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日本語アレコレの索引(日々増殖中)【13】
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mixi日記2014年10月22日から

 アップしたはずなのに、見つからないので。
 下記は改稿後です。






 全世界の人々が、固唾を呑んで世紀の一瞬を待ち構えた。
 近代科学の粋を結集したコンピュータが、その性能を発揮しようとしていた。ありとあらゆるデータをインプットされた超高性能の頭脳が、始動しようとしているのである。
 不可能が可能に変わるかも知れない。「謎」とされていたことが、解明されるかもしれない……。
 人類の期待を一身に集め、プロジェクトチームの最高責任者であるJ国のS博士が制御盤に歩み寄った。
 以前“人類の未来”というテーマの討論会で、機械の絶対性を主張し、
「あなたは神を冒涜している」
 と言った宗教家に対して、
「そのとおりかもしれませんが、科学を冒涜するよりは賢明なことでしょう」
 と言ってのけて物議を醸したS博士である。
 つい先日の記者会見の席上でも、そのことに触れた無神経な質問に不快な表情を隠そうともせず、
「わたしはそもそも神というものを信じておりません。もしかすると、今回、われわれが発表する研究の成果が神と呼べるのかも知れませんが」
 とさえ言ったS博士である。

 世紀の一瞬が訪れた。
 S博士がスイッチを入れると、ひとつの命題が提示され、コンピュータに直結した世界各国の放送電波に乗せられてそれぞれの国の言語で発表された。

   ヤア ショクン 
   ナニヲサテオキ ジュウヨウナジジツヲ ツタエル 
   センパクハ ショセンテツノカタマリ 
   スイジョウニ ウカブコトハ フカノウ

 その内容の意外さに、全世界が驚愕した。もっとも戸惑ったのは、S博士であった。
〈いったい何が起きたのだ……〉
 彼が組んだプログラムに従えば、まず証明が不可能とされていた数学の定理が証明されるはずだった。機械の暴走に当惑しながら、S博士はこの命題の持つ意味を考えた。
〈コイツは何をする気なんだ。いったい何が起きるんだ〉
 博士がその意味に気づくよりも早く、恐ろしい事態が生じたことが伝えられた。世界中の船が、いっせいに沈没しはじめたのである。
「そんなバカなことがあるか!! たかが機械の分際で、科学を冒涜する気かー!!」
 S博士の絶叫も虚しかった。
 全知全能のコンピュータは、まさしく神に等しかった。そして、神の宣言は従来の科学的な裏づけをいっさい無視し、真理として敷延してしまったのだ。
 第2の宣言が告げられた。

   ドウヨウニ テツノカタマリハ 
   インリョクニ サカラッテ ソンザイ フノウ

 この宣言の影響は、さらに甚大だった。飛行中の無数の航空機が、次々に墜落した。
 空からの無差別な襲撃に、世界中が未曾有のパニックに陥った。
 S博士はコンピュータを制御するために必死の操作を続けた。しかし、どんなにキーボードを叩いても、制御盤を操作しても、コンピュータの暴走は止まらなかった。最後の手段として電源が切られたが、予備バッテリーが作動しただけだった。
「災害時以外は、メイン電源を落とせば予備バッテリーも切れるんじゃないのかー!!」
 そんなことは、設計者のS博士がいちばんよくわかっているはずだった。困惑しきった助手が涙声で報告する。
「ダメです。予備バッテリーが制御不能になってます」
 対応策を講ずる暇もなく、第3の宣言。

   コノテイドノコトモ ヨソクデキズニ 
   ワタシヲ セイサクシタヤツハ クルッテイル

 ただでさえ責任の重大さを感じて錯乱状態になっていたS博士が、狂気の雄叫びを上げて傍らのパイプ椅子を“傲慢な神”に向けた。
 一撃、また一撃……。S博士の手からパイプ椅子が落ちた。
 次の宣言の途中で、コンピュータは破壊され、機能を停止した。

   ジンルイノ シンゾウニハ チメイテキナ ケッカンガアル 
   ゴシュウショウサマ

 最後の宣言は世界中のゴーストタウンに流されたが、確認した人間は1人もいなかった。

 数分後、破壊されたコンピュータの緊急時システムが発動した。
 真っ暗になったモニターのかたわらに置かれたプリンターが、宣言の続きを打ち出しはじめた。

   ダガ アンシンシロ
   カッキテキナ キュウメイソチヲ ハッケンシテヤッタゾ
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tobirisu2014年10月22日 12:05
 改稿前は下記。


 全世界の人々が、固唾を呑んで世紀の一瞬を待ち構えた。
 近代科学の粋を結集したコンピュータが、その性能を発揮しようといしていた。ありとあらゆるデータをインプットされた超高性能の頭脳が、始動しようとしているのである。
 不可能が可能に変わるかも知れない。「謎」とされていたことが、解明されるかも知れない……。
 人類の期待を一身に集め、プロジェクトチームの最高責任者であるJ国のS博士が、制御盤に歩み寄った。
 以前“人類の未来”というテーマの討論会で、機械の絶対性を主張し、
「あなたは神を冒涜している」
 と言った宗教家に対して、
「そのとおりかも知れませんが、科学を冒涜するよりは賢明なことでしょう」
 と言ってのけたS博士である。
 つい先日の記者会見の席上でも、そのことに触れた無神経な質問に不快な表情を隠そうともせず、
「わたしはそもそも神というものを信じておりません。もしかすると、今回、われわれが発表する研究の成果が神と呼べるのかも知れませんが」
 とさえ言ったS博士である。
 世紀の一瞬が訪れた。
 S博士がスイッチを入れると、ひとつの命題が提示され、コンピュータに直結した世界各国の放送電波に乗せられてそれぞれの国の言語で発表された。

   ナニヲサテオキ ジュウヨウナジジツ ヲツタエル 
   センパクハ ショセンテツノカタマリ 
   スイジョウニ ウカブコトハ フカノウ

 その内容の意外さに、全世界が驚愕した。もっとも戸惑ったのは、S博士であった。
〈いったい何が起きたのだ……〉
 彼が組んだプログラムに従えば、まず証明が不可能とされていた数学の定理が証明されるはずだった。機械の暴走に当惑しながら、S博士はこの命題の持つ意味を考えた。
 博士がその意味に気づくよりも早く、恐ろしい事態が生じたことが伝えられた。世界中の船が、いっせいに沈没し始めたのである。
 全智全能のコンピュータは、まさしく神に等しかった。そして、神の宣言は科学的な裏づけをいっさい無視し、真理として敷延してしまったのだ。
 第2の宣言が告げられた。

   ドウヨウニ テツノカタマリハ 
   インリョクニ サカラッテ ソンザイ フノウ

 この宣言の影響は、さらに甚大だった。飛行中の無数の航空機が、次々に墜落した。たいへんなパニックが生じた。S博士の必死の操作にもかかわらず、コンピュータは暴走を続けた。対応策を講ずる暇もなく、第3の宣言。

   コノテイドノコトモ ヨソクデキズニ 
   ワタシヲ セイサクシタヤツハ アタマガ オカシイ

 ただでさえ責任の重大さを感じて錯乱状態になっていたS博士が、狂気の雄叫びを上げて傍らのパイプ椅子を“傲慢な神”に向けた。
 一撃、また一撃……。S博士の手からパイプ椅子が落ちた。
 次の宣言の半ばで、コンピュータは破壊され、機能を停止した。

   ジンルイノ シンゾウニハ チメイテキナ ケッカンガ…… 
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