よくある誤用21〜25
よくある誤用21──微妙な言葉の取説1
おめでとうございました ありがとうございました
微妙な言葉の取扱説明書です。
一概に「誤用」とは言えませんが、かなり微妙な問題を含むので、使い方には気をつけたほうがいい言葉をあげていきます。
おめでとうございました
スポーツの試合後のインタビューなどでアナウンサーが使うことがあります。基本的に過去形(正確な言い方ではないが、とりあえずこう呼ぶ)は×。「おめでとうございます」と現在形を使うべき。
「めでたかったのは過去のこと」(いまはもうめでたくない)という印象になりかねません。
ありがとうございました
これも基本的に過去形は×。
「ありがたかったのは過去のこと」(いまはもうありがたくない)という印象になりかねません。
「きょうはありがとうございました」 や「先ほどはありがとうございました」 のように時間を限定する意味合いの言葉がつくなら「ございました」でもいいかもしれません。
それでも「ありがとうございます」と現在形にしておくほうが無難でしょう。
過去に何回も質問が出ています。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1188895191
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1388093093
(以下略)
よくある誤用22──微妙な言葉の取説2
ご苦労さまです お疲れさまです ご苦労さまでございます
「ご苦労さま(です)」や「お疲れさま(です)」に関する話もよく見聞します。
基本的には、同格以下には「ご苦労さま(です)」、目上には「お疲れさまです」でいいでしょう。少し細かく見ていきます。
ご苦労さま/ご苦労さまです
相手の苦労や労力に対するねぎらいの言葉とされます。諸説あるようですが、目上に対しては基本的にNG。どうにも上から目線のニュアンスがあります。
時代劇でお殿様が家来をねぎらう「ご苦労であった」が典型的。
お疲れさま/お疲れさまです
では目上にはどう言えばいいのかが悩ましい。
会社内なら、「お疲れさまです」あたりが一般的でしょう。これも本来はねぎらいの言葉だから目上に使うべきではない、という説もあります。そのとおりですが、ほかに適切な言い回しがないもので。「ありがとうございます」をすすめる人もいますが、これは何かをしてもらったとき限定でしょう。
たとえば、時間外に廊下で重役と出くわしたとします。「ありがとうございます」は明らかにヘンなので、黙礼するくらいでしょうか。「お疲れさまでございます」などと言うと、「それは本来は……」と説教される可能性があります。
「お疲れさまです」は、同格以下に対しても使えます。
「お疲れ」→「お疲れさま」→「お疲れさまです」→「お疲れさまでございます」
くらいの順で敬度が高くなります。
ご苦労さまでございます
目上に対しては丁寧に「ご苦労さまでございます」と言えばいい、という説も見聞します。
あまり鵜呑みにしないほうがよいでしょう。「目上に対してご苦労なんてけしからん」と考えているお偉いさんが、目下の者に「ご苦労さまでございます」と言われたら、「その言い方なら丁寧だから許す」と考えると思いますか?
つまり、「ご苦労さまでございます」ならOK、というのは身勝手な論理です。
昔は任侠映画などで、出所した幹部を迎えに行って「お務め、ご苦労さまでございます」と言うシーンがあったような……。あれが許されるのはどういう理屈なんでしょうか。
詳しくは下記をご参照ください。
突然ですが問題です【日本語編2】──「お疲れさまです」「ご苦労さまです」 解答編
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1300.html
よくある誤用23──微妙な言葉の取説3
毎度毎度ありがとうございます ご苦労(さま)なことです
「21」と「22」の補足。
毎度毎度ありがとうございます
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2372.html
================引用開始
最も基本的なお礼の言葉の「ありがとうございます」だが、「毎度毎度」と組み合わせると妙なニュアンスになる。
「毎度」がひとつの「毎度ありがとうございます」だと商売人の挨拶のようで、これはこれで一般人には向かない。一般人は「いつもありがとうございます」くらいがいいだろう。同様の重複でも「いつもいつもありがとうございます」だと感謝の度合いが強くなり、さらに「本当に」をつけたくなる。イヤなニュアンスはないだろう。
ちょっと似たニュアンスの言葉が「わざわざありがとうございます」。どこかで〈イヤなニュアンスがあるので「わざわざ」は使わない〉というコメントを読んだことがある。これはさらに微妙で、相手の行為に対する強い感謝の言葉にもなるし、「ありがた迷惑」のニュアンスを醸し出すこともできる。後者の意味で巧く使えれば、上級者だろう。
================引用終了
ご苦労(さま)なことです
================引用開始
問題のある言い回しであることは、常識人ならわかる。「ご苦労(さま)なこった」ならさらにわかりやすい。こんな言い回しを使う人がいたら、よほど無神経か相当のホニャララ。物語の中で歪んだ性格の性悪キャラ(重言?)が口にするくらいだと思っていた。
現実にこんなゴロツキ言葉を浴びせられたときには、かなり驚いた。書いたほうもさすがに気が咎めたんだろう。削除しやがられた(「ご削除になりやがった」かな)。書く段階で気づけよ。
================引用開始
よくある誤用24──微妙な言葉の取説4
要領がいい 抜け目がない うまく立ち回る
要領がいい
■Web辞書『大辞泉』から
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=要領がいい&stype=0&dtype=0
================================引用開始
要領(ようりょう)がい・い
1 処理のしかたがうまい。手際がいい。「ベテランらしく―・い」
2 手を抜いたり、人に取り入ったりするのがうまい。「―・いだけで実のない人」
================================引用終了
「要領」が「いい」んだから、褒め言葉のはず。
それがなぜ「2」のような否定的な意味になるのかは不明です。『大辞林』だともう少し穏やかで「巧みに立ち回るすべを心得ている」になっています。これも褒めてはいないか。
抜け目がない
■Web辞書『大辞泉』から
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=抜け目がない&stype=0&dtype=0
================================引用開始
抜(ぬ)け目(め)がな・い
注意深く、やることに抜けたところがない。また、自分の利益になりそうだと見れば、その機会を逃さない。「万事に―・い」
================================引用終了
「抜け目」が「ない」んだから、褒め言葉のはず。
「要領がいい」ほどハッキリとは書いていませんが、やはり2通りの解釈ができそうです。『大辞林』はもうちょっとヒドく〈(自分の利益になることに)よく気がついて、手抜かりなく、ずるがしこく立ち回るさま。〉とあります。これだと否定的な意味にしか思えません。
これは安直な言いかえがあります。
「ぬかりがない」と言えば褒め言葉になり、語呂も似ています。「抜け目」と「ぬかり」にどんな違いがあるのかは、言葉の神様レベルの問題ですかね。
うまく立ち回る
■Web辞書『大辞泉』から
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=立ち回る&stype=0&dtype=0
================================引用開始
たち‐まわ・る〔‐まはる〕【立(ち)回る】
[動ラ五(四)]
1 あちこち歩き回る。「知人の間を―・って資金を集める」
2 振る舞う。行動する。特に、人々の間に立って自分が有利になるように動く。「派閥間でうまく―・る」
3 外出して、ある所に立ち寄る。また、犯罪者が逃走中ある所に立ち寄る。「知人宅に―・ったところを逮捕された」
4 演劇・映画などで、切り合いや殴り合いの演技をする。「―・るシーン」
================================引用終了
例文があるのですから、「2」の意味でしょう。「うまく」「立ち回る」のがなぜ悪いのかは知りませんが、やはり否定的なニュアンスが強いようです。『大辞泉』はニュートラルな意味ものせていますが、『大辞林』はもっとヒドくて「人に働きかけて自分が有利になるようにする。工作する。」とあります。
ちなみに、『大辞林』のほかの言葉の説明中に「立ち回る」があります。
要領がいい……「巧みに立ち回る」
抜け目がない……「ずるがしこく立ち回る」
こうして並べてみると、「立ち回る」だけでも否定的なのかもしれません。時代劇が廃れた原因のひとつでしょうか。(←オイ!)
「愚直に立ち回る」「公明正大に立ち回る」……言いそうにないなぁ。
よくある誤用25──微妙な言葉の取説5
目端がきく 如才(が)ない ○○のわりに(は)
目端がきく
■Web辞書『大辞泉』から
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=目端&dtype=0&dname=0na&stype=0&index=18132100&pagenum=1
================================引用開始
目端(めはし)が利・く
その場に応じてよく才知が働く。機転がきく。「―・く男だから任せておけばよい」
================================引用終了
これだと肯定的。『大辞林』だと「素早く見てとる。また、抜け目がない。」だから肯定否定の両面がありそう。かなり微妙な気がする。
褒め言葉としても使えそうだけど、ジジムサい。
きわめて主観的な意見だが、「目端がきく」は男性に対する言葉って気がする。女性に対しては別の言い方をするんじゃないかな。男性に対して「目端がきく」と評するのは「上から目線」で、対象を小物扱いしている気がする。
「目端がきく」については、前に下記のような書き方もした。
【間違えやすい慣用句〈2〉】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2346.html
================================引用開始
5)こういうことにかけては彼は誰よりも目鼻が利く
そりゃ「目端」だろう。でもね。相当ジジムサいからやめときなさい。「気がきく」でいいじゃん。「心配りができる」でもいい。ほかにいくらでもフツーの言葉があるでしょうに。明治の文豪じゃアルマイトの弁当箱(ウーム、かなりのオヤジギャグだ)
それと、これは主観で書くけど、「目端がきく」ってあんまりいいイメージじゃない。「要領がいい」とか「抜け目がない」の仲間って気がする。
================================引用終了
如才(が)ない
■Web辞書『大辞泉』から
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=如才&dtype=0&dname=0na&stype=0&index=09295200&pagenum=1
================================引用開始
如才(じょさい)が無・い
気がきいて、抜かりがない。如才ない。「―・い応対」
================================引用終了
「如才」という言葉もあるが、「如才がある」なんて使い方は見たことがない。
『大辞林』によると、「如才がない」(たぶん慣用句)と「如才ない」(形容詞)があるらしい。
と言うことは厳密に考えると、「如才がありません」はアリで「如才ありません」は誤用なんだろう。
これだと、肯定的な意味でも使える気がする(理由は不明)。
ただ、「目端がきく」ほどではないけど、ほんの少し〈「上から目線」で、対象を小物扱いしている〉観がある。目上の人には使いにくそうだな。
○○のわりに
これはさらに微妙かも。
【わり わりに わりには くせに だけあって】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2217.html
================引用開始
●第3段階の答え──「~わりには」の使い方
以下は性格が悪い人間の屁理屈の可能性が高い。
「第2段階」で見たように、「~わりには」は微妙なニュアンスを含む。「~わりには」を使わなければならない場面……なくはないけど、日本語学習者が覚える必要があるのか、なんとも言えない。
「~わりには」使う例文は3つに大別できるだろう。トピに出てきた例文で考える。
【1】【肯定的前提+「~わりには」+否定的な程度】
一生懸命考えたわりには、いい考えは出てきませんでした。
【2】【否定的前提+「~わりには」+肯定的な程度】
値段が安いわりには、おいしいです。
ページ数のわりには、すぐ読めました。
その店のランチは600円のわりには、量が多いです。
勉強してないわりには、いい点数だった
雨が降っているわりには、平気で出かけていった。
【3】 【1】【2】と違ってハッキリしない。
仕事が大変なわりには、給料が安いです。(否定的前提+「~わりには」+否定的な程度)
今日は日曜日のわりには出勤する人が多い
早く電話するつもりだったわりには、ついついこんな時間になってしまった
o( ̄ー ̄;)ゞううむ
どんな使い方もアリってことか?
このうち、【2】【3】はさほど問題がないと思うが、【1】の場合嫌みや悪口になりやすい。
このパンは高いわりにはまずい。
あの人は●●のわりには△△だ。
もちろん、逆接の接続助詞・接続詞は、ほとんどが同様の使い方ができる。
ただ、自分で「~わりには」を使う場面を考えると、ロクな例文が浮かばない。
さらに主観で書くと……【2】の使い方も、ちょっと偉そうなニュアンスが感じられてイヤ。そんな言い回しを日本語学習者が覚えても、何もいいことがない気がする。こういう言い回しを覚えると、妙な使い方をして顰蹙を買う可能性があるような……。
================引用終了
バックナンバーは下記。
【お品書き】よくある誤用
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n118365
おめでとうございました ありがとうございました
微妙な言葉の取扱説明書です。
一概に「誤用」とは言えませんが、かなり微妙な問題を含むので、使い方には気をつけたほうがいい言葉をあげていきます。
おめでとうございました
スポーツの試合後のインタビューなどでアナウンサーが使うことがあります。基本的に過去形(正確な言い方ではないが、とりあえずこう呼ぶ)は×。「おめでとうございます」と現在形を使うべき。
「めでたかったのは過去のこと」(いまはもうめでたくない)という印象になりかねません。
ありがとうございました
これも基本的に過去形は×。
「ありがたかったのは過去のこと」(いまはもうありがたくない)という印象になりかねません。
「きょうはありがとうございました」 や「先ほどはありがとうございました」 のように時間を限定する意味合いの言葉がつくなら「ございました」でもいいかもしれません。
それでも「ありがとうございます」と現在形にしておくほうが無難でしょう。
過去に何回も質問が出ています。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1188895191
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1388093093
(以下略)
よくある誤用22──微妙な言葉の取説2
ご苦労さまです お疲れさまです ご苦労さまでございます
「ご苦労さま(です)」や「お疲れさま(です)」に関する話もよく見聞します。
基本的には、同格以下には「ご苦労さま(です)」、目上には「お疲れさまです」でいいでしょう。少し細かく見ていきます。
ご苦労さま/ご苦労さまです
相手の苦労や労力に対するねぎらいの言葉とされます。諸説あるようですが、目上に対しては基本的にNG。どうにも上から目線のニュアンスがあります。
時代劇でお殿様が家来をねぎらう「ご苦労であった」が典型的。
お疲れさま/お疲れさまです
では目上にはどう言えばいいのかが悩ましい。
会社内なら、「お疲れさまです」あたりが一般的でしょう。これも本来はねぎらいの言葉だから目上に使うべきではない、という説もあります。そのとおりですが、ほかに適切な言い回しがないもので。「ありがとうございます」をすすめる人もいますが、これは何かをしてもらったとき限定でしょう。
たとえば、時間外に廊下で重役と出くわしたとします。「ありがとうございます」は明らかにヘンなので、黙礼するくらいでしょうか。「お疲れさまでございます」などと言うと、「それは本来は……」と説教される可能性があります。
「お疲れさまです」は、同格以下に対しても使えます。
「お疲れ」→「お疲れさま」→「お疲れさまです」→「お疲れさまでございます」
くらいの順で敬度が高くなります。
ご苦労さまでございます
目上に対しては丁寧に「ご苦労さまでございます」と言えばいい、という説も見聞します。
あまり鵜呑みにしないほうがよいでしょう。「目上に対してご苦労なんてけしからん」と考えているお偉いさんが、目下の者に「ご苦労さまでございます」と言われたら、「その言い方なら丁寧だから許す」と考えると思いますか?
つまり、「ご苦労さまでございます」ならOK、というのは身勝手な論理です。
昔は任侠映画などで、出所した幹部を迎えに行って「お務め、ご苦労さまでございます」と言うシーンがあったような……。あれが許されるのはどういう理屈なんでしょうか。
詳しくは下記をご参照ください。
突然ですが問題です【日本語編2】──「お疲れさまです」「ご苦労さまです」 解答編
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1300.html
よくある誤用23──微妙な言葉の取説3
毎度毎度ありがとうございます ご苦労(さま)なことです
「21」と「22」の補足。
毎度毎度ありがとうございます
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2372.html
================引用開始
最も基本的なお礼の言葉の「ありがとうございます」だが、「毎度毎度」と組み合わせると妙なニュアンスになる。
「毎度」がひとつの「毎度ありがとうございます」だと商売人の挨拶のようで、これはこれで一般人には向かない。一般人は「いつもありがとうございます」くらいがいいだろう。同様の重複でも「いつもいつもありがとうございます」だと感謝の度合いが強くなり、さらに「本当に」をつけたくなる。イヤなニュアンスはないだろう。
ちょっと似たニュアンスの言葉が「わざわざありがとうございます」。どこかで〈イヤなニュアンスがあるので「わざわざ」は使わない〉というコメントを読んだことがある。これはさらに微妙で、相手の行為に対する強い感謝の言葉にもなるし、「ありがた迷惑」のニュアンスを醸し出すこともできる。後者の意味で巧く使えれば、上級者だろう。
================引用終了
ご苦労(さま)なことです
================引用開始
問題のある言い回しであることは、常識人ならわかる。「ご苦労(さま)なこった」ならさらにわかりやすい。こんな言い回しを使う人がいたら、よほど無神経か相当のホニャララ。物語の中で歪んだ性格の性悪キャラ(重言?)が口にするくらいだと思っていた。
現実にこんなゴロツキ言葉を浴びせられたときには、かなり驚いた。書いたほうもさすがに気が咎めたんだろう。削除しやがられた(「ご削除になりやがった」かな)。書く段階で気づけよ。
================引用開始
よくある誤用24──微妙な言葉の取説4
要領がいい 抜け目がない うまく立ち回る
要領がいい
■Web辞書『大辞泉』から
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=要領がいい&stype=0&dtype=0
================================引用開始
要領(ようりょう)がい・い
1 処理のしかたがうまい。手際がいい。「ベテランらしく―・い」
2 手を抜いたり、人に取り入ったりするのがうまい。「―・いだけで実のない人」
================================引用終了
「要領」が「いい」んだから、褒め言葉のはず。
それがなぜ「2」のような否定的な意味になるのかは不明です。『大辞林』だともう少し穏やかで「巧みに立ち回るすべを心得ている」になっています。これも褒めてはいないか。
抜け目がない
■Web辞書『大辞泉』から
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=抜け目がない&stype=0&dtype=0
================================引用開始
抜(ぬ)け目(め)がな・い
注意深く、やることに抜けたところがない。また、自分の利益になりそうだと見れば、その機会を逃さない。「万事に―・い」
================================引用終了
「抜け目」が「ない」んだから、褒め言葉のはず。
「要領がいい」ほどハッキリとは書いていませんが、やはり2通りの解釈ができそうです。『大辞林』はもうちょっとヒドく〈(自分の利益になることに)よく気がついて、手抜かりなく、ずるがしこく立ち回るさま。〉とあります。これだと否定的な意味にしか思えません。
これは安直な言いかえがあります。
「ぬかりがない」と言えば褒め言葉になり、語呂も似ています。「抜け目」と「ぬかり」にどんな違いがあるのかは、言葉の神様レベルの問題ですかね。
うまく立ち回る
■Web辞書『大辞泉』から
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=立ち回る&stype=0&dtype=0
================================引用開始
たち‐まわ・る〔‐まはる〕【立(ち)回る】
[動ラ五(四)]
1 あちこち歩き回る。「知人の間を―・って資金を集める」
2 振る舞う。行動する。特に、人々の間に立って自分が有利になるように動く。「派閥間でうまく―・る」
3 外出して、ある所に立ち寄る。また、犯罪者が逃走中ある所に立ち寄る。「知人宅に―・ったところを逮捕された」
4 演劇・映画などで、切り合いや殴り合いの演技をする。「―・るシーン」
================================引用終了
例文があるのですから、「2」の意味でしょう。「うまく」「立ち回る」のがなぜ悪いのかは知りませんが、やはり否定的なニュアンスが強いようです。『大辞泉』はニュートラルな意味ものせていますが、『大辞林』はもっとヒドくて「人に働きかけて自分が有利になるようにする。工作する。」とあります。
ちなみに、『大辞林』のほかの言葉の説明中に「立ち回る」があります。
要領がいい……「巧みに立ち回る」
抜け目がない……「ずるがしこく立ち回る」
こうして並べてみると、「立ち回る」だけでも否定的なのかもしれません。時代劇が廃れた原因のひとつでしょうか。(←オイ!)
「愚直に立ち回る」「公明正大に立ち回る」……言いそうにないなぁ。
よくある誤用25──微妙な言葉の取説5
目端がきく 如才(が)ない ○○のわりに(は)
目端がきく
■Web辞書『大辞泉』から
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=目端&dtype=0&dname=0na&stype=0&index=18132100&pagenum=1
================================引用開始
目端(めはし)が利・く
その場に応じてよく才知が働く。機転がきく。「―・く男だから任せておけばよい」
================================引用終了
これだと肯定的。『大辞林』だと「素早く見てとる。また、抜け目がない。」だから肯定否定の両面がありそう。かなり微妙な気がする。
褒め言葉としても使えそうだけど、ジジムサい。
きわめて主観的な意見だが、「目端がきく」は男性に対する言葉って気がする。女性に対しては別の言い方をするんじゃないかな。男性に対して「目端がきく」と評するのは「上から目線」で、対象を小物扱いしている気がする。
「目端がきく」については、前に下記のような書き方もした。
【間違えやすい慣用句〈2〉】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2346.html
================================引用開始
5)こういうことにかけては彼は誰よりも目鼻が利く
そりゃ「目端」だろう。でもね。相当ジジムサいからやめときなさい。「気がきく」でいいじゃん。「心配りができる」でもいい。ほかにいくらでもフツーの言葉があるでしょうに。明治の文豪じゃアルマイトの弁当箱(ウーム、かなりのオヤジギャグだ)
それと、これは主観で書くけど、「目端がきく」ってあんまりいいイメージじゃない。「要領がいい」とか「抜け目がない」の仲間って気がする。
================================引用終了
如才(が)ない
■Web辞書『大辞泉』から
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=如才&dtype=0&dname=0na&stype=0&index=09295200&pagenum=1
================================引用開始
如才(じょさい)が無・い
気がきいて、抜かりがない。如才ない。「―・い応対」
================================引用終了
「如才」という言葉もあるが、「如才がある」なんて使い方は見たことがない。
『大辞林』によると、「如才がない」(たぶん慣用句)と「如才ない」(形容詞)があるらしい。
と言うことは厳密に考えると、「如才がありません」はアリで「如才ありません」は誤用なんだろう。
これだと、肯定的な意味でも使える気がする(理由は不明)。
ただ、「目端がきく」ほどではないけど、ほんの少し〈「上から目線」で、対象を小物扱いしている〉観がある。目上の人には使いにくそうだな。
○○のわりに
これはさらに微妙かも。
【わり わりに わりには くせに だけあって】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2217.html
================引用開始
●第3段階の答え──「~わりには」の使い方
以下は性格が悪い人間の屁理屈の可能性が高い。
「第2段階」で見たように、「~わりには」は微妙なニュアンスを含む。「~わりには」を使わなければならない場面……なくはないけど、日本語学習者が覚える必要があるのか、なんとも言えない。
「~わりには」使う例文は3つに大別できるだろう。トピに出てきた例文で考える。
【1】【肯定的前提+「~わりには」+否定的な程度】
一生懸命考えたわりには、いい考えは出てきませんでした。
【2】【否定的前提+「~わりには」+肯定的な程度】
値段が安いわりには、おいしいです。
ページ数のわりには、すぐ読めました。
その店のランチは600円のわりには、量が多いです。
勉強してないわりには、いい点数だった
雨が降っているわりには、平気で出かけていった。
【3】 【1】【2】と違ってハッキリしない。
仕事が大変なわりには、給料が安いです。(否定的前提+「~わりには」+否定的な程度)
今日は日曜日のわりには出勤する人が多い
早く電話するつもりだったわりには、ついついこんな時間になってしまった
o( ̄ー ̄;)ゞううむ
どんな使い方もアリってことか?
このうち、【2】【3】はさほど問題がないと思うが、【1】の場合嫌みや悪口になりやすい。
このパンは高いわりにはまずい。
あの人は●●のわりには△△だ。
もちろん、逆接の接続助詞・接続詞は、ほとんどが同様の使い方ができる。
ただ、自分で「~わりには」を使う場面を考えると、ロクな例文が浮かばない。
さらに主観で書くと……【2】の使い方も、ちょっと偉そうなニュアンスが感じられてイヤ。そんな言い回しを日本語学習者が覚えても、何もいいことがない気がする。こういう言い回しを覚えると、妙な使い方をして顰蹙を買う可能性があるような……。
================引用終了
バックナンバーは下記。
【お品書き】よくある誤用
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n118365
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