死語の話3 噴飯もの 流れに棹さす【追記】

 直接的には下記の続きだろうな。
【死語の話──スポーツ系の真死語「ウルトラC」「大車輪」 「天声人語」から】辞書
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2883.html
【死語の話──分類法の提案「真死語」「モノ死語」「死語」「瀕死語」「転語」】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2880.html
【ネット用語の「死語度」の判定──それは「死語」なのか?】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2875.html

 このところ「死語」についてグチャグチャ書いてきた。
 個人的に、「定着しなかった流行語」のような「死語」や「モノ死語」にはあまり興味がない。もう少し正確に言うなら、興味がなくはないけど、収拾がつかなくなるので近寄りたくない。
「転語」や「真死語」に関してはちょっと考えてみたくなる。
 ということで「真死語」(由緒正しい日本語だが、使われなくなった言葉)の話。

 こういうことを考えはじめたキッカケは、下記に出てきた「噴飯もの」と「流れに棹さす」。
【2012年度(平成24年度) 「国語に関する世論調査」】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2864.html

「噴飯もの」も「流れに棹さす」も現実にはほとんど使わない気がする。使われないんだから、意味を取り違える人が多くなっても「誤用が広がった」って話とは別だろう。


●流れに棹さす
■Web辞書『大辞泉』から
http://dic.yahoo.co.jp/detail?p=%E6%B5%81%E3%82%8C%E3%81%AB%E6%A3%B9%E3%81%95%E3%81%99&stype=0&dtype=0
================引用開始
流(なが)れに棹(さお)さす
流れに棹をさして水の勢いに乗るように、物事が思いどおりに進行する。誤って、時流・大勢に逆らう意に用いることがある。

◆文化庁が発表した平成18年度「国語に関する世論調査」では、「その発言は流れに棹さすものだ」を、本来の意味である「傾向に乗って、勢いを増す行為をすること」で使う人が17.5パーセント、間違った意味「傾向に逆らって、勢いを失わせる行為をすること」で使う人が62.2パーセントと、逆転した結果が出ている。
================引用終了
 
 事情があって、こちらから。
 言葉としては知っている。ただ、意味もわかっていたとはいいにくい。正しい意味を知ったのは近年のことかもしれない。それまではどういう意味だと思っていたか……正確な記憶がない(泣)。
 ではなぜ言葉としては知っていたか。理由はひとつしか思い当たらない。『草枕』の冒頭に似た形があったから。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/776_14941.html
================引用開始
『草枕』夏目漱石

 山路を登りながら、こう考えた。
 智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。
================引用終了

 言葉としては知っていながら意味を知らなかったのか、とお叱りを受けるのなら甘んじます。寺子屋の学習法(言葉が浮かばない(泣)。「輪読」はちょっと違う。「素読」だったかな?)はそういうものなの。(←オイ!)
 対句の意味を考えれば、「棹さす」が「大勢に逆らう」という意味ではないことは明らかだが、そんなむずかしいことは考えなかった。まあ、古文と同じ感覚だった。
 ほかに使用例を見た記憶がないし、自分で使ったことはない。どんなときに使う言葉なのか見当もつかない。そんなものを持ち出して、「誤用が広がった」って言われても。(←オ〜イ!)
 結論としては、こんな言葉を訊くほうが悪い。


●噴飯もの
■Web辞書『大辞泉』から
================引用開始
ふん‐ぱん【噴飯】
[名](スル)《おかしくて、食べかけの飯をこらえきれずに噴き出す意から》がまんできずに笑ってしまうこと。「彼の弁解は―ものだ」
「貫一は覚えず―せんと為つつ」〈紅葉・続々金色夜叉〉
================引用終了

 名詞の「噴飯」や「噴飯する」の形では見たことがない。「噴飯もの」で慣用句になっている気がする。実際に目にした記憶は……相当古い。しかも、かなり年配の書き手が使っていたような。
 文化庁の「国語に関する世論調査」(平成2012年度)によると、約半数が違った間違った意味と回答したらしい。
http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/yoronchousa/h24/pdf/h24_chosa_kekka.pdf
================引用開始
噴飯もの 例文:彼の発言は噴飯ものだ。
(ア) 腹立たしくて仕方ないこと……49.0%
(イ) おかしくてたまらないこと……19.7%
(ア)と(イ)の両方…… 1.1%
(ア),(イ)とは全く別の意味……2.8%
分からない……27.4%
================引用終了

 ホントなんだろうか。「49.0%」のうちほとんどは、「そういう意味だと思い込んでいた」のではなく、知らなかったけど「選択肢から選んだ」(重言?)のではないかと疑っている。だってね。(ア) と(イ)を合わせると、どういう意味なのかは別として約7割の人がこの言葉を知っていたことになる。そんなバカな。
 まあ、「そういう意味だと思い込んでいた」のか「その場で選んで間違った」のかを深く追及する気はない。正しい意味が伝わりにくいことにかわりはない。
 なぜそんなことになったのか。これはいくつかの不幸が重なった結果だと思う。

●目にした用例がまぎらわしかった
 これはきわめて好意的な解釈。古い文章の中で年配の書き手が「噴飯もの」と書いていたとする。これが「おかしい」のか「腹立たしい」のかわからないことがあったのでは。↑の辞書の例文「彼の弁解は噴飯ものだ」も、おかしいのか腹立たしいのかわからない。もう少し丁寧に「そのときの彼の言い訳が噴飯もので、まったく話にならなかった」としても、どちらにもとれるのでは。
 こういう経験があったのなら、「噴飯もの」の意味を誤解してもおかしくはない。おかしくはないけど……。

●「食べもの」を噴くほどおもしろいことってあり?
 あまりの「おかしさ」に口に入れていたものを噴き出すとき、それは固体か液体か。現代の素直な感覚なら、液体だろう。バラエティーで、液体を口に含んで笑いに耐えるなんて企画を目にする。口に固体を含んでいるのは見たことがない。
「お茶(を)噴いた」「コーヒー(を)噴いた」なんて表現はネットではおなじみ。実際には「吹いた」のほうが多い気もするが、この際無視する。
「噴飯もの」じゃなくて「噴茶もの」「吹茶もの」だったら、もう少し正答率が上がったかも。
 ……もっともらしく書いたけど、やはり強引だな。「噴飯」の「噴」を「噴く」と解釈できていたら、「飯」だろうが「茶」だろうが、もう少し正解率が上がっていたはず。真相?は別なとことにありそう。

●「噴」と「憤」を間違ったのでは
 以下、熟語の用例はWeb辞書『大辞泉』から。
「噴」がつく熟語は、「噴煙・噴火・噴射・噴出・噴水・噴霧器/自噴」など。
 これと同音で見た目がソックリの漢字がある。主な熟語は下記。
「憤慨・憤激・憤然・憤怒(ふんぬ・ふんど)・憤懣(ふんまん)/鬱憤(うっぷん)・義憤・私憤・痛憤・悲憤」
「噴飯」という知らない言葉を見たとき、「憤」と勘違いしたんじゃないか?
「飯」に憤ってどうなるか知らないけど、よっぽどマズいものを食わされた怒りの記憶が鮮明だったのでは。かなり苦しいけど、そういう解釈ができなくはない。
 結論としては、こんな言葉を訊くほうが悪い。


 で、「真死語」にはどんなものがあるか。主観にもかかわるんでなんとも言えないところがある。
 下記は参考になると思うけど、雑多な「死語」が入っているんで、「真死語」は意外に少ない感じ。そのうち時間ができたら拾ってみよ。
http://mixi.jp/search_topic.pl?community_id=8873&mode=search&category_id=community&sort=date&page=1&open=1&type=top&bbs=0&keyword=%BB%E0%B8%EC&x=41&y=5

 なんとなく浮かんだ例。基本的に、辞書にのっているのが望ましい。
【トウがたつ】
http://dic.yahoo.co.jp/detail?p=%E8%96%B9%E3%81%8C%E7%AB%8B%E3%81%A4&stype=0&dtype=0
・用例 
 先日、W浅野のトレンディドラマの「その後」が放映された。視聴率はふるわなかったらしい。そりゃそうだろう。
「さすがにW浅野じゃトウが立ってるみたい」
「2人とも大きいからね。相手をする男優が限られるよね」
「その塔じゃない!」

【デバガメ】へー。正確には「デバカメ」なんだ。
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?dtype=0&dname=0na&index=12759600

【銭ゲバ】これは秋山ジョージの造語らしい。知らなかった。ドラマで復活したから、「蘇語」かな(笑)。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%8A%AD%E3%82%B2%E3%83%90

【ハレンチ】
【眼福】
【首っ引き】
【首ったけ】
 ……まだまだあるだろうな。
 アイデア求む。


【追記】
「噴飯もの」が「真死語」だとすると、どう言えばいいのか。
 近年だと「爆笑もの」が有力なんだろうな。
 ただなぁ 。下記を見るに「誤用」とも言い切れないかもしれないが、とりあえず現段階では「誤用」説が優勢だろう。
【このタイトルはないだろう──同級生 入籍 爆笑 圧倒的に不利 閑話休題 珠玉の大作 敷居が高い〈2〉】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1913178044&owner_id=5019671

 とっさに浮かぶのは下記かな。
■Web辞書『大辞泉』から(以下同)
http://dic.search.yahoo.co.jp/search?ei=UTF-8&p=%E8%87%8D%E3%81%A7%E8%8C%B6%E3%82%92%E6%B2%B8%E3%81%8B%E3%81%99
================引用開始
臍(へそ)で茶を沸(わ)かす

おかしくてたまらないこと、また、ばかばかしくてしようがないこと。多く、あざけっていう場合に用いる。へそ茶。
================引用終了

 えっ? 「臍が茶を沸かす」だと思っていた。たしかによく考えると「で」のほうが正しいのかも。手元の『成語林』だと「臍が茶を沸かす」が本線で、「臍で茶を沸かす」「臍茶」ともいう、とある。
 ↑のヤフー辞書には『日本国語大辞典』の一部もある。
================引用開始
1.へそ=が[=で]茶(ちゃ)を=沸(わ)かす[=焼(た)く]-日本国語大辞典
おかしくてたまらない、また、ばかばかしくてしかたがないたとえ。多くあざけりの意をこめて用いる。へそがくねる。へそが西国する。へそが入唐渡天する。へそが宿替えする。へそが笑う。*浄瑠璃・前太平記古跡鑑〔 ..
.================引用終了

 わかりにくいけど、これは「へそが茶を沸かす」もしくは「へそで茶を焼(た)く」ってこととだろう。ということは、「が」のほうが優勢では。
 辞書にはもれなく掲載されているが、これも「真死語」の類いって気がする。

 あと慣用句?で思いつくのは下記。
http://dic.search.yahoo.co.jp/search?p=%E3%81%A1%E3%82%83%E3%82%93%E3%81%A1%E3%82%83%E3%82%89&aq=-1&oq=&dic_id=all&ei=UTF-8
================引用開始
ちゃんちゃら‐おかし・い〔‐をかしい〕
[形]とるにたりないことである。大変こっけいである。笑止千万だ。「そんな話は―・くって聞けやしない」
================引用終了

 o( ̄ー ̄;)ゞううむ。これも「真死語」寸前って気がする。
「笑止千万」もギャグでしかない。
「お笑い草」はまだアリかな。

 そうなると、やっぱり「爆笑もの」?
 いっそ「激おか(ニコニコ丸)」とか。(←オイ!)
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噴飯もの

これ、私は使いますよ(「年配」だからか…)。もっとも書き言葉限定だけど。
「憤」説、これは目からウロコですし、結構当たってる気がします。

大昔、クラブ(平坦アクセントのほうじゃなくて、「高級クラブ」的クラブ)から店外に見送りを受けて店先で35歳くらいのチイママと立ち話の際、遠くの空を見ながら「ほら、あっちのほう。あそこに塔が立ってるでしょ? いや、君じゃないよ」という、今思い出しても「ドーダ!」と言いたくなるくらい「うまいこと」を言ったことがあります。

残念ながら、10年前の35歳の彼女には通じなかったが、傍にいた教養深い大ママが、「見逃しませんなぁ」と感心してくれたのが救いでした。

燃える闘魂 さん

 できればコメントはmixiの日記に集約していただけませんか。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1914383764&owner_id=5019671

 それ「うまいこと」より、「失礼なこと」では(笑)。
 ああ、いろいろ書き落としたことがある。追記せねば。

「年配」のかたは、「真死語」のアイデアお願いします。あんまり多くあげると収拾がつかなくなるので、厳選でお願いします。(←オイ!)

あれっ?

コメントは、こっちに(集約)したほうが良い、そちらをご希望であると誤解していました。「面倒だなあ」と思いながら、わざわざこっちに書いていました。
了解です。

Re: あれっ?

 そのように誤解されるようなコメントをしてましたかorz。
 ブログにいただくコメントはホニャララなものが多いので、極力mixiのほうにお願いしています。
 よろしくお願いします。
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