突然ですが問題です【日本語編72】──「食う」を使う慣用句 「食べる」を使う慣用句
【問題】
【問1】
「食べる」を含む慣用句をあげなさい(「る」はつかなくてもOK)。
【問2】
「食べる」を使う慣用句より、「食う」を使う慣用句のほうが多い理由を考えなさい。
【解答例】
【問1】
1)「食べる」が一般的?
食べ盛り
食べ頃
食べ歩き
2)どっちでもいい(慣用句でさえない?)
食べごたえ(食いごたえ)
食べかけ(食いかけ)
食べさし(食いさし)
食べかす(食いかす)
3)本来は「食う」の慣用句
食べず嫌い
食べ合わせ
食べ出
【問2】
とりあえず、2つあげておく。
・「食べる」よりも「食う」のほうがはるかに幅広い意味があるから
・「食べる」は比較的新しい言葉だから
【よくわからない解説】
下記のコメント欄に〈「食う」が下品と勘違いして、慣用句を片っ端から「食べる」にするのもやめてほしい〉と書いたら、秀逸なコメントを貰った。無断で転載する。
【ゴメンナサイ、ついつい……──つまらんダジャレは嫌いだぁ!107】
(略)
================================
2011年09月24日 15:00
羽振りの良かったころは「食べ道楽」だったが、失業して「食べたり食べなかったり」の生活をしていたので、とんだ「食べさせ者」のうまい話に「食べつき(?)」、「時間を食べた」だけで何も得られなかった、「割を食べた」と痛い思いをして人のせいにする。
そういう「食べられない方」はおととい来やがれ!
================================
なぜ慣用句は「食べる」ではなく「食う」が多いのか。積年の課題を調べてみたら、Web辞書をひいただけで終わったorz。
■Web辞書(『大辞泉』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=食べる&stype=0&dtype=0
================================
た・べる【食べる】
[動バ下一][文]た・ぶ[バ下二]《尊敬語「たぶ」(四段)に対応する謙譲語》
1 食物をかんで、のみこむ。「生(なま)で―・べる」「ひと口―・べてみる」
2 暮らしを立てる。生活する。「なんとか―・べていくくらいの蓄えはある」
3
①「食う」「飲む」の謙譲語。いただく。食(とう)ぶ。
「御仏供(ぶく)のおろし―・べむと申すを」〈枕・八七〉
②「食う」「飲む」を、へりくだる気持ちをこめて丁寧にいう語。
「さかづきが―・べたいと申して参られてござる」〈虎明狂・老武者〉
「私は茶が嫌ひだから、これを―・べます」〈滑・浮世風呂・前下〉
◆本来は上位者からいただく意。ありがたくいただいて食す意から、自己の飲食する行為をへりくだって言うようになり、さらに、「食う」をやわらげていう丁寧な言い方に変わった。現代語では「食う」に比べれば丁寧な言い方であるが、敬意はほとんどない。また、現代では一般に飲む行為には用いられない。
================================
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=食う&stype=0&dtype=0
================================
く・う〔くふ〕【食う/×喰う】
[動ワ五(ハ四)]
1 食物をかんでのみ込む。食べる。「飯を―・う」
2 生活をする。暮らしを立てる。「こんな薄給では―・っていけない」
3 口で物をしっかり捕らえる。食いつく。「えさを替えたら魚がよく―・う」
4 虫などがかじって物を傷める。また、虫などがからだを刺す。「衣魚(しみ)の―・った書籍」「蚊に―・われる」
5 しっかりと間に挟む。また、縄状のものが物にめり込む。「ファスナーに布地が―・われる」
6 金銭・時間などがかかる。費やす。「この車はガソリンを―・う」「手間ひま―・う仕事」
7 (「年をくう」の形で)かなりの年齢になる。「いたずらに年を―・うばかりだ」
8 他の勢力範囲・領域に入り込む。侵す。「縄張りを―・う」
9 スポーツなどで、強い相手を負かす。「強敵を―・う」
10 演劇・映画などで、ある俳優の演技が勝っていて共演者をしのぐ。「脇役に―・われる」
11 他から、ある行為、特に望ましくない行為を受ける。こうむる。「門前払いを―・う」「お目玉を―・う」「肩すかしを―・う」
12 (「人をくう」の形で)ばかにする。侮る。「人を―・った態度」
13 自分の利益のために、だまして人を利用する。食い物にする。「タレント志望の少女たちを―・う芸能プロダクション」
14 演劇で、上演台本の一部を省略する。カットする。
15 口で軽く挟んで物を支える。くわえる。ついばむ。
「春霞流るるなへに青柳の枝―・ひ持ちてうぐひす鳴くも」〈万・一八二一〉
16 かみつく。歯をたてる。
「指(および)ひとつを引き寄せて―・ひてはべりしを」〈源・帚木〉
17 薬などを飲む。
「つとめて―・ふ薬といふもの」〈かげろふ・中〉
◆現代語では、食する意では「食う」がぞんざいで俗語的とされ、一般に「食べる」を用いる。しかし、複合語・慣用句では「食う」が用いられ、「食べる」とは言い換えができないものもある。「たべる(たぶ)」はもともと謙譲・丁寧な言い方であったが、敬意がしだいに失われ通常語となった。
[可能] くえる
[下接句] 泡を食う・一杯食う・犬も食わぬ・同じ釜(かま)の飯を食う・鬼を酢にして食う・糟(かす)を食う・霞(かすみ)を食う・気に食わない・臭い飯を食う・背負(しょ)い投げを食う・粋(すい)が身を食う・すかを食う・側杖(そばづえ)を食う・他人の飯を食う・年を食う・栃麺棒(とちめんぼう)を食う・取って食う・煮て食おうと焼いて食おうと・煮ても焼いても食えない・塗り箸(ばし)で素麺(そうめん)を食う・弾みを食う・人を食う・冷や飯を食う・道草を食う・無駄飯を食う・割を食う
================================
辞書の記述を見比べれば一目瞭然。
「食う」には多彩な意味があり、「食べる」には3つの意味しかない。「食べる」の3番目はちょっと意味合いが違うから、「2つの意味しかない」と言ってもいいかもしれない。これだけ意味の守備範囲?に差があれば、「食う」を使った言い回しのほうが圧倒的に多いのも当然だろう。
それ以前に、「食べる」は「本来は上位者からいただく意」であって、eatの意味で使われるようになったのは比較的最近だろう。多くの慣用句の類いができた頃にはそんな意味はないから、必然的に「食べる」は慣用句にはなりにくい。
……で終わってしまってもいいのだが、例によってあやしげなことを付け加える。
「食べる」の「2」の意味って昔からあったのだろうか。これは本来は「食う」だったのに、「食べる」が広まってから生まれたのではないかって気がする。この意味と思われる「食う」を使う慣用句はいくつか思いつくけど、「食べる」とは言わない。
「食い扶持」とは言うけど「食べ扶持」とは言わない。
「食い詰める」とは言うけど……。
「食いっぱぐれる」とは言うけど……。
「オマンマの食い上げ」とは言うけど……。
「食うや食わず」とは言うけど……。
そう考えると、これから先も「食べる」の意味が拡大していくような気がする。
とりあえず現段階で「食べる」を使う慣用句っぽいものをあげてみる。
1)「食べる」が一般的?
食べ盛り
食べ頃
食べ歩き
2)どっちでもいい(慣用句でさえない?)
食べごたえ(食いごたえ)
食べかけ(食いかけ)
食べさし(食いさし)
食べかす(食いかす)
3)本来は「食う」の慣用句
食べず嫌い
食べ合わせ
食べ出
1)は比較的新しい言い回しって気がする。
ふと思ったんだけど、「食べ盛り」ってなんかおかしくないか? 「育ち盛り」が本来の形って気がしないでもない。
もしかすると、昔は「食べ頃」って概念が現代ほどなかったのかもしれない。収穫したときが「食べるとき」だったから。これに関しては理屈はどうにでもつく気がするのでパスする。「食べる」をほとんど使わなかった頃はなんて言ったんだろう。「鬼も十八……」(←やめんか!)
「食べ歩き」は、2つの意味がある。
「歩きながら食べる」……昔の人はそんな下品なことはしません。ホントか?
「いろんな飲食店を回る」……「食い道楽」かな。
こんなことを主観で書いていてもしかたがないか。(←オイ!)
すんごくヤな気がするのは3)に関して。こんなのは、本来は「食わず嫌い」「食い合わせ」「食い出」(こんな表記なんだ)に決まっている(断言してしまう)。でも「食べ」の形も市民権を得ているだろう。「食べ出」あたりは、こっちのほうが一般的かも(「食い出」は変換さえできなかった)。
さて、次に「食べ」に身を売るのはドイツだ? クウェート? クワ(?)ラルンプール?
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http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2570.html
【問1】
「食べる」を含む慣用句をあげなさい(「る」はつかなくてもOK)。
【問2】
「食べる」を使う慣用句より、「食う」を使う慣用句のほうが多い理由を考えなさい。
【解答例】
【問1】
1)「食べる」が一般的?
食べ盛り
食べ頃
食べ歩き
2)どっちでもいい(慣用句でさえない?)
食べごたえ(食いごたえ)
食べかけ(食いかけ)
食べさし(食いさし)
食べかす(食いかす)
3)本来は「食う」の慣用句
食べず嫌い
食べ合わせ
食べ出
【問2】
とりあえず、2つあげておく。
・「食べる」よりも「食う」のほうがはるかに幅広い意味があるから
・「食べる」は比較的新しい言葉だから
【よくわからない解説】
下記のコメント欄に〈「食う」が下品と勘違いして、慣用句を片っ端から「食べる」にするのもやめてほしい〉と書いたら、秀逸なコメントを貰った。無断で転載する。
【ゴメンナサイ、ついつい……──つまらんダジャレは嫌いだぁ!107】
(略)
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2011年09月24日 15:00
羽振りの良かったころは「食べ道楽」だったが、失業して「食べたり食べなかったり」の生活をしていたので、とんだ「食べさせ者」のうまい話に「食べつき(?)」、「時間を食べた」だけで何も得られなかった、「割を食べた」と痛い思いをして人のせいにする。
そういう「食べられない方」はおととい来やがれ!
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なぜ慣用句は「食べる」ではなく「食う」が多いのか。積年の課題を調べてみたら、Web辞書をひいただけで終わったorz。
■Web辞書(『大辞泉』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=食べる&stype=0&dtype=0
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た・べる【食べる】
[動バ下一][文]た・ぶ[バ下二]《尊敬語「たぶ」(四段)に対応する謙譲語》
1 食物をかんで、のみこむ。「生(なま)で―・べる」「ひと口―・べてみる」
2 暮らしを立てる。生活する。「なんとか―・べていくくらいの蓄えはある」
3
①「食う」「飲む」の謙譲語。いただく。食(とう)ぶ。
「御仏供(ぶく)のおろし―・べむと申すを」〈枕・八七〉
②「食う」「飲む」を、へりくだる気持ちをこめて丁寧にいう語。
「さかづきが―・べたいと申して参られてござる」〈虎明狂・老武者〉
「私は茶が嫌ひだから、これを―・べます」〈滑・浮世風呂・前下〉
◆本来は上位者からいただく意。ありがたくいただいて食す意から、自己の飲食する行為をへりくだって言うようになり、さらに、「食う」をやわらげていう丁寧な言い方に変わった。現代語では「食う」に比べれば丁寧な言い方であるが、敬意はほとんどない。また、現代では一般に飲む行為には用いられない。
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http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=食う&stype=0&dtype=0
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く・う〔くふ〕【食う/×喰う】
[動ワ五(ハ四)]
1 食物をかんでのみ込む。食べる。「飯を―・う」
2 生活をする。暮らしを立てる。「こんな薄給では―・っていけない」
3 口で物をしっかり捕らえる。食いつく。「えさを替えたら魚がよく―・う」
4 虫などがかじって物を傷める。また、虫などがからだを刺す。「衣魚(しみ)の―・った書籍」「蚊に―・われる」
5 しっかりと間に挟む。また、縄状のものが物にめり込む。「ファスナーに布地が―・われる」
6 金銭・時間などがかかる。費やす。「この車はガソリンを―・う」「手間ひま―・う仕事」
7 (「年をくう」の形で)かなりの年齢になる。「いたずらに年を―・うばかりだ」
8 他の勢力範囲・領域に入り込む。侵す。「縄張りを―・う」
9 スポーツなどで、強い相手を負かす。「強敵を―・う」
10 演劇・映画などで、ある俳優の演技が勝っていて共演者をしのぐ。「脇役に―・われる」
11 他から、ある行為、特に望ましくない行為を受ける。こうむる。「門前払いを―・う」「お目玉を―・う」「肩すかしを―・う」
12 (「人をくう」の形で)ばかにする。侮る。「人を―・った態度」
13 自分の利益のために、だまして人を利用する。食い物にする。「タレント志望の少女たちを―・う芸能プロダクション」
14 演劇で、上演台本の一部を省略する。カットする。
15 口で軽く挟んで物を支える。くわえる。ついばむ。
「春霞流るるなへに青柳の枝―・ひ持ちてうぐひす鳴くも」〈万・一八二一〉
16 かみつく。歯をたてる。
「指(および)ひとつを引き寄せて―・ひてはべりしを」〈源・帚木〉
17 薬などを飲む。
「つとめて―・ふ薬といふもの」〈かげろふ・中〉
◆現代語では、食する意では「食う」がぞんざいで俗語的とされ、一般に「食べる」を用いる。しかし、複合語・慣用句では「食う」が用いられ、「食べる」とは言い換えができないものもある。「たべる(たぶ)」はもともと謙譲・丁寧な言い方であったが、敬意がしだいに失われ通常語となった。
[可能] くえる
[下接句] 泡を食う・一杯食う・犬も食わぬ・同じ釜(かま)の飯を食う・鬼を酢にして食う・糟(かす)を食う・霞(かすみ)を食う・気に食わない・臭い飯を食う・背負(しょ)い投げを食う・粋(すい)が身を食う・すかを食う・側杖(そばづえ)を食う・他人の飯を食う・年を食う・栃麺棒(とちめんぼう)を食う・取って食う・煮て食おうと焼いて食おうと・煮ても焼いても食えない・塗り箸(ばし)で素麺(そうめん)を食う・弾みを食う・人を食う・冷や飯を食う・道草を食う・無駄飯を食う・割を食う
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辞書の記述を見比べれば一目瞭然。
「食う」には多彩な意味があり、「食べる」には3つの意味しかない。「食べる」の3番目はちょっと意味合いが違うから、「2つの意味しかない」と言ってもいいかもしれない。これだけ意味の守備範囲?に差があれば、「食う」を使った言い回しのほうが圧倒的に多いのも当然だろう。
それ以前に、「食べる」は「本来は上位者からいただく意」であって、eatの意味で使われるようになったのは比較的最近だろう。多くの慣用句の類いができた頃にはそんな意味はないから、必然的に「食べる」は慣用句にはなりにくい。
……で終わってしまってもいいのだが、例によってあやしげなことを付け加える。
「食べる」の「2」の意味って昔からあったのだろうか。これは本来は「食う」だったのに、「食べる」が広まってから生まれたのではないかって気がする。この意味と思われる「食う」を使う慣用句はいくつか思いつくけど、「食べる」とは言わない。
「食い扶持」とは言うけど「食べ扶持」とは言わない。
「食い詰める」とは言うけど……。
「食いっぱぐれる」とは言うけど……。
「オマンマの食い上げ」とは言うけど……。
「食うや食わず」とは言うけど……。
そう考えると、これから先も「食べる」の意味が拡大していくような気がする。
とりあえず現段階で「食べる」を使う慣用句っぽいものをあげてみる。
1)「食べる」が一般的?
食べ盛り
食べ頃
食べ歩き
2)どっちでもいい(慣用句でさえない?)
食べごたえ(食いごたえ)
食べかけ(食いかけ)
食べさし(食いさし)
食べかす(食いかす)
3)本来は「食う」の慣用句
食べず嫌い
食べ合わせ
食べ出
1)は比較的新しい言い回しって気がする。
ふと思ったんだけど、「食べ盛り」ってなんかおかしくないか? 「育ち盛り」が本来の形って気がしないでもない。
もしかすると、昔は「食べ頃」って概念が現代ほどなかったのかもしれない。収穫したときが「食べるとき」だったから。これに関しては理屈はどうにでもつく気がするのでパスする。「食べる」をほとんど使わなかった頃はなんて言ったんだろう。「鬼も十八……」(←やめんか!)
「食べ歩き」は、2つの意味がある。
「歩きながら食べる」……昔の人はそんな下品なことはしません。ホントか?
「いろんな飲食店を回る」……「食い道楽」かな。
こんなことを主観で書いていてもしかたがないか。(←オイ!)
すんごくヤな気がするのは3)に関して。こんなのは、本来は「食わず嫌い」「食い合わせ」「食い出」(こんな表記なんだ)に決まっている(断言してしまう)。でも「食べ」の形も市民権を得ているだろう。「食べ出」あたりは、こっちのほうが一般的かも(「食い出」は変換さえできなかった)。
さて、次に「食べ」に身を売るのはドイツだ? クウェート? クワ(?)ラルンプール?
突然ですが問題です【日本語編】のバックナンバー
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