突然ですが問題です【日本語編135】── 「お客様」「ご尊父様」は二重敬語?
下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2020.html
日本語アレコレの索引(日々増殖中)【9】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1854387407&owner_id=5019671
mixi日記2012年08月26日から
【問題】
下記の言葉について質問に答えなさい。
1)ご利用客様
2)お客様
3)お父様
4)ご尊父様
【問1】
二重敬語になっているものを選びなさい。
【問2】
不自然に感じられるものをあげ、理由を答えなさい。
【参考サイト】
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1292143347
【解答?例】
【問1】
一般には、どれも二重敬語ではない。
【問2】
「ご利用客様 」は不自然だが、論理的に理由を示すことはむずかしそう。
【よくわからない解説】
●「お/ご~様」は二重敬語か
接頭語の「お/ご」は、尊敬語、謙譲語、丁寧語、美化語の4種類がある。↑の1)~4)は、尊敬語と考えるのが素直だろう。
【読書感想文/『敬語再入門』(菊地康人/講談社学術文庫/2010年3月10日第1刷発行)】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2327.html
================================引用開始
【引用部】
なお、一つの語がいくつかの用法をもつ場合もあります。§48では、「お手紙」のように尊敬語・謙譲語I両方の用法をもつ主な語をリストしましたが、その中でも「おみやげ」などは、「先生からのおみやげ」(尊敬語)・「先生へのおみやげ」(謙譲語I)のほか「子どもへのおみやげ」のように美化語としても使います(あるいは、初めの二つも美化語と見てしまったほうがよいのかもしれません)。(P.124)
接頭語の「お/ご」の解説のなかにある記述。「お/ご」は〈機能〉の面から見ると4種類ある。
1)尊敬語
2)謙譲語I
3)丁寧語
「お暑いですね」「お寒うございます」
4)美化語
下記に書いたように、3つの〈機能〉をもつ「お/ご」はほかにもありそう。
673)緊急! 突然ですが問題です【日本語編92】──「お料理」「お手紙」の「お」の意味 【解答?編】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1813769245&owner_id=5019671
本書の解説中にあるようにすべてを「美化語」と考えるほうがいいのかもしれない。
================================引用終了
一方、「様」は「尊敬の意味を表す接尾語」くらいでいいだろう。
【「様」考】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1609.html
『敬語再入門』のは、「様」に関する記述がほとんどない。元本とも言える『敬語』のほうではP.239~の「6 名詞・形容詞などについての尊敬語」のなかで少し出てくるが、『敬語再入門』の同項目には何も出てこない。ずいぶん軽んじられている。『敬語』P.244には、「様」の用例として「お母様」「お客様」が出てくる。それが二重敬語になるなんて記述はない。
二重敬語の定義に関しては、文化庁の「敬語の指針」を見ておく。
【チャレンジ日記──二重敬語】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2422.html
================================引用開始
(2) 「二重敬語」とその適否
一つの語について,同じ種類の敬語を二重に使ったものを「二重敬語」という。例 えば,「お読みになられる」は,「読む」を「お読みになる」と尊敬語にした上で,更 に尊敬語の「......れる」を加えたもので,二重敬語である。
「二重敬語」は,一般に適切ではないとされている。ただし,語によっては,習慣として定着しているものもある。
【習慣として定着している二重敬語の例】
・(尊敬語) お召し上がりになる,お見えになる
・(謙譲語I)お伺いする,お伺いいたす,お伺い申し上げる
================================
ちなみに『敬語』『敬語再入門』の著者は「敬語の指針」にかかわっている人なので、見解はほぼ同じと言っていい。
どうやら二重敬語は動詞に限り、名詞に「お/ご」と「様」の両方がついた形などは、二重敬語とは呼ばないらしい。
ある言葉に「お/ご」と「様」の両方がついた形が不自然に感じられるとしたら、それは慣例の問題であって、二重敬語の問題ではない。
↑の1)~4)のうち、2)~3)はフツーに使われる。このほか、お殿様、お嬢様など、フツーに使われる例は多い。4)はきわめて敬度が高い言い回しなので使用例が限られる気がする(弔電など)が、別に問題のある言い方ではない。
【「様」考】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1609.html
「お/ご」と「様」はどちらも尊敬語だから二重敬語、という考え方はできなくはないかも。もしこれが二重敬語で、「習慣として定着している二重敬語」だから許容されているのなら、文化庁の重大な手抜かりになる。疑問のあるかたは文化庁にお問い合わせください。
●「ご利用客様」はなぜ不自然か
「ご利用客様」は二重敬語ではないと思われるのに、不自然なのはなぜか。これがわからない。
【参考サイト】 の回答にある〈「利用客」という表現が、「(○○を)利用<する>客」という表現を短縮した形の熟語だから〉が説明になっているような気もする。しかし、「顧客」や「愛用者」の場合はどうなるのか、という疑問が残る。
迷路に入ってトピも立ててみた。スッキリした答えにはたどり着けていないが、いくつかヒントをもらった。
「客」とよく似た使われ方をするのは「者」だろう。「人」も似ているが、「お/ご」がつかないので、ここでは外して考える。
【「ご利用客様」は二重敬語ですか?】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=71193828
直接呼びかける場合、「○○様、○○を落とされましたよ」で考えると、「お客様」以外は入りにくい。「お客様」はいろいろな意味で例外なのかもしれない。
・直接呼びかける場合に使える
・「お客」だとほとんど敬語ではなく、「様」が必要
・「ご利用のお客様」のような使い方ができる(「皆様」「方々」に近い)
困るのは、こういうのは見慣れてくると異和感が薄れること。
そのせいもあって、ここから先は、かなり主観的な書き方になる。
はじめは「お客様」以外で許容できるのは「ご愛用者」くらいかな、と思っていた。「ご愛用者様」はちょっと異和感があった。いろいろ見ているうちに、「これもアリかな」と思える例が段々ふえてきた。
なんとなくの印象だと、「○○客」より「○○者」のほうが、いくらか「お/ご」との相性がいいのかもしれない。
ただ、「客」も「者」も「お/ご」をつけるなら、「~の皆様」にするほうが無難で、「~の方々」「~(客/者)の方々」のほうがもっと無難だと思う。「~(客/者)の皆様」だと少し重複感があるが、「~(客/者)の方々」だとさほど気にならない。

日本語アレコレの索引(日々増殖中)
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日本語アレコレの索引(日々増殖中)【9】
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mixi日記2012年08月26日から
【問題】
下記の言葉について質問に答えなさい。
1)ご利用客様
2)お客様
3)お父様
4)ご尊父様
【問1】
二重敬語になっているものを選びなさい。
【問2】
不自然に感じられるものをあげ、理由を答えなさい。
【参考サイト】
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1292143347
【解答?例】
【問1】
一般には、どれも二重敬語ではない。
【問2】
「ご利用客様 」は不自然だが、論理的に理由を示すことはむずかしそう。
【よくわからない解説】
●「お/ご~様」は二重敬語か
接頭語の「お/ご」は、尊敬語、謙譲語、丁寧語、美化語の4種類がある。↑の1)~4)は、尊敬語と考えるのが素直だろう。
【読書感想文/『敬語再入門』(菊地康人/講談社学術文庫/2010年3月10日第1刷発行)】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2327.html
================================引用開始
【引用部】
なお、一つの語がいくつかの用法をもつ場合もあります。§48では、「お手紙」のように尊敬語・謙譲語I両方の用法をもつ主な語をリストしましたが、その中でも「おみやげ」などは、「先生からのおみやげ」(尊敬語)・「先生へのおみやげ」(謙譲語I)のほか「子どもへのおみやげ」のように美化語としても使います(あるいは、初めの二つも美化語と見てしまったほうがよいのかもしれません)。(P.124)
接頭語の「お/ご」の解説のなかにある記述。「お/ご」は〈機能〉の面から見ると4種類ある。
1)尊敬語
2)謙譲語I
3)丁寧語
「お暑いですね」「お寒うございます」
4)美化語
下記に書いたように、3つの〈機能〉をもつ「お/ご」はほかにもありそう。
673)緊急! 突然ですが問題です【日本語編92】──「お料理」「お手紙」の「お」の意味 【解答?編】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1813769245&owner_id=5019671
本書の解説中にあるようにすべてを「美化語」と考えるほうがいいのかもしれない。
================================引用終了
一方、「様」は「尊敬の意味を表す接尾語」くらいでいいだろう。
【「様」考】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1609.html
『敬語再入門』のは、「様」に関する記述がほとんどない。元本とも言える『敬語』のほうではP.239~の「6 名詞・形容詞などについての尊敬語」のなかで少し出てくるが、『敬語再入門』の同項目には何も出てこない。ずいぶん軽んじられている。『敬語』P.244には、「様」の用例として「お母様」「お客様」が出てくる。それが二重敬語になるなんて記述はない。
二重敬語の定義に関しては、文化庁の「敬語の指針」を見ておく。
【チャレンジ日記──二重敬語】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2422.html
================================引用開始
(2) 「二重敬語」とその適否
一つの語について,同じ種類の敬語を二重に使ったものを「二重敬語」という。例 えば,「お読みになられる」は,「読む」を「お読みになる」と尊敬語にした上で,更 に尊敬語の「......れる」を加えたもので,二重敬語である。
「二重敬語」は,一般に適切ではないとされている。ただし,語によっては,習慣として定着しているものもある。
【習慣として定着している二重敬語の例】
・(尊敬語) お召し上がりになる,お見えになる
・(謙譲語I)お伺いする,お伺いいたす,お伺い申し上げる
================================
ちなみに『敬語』『敬語再入門』の著者は「敬語の指針」にかかわっている人なので、見解はほぼ同じと言っていい。
どうやら二重敬語は動詞に限り、名詞に「お/ご」と「様」の両方がついた形などは、二重敬語とは呼ばないらしい。
ある言葉に「お/ご」と「様」の両方がついた形が不自然に感じられるとしたら、それは慣例の問題であって、二重敬語の問題ではない。
↑の1)~4)のうち、2)~3)はフツーに使われる。このほか、お殿様、お嬢様など、フツーに使われる例は多い。4)はきわめて敬度が高い言い回しなので使用例が限られる気がする(弔電など)が、別に問題のある言い方ではない。
【「様」考】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1609.html
「お/ご」と「様」はどちらも尊敬語だから二重敬語、という考え方はできなくはないかも。もしこれが二重敬語で、「習慣として定着している二重敬語」だから許容されているのなら、文化庁の重大な手抜かりになる。疑問のあるかたは文化庁にお問い合わせください。
●「ご利用客様」はなぜ不自然か
「ご利用客様」は二重敬語ではないと思われるのに、不自然なのはなぜか。これがわからない。
【参考サイト】 の回答にある〈「利用客」という表現が、「(○○を)利用<する>客」という表現を短縮した形の熟語だから〉が説明になっているような気もする。しかし、「顧客」や「愛用者」の場合はどうなるのか、という疑問が残る。
迷路に入ってトピも立ててみた。スッキリした答えにはたどり着けていないが、いくつかヒントをもらった。
「客」とよく似た使われ方をするのは「者」だろう。「人」も似ているが、「お/ご」がつかないので、ここでは外して考える。
【「ご利用客様」は二重敬語ですか?】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=71193828
直接呼びかける場合、「○○様、○○を落とされましたよ」で考えると、「お客様」以外は入りにくい。「お客様」はいろいろな意味で例外なのかもしれない。
・直接呼びかける場合に使える
・「お客」だとほとんど敬語ではなく、「様」が必要
・「ご利用のお客様」のような使い方ができる(「皆様」「方々」に近い)
困るのは、こういうのは見慣れてくると異和感が薄れること。
そのせいもあって、ここから先は、かなり主観的な書き方になる。
はじめは「お客様」以外で許容できるのは「ご愛用者」くらいかな、と思っていた。「ご愛用者様」はちょっと異和感があった。いろいろ見ているうちに、「これもアリかな」と思える例が段々ふえてきた。
なんとなくの印象だと、「○○客」より「○○者」のほうが、いくらか「お/ご」との相性がいいのかもしれない。
ただ、「客」も「者」も「お/ご」をつけるなら、「~の皆様」にするほうが無難で、「~の方々」「~(客/者)の方々」のほうがもっと無難だと思う。「~(客/者)の皆様」だと少し重複感があるが、「~(客/者)の方々」だとさほど気にならない。

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