表記の話16 突然ですが問題です【日本語編164】──癒し 癒す 癒る 癒やし 癒やす 癒える
下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
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日本語アレコレの索引(日々増殖中)【10】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1880457960&owner_id=5019671
mixi日記2013年07月28日から
まず問題を再掲する。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1906952749&owner_id=5019671
================================
【問題】
「いやす」の漢字表記に関して以下の問いに答えなさい。
【問1】
下記の1)~3)のなかから、「いやす」の漢字表記として適切なものを選びなさい。
1)癒す
2)癒やす
3)家康
【問2】
新聞や雑誌がどのような表記を使用しているか答えなさい。
【問3】
このようなことになった原因を述べなさい。
================================
【解答?例】
【問1】
表記の問題なので、1)でも2)でも構わない。
【問2】
新聞は「癒やす」としている(はず)。新常用漢字表のルールに従っているから。
雑誌は「癒す」と「癒やす」が混在している(はず)。これが名詞の「癒し系」の類いになると、「癒やし系」という表記はほとんど見ない。
ちなみにMacintoshの標準IMEの「ことえり」は「癒す」「癒し」「癒える」しか変換できない。
【問3】
個人的な意見では、常用漢字表の迷走が原因です。
元々の常用漢字表に「癒」はあっても、読みは「ユ」しかなかった。
ところが世間では「癒し」の類いが言葉が流行語のようになってしまった。その段階では、常用漢字表の音訓表にないのだから、「癒し」と書こうが「癒やし」と書こうが大差がなかった。新聞は常用漢字表に固執するので「癒し」(あえて「癒やし」だったかも)と使う場合はルビをつけていた。
2010年に常用漢字表が改訂され、いわゆる「新常用漢字表」になった。このときに、「癒」の文字に「い-える」「い-やす」 の読みが加わった。
【引用のご作法10 「十」の読み方の話──「ジュウ」「ジッ」「とお」「と」……「ジュッ」】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2827.html
そのため、新聞は「癒やす」「癒やし」「癒える」と書くようになった。一方、一部の雑誌は従来どおり「癒す」「癒し」を使うことにした。さすがに「癒える」を「癒る」にする度胸はなかったようだ。
ホニャララだよね~。
ここからははっきり余談。
「癒し」の表記に慣れた人が「癒やし」を嫌う心理はわからなくはない。当方はよほどのことがないかぎり一般的な表記に合わせようと考えているが、そう考えない人は多い。
とくに年配の物書きは、送り仮名のつけすぎを「シマリがない」と感じるらしい。これは常用漢字表(さらに遡るなら当用漢字表?)が制定される前は、かなり好き勝手ができたことと関係があるのだろう。
よく目にするのは「変わり」を「変り」と書く例だろうか。これは一理ある。たしか送り仮名の原則は語幹以外をひらがなにする……のはず。そう考えるなら、「変り」と書くべき。
ただ、そういう人も「変る」とは書かない。これだって語幹以外をひらがなにするなら「変る」のはず。現在も常用漢字表には例外がいろいろ設けられているので、「変り」と書いても間違いではない。ただ、そんなルールを採用しているマスコミはないはず。
このあたりは「癒し」「癒える」の関係と微妙に似ているような似ていないような。
語幹以外をひらがなにする……以外にどんな方法があるか。
これは慣例としか言いようがない。
論理的に考えると妙な例が多数ある。ひとつだけあげる。
「明」の読み方。
音読みの「メイ」「ミョウ」はわかるだろう。
手元の『記者ハンドブック』のは、訓読みが9種類も出ている。「あ-ける」と「あ-く」は別とカウントするからなんだけど。
注目してほしいのは「明るい」。もし「語幹以外をひらがなにする」んなら、「明い」と書くはず。
だから慣例なんだって。あとは言葉の神様に訊いてください。
【「表記の話」のバックナンバー】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2902.html
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【問題】
「いやす」の漢字表記に関して以下の問いに答えなさい。
【問1】
下記の1)~3)のなかから、「いやす」の漢字表記として適切なものを選びなさい。
1)癒す
2)癒やす
3)家康
【問2】
新聞や雑誌がどのような表記を使用しているか答えなさい。
【問3】
このようなことになった原因を述べなさい。
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【解答?例】
【問1】
表記の問題なので、1)でも2)でも構わない。
【問2】
新聞は「癒やす」としている(はず)。新常用漢字表のルールに従っているから。
雑誌は「癒す」と「癒やす」が混在している(はず)。これが名詞の「癒し系」の類いになると、「癒やし系」という表記はほとんど見ない。
ちなみにMacintoshの標準IMEの「ことえり」は「癒す」「癒し」「癒える」しか変換できない。
【問3】
個人的な意見では、常用漢字表の迷走が原因です。
元々の常用漢字表に「癒」はあっても、読みは「ユ」しかなかった。
ところが世間では「癒し」の類いが言葉が流行語のようになってしまった。その段階では、常用漢字表の音訓表にないのだから、「癒し」と書こうが「癒やし」と書こうが大差がなかった。新聞は常用漢字表に固執するので「癒し」(あえて「癒やし」だったかも)と使う場合はルビをつけていた。
2010年に常用漢字表が改訂され、いわゆる「新常用漢字表」になった。このときに、「癒」の文字に「い-える」「い-やす」 の読みが加わった。
【引用のご作法10 「十」の読み方の話──「ジュウ」「ジッ」「とお」「と」……「ジュッ」】
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そのため、新聞は「癒やす」「癒やし」「癒える」と書くようになった。一方、一部の雑誌は従来どおり「癒す」「癒し」を使うことにした。さすがに「癒える」を「癒る」にする度胸はなかったようだ。
ホニャララだよね~。
ここからははっきり余談。
「癒し」の表記に慣れた人が「癒やし」を嫌う心理はわからなくはない。当方はよほどのことがないかぎり一般的な表記に合わせようと考えているが、そう考えない人は多い。
とくに年配の物書きは、送り仮名のつけすぎを「シマリがない」と感じるらしい。これは常用漢字表(さらに遡るなら当用漢字表?)が制定される前は、かなり好き勝手ができたことと関係があるのだろう。
よく目にするのは「変わり」を「変り」と書く例だろうか。これは一理ある。たしか送り仮名の原則は語幹以外をひらがなにする……のはず。そう考えるなら、「変り」と書くべき。
ただ、そういう人も「変る」とは書かない。これだって語幹以外をひらがなにするなら「変る」のはず。現在も常用漢字表には例外がいろいろ設けられているので、「変り」と書いても間違いではない。ただ、そんなルールを採用しているマスコミはないはず。
このあたりは「癒し」「癒える」の関係と微妙に似ているような似ていないような。
語幹以外をひらがなにする……以外にどんな方法があるか。
これは慣例としか言いようがない。
論理的に考えると妙な例が多数ある。ひとつだけあげる。
「明」の読み方。
音読みの「メイ」「ミョウ」はわかるだろう。
手元の『記者ハンドブック』のは、訓読みが9種類も出ている。「あ-ける」と「あ-く」は別とカウントするからなんだけど。
注目してほしいのは「明るい」。もし「語幹以外をひらがなにする」んなら、「明い」と書くはず。
だから慣例なんだって。あとは言葉の神様に訊いてください。
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