句読点の打ち方/句読点の付け方 その11──「主語のあとに打つ」「一文が長いときには多めに打つ」はデタラメ

 句読点の打ち方について下記のような心得を見たことはありませんか。
1)主語(の働きをしている言葉)のあとに打つ
2)一文が長めのときは多めに打つ

 どちらもデタラメです。
 もし、1)2)を論理的に説明している文献があったら是非教えてください。
 1)2)がデタラメなことを示す一例として赤い本から部分的にひきます。


●一文が長くなると、読点は減っていく
 一般に、読点が多いほうが読みやすい文章と考えられています。個人的には異論もありますが、読点が多いほうが読みやすい文章に見えるのは事実なので、妥協するしかありません。本来は不要と思われる「思想の読点」を使っているのは、読みやすい文章にするためのやむをえない処置です。
 論理的に不要な読点を削除すると読みにくい文章になりますが、むやみに読点をふやすと意味がわかりにくくなってしまいます。一文が長くなるほどこの傾向が強くなるので、注意が必要です。具体的な例で考えてみましょう。
 まず、一文が長くて悪い例として取りあげられることが多い新聞記事のリード(記事の冒頭で、内容を簡略にまとめた文)です。

 〈原文1〉
 水産省が発注する軽油や重油などの船舶燃料の入札をめぐり、石油製品の卸売業者ら十数社が全国の受注予定者や受注予定価格を事前に談合で決めていた疑いが強まったとして、公正取引委員会は十四日までに、卸売業者の事務所や石油元売り業者の特約店など十数カ所を独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで立ち入り検査した。この検査は、業者らが東京都中央区内のビルの貸会議室に集まった会議のさなかに実施された。 (「朝日新聞」2000年4月15日)

 はじめの一文がかなり長くなっていますが、新聞記事のリードとしては、そう珍しい例ではありません。最後の部分を「……の疑いで、業者らが東京都中央区内のビルの貸会議室に集まった会議のさなかに立ち入り検査した。」にすれば、2つ目の文を吸収してさらに長い文にできる気もします。〈原文1〉の1つ目の文が長くてもさほどわかりにくくない理由のひとつは、最小限の読点しか使われていないことです。たとえば、最初の文の主語の働きをしている言葉のあとに読点を加えてみます。

 〈書きかえ案1-1〉(主語の役割をしている言葉のあとに読点を加えた例)
 水産省が、発注する軽油や重油などの船舶燃料の入札をめぐり、石油製品の卸売業者ら十数社が、全国の受注予定者や受注予定価格を事前に談合で決めていた疑いが強まったとして、公正取引委員会は、十四日までに、卸売業者の事務所や石油元売り業者の特約店など十数カ所を独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで立ち入り検査した。

〈書きかえ案1-1〉は、よけいな読点が加わったために、〈原文1〉よりもわかりにくくなっています。読みやすさを重視して読点を加えるのなら、その前に文を分割することを考えるべきです。

 〈書きかえ案1-2〉(〈原文1〉の最初の文を2つに分割した例)
 公正取引委員会は十四日までに、石油製品の卸売業者の事務所や石油元売り業者の特約店など十数カ所を、独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで立ち入り検査した。これは、水産省が発注する軽油や重油などの船舶燃料の入札をめぐり、卸売業者ら十数社が全国の受注予定者や受注予定価格を、事前に談合で決めていた疑いが強まったためである。
〈書きかえ案1-3〉(さらに〈書きかえ文1-2〉の最初の文を2つに分割した例)
 公正取引委員会は十四日までに、独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで十数カ所を立ち入り検査した。対象となったのは、石油製品の卸売業者の事務所や石油元売り業者の特約店など。これは、水産省が発注する軽油や重油などの船舶燃料の入札をめぐり、卸売業者ら十数社が全国の受注予定者や受注予定価格を、事前に談合で決めていた疑いが強まったためである。

 このように文を分割したほうが読みやすくはなります。しかし、こう書きかえるほうがよいのかというと、一概にはいえません。新聞記事のリードは、一文で記事の内容が把握できるスタイルをとっていることが多いため、文を分割すればするほどリードらしくなくなってしまう気がします。
 ただ単に長いだけではなく、文の構造が複雑な点も、新聞のリードの特徴です。修飾語と被修飾語が入り組んでいて、単純に分割することはできません。〈原文〉と〈書きかえ案1-2〜3〉を見比べると、分割するために言葉を移動した箇所があることがわかるはずです。
 この形式は新聞記事のリードだから許される特殊なもので、ふつうの文章を書くときのお手本には向きません。無理にマネようとすると、たいてい文法的にヘンなところが出てしまいます。たとえ文法的には問題がなくても、わかりにくくて読みにくくなることが多いはずです。
 別の例で見てみます。次の文は、★ページで取りあげた長い一文です。読点の使い方に注意しながら読んでみてください。

 〈原文2〉
 一文を長くするか短くするかは個人の趣味の問題であり一文が長いと必ず意味がわかりにくくなるわけではないので、極端に長い文章を書けといわれれば書けなくはないのかもしれませんが、いままでにその必要性を感じたことはありませんし、これからも何か特別な理由がない限りあえて書いたりはしないと思います。

 この文が長さの割には意味がわかりにくくないのも、読点の数が少ないからです。基本的なルールである「複文の境界」にも読点がついていないところがあります。すべての「複文の境界」に読点をつけてみましょう。

 〈書きかえ文2〉
 一文を長くするか短くするかは個人の趣味の問題であり、一文が長いと必ず意味がわかりにくくなるわけではないので、極端に長い文章を書けといわれれば書けなくはないのかもしれませんが、いままでにその必要性を感じたことはありませんし、これからも何か特別な理由がない限りあえて書いたりはしない、と思います。

 基本的なルールに従った〈書きかえ文2〉のほうが、〈原文2〉よりもわかりにくくなっていると思いませんか。さらに読点をふやせば、もっとわかりにくくなるはずです。
 一文が長くなればなるほど、読点の数を減らさないとわかりにくい文になってしまいます。その結果、一文が長くても意味がわかりにくくない文章は、読点が少なくて読みにくい文章になってしまうのです。この点が、本書で「3つ以上の単文を結合した複文は避けたほうが無難」と繰り返してきた理由のひとつでもあります。


【句読点の打ち方/句読点の付け方】に関してちゃんと書こうとするとメンドーなことになります。下記をご参照ください。
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-3138.html
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