ちょっと気になる誤用の話──直裁ないいかたをする 直截 ちょくさい ちょくせつ
下記のシリーズです。
【 日本語アレコレの索引(日々増殖中)】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-306.html
mixi日記2008年12月18日から
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1025959857&owner_id=5019671
直裁ないいかたをする
Windowsユーザーの原稿で見かけた。これは問題の根が深い。
何よりの証拠に「直裁」で検索すると約278万件も(!)引っかかってくる。もちろん、正しく「直裁」の意味(「ただちに裁決する」くらいの意味)で使っている例もあるんだろうけど、そんなに使用頻度の高い言葉ではないから大半は誤用だろう。
「直裁」は意味が違うから、正しくは「直截」。「直截」で検索すると、約18.3万件。誤用の10分の1以下(笑)。
まず問題は「直截」をなんて読むか。一般には「ちょくさい」の気がする。それは慣用読みで、正しくは「ちょくせつ」。慣用読みにあれほど寛容(単なる偶然です。ダジャレのつもりはありません)で片端から無節操に採用しているIMEが、「ちょくさい」を採用していないらしい。Macintoshのことえりが採用していないことは少し前に気づいていた。今回のことから判断すると、MS-IMEも採用していない。そりゃダメだよ。「ちょくさい」だと思い込んでいる人が、変換して「直裁」しか出てこなきゃ、字が似ているから絶対この字が正しいと思っちゃうよ。
ずいぶん前(あんまり古くて探すのに苦労した。2002年の話だった)に、Macintoshの古いことえりが「ちょくさいてき」を変換しない、ってメールを書いてきた人がいる。そんときに、正しい読みが「ちょくせつ」だからでしょう(感じ悪っ)、と書いたあとに付け加えた話。
【とっても親切なtobirisuちゃんメール】=============
でね、これはネタ帳に加えようと思っていますが、「直截的な」というのは、誤用とまでは言いませんが、異和感を覚えます。個人的な語感では、「直截な」が本来の使い方だと思います。こういう微妙な表現にぶち当たると、苦手な文法的解釈をして論理的に考えるしかありません。
接尾辞(?)の「的」が何につくかと考えると、たったいま使った「文法的」のほか、
積極、消極、表面、個人……etc.
と、すべて名詞です(「積極」「消極」を「的」抜き名詞としてで使うことはめったになさそうですが。積極果敢ぐらいかね)。
一方「直截」の品詞が何かというと、一般的には「名詞と形容動詞」です(この「名詞と形容動詞」の働きをする単語の品詞をどう分類するかは専門家の間でも意見が分かれているそうですが、学術的な話はどうでもよいので暫定的にこうしておきます……ウーム「的」を多用すると小難しい話に見える)。このパターンの言葉は、
適当、適切、最適、強引……etc.
などいくらでもありますが、いずれも「的」はつきません(例外がありますかね?)。こう考えると、「直截」は、「直截的な」とは使わないと考えるのが妥当です。
ただし、この場合を問題を複雑にしているのは、「直接」という同音語があり、「直接的な」などの表現がよく使われることです。自分で使う場合でも「ちょくせつな」というのは、言葉足らずのような気がして、「ちょくせつてきな」としたくなります。これが「ちょくさいな」だと何も異和感がないため、書くときには「直截」を「ちょくさい」と意識しながら書いています。
こうなると、話がグチャグチャになってきます。さらに言えば、「きわめてチョクセツテキナ表現」という用法だと、「直接的」でも「直截的」でもほとんど同義の気がしなくもありません(厳密には違うのでしょうが)。もっと言えば、名詞のなかで「的」がつくものとつかないものには何か法則性があるのでしょうか。「わたし的には」とか「気持ち的には」のように、「としては」に書きかえることができるものは×という気がしないでもないのですが、よく判りません。
このテのことは考えはじめるとどんどん泥沼に入っていくところがあって、不用意に書くとこのようにわかの判らない文章になりがちです(もう少し整理せんとアカンな)。
===============================
【20110226追記】
最近、「直裁」のほかに「直載」と書く例もふえているらしい。
http://www.google.co.jp/search?client=safari&rls=ja-jp&q=%E7%9B%B4%E8%BC%89&ie=UTF-8&oe=UTF-8&redir_esc=&ei=n3FoTeq4CYbuvQOBh4DkAg
いまさらながら「直截」を辞書でひいてみた。Web辞書は「慣用読み」として「ちょくさい」を認めている。まあ、これだけ誤読が増えるとしょうがないよな。
■Web辞書(『大辞泉』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch/0/0na/14730712185100/
================================
ちょく‐せつ【直×截】
[名・形動]《慣用読みで「ちょくさい」とも》
1 すぐに裁断を下すこと。また、そのさま。「―な(の)処置」
2 まわりくどくなく、ずばりと言うこと。また、そのさま。「簡明―な表現」
================================
■Web辞書(『大辞林』から)
================================
ちょくせつ0 【直▼截】
(名・形動)
[文]ナリ
[1]まわりくどくないこと。ずばりということ。また、そのさま。
―簡明
語を出すに軽快にして―なる〔出典: 即興詩人(鴎外)〕
[2]ためらわずただちに決裁すること。
〔補説〕 「ちょくさい」は慣用読み
================================
【20150912追記】
「的」の使い方──有効的 直截的 「和語+的」「代名詞+的」「壊滅的な出来(の悪さ)」
直接的には下記あたりの続きだろうな。
103)【「個人的」な話……なのかもしれない】2009年12月09日
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1359093306&owner_id=5019671
1036)【「的」の話────「わたし的には」「個人的には」「将来的には」】 辞書
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1912584154&owner_id=5019671
1229)【「的」の話〈1〉 資料編 辞書】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1932107765&owner_id=5019671
過去に書こうとして断念したネタ。
相当危ういことは覚悟の上で書く。これをきっちり書ければ、学術論文になる気がする……まぁ当方の文体では無理だろうが。
■「マニアック的」「有効的」はほぼ誤用では
世間である程度使われている言葉を「誤用」とするのは、けっこう勇気がいるので、ビビりつつ考える。
まず「有効的」について見てみよう。
1036)で下記をひいた。
【「私的には」…“あいまい族”が生み出したお手軽語2012年8月22日】
http://wol.nikkeibp.co.jp/article/column/20120419/122784/
==============引用開始
■てき【的】〔接尾〕
【語法】近年、「~の上では」「~としては」などの意で、和語に付いて「気持ち的(仕事的、味(あじ)的)には」、代名詞に付いて「わたし的(僕的)には」、また形容動詞語幹に付いて「マニアック的・有効的」などと使われるが、標準的でない。
==============引用終了
『明鏡国語辞典』の記述らしい。「有効的」は〈使われるが、標準的でない〉。和語や代名詞につくのもダメらしい(後述)。
https://kotobank.jp/word/%E7%9A%84-575235#E5.A4.A7.E8.BE.9E.E6.9E.97.20.E7.AC.AC.E4.B8.89.E7.89.88
==============引用開始
デジタル大辞泉の解説
てき【的】
[接尾]
1 名詞に付いて、形容動詞の語幹をつくる。
㋐そのような性質をもったものの意を表す。「文学―表現」「詩―発想」
㋑それについての、その方面にかかわる、などの意を表す。「教育―見地」「政治―発言」「科学―方法」
㋒そのようなようすの、それらしい、などの意を表す。「大陸―風土」「平和―解決」「徹底―追求」
(以下略)
==============引用終了
「的」の用法全体について書きはじめるとキリがない。ここでは「有効的」の周辺に絞って考える。
「的」は〈1 名詞に付いて、形容動詞の語幹をつくる〉。
この段階で結論は出ている気がする。「有効」は「名詞」と考えることもできるが、この場合は「形容動詞の語幹」だろう。「有効な」という形容動詞の形があるのに、わざわざ「有効的な」にするからヘンなのだろう。だから誤用と言えるか否かは微妙だけど。
もっと単純に、「友好的」(名詞+的)との混淆って気もする。
「効果的」(名詞+的)ならフツー。
「マニアック」は外来語なんで扱いがむずかしい部分もあるが、「マニアックな」でOKなのに、わざわざ「マニアック的な」にするからヘンなのでは。
別な考え方で、「有効的」は「有効っぽい」「有効風」「ほぼ有効」という解釈も可能かもしれない。
「有効な」とまでは言えないけど、なんとなく「有効っぽい」のが「有効的な」……可能な気もするが、現段階ではほぼギャグでは。
■「直截的」もほぼ誤用では
これも以前書いたことが中途半端な気がしている。
23)【ちょっと気になる誤用の話──直裁ないいかたをする】(2008年12月18日)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1025959857&owner_id=5019671
「直截」は最近「ちょくさい」という慣用読みが認められたらしい。なんだかなぁ。
https://kotobank.jp/word/%E7%9B%B4%E6%88%AA-569266#E5.A4.A7.E8.BE.9E.E6.9E.97.20.E7.AC.AC.E4.B8.89.E7.89.88
==============引用開始
デジタル大辞泉の解説
ちょく‐せつ【直×截】
[名・形動]《慣用読みで「ちょくさい」とも》
1 すぐに裁断を下すこと。また、そのさま。「―な(の)処置」
2 まわりくどくなく、ずばりと言うこと。また、そのさま。「簡明―な表現」
==============引用終了
これも「直截的な」には異和感がある。「直截な」で十分だろう。
ただ、正しく「ちょくせつな」と読むと、言葉足らずでかなり異和感がある。「直接的(名詞+的)な」との混淆だろう。この場合は意味も似ているから、さらにまぎらわしい。
困ったことに、「ちょくさいな」だとほとんど異和感がない(当方が●●だから?)
■「和語+的」は誤用なのか
『明鏡国語辞典』は〈使われるが、標準的でない〉にしている。
一概には言えない。漢語だって「的」がつかないものがいくらでもある。「地球的」「陸上的」「勉強的」etc.……。あれ? 「勉強」は漢語じゃなかったっけ。
「学術的」は◯。「学問的」は△。「学習的」はたぶん×だろう。これを論理的に説明することができるのだろうか。
「意味的」は×なのだろうか。
「値段的には満足できるが、味的には不満が残る」……はどうなんだろう。
このあたり、すでに語感が壊滅〝的〟に破壊されているような。
■「代名詞+的」は誤用なのか
さらに微妙な話に(泣)。
代名詞のほか、役職名なども同様だろう。
「僕的には」「社長的には」etc.……
意味は「~としては」くらいだろう。微妙な例がありそう。課題にする。
■「壊滅的な出来(の悪さ)」はOKなのか
下記のやり取りを読んで考えてしまった。
【壊滅的=最低評価?】
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/9033289.html
質問サイトは話が横道に逸れ、「壊滅的」は「壊滅」なのか「ほぼ壊滅」なのかという話になっているような。o( ̄ー ̄;)ゞううむ
本題は「壊滅的な出来(の悪さ)」と言えるか否かだろう。直感的には(「直感では」?)×。
「壊滅」は「(主として大規模なものが)(物理的に)すっかり破壊された状態」だろう。
文章は規模的にも(規模の面でも)不自然。しかも「物理的」(物理チック?)でもない。
「物理的」に関しては微妙な気もする。「精神を壊滅的に破壊される」はどうなんだろう。
「壊滅的な出来(の悪さ)」は、ギャグとしてはアリ。ユーモアを含む表現としてもアリ。
たとえば「顔面が壊滅的に崩れている」とかはアリだろう。
こんな感じで、元々はギャグとして異和感を楽しんでいたはずの言葉が、ネットに流れることによって変質している気がする。要はギャグと理解できない●●がまともに受け取り、フツーの言葉として使っている。そして言葉が独り歩きを始める……。
そんな使用例がいくら増えても、ヘンな表現はヘンな表現でしかないし、誤用は誤用でしかない(はず)。
【 日本語アレコレの索引(日々増殖中)】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-306.html
mixi日記2008年12月18日から
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1025959857&owner_id=5019671
直裁ないいかたをする
Windowsユーザーの原稿で見かけた。これは問題の根が深い。
何よりの証拠に「直裁」で検索すると約278万件も(!)引っかかってくる。もちろん、正しく「直裁」の意味(「ただちに裁決する」くらいの意味)で使っている例もあるんだろうけど、そんなに使用頻度の高い言葉ではないから大半は誤用だろう。
「直裁」は意味が違うから、正しくは「直截」。「直截」で検索すると、約18.3万件。誤用の10分の1以下(笑)。
まず問題は「直截」をなんて読むか。一般には「ちょくさい」の気がする。それは慣用読みで、正しくは「ちょくせつ」。慣用読みにあれほど寛容(単なる偶然です。ダジャレのつもりはありません)で片端から無節操に採用しているIMEが、「ちょくさい」を採用していないらしい。Macintoshのことえりが採用していないことは少し前に気づいていた。今回のことから判断すると、MS-IMEも採用していない。そりゃダメだよ。「ちょくさい」だと思い込んでいる人が、変換して「直裁」しか出てこなきゃ、字が似ているから絶対この字が正しいと思っちゃうよ。
ずいぶん前(あんまり古くて探すのに苦労した。2002年の話だった)に、Macintoshの古いことえりが「ちょくさいてき」を変換しない、ってメールを書いてきた人がいる。そんときに、正しい読みが「ちょくせつ」だからでしょう(感じ悪っ)、と書いたあとに付け加えた話。
【とっても親切なtobirisuちゃんメール】=============
でね、これはネタ帳に加えようと思っていますが、「直截的な」というのは、誤用とまでは言いませんが、異和感を覚えます。個人的な語感では、「直截な」が本来の使い方だと思います。こういう微妙な表現にぶち当たると、苦手な文法的解釈をして論理的に考えるしかありません。
接尾辞(?)の「的」が何につくかと考えると、たったいま使った「文法的」のほか、
積極、消極、表面、個人……etc.
と、すべて名詞です(「積極」「消極」を「的」抜き名詞としてで使うことはめったになさそうですが。積極果敢ぐらいかね)。
一方「直截」の品詞が何かというと、一般的には「名詞と形容動詞」です(この「名詞と形容動詞」の働きをする単語の品詞をどう分類するかは専門家の間でも意見が分かれているそうですが、学術的な話はどうでもよいので暫定的にこうしておきます……ウーム「的」を多用すると小難しい話に見える)。このパターンの言葉は、
適当、適切、最適、強引……etc.
などいくらでもありますが、いずれも「的」はつきません(例外がありますかね?)。こう考えると、「直截」は、「直截的な」とは使わないと考えるのが妥当です。
ただし、この場合を問題を複雑にしているのは、「直接」という同音語があり、「直接的な」などの表現がよく使われることです。自分で使う場合でも「ちょくせつな」というのは、言葉足らずのような気がして、「ちょくせつてきな」としたくなります。これが「ちょくさいな」だと何も異和感がないため、書くときには「直截」を「ちょくさい」と意識しながら書いています。
こうなると、話がグチャグチャになってきます。さらに言えば、「きわめてチョクセツテキナ表現」という用法だと、「直接的」でも「直截的」でもほとんど同義の気がしなくもありません(厳密には違うのでしょうが)。もっと言えば、名詞のなかで「的」がつくものとつかないものには何か法則性があるのでしょうか。「わたし的には」とか「気持ち的には」のように、「としては」に書きかえることができるものは×という気がしないでもないのですが、よく判りません。
このテのことは考えはじめるとどんどん泥沼に入っていくところがあって、不用意に書くとこのようにわかの判らない文章になりがちです(もう少し整理せんとアカンな)。
===============================
【20110226追記】
最近、「直裁」のほかに「直載」と書く例もふえているらしい。
http://www.google.co.jp/search?client=safari&rls=ja-jp&q=%E7%9B%B4%E8%BC%89&ie=UTF-8&oe=UTF-8&redir_esc=&ei=n3FoTeq4CYbuvQOBh4DkAg
いまさらながら「直截」を辞書でひいてみた。Web辞書は「慣用読み」として「ちょくさい」を認めている。まあ、これだけ誤読が増えるとしょうがないよな。
■Web辞書(『大辞泉』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch/0/0na/14730712185100/
================================
ちょく‐せつ【直×截】
[名・形動]《慣用読みで「ちょくさい」とも》
1 すぐに裁断を下すこと。また、そのさま。「―な(の)処置」
2 まわりくどくなく、ずばりと言うこと。また、そのさま。「簡明―な表現」
================================
■Web辞書(『大辞林』から)
================================
ちょくせつ0 【直▼截】
(名・形動)
[文]ナリ
[1]まわりくどくないこと。ずばりということ。また、そのさま。
―簡明
語を出すに軽快にして―なる〔出典: 即興詩人(鴎外)〕
[2]ためらわずただちに決裁すること。
〔補説〕 「ちょくさい」は慣用読み
================================
【20150912追記】
「的」の使い方──有効的 直截的 「和語+的」「代名詞+的」「壊滅的な出来(の悪さ)」
直接的には下記あたりの続きだろうな。
103)【「個人的」な話……なのかもしれない】2009年12月09日
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1359093306&owner_id=5019671
1036)【「的」の話────「わたし的には」「個人的には」「将来的には」】 辞書
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1912584154&owner_id=5019671
1229)【「的」の話〈1〉 資料編 辞書】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1932107765&owner_id=5019671
過去に書こうとして断念したネタ。
相当危ういことは覚悟の上で書く。これをきっちり書ければ、学術論文になる気がする……まぁ当方の文体では無理だろうが。
■「マニアック的」「有効的」はほぼ誤用では
世間である程度使われている言葉を「誤用」とするのは、けっこう勇気がいるので、ビビりつつ考える。
まず「有効的」について見てみよう。
1036)で下記をひいた。
【「私的には」…“あいまい族”が生み出したお手軽語2012年8月22日】
http://wol.nikkeibp.co.jp/article/column/20120419/122784/
==============引用開始
■てき【的】〔接尾〕
【語法】近年、「~の上では」「~としては」などの意で、和語に付いて「気持ち的(仕事的、味(あじ)的)には」、代名詞に付いて「わたし的(僕的)には」、また形容動詞語幹に付いて「マニアック的・有効的」などと使われるが、標準的でない。
==============引用終了
『明鏡国語辞典』の記述らしい。「有効的」は〈使われるが、標準的でない〉。和語や代名詞につくのもダメらしい(後述)。
https://kotobank.jp/word/%E7%9A%84-575235#E5.A4.A7.E8.BE.9E.E6.9E.97.20.E7.AC.AC.E4.B8.89.E7.89.88
==============引用開始
デジタル大辞泉の解説
てき【的】
[接尾]
1 名詞に付いて、形容動詞の語幹をつくる。
㋐そのような性質をもったものの意を表す。「文学―表現」「詩―発想」
㋑それについての、その方面にかかわる、などの意を表す。「教育―見地」「政治―発言」「科学―方法」
㋒そのようなようすの、それらしい、などの意を表す。「大陸―風土」「平和―解決」「徹底―追求」
(以下略)
==============引用終了
「的」の用法全体について書きはじめるとキリがない。ここでは「有効的」の周辺に絞って考える。
「的」は〈1 名詞に付いて、形容動詞の語幹をつくる〉。
この段階で結論は出ている気がする。「有効」は「名詞」と考えることもできるが、この場合は「形容動詞の語幹」だろう。「有効な」という形容動詞の形があるのに、わざわざ「有効的な」にするからヘンなのだろう。だから誤用と言えるか否かは微妙だけど。
もっと単純に、「友好的」(名詞+的)との混淆って気もする。
「効果的」(名詞+的)ならフツー。
「マニアック」は外来語なんで扱いがむずかしい部分もあるが、「マニアックな」でOKなのに、わざわざ「マニアック的な」にするからヘンなのでは。
別な考え方で、「有効的」は「有効っぽい」「有効風」「ほぼ有効」という解釈も可能かもしれない。
「有効な」とまでは言えないけど、なんとなく「有効っぽい」のが「有効的な」……可能な気もするが、現段階ではほぼギャグでは。
■「直截的」もほぼ誤用では
これも以前書いたことが中途半端な気がしている。
23)【ちょっと気になる誤用の話──直裁ないいかたをする】(2008年12月18日)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1025959857&owner_id=5019671
「直截」は最近「ちょくさい」という慣用読みが認められたらしい。なんだかなぁ。
https://kotobank.jp/word/%E7%9B%B4%E6%88%AA-569266#E5.A4.A7.E8.BE.9E.E6.9E.97.20.E7.AC.AC.E4.B8.89.E7.89.88
==============引用開始
デジタル大辞泉の解説
ちょく‐せつ【直×截】
[名・形動]《慣用読みで「ちょくさい」とも》
1 すぐに裁断を下すこと。また、そのさま。「―な(の)処置」
2 まわりくどくなく、ずばりと言うこと。また、そのさま。「簡明―な表現」
==============引用終了
これも「直截的な」には異和感がある。「直截な」で十分だろう。
ただ、正しく「ちょくせつな」と読むと、言葉足らずでかなり異和感がある。「直接的(名詞+的)な」との混淆だろう。この場合は意味も似ているから、さらにまぎらわしい。
困ったことに、「ちょくさいな」だとほとんど異和感がない(当方が●●だから?)
■「和語+的」は誤用なのか
『明鏡国語辞典』は〈使われるが、標準的でない〉にしている。
一概には言えない。漢語だって「的」がつかないものがいくらでもある。「地球的」「陸上的」「勉強的」etc.……。あれ? 「勉強」は漢語じゃなかったっけ。
「学術的」は◯。「学問的」は△。「学習的」はたぶん×だろう。これを論理的に説明することができるのだろうか。
「意味的」は×なのだろうか。
「値段的には満足できるが、味的には不満が残る」……はどうなんだろう。
このあたり、すでに語感が壊滅〝的〟に破壊されているような。
■「代名詞+的」は誤用なのか
さらに微妙な話に(泣)。
代名詞のほか、役職名なども同様だろう。
「僕的には」「社長的には」etc.……
意味は「~としては」くらいだろう。微妙な例がありそう。課題にする。
■「壊滅的な出来(の悪さ)」はOKなのか
下記のやり取りを読んで考えてしまった。
【壊滅的=最低評価?】
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/9033289.html
質問サイトは話が横道に逸れ、「壊滅的」は「壊滅」なのか「ほぼ壊滅」なのかという話になっているような。o( ̄ー ̄;)ゞううむ
本題は「壊滅的な出来(の悪さ)」と言えるか否かだろう。直感的には(「直感では」?)×。
「壊滅」は「(主として大規模なものが)(物理的に)すっかり破壊された状態」だろう。
文章は規模的にも(規模の面でも)不自然。しかも「物理的」(物理チック?)でもない。
「物理的」に関しては微妙な気もする。「精神を壊滅的に破壊される」はどうなんだろう。
「壊滅的な出来(の悪さ)」は、ギャグとしてはアリ。ユーモアを含む表現としてもアリ。
たとえば「顔面が壊滅的に崩れている」とかはアリだろう。
こんな感じで、元々はギャグとして異和感を楽しんでいたはずの言葉が、ネットに流れることによって変質している気がする。要はギャグと理解できない●●がまともに受け取り、フツーの言葉として使っている。そして言葉が独り歩きを始める……。
そんな使用例がいくら増えても、ヘンな表現はヘンな表現でしかないし、誤用は誤用でしかない(はず)。
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