よくある誤用7──ネットが広めた誤用 ご教授ください ご存知のとおり 直裁な言い方
近年急速に広まっている誤用のほとんどは、ネットが関係している気がします。
なかには、ネット上のやり取りから生まれたと思われるものもあります。
ご教授ください
================================引用開始
微妙な例で真っ先に浮かぶのは、「ご教授ください」。
これは誤用で「ご教示ください」が正しい、と主張する人がいる。当方はそこまで主張する気にはなれない。
「教授」をネット辞書(『大辞泉』)で引く。
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=教授&stype=0&dtype=0
きょう‐じゅ〔ケウ‐〕【教授】
[名](スル)
1 学問や技芸を教え授けること。「書道を―する」
2 児童・生徒・学生に知識・技能を授け、その心意作用の発達を助けること。
3 大学や高等専門学校・旧制高等学校などで、研究・教育職階の最高位。また、その人。「大学―」
〈[名](スル)〉になっているから、「教授する」は文法的には間違っていない。したがって、「ご教授します」も「ご教授ください」も間違いではない。
文法的には間違っていないが、一般的に使うか否かは別の話になる。
こうなると辞書は役に立たず、主観の問題になってくる。
個人的には、「ご教授ください」は使わないし、相当異和感がある。これを使うとしたら、偉い人が偉そうに語る場合。
「ご教授いたそう」
それは偉そうだな(笑)。専門的で高度な知識なら「ご教授」でもいい気がする。
ネットで使われる例は、「○○について教えてください」くらいの意味だから。「教えてください」で十分だと思う。「教えていただけませんか」くらいのほうが丁寧か。少し改まった感じにするなら「ご教示ください」だろう。
一般的に考えても、「ご教授」するからには、それなりの内容でなくては困る。辞書の「1」例にある「書道を教授する」はアリだろう。これは逆に「教示する」にはしにくい。
実際に目にする例だと、囲碁・将棋(これは「技芸」だろうか)だろう。その場合は「(一局)ご指南ください」「(一局)ご指南いたしましょう」とか言う。「指南」は少し語感が古いから、現代なら「指導」のほうが自然かもしれない。
「ご教授ください」が広まったのは、おそらくそのほうが「ご教示」より丁寧な印象があるみたいに誤解されたから。それがネットで使われるようになってとんでもないスピードで流布した。もはや止めようがない気がする。
こういう例はほかにもあるんだろうな。
================================引用終了
ご存知のとおり
================================引用開始
「存知」は言葉としては存在するが、「ぞんち」(もしくは「ぞんぢ」)と読む別の言葉。
「ご存知でしょうが」とするのは誤用と言ってしまっていいだろう。
ところが、この用例が異様に多い。グーグル検索で「ご存知」を検索すると、約17,500,000 件もある。
なかには、テレビドラマのタイトルまである。
http://ja.wikipedia.org/wiki/ご存知!旗本退屈男
これは、一部の変換ツールが「ごぞんじ」で「ご存知」と変換するからとしか思えない。当方はマイクロソフト系があやしいと睨んでいる。どなたか検証してください。
手元の『朝日新聞の用語手びき』の使い分けを確認した。いつもは表記の話だと真っ先にこれをひくんだけど、なぜかやっていなかった。単純な表記の問題と考えてなかったんだろうな。
「御」と「お」の使い分けに関しては記載がない。まあ、「お」にするものだろう。
「御」と「ご」の使い分けに関して。
〈接頭語〉は「ご」。これは「一般の接頭語」ということだろう。
ご縁/ご協力/ご多分に漏れず/ご本尊
〈接頭語のうち漢字で書く習慣が強いものや、固有名詞に近いもの〉は「御」。
御所/御前試合/御用邸……etc.
ちなみに、「ごぞんじ」に関しては単独の項目があり、〈御存知→ご存じ〉になっている。
今度は『記者ハンドブック』(共同通信社)をひく。「御」と「お」の使い分け、「御」と「ご」の使い分けに関してはほぼ同様。「ご」の用例のなかに「ご存じ」が入っている。
こう見ていくと、「ご存知」と書く理由はない。
================================引用終了
直裁な言い方
あまりにも誤用が多いせいか、Web辞書は「直截」の慣用読みとして「ちょくさい」を認めたようです。とは言え、「直裁な言い方」の類いまでは認めていません(これはさすがに認めないでしょう。当分の間は……)。
================================引用開始
これは問題の根が深い。
何よりの証拠に「直裁」で検索すると約278万件も(!)引っかかってくる。もちろん、正しく「直裁」の意味(「ただちに裁決する」くらいの意味)で使っている例もあるんだろうけど、そんなに使用頻度の高い言葉ではないから大半は誤用だろう。
「直裁」は意味が違うから、正しくは「直截」。「直截」で検索すると、約18.3万件。誤用の10分の1以下(笑)。
まず問題は「直截」をなんて読むか。一般には「ちょくさい」の気がする。それは慣用読みで、正しくは「ちょくせつ」。慣用読みにあれほど寛容(単なる偶然です。ダジャレのつもりはありません)で片端から無節操に採用しているIMEが、「ちょくさい」を採用していないらしい。Macintoshのことえりが採用していないことは少し前に気づいていた。今回のことから判断すると、MS-IMEも採用していない。そりゃダメだよ。「ちょくさい」だと思い込んでいる人が、変換して「直裁」しか出てこなきゃ、字が似ているから絶対この字が正しいと思っちゃうよ。
【20110226追記】
最近、「直裁」のほかに「直載」と書く例もふえているらしい。
http://www.google.co.jp/search?client=safari&rls=ja-jp&q=直載&ie=UTF-8&oe=UTF-8&redir_esc=&ei=n3FoTeq4CYbuvQOBh4DkAg
いまさらながら「直截」を辞書でひいてみた。Web辞書は「慣用読み」として「ちょくさい」を認めている。まあ、これだけ誤読が増えるとしょうがないよな。
■Web辞書(『大辞泉』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch/0/0na/14730712185100/
===============
ちょく‐せつ【直×截】
[名・形動]《慣用読みで「ちょくさい」とも》
1 すぐに裁断を下すこと。また、そのさま。「―な(の)処置」
2 まわりくどくなく、ずばりと言うこと。また、そのさま。「簡明―な表現」
===============
■Web辞書(『大辞林』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=ちょくせつ&dtype=0&dname=0ss&stype=0&index=112878100000&pagenum=1
===============
ちょくせつ0 【直▼截】
(名・形動)
[文]ナリ
[1]まわりくどくないこと。ずばりということ。また、そのさま。
―簡明
語を出すに軽快にして―なる〔出典: 即興詩人(鴎外)〕
[2]ためらわずただちに決裁すること。
〔補説〕 「ちょくさい」は慣用読み
===============
================================引用終了
下記あたりも相当危うい気がします。これに関しては改めて。
すべからく
ほしいままにする
くみしやすい
詳しくは下記をご参照ください。
【ネットが広めた誤用……etc.──「教授する」か「教示する」か】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-869.html
【ネットが広めた誤用……etc.2──「ご存じのとおり」か「ご存知のとおり」か】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-903.html
【ちょっと気になる誤用の話──直裁ないいかたをする 直截 ちょくさい ちょくせつ 】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-294.html
なかには、ネット上のやり取りから生まれたと思われるものもあります。
ご教授ください
================================引用開始
微妙な例で真っ先に浮かぶのは、「ご教授ください」。
これは誤用で「ご教示ください」が正しい、と主張する人がいる。当方はそこまで主張する気にはなれない。
「教授」をネット辞書(『大辞泉』)で引く。
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=教授&stype=0&dtype=0
きょう‐じゅ〔ケウ‐〕【教授】
[名](スル)
1 学問や技芸を教え授けること。「書道を―する」
2 児童・生徒・学生に知識・技能を授け、その心意作用の発達を助けること。
3 大学や高等専門学校・旧制高等学校などで、研究・教育職階の最高位。また、その人。「大学―」
〈[名](スル)〉になっているから、「教授する」は文法的には間違っていない。したがって、「ご教授します」も「ご教授ください」も間違いではない。
文法的には間違っていないが、一般的に使うか否かは別の話になる。
こうなると辞書は役に立たず、主観の問題になってくる。
個人的には、「ご教授ください」は使わないし、相当異和感がある。これを使うとしたら、偉い人が偉そうに語る場合。
「ご教授いたそう」
それは偉そうだな(笑)。専門的で高度な知識なら「ご教授」でもいい気がする。
ネットで使われる例は、「○○について教えてください」くらいの意味だから。「教えてください」で十分だと思う。「教えていただけませんか」くらいのほうが丁寧か。少し改まった感じにするなら「ご教示ください」だろう。
一般的に考えても、「ご教授」するからには、それなりの内容でなくては困る。辞書の「1」例にある「書道を教授する」はアリだろう。これは逆に「教示する」にはしにくい。
実際に目にする例だと、囲碁・将棋(これは「技芸」だろうか)だろう。その場合は「(一局)ご指南ください」「(一局)ご指南いたしましょう」とか言う。「指南」は少し語感が古いから、現代なら「指導」のほうが自然かもしれない。
「ご教授ください」が広まったのは、おそらくそのほうが「ご教示」より丁寧な印象があるみたいに誤解されたから。それがネットで使われるようになってとんでもないスピードで流布した。もはや止めようがない気がする。
こういう例はほかにもあるんだろうな。
================================引用終了
ご存知のとおり
================================引用開始
「存知」は言葉としては存在するが、「ぞんち」(もしくは「ぞんぢ」)と読む別の言葉。
「ご存知でしょうが」とするのは誤用と言ってしまっていいだろう。
ところが、この用例が異様に多い。グーグル検索で「ご存知」を検索すると、約17,500,000 件もある。
なかには、テレビドラマのタイトルまである。
http://ja.wikipedia.org/wiki/ご存知!旗本退屈男
これは、一部の変換ツールが「ごぞんじ」で「ご存知」と変換するからとしか思えない。当方はマイクロソフト系があやしいと睨んでいる。どなたか検証してください。
手元の『朝日新聞の用語手びき』の使い分けを確認した。いつもは表記の話だと真っ先にこれをひくんだけど、なぜかやっていなかった。単純な表記の問題と考えてなかったんだろうな。
「御」と「お」の使い分けに関しては記載がない。まあ、「お」にするものだろう。
「御」と「ご」の使い分けに関して。
〈接頭語〉は「ご」。これは「一般の接頭語」ということだろう。
ご縁/ご協力/ご多分に漏れず/ご本尊
〈接頭語のうち漢字で書く習慣が強いものや、固有名詞に近いもの〉は「御」。
御所/御前試合/御用邸……etc.
ちなみに、「ごぞんじ」に関しては単独の項目があり、〈御存知→ご存じ〉になっている。
今度は『記者ハンドブック』(共同通信社)をひく。「御」と「お」の使い分け、「御」と「ご」の使い分けに関してはほぼ同様。「ご」の用例のなかに「ご存じ」が入っている。
こう見ていくと、「ご存知」と書く理由はない。
================================引用終了
直裁な言い方
あまりにも誤用が多いせいか、Web辞書は「直截」の慣用読みとして「ちょくさい」を認めたようです。とは言え、「直裁な言い方」の類いまでは認めていません(これはさすがに認めないでしょう。当分の間は……)。
================================引用開始
これは問題の根が深い。
何よりの証拠に「直裁」で検索すると約278万件も(!)引っかかってくる。もちろん、正しく「直裁」の意味(「ただちに裁決する」くらいの意味)で使っている例もあるんだろうけど、そんなに使用頻度の高い言葉ではないから大半は誤用だろう。
「直裁」は意味が違うから、正しくは「直截」。「直截」で検索すると、約18.3万件。誤用の10分の1以下(笑)。
まず問題は「直截」をなんて読むか。一般には「ちょくさい」の気がする。それは慣用読みで、正しくは「ちょくせつ」。慣用読みにあれほど寛容(単なる偶然です。ダジャレのつもりはありません)で片端から無節操に採用しているIMEが、「ちょくさい」を採用していないらしい。Macintoshのことえりが採用していないことは少し前に気づいていた。今回のことから判断すると、MS-IMEも採用していない。そりゃダメだよ。「ちょくさい」だと思い込んでいる人が、変換して「直裁」しか出てこなきゃ、字が似ているから絶対この字が正しいと思っちゃうよ。
【20110226追記】
最近、「直裁」のほかに「直載」と書く例もふえているらしい。
http://www.google.co.jp/search?client=safari&rls=ja-jp&q=直載&ie=UTF-8&oe=UTF-8&redir_esc=&ei=n3FoTeq4CYbuvQOBh4DkAg
いまさらながら「直截」を辞書でひいてみた。Web辞書は「慣用読み」として「ちょくさい」を認めている。まあ、これだけ誤読が増えるとしょうがないよな。
■Web辞書(『大辞泉』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch/0/0na/14730712185100/
===============
ちょく‐せつ【直×截】
[名・形動]《慣用読みで「ちょくさい」とも》
1 すぐに裁断を下すこと。また、そのさま。「―な(の)処置」
2 まわりくどくなく、ずばりと言うこと。また、そのさま。「簡明―な表現」
===============
■Web辞書(『大辞林』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=ちょくせつ&dtype=0&dname=0ss&stype=0&index=112878100000&pagenum=1
===============
ちょくせつ0 【直▼截】
(名・形動)
[文]ナリ
[1]まわりくどくないこと。ずばりということ。また、そのさま。
―簡明
語を出すに軽快にして―なる〔出典: 即興詩人(鴎外)〕
[2]ためらわずただちに決裁すること。
〔補説〕 「ちょくさい」は慣用読み
===============
================================引用終了
下記あたりも相当危うい気がします。これに関しては改めて。
すべからく
ほしいままにする
くみしやすい
詳しくは下記をご参照ください。
【ネットが広めた誤用……etc.──「教授する」か「教示する」か】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-869.html
【ネットが広めた誤用……etc.2──「ご存じのとおり」か「ご存知のとおり」か】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-903.html
【ちょっと気になる誤用の話──直裁ないいかたをする 直截 ちょくさい ちょくせつ 】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-294.html
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