「~させていただく」「~させていただきます」「~(さ)せていただく」「~(さ)せていただきます」〈3〉──一応の結論
下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)【10】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1880457960&owner_id=5019671
直接的には下記の続きだろうな。
「~させていただく」〈2〉──プチ発見か単なる●●か?
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1692229571&owner_id=5019671
ちと事情があって、下記を転載する。
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n132890
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2548.html
「~(さ)せていただく」「~(さ)せていただきます」と書くほうが正確でしょうが、こう書いておきます。
下記の【参考資料】を要約します。
近年評判が悪い敬語表現のひとつが、「~させていただく」です。「~させていただく」が「二重敬語だから誤用」という珍説も目にします。
「~させていただく」自体は「誤用」などではありません。「乱用するとみっともないので気をつけよう」ということです。
●第1段階の説明(初級向け)
文化庁の「敬語の指針」のP.40~41に解説があります。
http://www.bunka.go.jp/bunkashingikai/soukai/pdf/keigo_tousin.pdf
基本的には「ア)相手側又は第三者の許可を受けて行い,イ)そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある場合に使われる」とのこと。
================================
1)相手が所有している本をコピーするため,許可を求めるときの表現
「コピーを取らせていただけますか。」
2)研究発表会などにおける冒頭の表現
「それでは,発表させていただきます。」
3)店の休業を張り紙などで告知するときの表現
「本日,休業させていただきます。」
4)結婚式における祝辞の表現
「私は,新郎と3年間同じクラスで勉強させていただいた者です。」
5)自己紹介の表現
「私は,○○高校を卒業させていただきました。」
上記の例1)の場合は,ア),イ)の条件を満たしていると考えられるため,基本的な用法に合致していると判断できる。2)の例も同様だが,ア)の条件がない場合には,やや冗長な言い方になるため,「発表いたします。」の方が簡潔に感じられるようである。3)の例は,条件を満たしていると判断すれば適切だが,2)と同様に,ア)の条件がない場合には「休業いたします。」の方が良いと言えるだろう。4)の例は,ア)とイ)の両方の条件を満たしていないと感じる場合には,不適切だと判断される。5)の例も,同様である。ただし,4)については,結婚式が新郎や新婦を最大限に立てるべき場面であることを考え合わせれば許容されるという考え方もあり得る。5)については,「私は,卒業するのが困難だったところ,先生方の格別な御配慮によって何とか卒業させていただきました。ありがとうございました。」などという文脈であれば,必ずしも不適切だとは言えなくなる。
なお,ア),イ)の条件を実際には満たしていなくても,満たしているかのように見立てて使う用法があり,それが「…(さ)せていただく」の使用域を広げている。上記の2)~5)についても,このような用法の具体例としてとらえることもできる。その見立てをどの程度自然なものとして受け入れるかということが,その個人にとっての「…(さ)せていただく」に対する「許容度」を決めているのだと考えられる。
================================
●第2段階の説明(中級向け)
「敬語の指針」は一応の解説にはなっています。ただ元々の問題が微妙なんで、スッキリしない部分が残ります。「1段階の説明」で納得できる人もいるのでしょうが、少なくとも当方は納得できません。
解決策も書かれていないので、結局どうすればいいのかがわかりません。
よく見る解決策として、「~いたします」にすればいい、というのがあります。
そのとおりだと思います。↑の「敬語の指針」の例で言うなら、下記のようになります。
1)取る→?
2)発表する→発表いたします
3)休業する→休業いたします
4)勉強した→勉強いたしました
5)卒業した→卒業いたしました
2)~5)はこの形でOKでしょう。でも1)はどうしますか?
悪い例としてあげられることが多い「歌わせていただきます」場合はどうしますか?
結論としては、「~いたします」にできるものはそうすればいいことが多い、くらいでしょうか。「誤用」だとか「クドい」だとかメクジラを立てるのはどうかと思います。
もうひとつ大きな問題があります。
厳密に考えると「発表させていただきます」と「発表いたします」には、意味の上で大きな違いがあります。このことは敬語でない形にするとハッキリします。
発表させていただきます→発表させてもらう
発表いたします→発表する
「発表いたします」は、「発表する」を敬語にしただけです(厳密に言うなら、「発表する」を丁寧語にしたのが「発表します」。それをさらに謙譲語にしたのが「発表いたします」)。つまり、「発表させてもらう」にあった「させてもらう」のニュアンスがなくなっているのです。「敬語の指針」があげた「許可」も「受益」もなくなっています。そう考えると、「発表させていただきます」を「発表いたします」にするのは無理があるとも言えそうです。
この「敬語でない形にする」は、適否の判定のためのヒントになるかもしれません。
1)取る/取らせてもらう
2)発表する/発表させてもらう
3)休業する→休業させてもらう
4)勉強した→勉強させてもらった
5)卒業した→卒業させてもらった
こう並べると、4)5)に強い異和感があります。ただ、このあたりは個人の主観にもよるでしょうから、強く主張する気はありません。
●第3段階の説明(上級向け)
敬語関連の名著と言われる『敬語再入門』に重要な記述があります。
下記の引用部だけではわかりにくいかもしれません。詳しくは同書をお読みください。
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2327.html
================引用開始
【引用部】
ところが、謙譲語IIの代表選手「──いたす」は、「──する」型(サ変)の動詞でなければ使えない、また、文末以外では使いにくい、という制約があります。つまり、先程の例なら「開発いたしました」と言えますが、「新製品を作りました」は、「──する」型動詞でないので「作りいたしました」と言えないし、「新製品を開発した業者です」も、文末ではないので「開発いたしました業者です」は不自然です。この「いたす」の守備範囲の不足を補うように「作らせていただきました」「開発させていただいた業者です」と言う、という面がありそうです。「守備範囲の広い謙譲語IIの形」を求める心理が潜在的にあって、そこに「させていただく」が入り込もうとしているのです。(P.196)
つまりそのなんだ。こういうのを読んでしまうと、「プチ発見」のはずが単なる勉強不足になるってことだ(泣)。
================引用終了
【参考資料】
突然ですが問題です【日本語編10】──「~させていただく」【解答編】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1286.html
【「させていただく」=この言葉、気になる? 気にならない?】
http://www.excite.co.jp/News/laurier/column/E1347412552614.html
※さすがに乱暴でしょう。文脈もなしに、「~させていただく」が気になるも気にならないもないでしょうに。
Yahoo!知恵袋だと下記のBAが参考になると思います。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1362602693
日本語アレコレの索引(日々増殖中)【10】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1880457960&owner_id=5019671
直接的には下記の続きだろうな。
「~させていただく」〈2〉──プチ発見か単なる●●か?
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1692229571&owner_id=5019671
ちと事情があって、下記を転載する。
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n132890
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2548.html
「~(さ)せていただく」「~(さ)せていただきます」と書くほうが正確でしょうが、こう書いておきます。
下記の【参考資料】を要約します。
近年評判が悪い敬語表現のひとつが、「~させていただく」です。「~させていただく」が「二重敬語だから誤用」という珍説も目にします。
「~させていただく」自体は「誤用」などではありません。「乱用するとみっともないので気をつけよう」ということです。
●第1段階の説明(初級向け)
文化庁の「敬語の指針」のP.40~41に解説があります。
http://www.bunka.go.jp/bunkashingikai/soukai/pdf/keigo_tousin.pdf
基本的には「ア)相手側又は第三者の許可を受けて行い,イ)そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある場合に使われる」とのこと。
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1)相手が所有している本をコピーするため,許可を求めるときの表現
「コピーを取らせていただけますか。」
2)研究発表会などにおける冒頭の表現
「それでは,発表させていただきます。」
3)店の休業を張り紙などで告知するときの表現
「本日,休業させていただきます。」
4)結婚式における祝辞の表現
「私は,新郎と3年間同じクラスで勉強させていただいた者です。」
5)自己紹介の表現
「私は,○○高校を卒業させていただきました。」
上記の例1)の場合は,ア),イ)の条件を満たしていると考えられるため,基本的な用法に合致していると判断できる。2)の例も同様だが,ア)の条件がない場合には,やや冗長な言い方になるため,「発表いたします。」の方が簡潔に感じられるようである。3)の例は,条件を満たしていると判断すれば適切だが,2)と同様に,ア)の条件がない場合には「休業いたします。」の方が良いと言えるだろう。4)の例は,ア)とイ)の両方の条件を満たしていないと感じる場合には,不適切だと判断される。5)の例も,同様である。ただし,4)については,結婚式が新郎や新婦を最大限に立てるべき場面であることを考え合わせれば許容されるという考え方もあり得る。5)については,「私は,卒業するのが困難だったところ,先生方の格別な御配慮によって何とか卒業させていただきました。ありがとうございました。」などという文脈であれば,必ずしも不適切だとは言えなくなる。
なお,ア),イ)の条件を実際には満たしていなくても,満たしているかのように見立てて使う用法があり,それが「…(さ)せていただく」の使用域を広げている。上記の2)~5)についても,このような用法の具体例としてとらえることもできる。その見立てをどの程度自然なものとして受け入れるかということが,その個人にとっての「…(さ)せていただく」に対する「許容度」を決めているのだと考えられる。
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●第2段階の説明(中級向け)
「敬語の指針」は一応の解説にはなっています。ただ元々の問題が微妙なんで、スッキリしない部分が残ります。「1段階の説明」で納得できる人もいるのでしょうが、少なくとも当方は納得できません。
解決策も書かれていないので、結局どうすればいいのかがわかりません。
よく見る解決策として、「~いたします」にすればいい、というのがあります。
そのとおりだと思います。↑の「敬語の指針」の例で言うなら、下記のようになります。
1)取る→?
2)発表する→発表いたします
3)休業する→休業いたします
4)勉強した→勉強いたしました
5)卒業した→卒業いたしました
2)~5)はこの形でOKでしょう。でも1)はどうしますか?
悪い例としてあげられることが多い「歌わせていただきます」場合はどうしますか?
結論としては、「~いたします」にできるものはそうすればいいことが多い、くらいでしょうか。「誤用」だとか「クドい」だとかメクジラを立てるのはどうかと思います。
もうひとつ大きな問題があります。
厳密に考えると「発表させていただきます」と「発表いたします」には、意味の上で大きな違いがあります。このことは敬語でない形にするとハッキリします。
発表させていただきます→発表させてもらう
発表いたします→発表する
「発表いたします」は、「発表する」を敬語にしただけです(厳密に言うなら、「発表する」を丁寧語にしたのが「発表します」。それをさらに謙譲語にしたのが「発表いたします」)。つまり、「発表させてもらう」にあった「させてもらう」のニュアンスがなくなっているのです。「敬語の指針」があげた「許可」も「受益」もなくなっています。そう考えると、「発表させていただきます」を「発表いたします」にするのは無理があるとも言えそうです。
この「敬語でない形にする」は、適否の判定のためのヒントになるかもしれません。
1)取る/取らせてもらう
2)発表する/発表させてもらう
3)休業する→休業させてもらう
4)勉強した→勉強させてもらった
5)卒業した→卒業させてもらった
こう並べると、4)5)に強い異和感があります。ただ、このあたりは個人の主観にもよるでしょうから、強く主張する気はありません。
●第3段階の説明(上級向け)
敬語関連の名著と言われる『敬語再入門』に重要な記述があります。
下記の引用部だけではわかりにくいかもしれません。詳しくは同書をお読みください。
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2327.html
================引用開始
【引用部】
ところが、謙譲語IIの代表選手「──いたす」は、「──する」型(サ変)の動詞でなければ使えない、また、文末以外では使いにくい、という制約があります。つまり、先程の例なら「開発いたしました」と言えますが、「新製品を作りました」は、「──する」型動詞でないので「作りいたしました」と言えないし、「新製品を開発した業者です」も、文末ではないので「開発いたしました業者です」は不自然です。この「いたす」の守備範囲の不足を補うように「作らせていただきました」「開発させていただいた業者です」と言う、という面がありそうです。「守備範囲の広い謙譲語IIの形」を求める心理が潜在的にあって、そこに「させていただく」が入り込もうとしているのです。(P.196)
つまりそのなんだ。こういうのを読んでしまうと、「プチ発見」のはずが単なる勉強不足になるってことだ(泣)。
================引用終了
【参考資料】
突然ですが問題です【日本語編10】──「~させていただく」【解答編】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1286.html
【「させていただく」=この言葉、気になる? 気にならない?】
http://www.excite.co.jp/News/laurier/column/E1347412552614.html
※さすがに乱暴でしょう。文脈もなしに、「~させていただく」が気になるも気にならないもないでしょうに。
Yahoo!知恵袋だと下記のBAが参考になると思います。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1362602693
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