【コメントのやり取りから──配偶者の呼称 妻編】 〈3〉
下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2828.html
日本語アレコレの索引(日々増殖中)【13】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1929935424&owner_id=5019671
mixi日記2014年09月23日から
直接的には下記の続きだろうな。
【コメントのやり取りから──配偶者の呼称 妻編】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-3069.html
トピで、自分の配偶者を指して「奥さん旦那さん」を使うのは「誤用」という主張を目にして、ちょっと気になってしまった。
「誤用」の定義にもよるのだが、こういう問題で「誤用」と断定するのはけっこうむずかしい。少なくとも当方は、よほどの典拠がない限りそんなことは書けない。
大前提としてこういうのは主観にかかわる部分が多いので、何が「正しい」とか「間違い」ってことではないと思うし、強く主張する気もない。もちろん「○○」は耳障りと主張するのも自由。でも根拠もないのに「誤用」とか断定するのはやめてほしい。
辞書をひくところから始める。
http://kotobank.jp/word/%E5%A5%A5%E3%81%95%E3%82%93?dic=daijisen&oid=02315000
================引用開始
デジタル大辞泉の解説
おく‐さん 【奥さん】
他人の妻を敬っていう語。「おくさま」よりややくだけた言い方。
================引用終了
================引用開始
大辞林 第三版の解説
おくさん【奥さん】
〔「おくさま」の転〕
他人の妻を敬っていう語。 「 -によろしく」 〔「おくさま」より少しくだけた言い方。現在は広く一般に用いられる〕
================引用終了
まあそういうことだろう。〈他人の妻を敬っていう語〉ってことは、自分の妻に用いるべきではないのかもしれない。ただ、だからといって「誤用」と言えるかどうかはまた別の問題だと思う。考慮しなければならないことがいろいろありそうだから。
ひたすら地味に辞書をひいていく。以下、大差がないので『大辞泉』だけ。
http://kotobank.jp/word/%E4%B8%8A%E3%81%95%E3%82%93?dic=daijisen&oid=03582000
================引用開始
かみ‐さん 【上さん】
1 商人・職人などの妻、また、その家の女主人を呼ぶ語。→御上(おかみ)さん
2 親しい間柄で、自分の妻、または他人の妻を呼ぶ語。「―の手料理」
3 「かみさま(上様)3」に同じ。「これこれ―、風呂の湯がわきました」〈浄・太功記〉
================引用終了
ここで考えているのは「2」。〈親しい間柄で、自分の妻、または他人の妻を呼ぶ語〉。つまり、同じように「さん」がついても、「奥さん」は敬称で「かみさん」は敬称ではないことになる。
http://kotobank.jp/word/%E3%81%8A%E7%88%B6%E3%81%95%E3%82%93?dic=daijirin&oid=DJR_otousann_-010
================引用開始
大辞林 第三版の解説
おとうさん【お父さん】
①〔明治末期以後「お母さん」とともに国定教科書で用いられ一般化した語〕 父を丁寧にいう語。子供が父親を呼ぶ時に用いる一番普通の言い方。また,父親をさしてもいう。 「 -,行ってまいります」 「 -はいつ出張から帰るの」
②子のいる家庭で妻が夫に呼びかける語。また,夫をさしていう語。 「 -,一緒にご飯にしましょう」
③父親の立場にある人をいう語。父親が自分自身をいう場合にも用いる。 「あいつもいい-になったなあ」 「 -は怒っているんだぞ」
④相手や第三者の父親を軽く敬っていう語。 「 -はお元気ですか」 〔親しい間柄では,自分の父親をさす場合に「ちち」ではなく,くだけて「おとうさん」ということもある。「-はまだ帰っていません」〕
▽ おかあさん
================引用終了
なぜか『大辞泉』には項目がない(泣)。
ここで考えているのは④。「相手や第三者の父親を軽く敬っていう語」ですか。「お」も「さん」もついて「軽く」ですか。
「かみさん」の項とよく似た記述がある。
〈親しい間柄では,自分の父親をさす場合に「ちち」ではなく,くだけて「おとうさん」ということもある〉
あとはネットで検索するとグチャグチャで、案の定「ウチの奥さん」へのバッシングの嵐。例によって、ちゃんと根拠をあげているものはほとんどない。
思いつくことをあげていく。
●「奥さん」は敬称なのか
辞書がそう認めているから、敬称なんだろう。「奥様」よりくだけているけど一応敬称。でも敬度は相当低い。
第三者が「奥さん」と呼びかけるのは、もう敬称のニュアンスはないと思うよ。ほかに適切なものがないから使われているだけでは。「お姉さん」「奥さん」だもん。ヘタすれば「お姉ちゃん」と同レベルかも。
ちょっと乱暴なことを書くと、「さん」と「様」の両方が使える場合は、「さん」の敬度は限りなく低くなるのでは。名字につく「さん」なんかは別かなぁ。
●「お父さん」と同じレベルでは
大人が人前で、自分の父親を「お父さん」などど呼ぶのは×だろう。これを「誤用」と言えるか否かは微妙。
親しい間柄だと「父」と「お父さん」のどちらが自然か。当方の感覚だと「お父さん」になる。
「妻(家内)」と「ウチの奥さん」の使い分けも同じ感じでは。
●「かみさん」のイメージ
辞書を見比べると、親しい間柄で使う「お父さん」に匹敵するのは「(ウチの)かみさん」なのかもしれない。ただ、「かみさん」を使うか否かは個人の感覚の問題って気がする。当方は使えない。「かみさん」が似合うのはオジサン世代以降って気がするから、気持ちだけ(ヤカマシイ)は若い当方には無理。もうひとつ付け加えるなら、なぜか「かみさん」には方言(おそらく関西弁)のイメージがある。
ということで、当方の選択肢に「かみさん」はない。
●なぜバッシングが始まったか
以下はほぼ想像。
テレビで(比較的)若い男性が「ウチの奥さん」と呼ぶのが耳障りなんだろう。その影響があるのかないのか、身近でそういう言い方をする(比較的)若い男性がいるのだろう。ただ、ちょっと確認してほしい。そういう人は「父」「母」って言えてるのかな。
要は「父」「母」と言えずに「お父さん」「お母さん」と言っている●●は、「ウチの奥さん」って言うんじゃないかな。ただ、それを「誤用」と言うか否かは微妙。「日本語が不自由」とは思うけど。
自分のことを考えると、「父」「母」と言うような相手には「妻」って言う。
親しい間柄だと、「オヤジ」「オフクロ」「ウチの奥さん」になる。
親しい間柄なら、「(お)とうちゃん」と呼ぼうが「パパちゃん」と呼ぼうが自由だろう。
それだけのことだと思う。たぶん、辞書の「奥さん」の項にも、近い将来〈親しい間柄では,自分の妻をさす場合に,くだけて「(ウチの)奥さん」ということもある〉のような記述が加わるのでは。
50分
Wikipediaの記述がけっこうおもしろい。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%85%8D%E5%81%B6%E8%80%85
================引用開始
女性配偶者の呼び方[編集]
男性による自らの女性配偶者(以下、妻と記す)の呼び方としては、「妻」「家内」「女房」「カミさん」「連れ合い」「ワイフ」などがある[1]。 近年では、夫婦のいずれかが通称利用で旧姓を用いている場合など、女性の通称名(男性側が通称名の場合は、女性の戸籍名)で呼ぶ場合もある。
奥さん、奥様
元々は、他人の妻に対する尊敬語として使われてきた。その後、昭和以降には、自らの妻をさして「うちの奥さん」などと使用する用法が生まれ、日本全国へ広まっている。「従来妻への尊敬語がなかったためこれにあたる語として奥さんを使用するようになってきている」[1]。
1 北原保雄編『問題な日本語 その3』大修修館書店、2007年12月、ISBN9784469221930
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直接的には下記の続きだろうな。
【コメントのやり取りから──配偶者の呼称 妻編】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-3069.html
トピで、自分の配偶者を指して「奥さん旦那さん」を使うのは「誤用」という主張を目にして、ちょっと気になってしまった。
「誤用」の定義にもよるのだが、こういう問題で「誤用」と断定するのはけっこうむずかしい。少なくとも当方は、よほどの典拠がない限りそんなことは書けない。
大前提としてこういうのは主観にかかわる部分が多いので、何が「正しい」とか「間違い」ってことではないと思うし、強く主張する気もない。もちろん「○○」は耳障りと主張するのも自由。でも根拠もないのに「誤用」とか断定するのはやめてほしい。
辞書をひくところから始める。
http://kotobank.jp/word/%E5%A5%A5%E3%81%95%E3%82%93?dic=daijisen&oid=02315000
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デジタル大辞泉の解説
おく‐さん 【奥さん】
他人の妻を敬っていう語。「おくさま」よりややくだけた言い方。
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大辞林 第三版の解説
おくさん【奥さん】
〔「おくさま」の転〕
他人の妻を敬っていう語。 「 -によろしく」 〔「おくさま」より少しくだけた言い方。現在は広く一般に用いられる〕
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まあそういうことだろう。〈他人の妻を敬っていう語〉ってことは、自分の妻に用いるべきではないのかもしれない。ただ、だからといって「誤用」と言えるかどうかはまた別の問題だと思う。考慮しなければならないことがいろいろありそうだから。
ひたすら地味に辞書をひいていく。以下、大差がないので『大辞泉』だけ。
http://kotobank.jp/word/%E4%B8%8A%E3%81%95%E3%82%93?dic=daijisen&oid=03582000
================引用開始
かみ‐さん 【上さん】
1 商人・職人などの妻、また、その家の女主人を呼ぶ語。→御上(おかみ)さん
2 親しい間柄で、自分の妻、または他人の妻を呼ぶ語。「―の手料理」
3 「かみさま(上様)3」に同じ。「これこれ―、風呂の湯がわきました」〈浄・太功記〉
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ここで考えているのは「2」。〈親しい間柄で、自分の妻、または他人の妻を呼ぶ語〉。つまり、同じように「さん」がついても、「奥さん」は敬称で「かみさん」は敬称ではないことになる。
http://kotobank.jp/word/%E3%81%8A%E7%88%B6%E3%81%95%E3%82%93?dic=daijirin&oid=DJR_otousann_-010
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大辞林 第三版の解説
おとうさん【お父さん】
①〔明治末期以後「お母さん」とともに国定教科書で用いられ一般化した語〕 父を丁寧にいう語。子供が父親を呼ぶ時に用いる一番普通の言い方。また,父親をさしてもいう。 「 -,行ってまいります」 「 -はいつ出張から帰るの」
②子のいる家庭で妻が夫に呼びかける語。また,夫をさしていう語。 「 -,一緒にご飯にしましょう」
③父親の立場にある人をいう語。父親が自分自身をいう場合にも用いる。 「あいつもいい-になったなあ」 「 -は怒っているんだぞ」
④相手や第三者の父親を軽く敬っていう語。 「 -はお元気ですか」 〔親しい間柄では,自分の父親をさす場合に「ちち」ではなく,くだけて「おとうさん」ということもある。「-はまだ帰っていません」〕
▽ おかあさん
================引用終了
なぜか『大辞泉』には項目がない(泣)。
ここで考えているのは④。「相手や第三者の父親を軽く敬っていう語」ですか。「お」も「さん」もついて「軽く」ですか。
「かみさん」の項とよく似た記述がある。
〈親しい間柄では,自分の父親をさす場合に「ちち」ではなく,くだけて「おとうさん」ということもある〉
あとはネットで検索するとグチャグチャで、案の定「ウチの奥さん」へのバッシングの嵐。例によって、ちゃんと根拠をあげているものはほとんどない。
思いつくことをあげていく。
●「奥さん」は敬称なのか
辞書がそう認めているから、敬称なんだろう。「奥様」よりくだけているけど一応敬称。でも敬度は相当低い。
第三者が「奥さん」と呼びかけるのは、もう敬称のニュアンスはないと思うよ。ほかに適切なものがないから使われているだけでは。「お姉さん」「奥さん」だもん。ヘタすれば「お姉ちゃん」と同レベルかも。
ちょっと乱暴なことを書くと、「さん」と「様」の両方が使える場合は、「さん」の敬度は限りなく低くなるのでは。名字につく「さん」なんかは別かなぁ。
●「お父さん」と同じレベルでは
大人が人前で、自分の父親を「お父さん」などど呼ぶのは×だろう。これを「誤用」と言えるか否かは微妙。
親しい間柄だと「父」と「お父さん」のどちらが自然か。当方の感覚だと「お父さん」になる。
「妻(家内)」と「ウチの奥さん」の使い分けも同じ感じでは。
●「かみさん」のイメージ
辞書を見比べると、親しい間柄で使う「お父さん」に匹敵するのは「(ウチの)かみさん」なのかもしれない。ただ、「かみさん」を使うか否かは個人の感覚の問題って気がする。当方は使えない。「かみさん」が似合うのはオジサン世代以降って気がするから、気持ちだけ(ヤカマシイ)は若い当方には無理。もうひとつ付け加えるなら、なぜか「かみさん」には方言(おそらく関西弁)のイメージがある。
ということで、当方の選択肢に「かみさん」はない。
●なぜバッシングが始まったか
以下はほぼ想像。
テレビで(比較的)若い男性が「ウチの奥さん」と呼ぶのが耳障りなんだろう。その影響があるのかないのか、身近でそういう言い方をする(比較的)若い男性がいるのだろう。ただ、ちょっと確認してほしい。そういう人は「父」「母」って言えてるのかな。
要は「父」「母」と言えずに「お父さん」「お母さん」と言っている●●は、「ウチの奥さん」って言うんじゃないかな。ただ、それを「誤用」と言うか否かは微妙。「日本語が不自由」とは思うけど。
自分のことを考えると、「父」「母」と言うような相手には「妻」って言う。
親しい間柄だと、「オヤジ」「オフクロ」「ウチの奥さん」になる。
親しい間柄なら、「(お)とうちゃん」と呼ぼうが「パパちゃん」と呼ぼうが自由だろう。
それだけのことだと思う。たぶん、辞書の「奥さん」の項にも、近い将来〈親しい間柄では,自分の妻をさす場合に,くだけて「(ウチの)奥さん」ということもある〉のような記述が加わるのでは。
50分
Wikipediaの記述がけっこうおもしろい。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%85%8D%E5%81%B6%E8%80%85
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女性配偶者の呼び方[編集]
男性による自らの女性配偶者(以下、妻と記す)の呼び方としては、「妻」「家内」「女房」「カミさん」「連れ合い」「ワイフ」などがある[1]。 近年では、夫婦のいずれかが通称利用で旧姓を用いている場合など、女性の通称名(男性側が通称名の場合は、女性の戸籍名)で呼ぶ場合もある。
奥さん、奥様
元々は、他人の妻に対する尊敬語として使われてきた。その後、昭和以降には、自らの妻をさして「うちの奥さん」などと使用する用法が生まれ、日本全国へ広まっている。「従来妻への尊敬語がなかったためこれにあたる語として奥さんを使用するようになってきている」[1]。
1 北原保雄編『問題な日本語 その3』大修修館書店、2007年12月、ISBN9784469221930
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