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~されてください ~なさってください

 下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2828.html

日本語アレコレの索引(日々増殖中)【11】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1906376407&owner_id=5019671

mixi日記2013年12月03日から


「○○は遠慮されてください」はなぜおかしいか。
 突然ですが問題です【日本語編173】を出題してからかなりたつ。
 出題の少し前からとんでもない状況になって、11月いっぱいで一段落した(はず!)のに、どこから手をつけていいかわからない。
 この設問には2つの問題がからむ。
 1つは相手の行動を「遠慮しろ」と言えるか否か。これはさほどむずかしくない。個人的には異論もあるが、とりあえず「控えろ」にするほうが無難。
 問題は「~されてください」。「される」の部分を受身と考えるなら、やや特殊な形ではあってもアリだろう。
「噓とわかっても騙されて(やって)ください」
「あえて殴られて(やって)ください」
 ここで考えたいのは、受身ではなく、敬意を表わす「される」と「ください」の組み合わせ。
 感覚的には「~されてください」には強い異和感がある。しかし、これがなぜダメかを論理的に説明するのはけっこうむずかしい。

『敬語再入門』のP.44に「16 主な尊敬語四つの整理」という項目がある。
 あげられているのは以下の4つ。
1)お/ご~~になる
2)お/ご~~なさる
3)──なさる
4)……(ら)れる

 それぞれの特徴は、原本を確認してほしい。
 以下は当方の考えを交えるので、相当信頼度が下がる。
 敬度の麺で考えると、1)から4)のなかでもっとも敬度が低いのは4)。湯(タン)で考えるとどうなるかはしらない。もっとも敬度が高いのは2)。1)と3)はちょっと方向性が違う気もして微妙なので、同ランクにしておく。
 同書では4)のことを「レル敬語」と読んでいる。
 世間ではこれが評判が悪い。最大の理由は、受身に解釈できることがあること。
「先生が食べられた」では先生が誰かに補食されたみたい……いう論理らしい。そんなものは文脈でわかるだろ、という話はおく。「お食べになった」ではなく「召し上がった」と言いなさい……となると別の話になる。
 敬度が低い上にまぎらわしいこともあり、「レル敬語」は初心者の敬語という印象があるらしい。その半面「レル敬語」には制約が少ないという利点がある。この「制約」に関しては『敬語再入門』が詳しい。
 簡単に言うと、3)は〈非「──する」型〉の動詞には使えない。×読みなさる
 1)2)は一部の〈「──する」型〉の動詞では使えない。×ご運転になる/×ご運転なさる
「レル敬語」の愛用者が多いのは、こういった理由もあるのだろう。

 さて本題。すでに書いたように「レル敬語」は制約が少ない。しかし、「……(ら)れてください」の形には強い異和感がある。この理由が……。
「遠慮しろ」「控えろ」を1)~4)の形にしてみる。

1)ご遠慮になる
2)ご遠慮なさる
 ※「遠慮」の場合は1)2)とも問題がない気がする。
3)遠慮なさる
4)遠慮される

1)お控えになる
2)お控えなさる
3)×控えなさる×
4)控えられる

 これに「ください」をつける。
1)ご遠慮(になって)ください
2)ご遠慮(なさって)ください
3)遠慮なさってください
4)遠慮されてください△

1)お控え(になって)ください
2)お控え(なさって)ください
3)×
4)控えられてください△

 ともに1)2)は(になって)(なさって)を省略した縮約形(『敬語再入門』の用語)のほうが一般的だろう。もちろん、省略しない形が間違いというわけではない。
 ともに4)はヘン。「~ください」と並んでよく使う「~いただく」の場合も、4)は△。
 正確な理由はわからない。こういうのは「言わないから言わねえんだよ。使いたきゃ勝手にどうぞ」と開き直るしかない。
 以下は憶測。
 1)の場合、「(になって)ください」がクドい印象なので「ください」が一般的。2)も同様。
 4)の場合、「(さ)れてください」がクドくても避けようがない。もちろん「遠慮してください」「控えてください」にはできるけど、やや無礼な印象になりそうな……。1)~3)のほが無難だろうな。

【20171024追記】
 うーん。これを書いたことをスッカリ忘れていた。下記を書いてから別件で調べものをしていてこのエントリーを見つけた。
【「参加されてください」の是非】
https://ameblo.jp/kuroracco/entry-12321043639.html

 で、読み返してみると大きなミスはなさそだが、言葉足らずのところがいくつかあるので補足しておく。

●〈もっとも敬度が高いのは2)。1)と3)はちょっと方向性が違う気もして微妙なので、同ランクにしておく〉
 これでもよいと思うが、たしか菊地氏がどこかで、2)と1)の敬度は同程度と書いていた気がするので、そちらを優先する。この話は、どちらでもたいした違いはない。

●〈簡単に言うと、3)は〈非「──する」型〉の動詞には使えない。×読みなさる〉
 これはちょっと問題かも。
『敬語再入門』によると、「レル敬語」以外の一般形には、それぞれ制約がある。 
2)お/ご~~なさる
〈非「──する」型〉(和語の動詞と考えてほぼ間違いないだろう)だと古臭い印象になる。
「お読みなさる」……たしかに古いな(笑)。
3)──なさる
〈非「──する」型〉は△扱い。このあたりになると語感が全く働かない。
 自分では使わないという意味では「お読みなさる」も「読みなさる」も同じようなもの。これが動詞がかわるとちょっと印象がかわる気がする。
「お走りなさる」はナシ。「走りなさる」ならアリでは。
「お話しなさる」はアリだろう。「話しなさる」はXの気がする。近寄らないのが正解だろうな(泣)。

~されてください ~なさってください〈2〉 ご遠慮ください お控えください

mixi日記2014年12月11日から

【ご遠慮 お控え】のキーワードで検索してもよくわからない。
 下記のサイトは信頼できるはずだが、この問題に関してはどうにも煮え切らない。全文は末尾に。
【「御遠慮ください」】
http://www.ninjal.ac.jp/QandA/vocabulary/post-48/
 結論は下記の部分だろうか。ほとんどヤケになっているような……。
==============引用開始
「御遠慮ください」が不適切な表現だ,と判断されるのには,おそらく,いくつかのことが同時に複合していて,全体の表現として「心地よくない」から不適切だ,と解釈できるのかもしれません。「間違いかどうか」の範囲を,用語本来の厳密な意味・用法に限定せずに,表現やその効果にまで拡大するとしたら,「やめておくに越したことはない」という話です。
==============引用終了

 これも例によって「(明確な根拠はないが)避けるほうが無難」ですかいの。



【ネタ元】「御遠慮ください」(国立国語研究所)
http://www.ninjal.ac.jp/QandA/vocabulary/post-48/
==============引用開始
「御遠慮ください」

質問
「~は御遠慮ください。」という表現は不適切だ,ということを読んだことがあります。本当でしょうか。

回答
「遠慮」という語は,はじめ「遠く先までも見通すこと」でした。これは,現代で「深謀遠慮」という言葉で使うときと同じ意味です。この用法は,平安時代以来,漢文の記録や漢文訓読体の軍記物などで使われていました。その後,室町時代から近世にかけて,「言動を差し控える」という意味で使うようになっていたようです。またさらに,「自分から断わる,辞退する」という意味でも使います。この用法はさらにすすんで,現代でいう,お祭りなどを「自粛する」ことにも使いましたし,また,江戸時代には,「謹慎」の刑罰のことや,病や物忌を理由に,出仕や面会を「自重」する意味でも用いました。

これら「辞退・自粛・謹慎・自重」は,なんらかの自分の行動を差し控える行為です。その根底には,いわば,世間をはばかる精神が流れているのかも知れません。しかし,用語や語法そのものには,謙譲の用法(あえて言い換えてみれば,「差し控えさせていただく」の「させていただく」の部分),すなわち待遇の本体がある,というわけではありません。

さて,「御~くださる」は相手の行為を高める,尊敬語に属する敬意表現です。「御遠慮」は和語でいえば「お控え」にあたり,全体で「お控えください。」と言い換えられます。「御遠慮ください。」ばかりが罪深いように言われるのは,どうしてでしょうか。第一に,和漢の語種の違いがあります。和語の効果として,柔らかく感じられ,その分,婉曲の度合いは大きく,禁止の度合いも,より弱く感じられる,ということはあるかもしれません。

たとえ漢語「遠慮」を使ったとしても,さらに敬意表現を伴った「御遠慮いただいております。」などの方が,紋切り型の「御遠慮ください。」よりも,少しは“まし”に思われるでしょう。これは,「御遠慮ください。」と言い切っていないので,話し手の謙譲の心持ちが,少しでも聞き手に伝わるからでしょう。

「御遠慮ください」が不適切な表現だ,と判断されるのには,おそらく,いくつかのことが同時に複合していて,全体の表現として「心地よくない」から不適切だ,と解釈できるのかもしれません。「間違いかどうか」の範囲を,用語本来の厳密な意味・用法に限定せずに,表現やその効果にまで拡大するとしたら,「やめておくに越したことはない」という話です。

このことを,商業的な応接マニュアルなどで,理由もなくルール化する必要はないかも知れません。が,言葉の性質を見極めて,よりよい別の方法(例えば,「飲食物のお持ち込みは,御容赦願います。」など。)を積極的に探すのがよいでしょう。

山田貞雄 (2014.4.23)
==============引用終了
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