【「あげる」「~てあげる」は敬語なのか】辞書
下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2828.html
日本語アレコレの索引(日々増殖中)【11】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1906376407&owner_id=5019671
mixi日記2013年12月26日から
下記の続き
246)【「やる」 「あげる」】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1523098273&owner_id=5019671
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1378.html
↑の「246」を書いてから3年以上たつ。まとめ方が中途半端な気がするので、気持ちも新たに書いてみる。
結論を先に書くと、『敬語の指針』のP.9の記述が正確なんだろう。
http://www.bunka.go.jp/bunkashingikai/soukai/pdf/keigo_tousin.pdf
================引用開始
「植木に水をあげる」という場合の「あげる」は,旧来の規範
からすれば誤用とされるものであるが,この語の謙譲語から美化語に向かう意味的な変化 は既に進行し,定着しつつあると言ってよい。
================引用終了
正確だとは思うが、わりやすいとは言いがたい。そういうものなのかもしれない。
629)【文化庁「敬語の指針」に対する言いたい放題】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1798665663&owner_id=5019671
辞書の記述になると、もっとあやしくなる。3年前のリンクは役に立たなくなっている。まったくもう。
http://dic.search.yahoo.co.jp/search?p=%E3%81%82%E3%81%92%E3%82%8B&stype=prefix&aq=-1&oq=&ei=UTF-8
まず『大辞泉』。
================引用開始
あ・げる 【上げる/揚げる/挙げる】
[動ガ下一][文]あ・ぐ[ガ下二]
9 神仏や敬うべき人などに、ある行為がなされる。
ア神仏に供える。「供物を―・げる」⇔下げる。
イ「与える」「やる」を、その相手を敬っていう語。「洋服を―・げる」
◆9イは本来、敬うべき対象に物をさし上げるの意で、「犬にえさをあげる」のような言い方はしなかった。現在では「与える・やる」の丁寧語として使う人が増えている。
================引用終了
次に『大辞林』。
================引用開始
⑫「与える」「やる」の丁寧な言い方。 《上》 「この本,あなたに-・げます」 「ほうびを-・げる」 「子供におやつを-・げる」 「鳥にえさを-・げる」
⑬神仏に供物(くもつ)を捧げたり,祈りの言葉をささげたりする。 《上》 「お墓に線香を-・げる」 「仏前でお経を-・げる」 「祝詞(のりと)を-・げる」
================引用終了
辞書には「謙譲語」という言葉は出てこない。前にも書いたが、このあたり言葉の使い方は『大辞泉』『大辞林』ともあやしい。
『大辞泉』の〈「与える・やる」の丁寧語〉というのは「間違い」と言ってもいいかもしれない。「与える」の丁寧語は「与えます」。「あげる」は「丁寧な言い方」でしかない(はず)。
「あげる」は本来は謙譲語だったが、現在ではそういう意味合いで使われることはめったにない。謙譲語にしたいなら、「差し上げる」とでもするしかない。このあたりは、「申す」と「申し上げる」の関係に似ている。
現代語の「上げる」は「謙譲語」のニュアンスはほとんどない。したがって、目上に対して「上げる」は使えない。
じゃあ『敬語の指針』に出てくる「美化語化」の傾向にあるかと言うと、ちょっと引っかかる。たしかに「やる」の美化語として使われることはある。当方のように育ちのよさを隠すためにあえて乱暴な言葉を使うようにしている人間は「あげる」とは言わない。すでに妙に気持ちの悪い響きを伴う言葉になっている気がする。
今度は「~てあげる」に関して。
まず『大辞泉』。
================引用開始
14 (補助動詞)動詞の連用形に接続助詞「て」が付いた形に付いて、主体が動詞の表す行為を他者に対し恩恵として行う意を表す。「てやる」の丁寧な言い方。「仕事を手伝って―・げる」「君のかわりに行って―・げよう」
================引用終了
次に『大辞林』。
================引用開始
23(補助動詞) 動詞の連用形に接続助詞「て」の付いた形に付き,主語で表されるサービスの送り手が,他人のためにすることを,送り手の側から表す。(普通は仮名書き) 《上》 「友達に本を貸して-・げた」 「お宅まで送って-・げましょう」 〔「…てやる」と異なり,受け手に対する軽い敬意がこめられている。目上に対しては「さしあげる」を用いるのが一般的〕
================引用終了
『大辞泉』もさすがに「丁寧語」はやめて「丁寧な言い方」にしている。『大辞林』にある「受け手に対する軽い敬意」が妥当か否かは不明。当方の語感だと、押し付けがましさが強くて目下に対する表現という気がする。
少し前に見た例だと、下記の記事ような例がある。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1914098846&owner_id=5019671
================引用開始
□「~してあげる」
「インナーにこちらを合わせてあげるとお洒落ですよ」
「お鍋にお水を入れてあげます」
物に対して敬う言葉は必要ありません。
================引用終了
この記事は「~てあげる」を「敬う言葉」としている。これも微妙。「敬う言葉」であって「敬語」ではないと解釈しておこうか。
この気持ちの悪い美化語モドキが急速に広まっているような気がする。ペットや植物に使うのはまだ大目に見るとしよう。料理番組ではもう定着した観があり、ファッション用語にもなりつつある。
こういうのが当たり前になると、普通の言葉づかいがゾンザイに聞こえるようになる。ヤダヤダ。
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246)【「やる」 「あげる」】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1523098273&owner_id=5019671
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1378.html
↑の「246」を書いてから3年以上たつ。まとめ方が中途半端な気がするので、気持ちも新たに書いてみる。
結論を先に書くと、『敬語の指針』のP.9の記述が正確なんだろう。
http://www.bunka.go.jp/bunkashingikai/soukai/pdf/keigo_tousin.pdf
================引用開始
「植木に水をあげる」という場合の「あげる」は,旧来の規範
からすれば誤用とされるものであるが,この語の謙譲語から美化語に向かう意味的な変化 は既に進行し,定着しつつあると言ってよい。
================引用終了
正確だとは思うが、わりやすいとは言いがたい。そういうものなのかもしれない。
629)【文化庁「敬語の指針」に対する言いたい放題】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1798665663&owner_id=5019671
辞書の記述になると、もっとあやしくなる。3年前のリンクは役に立たなくなっている。まったくもう。
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まず『大辞泉』。
================引用開始
あ・げる 【上げる/揚げる/挙げる】
[動ガ下一][文]あ・ぐ[ガ下二]
9 神仏や敬うべき人などに、ある行為がなされる。
ア神仏に供える。「供物を―・げる」⇔下げる。
イ「与える」「やる」を、その相手を敬っていう語。「洋服を―・げる」
◆9イは本来、敬うべき対象に物をさし上げるの意で、「犬にえさをあげる」のような言い方はしなかった。現在では「与える・やる」の丁寧語として使う人が増えている。
================引用終了
次に『大辞林』。
================引用開始
⑫「与える」「やる」の丁寧な言い方。 《上》 「この本,あなたに-・げます」 「ほうびを-・げる」 「子供におやつを-・げる」 「鳥にえさを-・げる」
⑬神仏に供物(くもつ)を捧げたり,祈りの言葉をささげたりする。 《上》 「お墓に線香を-・げる」 「仏前でお経を-・げる」 「祝詞(のりと)を-・げる」
================引用終了
辞書には「謙譲語」という言葉は出てこない。前にも書いたが、このあたり言葉の使い方は『大辞泉』『大辞林』ともあやしい。
『大辞泉』の〈「与える・やる」の丁寧語〉というのは「間違い」と言ってもいいかもしれない。「与える」の丁寧語は「与えます」。「あげる」は「丁寧な言い方」でしかない(はず)。
「あげる」は本来は謙譲語だったが、現在ではそういう意味合いで使われることはめったにない。謙譲語にしたいなら、「差し上げる」とでもするしかない。このあたりは、「申す」と「申し上げる」の関係に似ている。
現代語の「上げる」は「謙譲語」のニュアンスはほとんどない。したがって、目上に対して「上げる」は使えない。
じゃあ『敬語の指針』に出てくる「美化語化」の傾向にあるかと言うと、ちょっと引っかかる。たしかに「やる」の美化語として使われることはある。当方のように育ちのよさを隠すためにあえて乱暴な言葉を使うようにしている人間は「あげる」とは言わない。すでに妙に気持ちの悪い響きを伴う言葉になっている気がする。
今度は「~てあげる」に関して。
まず『大辞泉』。
================引用開始
14 (補助動詞)動詞の連用形に接続助詞「て」が付いた形に付いて、主体が動詞の表す行為を他者に対し恩恵として行う意を表す。「てやる」の丁寧な言い方。「仕事を手伝って―・げる」「君のかわりに行って―・げよう」
================引用終了
次に『大辞林』。
================引用開始
23(補助動詞) 動詞の連用形に接続助詞「て」の付いた形に付き,主語で表されるサービスの送り手が,他人のためにすることを,送り手の側から表す。(普通は仮名書き) 《上》 「友達に本を貸して-・げた」 「お宅まで送って-・げましょう」 〔「…てやる」と異なり,受け手に対する軽い敬意がこめられている。目上に対しては「さしあげる」を用いるのが一般的〕
================引用終了
『大辞泉』もさすがに「丁寧語」はやめて「丁寧な言い方」にしている。『大辞林』にある「受け手に対する軽い敬意」が妥当か否かは不明。当方の語感だと、押し付けがましさが強くて目下に対する表現という気がする。
少し前に見た例だと、下記の記事ような例がある。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1914098846&owner_id=5019671
================引用開始
□「~してあげる」
「インナーにこちらを合わせてあげるとお洒落ですよ」
「お鍋にお水を入れてあげます」
物に対して敬う言葉は必要ありません。
================引用終了
この記事は「~てあげる」を「敬う言葉」としている。これも微妙。「敬う言葉」であって「敬語」ではないと解釈しておこうか。
この気持ちの悪い美化語モドキが急速に広まっているような気がする。ペットや植物に使うのはまだ大目に見るとしよう。料理番組ではもう定着した観があり、ファッション用語にもなりつつある。
こういうのが当たり前になると、普通の言葉づかいがゾンザイに聞こえるようになる。ヤダヤダ。
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