「主述の入れかえ」の応用例〈1〉〈2〉

「主述の入れかえ」の応用例〈1〉

【板外編13】接続詞の使い方
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1442.html
==============引用開始
【Coffee Break】

「また」「さらに」「そして」「ちなみに」の法則
 仕事で文章を書きはじめたばかりのころ、健康雑誌の仕事をしたことがあります。編集部の方針で、デス・マス体で極力一文が短い原稿を書くことになっていました。この前提があって医学の専門知識を説明しようとすると、接続詞を多用することになり、なんとも形容のしがたいヘンな文章になってしまいがちです。原稿が書けずに四苦八苦していると、先輩がアドバイスをしてくれました。
「書き方に困ったら、『また』『さらに』『そして』『ちなみに』の順番で接続詞を使うといい」
 そのとおりにしてみると実に便利で、どんな原稿を書くときにも使えそうな気がしたほどです。あまりにも便利なため、数回使ったあとは禁じ手にして封印しました。便利な表現というのは、ほとんどがワナです。どんな原稿を書くときにも使えるなら、よほどのことがない限り、使ってはいけません。便利だと思って多用すると、表現が画一的になってしまいます。
 この経験があるので、接続詞に対してあまりよい印象がありません。しかし、それは接続詞に問題があるのではなく、使い方に問題があるのだと思います。
 接続詞が悪文の原因と考えられてしまいがちなのは、稚拙に見える文章で乱発されていることが多いからではないでしょうか。第1章(★ページ)で取りあげた「けさ学校に来るまでのできごと」をテーマにした〈作文1〉を例に考えてみましょう。

【練習問題15】
 次の〈作文1〉は接続詞が目立ってヘンになっています。接続詞を減らすだけでマシな文章にできるのか考えてください。
  私はけさ7時に起きました。まず、顔を洗いました。そのあとに、歯を磨きました。それから、朝ごはんを食べました。それから、家を出ました。そして、ホームルームの10分前に、学校に来ました。

【練習問題15】にした文章は順番に事実を並べただけなので、「まず」「そのあとに」などの接続詞は削除しても構いません。これらの接続詞がなくても、行動の前後関係は明らかだからです。では、すべての接続詞を削除すればマシになるでしょうか。

 〈書きかえ文1〉(すべての接続詞を削除した文章)
 私はけさ7時に起きました。顔を洗いました。歯を磨きました。朝ごはんを食べました。家を出ました。ホームルームの10分前に、学校に来ました。

 同じことを書いているのに、事実を並べただけの単調さがもっと強調されていませんか。一文が極端に短いので、稚拙でリズムが悪くなっています。こういう文章だと、つい接続詞をつけたくなってしまうのは、単調さを少しでも緩和しようとするためです。
〈作文1〉がヘンな文章になっているのは、接続詞が多いせいではありません。マシな文章にするためには、接続詞を減らすこと以外にも工夫が必要です。本書の第2章で説明している方法で、〈作文1〉を書きかえてみます。

 〈書きかえ文2〉(本書の第2章で説明した方法で書いた文章)
 けさ起きたのは7時です。まず、顔を洗って歯を磨きました。そのあとに、朝ごはんを食べてから家を出ました。学校に来たのは、ホームルームの10分前です。

 念のため、どこに注意して書きかえたのかを説明しておきます。
  1)「主述の入れかえ」をして文末に変化をつけた
  2)2つの単文を結合して、複文で書くことを基本にした
 1)をしたのは最初の文と最後の文です。体言止めを使うなら、原則(終わりの文よりは始まりの文に、長い文よりは短い文に使う)に従って、最初の文を体言止めにするべきです(その場合は、「けさ起きたのは7時。」にするより「けさの起床時間は7時。」にするほうが少しマシだと思います)。
 2)は書かれている内容を考えて、最初の文と最後の文を単文のままにしておきました。
 それほどたいへんな工夫をしたわけではありませんが、〈書きかえ文2〉は〈作文1〉や〈書きかえ文1〉に比べてかなりマシになっている気がしませんか。

〈書きかえ文2〉がすばらしい作文になっている、などというつもりはありません。単純に事実を並べたことにかわりはないからです。しかし、これ以上の書きかえ案を出そうとすると、内容にかかわってきます。すでに書いたことの繰り返しになりますが、それは本書の役割ではありません。
 ありがちなアドバイスをすることならできます。たとえば、「印象に残ったことにテーマをしぼって書きなさい」というのは簡単です。たしかにそのとおりですが、何もいっていないのと同じことだと思います。
「寝坊してあわてていたので国語の教科書を忘れてきたこと」を書きたいのなら、忘れてきたことに気づいた場面から書くと臨場感が出る。「朝ごはんで食べた大好物の卵焼きがおいしかったこと」を書きたいのなら、いままででいちばん記憶に残っている卵焼きの話を書けばいい……。
 もっともなアドバイスです。具体的な作品例まで出せば、「なるほど」と感心しておもしろい作文が書ける気にはなります。では、「登校途中に見かけた犬のこと」を書きたいときや、「弟とケンカをしたこと」を書きたいときはどうすればよいのでしょうか。書きたい内容が具体的にわからないと、アドバイスはできません。どんな内容のときにも通用する万能の書き方などはないからです。
 もっと根本的な問題も残っています。いくら考えても「印象に残ったことがない」と悩んでいる子供にはどのようなアドバイスをすればよいのでしょうか。「作文以外のことでがんばろうね」と励ますのが精一杯です。
 こういう問題を考えると、文章の内容について書かれた「文章読本」が、タメにはなっても役に立つことが少ないのは当然のことかもしれません。個人的な経験では役に立ったものもありますが、それは「自分が書こうと思った内容に関してはたまたま役に立った」というだけのことです。自分の発想法に通じるものがあったので参考になった、といういい方もできます。違うことを書こうとしている人にも役に立つとは限りません。
 たいていのテーマで使える汎用性の高いアドバイスもあるのでしょう。書きたいことを見つけるための有効なヒントもあるのかもしれません。しかし、それがどういうものなのか具体的にわからないため、本書では原則として文章の内容についてはふれないようにしています。
==============引用終了


「主述の入れかえ」の応用例〈2〉

 当方が「パンドラ」と読んでいる文章から。 

【引用部】
 毎年膨大な財政の赤字を出すことが示す地方自治制度の欠陥に対して、根本的な対策をきめるのが、こんどの国会の大きな使命の一つだと説明されていた。(新聞)

 これは、主語がないわけではなく、ちゃんとある。しかし、その主語がなかなか出てこないのが、この文が悪文になる原因となっている。主語はなるべく早く出した方がいい。しかも、主語と述語との距離は短い方がいい。そこで、両方の要望を満足させるのは、なかなかむずかしいが、たった一つ道がある。それは、短い文を書くということ。これは、あらゆる場合の鉄則と言っていい。(岩淵悦太郎編著『第三版 悪文』p.125)

 この意見はかなり厳しい。この例文レベルで悪文扱いされたんじゃ、世の中悪文だらけになってしまう。ちなみに、この引用部の後半の5行を読んで、なんかヘンな感じがしないだろうか。文頭に注目すると理由がハッキリする。
  これは、/しかし、/主語は/しかも、/そこで、/それは、/これは、
 7つのうち6つが、接続詞か指示語で始まっている。多くの文章読本は、こういう文章も目のカタキにする。なぜこんな書き方をしたのかはわからないが、原因は予想できる。以前、実験的に必要以上に一文を短くして書いたら(言うまでもなく「赤い本」のこと)、ちょうどこんな感じの文章になった。
 この文章のなかの指示語と接続詞を消してみる(便宜上、一文ずつ改行して番号をつける)。

【原文】
 ①これは、主語がないわけではなく、ちゃんとある。
 ②しかし、その主語がなかなか出てこないのが、この文が悪文になる原因となっている。
 ③主語はなるべく早く出した方がいい。
 ④しかも、主語と述語との距離は短い方がいい。
 ⑤そこで、両方の要望を満足させるのは、なかなかむずかしいが、たった一つ道がある。
 ⑥それは、短い文を書くということ。
 ⑦これは、あらゆる場合の鉄則と言っていい。

【単純に指示語と接続詞を消した例】
 ①②上記の例文は主語がないわけではなくちゃんとあるが、なかなか出てこないのが、文が悪文になる原因となっている。
 ③④主語はなるべく早く出した方がよく、主語と述語との距離は短い方がいい。
 ⑤⑥⑦両方の要望を満足させるのはなかなかむずかしいが、たった一つある道は短い文を書くということで、あらゆる場合の鉄則と言っていい。

 ヤボを承知で少し説明すると、「しかし」を消すために①②を結合した。
「しかも」は順接の接続詞なので、基本的には削除して構わない。ただ、原文のように細切れだと、つい接続詞を使いたくなる。③④のように結合すれば何も問題はないのでは。
 ⑤〜⑦も刻みすぎ。一文にしてもいいくらい。もたつき気味なので、少し言葉を削る必要があるだろう。
「たった一つ道がある」を「たった一つある道は」にしたのは、指示語を消すための「主述の入れかえ」。
 
【ちょっと工夫する】
 ①②上記の例文は主語がなかな出てこないために、不安定な印象になっている。
 ③④主語はなるべく早く出した方がよく、主語と述語との距離は短い方がいい。
 ⑤⑥⑦2つの条件を満たすたったひとつの解決法は「一文を短くすること」で、あらゆる実用文に通じる鉄則と言っていい。

 あまり重要でない言葉を削除していくとけっこうスッキリとした文章にできる。ちなみに、「あらゆる場合」はいったん「あらゆる文章」にしたが、アンマリなので「あらゆる実用文」にかえた。こんな心得は芸術文には通じない。

【もう少し遊んでみる】
 ①②上記の例文は主語がなかな出てこないために、不安定な印象になっている。
 ③④⑤⑥⑦「主語はなるべく早く出した方がよいい」「主語と述語との距離は短い方がいい」という2つの条件を満たす唯一の解決法は「一文を短くすること」で、あらゆる実用文に通じる鉄則と言っていい。

【あえて一文にしてみる】
 ①②③④⑤⑥⑦上記の例文が不安定な印象になっているのは主語がなかな出てこないからで、「主語はなるべく早く出した方がいい」「主語と述語との距離は短い方がいい」という2つの条件を満たすには、わかりやすい文章の鉄則である「一文を短くする」しかないのである。
 通常、ここまで原文を崩すとしかられます(笑)。
 ヤボを承知で……「不安定な印象になっている」を前に持ってきたのは、指示語を消すための「主述の入れかえ」。たいていの指示語は「主述の入れかえ」で削除できる(たぶん)。「主述の入れかえ」が不要のことも多い。
 文章読本は、指示語や接続詞を目のカタキにしている。気持ちはわからないでもないが、無理に削除する必要はない。「あんまり目立つようなら考えようね」ってことだろう。
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