメな二重敬語で、どれが許容されている二重敬語で、どれが「くどい言い方」なのでしょうか。
================================引用終了

 テーマサイトに出てきた4つの例文について考える。どれも「間違い」ではないはず。当然どれが「正しい」という問題でもない。ただ、細かく見ていくとちょっと(では済まない?)違いがあって、どこまで許容できるのかは個人差があるだろう。
 Yahoo!知恵袋を読んでやや混乱した。2)~4)は修正案として提示されているのだが……。
 トピにいただいたコメントを読んでかなりわかったような気がする。いただいたコメントを参考(誤用?)にしつつ(「いいとこ取り」とも言う)、例によってクダクダと書いていく。

「原形」とも言えるのが「伺う」。
■Web辞書『大辞泉』から
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=%E4%BC%BA%E3%81%86&stype=0&dtype=0
================================引用開始
うかが・う〔うかがふ〕【伺う】
[動ワ五(ハ四)]《「窺う」と同語源。目上の人のようすをうかがいみる意から、その動作の相手を敬う謙譲語となる》
1 「聞く」の謙譲語。拝聴する。お聞きする。「おうわさはかねがね―・っております」
2 「尋ねる」「問う」の謙譲語。「この件について御意見をお―・いします」
3 「訪れる」「訪問する」の謙譲語。「明朝、こちらから―・います」
4 神仏の託宣を願う。「御神託を―・う」
5 《「御機嫌をうかがう」の意から》寄席などで、客に話をする。また、一般に、大ぜいの人に説明をする。「一席―・う」
[可能] うかがえる
================================引用終了

 例文になっているのは〈3 「訪れる」「訪問する」の謙譲語。〉だろう。より厳密に言うと謙譲語I。
 これを謙譲語Iの「お~する」と組み合わせたのが「お伺いする」。通常ならバキバキの二重敬語だが、一般には許容されている。
629)【文化庁「敬語の指針」に対する言いたい放題】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1798665663&owner_id=5019671
「敬語の指針」p.30から====================引用開始
(2) 「二重敬語」とその適否
 一つの語について,同じ種類の敬語を二重に使ったものを「二重敬語」という。例えば「お読みになられる」は「読む」を「お読みになる」と尊敬語にした上で,更に尊敬語の「……れる」を加えたもので,二重敬語である。
「二重敬語」は,一般に適切ではないとされている。ただし,語によっては,習慣として定着しているものもある。
【習慣として定着している二重敬語の例】
 ・(尊敬語)お召し上がりになる,お見えになる
 ・(謙譲語I)お伺いする,お伺いいたす,お伺い申し上げる
================================引用終了

「お伺いする」だけではなく「お伺いいたす」「お伺い申し上げる」まで許容されている。「習慣として定着している」か否かの基準は不明。
 2)ご挨拶にお伺いいたします
 3)ご挨拶にお伺いします
 は文化庁が許容したものを丁寧語(~ます)にした形なので、「許容されている二重敬語」ってことになる。
 ちなみに「お伺いいたす」は「伺い」+「お~する」+「~いたす」の三重構造と考えることもでき、この段階でクドいと言えば相当クドい。
 二重敬語のうえに三重構造は×、と考えることもできる。その一方で、文化庁が許容しているから○、と考えることもできる(たしかに「定着している」って気はするし)。
「お伺いいたす」を〈「お伺いする」+「~いたす」〉と考えると、「拝見いたす」(「拝見する」+「~いたす」)と同様と言えなくはない。三重構造の「お伺いいたす」に相当するなら「ご拝見いたす」ではないのか、って話は無視する。

 4)ご挨拶に伺わせていただきます
「伺う」+「させて」+「いただく」+「ます」
 これは「ご挨拶に」を除くと「拝見させていただきます」と同様と言ってもよいだろう。
  伺う→「訪れる」の謙譲語I
  させて→使役などの意味の助動詞「させる」の連用形+助詞「て」
  いただく→「もらう」の謙譲語I
  ます→丁寧語
「敬語連結」であって「二重敬語」でさえない。その意味では非難される理由はない。
 悪名高き「させていただく」が使われているが、「訪れる」ことに関する許可を求め、そのことによって「受益」がありそうだから問題はないだろう。ただ、これがオススメできるかと言うと疑問。
【関連トピ紹介】10──敬語の話2 「~させていただく」は是か非か
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=45983063
 2)と4)に関しては、「拝見いたします」「拝見させていただきます」と微妙に関係していると思う。下記のコメント[4]までを参照してほしい。[5]以降はお好みで……。
【「拝見する」の使い方──「拝見いたします」「拝見させていただきます」は二重敬語?】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=67150294&comm_id=398881

 最後は元々の例文。
1)ご挨拶にお伺いさせていただきます
 これは4)の「伺う」を「お伺いする」(許容されている二重敬語)にかえたもの。
 文化庁が許容しているのだから、「間違い」とは言えない。ただ、これは4)よりもさらにクドい(はず)。


 ここから先は当方の主観(いえその、ここまでも主観が入っているけど……)。 
 質問したトピでは、ほぼ全員が「ご挨拶に伺います」派。Yahoo!知恵袋に出てきた例文は全滅(笑)。みなさん厳しい。「ご挨拶に」が影響している観もある。
 最もシンプルな形とも言える「5)ご挨拶に伺います」を加えて比べてみる(Yahoo!知恵袋にこの形が出ていないのはなぜなんだろう)。
1)ご挨拶にお伺いさせていただきます
2)ご挨拶にお伺いいたします
3)ご挨拶にお伺いします
4)ご挨拶に伺わせていただきます
5)ご挨拶に伺います

 このうち、1)2)3)は許容されている二重敬語を含む。たとえ許容されていても二重敬語は避けるべき、という考え方もアリだろう。
 クドさの程度で考えると、たぶん以下のようになる。下に行くほどクドくなるという意味。二重敬語を使っていない4)の位置づけは微妙かも。
5)ご挨拶に伺います
  ↓
3)ご挨拶にお伺いします
  ↓
2)ご挨拶にお伺いいたします
  ↓
4)ご挨拶に伺わせていただきます
  ↓
1)ご挨拶にお伺いさせていただきます

 個人的な感覚では、3)が許容できるか否かの境界線で、2)はアウトだろう。このへんはかなり微妙で、過剰気味の敬語が蔓延していると、5)では敬度不足ととられかねない。
 これが「ご挨拶に」を「明日、(読み方は「みょうにち」もしくは「あす」。この文脈だと「あした」はちょっとヘン)」にすると、敬語の重複感が軽減するのでちょっと事情がかわる。「明日、」だったら、3)は許容範囲で、2)も相手によってはアリかも、って気になる。

 敬語の重複感に関して『敬語再入門』http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1824714512&owner_id=5019671は下記のように書いている。著者は「敬語の指針」を作成した(主要)メンバーのひとり。この本は信頼してるんだけどさぁ……。
================================引用開始
このように、各語がそれぞれ敬語になり、それをつなげただけのものは、二重敬語と呼ぶべきものではありません。実際、「お読みになっていらっしゃる」は正しい敬語です。「お嬢様はお手紙をお書きになっていらっしゃる」も、四つの別の敬語をつなげただけで、四重敬語などとは言いません。この文も、多少くどくはありますが、問題のない敬語で、言葉の丁寧な人なら、この程度の敬語は使います。(P.148)
================================引用終了

 やはり個人差は大きい(笑)。こういう風に言われちゃうと……たぶん「言葉の丁寧な人」なら「ご挨拶にお伺いさせていただきます」程度の敬語も使うんだろうな。
 少なくとも「敬語の指針」や『敬語再入門』を見る限る、「お伺いいたす」は許容範囲だし、「ご挨拶」や「させていただきます」との併用を×にする根拠はない気がする。そうなると、「クドい」「クドくない」は個人の好みで判断するしかない、ってことになるのだろうか。
「ご挨拶にお伺いさせていただきます」は相当クドくて相当ヘンだと思う。Yahoo!知恵袋でもmixiのトピでも、細かい点は別として、これを支持している人はいない。でも……ちゃんと説明するにはかなりの力業が必要になりそう。なんかハガユい。
 
 結論。
 やっぱり文化庁の「敬語の指針」は嫌いだ。(←オイ!)
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