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14)【句読点の打ち方/句読点の付け方 その14──読点の打ち方の実例】

 某所で非常にいい文例を教えてもらった。

【「行きつけ」がないあなたに、欠けているもの】
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/032500025/090500012/?P=5
 以下に元々の引用者(以下、Mさんと呼ぶ)が引用した全文を転記する。読点の後ろに★がついているのは、Mさんが〈外したくてムズムズする〉と感じるもの。
==============引用開始
「また、会社の帰りにリフレッシュしたり休日にくつろげる場所を持っていることは、いまの仕事にもプラスに働くだろう。それは、★生活の中に「冗長性」を取り入れているようなものだ。
 「冗長性」とは、システム設計の世界で使われたりする言葉で、非常に大ざっぱにいうと、必要最低限のものに加えて余分や重複がある状態を指す。これにより、★結果的に機能の安定化を図ることができる。
 かつての先輩たちが、★行きつけの店に立ち寄っていたのは、日常生活の安定のための、ちゃんとしたストレス・コントロールだったのだろう。
 すっかり、★沿線の店が気に行ったWさんは、次の週末は、★妻に声を掛けて新しい店を「案内」しようかと思っている。そのうち、★Qさん夫妻と食事をするのもいいだろう。
 そして、もし子どもが独立したら、妻と二人でもう少し都心の街に引っ越してもいいかもしれない。
 そんな空想が、★いろいろと広がる。そして、★そうした空想こそが、最近なかったんだな、ということにも改めて気づいたのだった。」
==============引用終了

 これがなぜ「非常にいい文例」なのか。
 読点が多めな点を除くと、文章がマトモな点が重要。大きな問題はなさそうだ。
 手元に何冊か、悪い読点の打ち方の見本になりそうな書籍がある。そういったものを例示してもあまり意味がない。パッと見るだけで読点が異様に多いことがハッキリしているので、片っ端から削除することになる。
 これは人工的に作った例文でも同様。単なる「悪文」ということになる。
 ↑のように「ちょっと多いかな」くらいの例文はなかなか見つからない。

 さて、例文を見ると、ちょっと読点が多い。Mさんが〈外したくてムズムズする〉と感じるのもよくわかる。しかし、そういう理由では、あまり意味がない。単なる「主観の問題」で終わってしまうので、修正案も提示しにくい。
 そういう考え方でも、自分で文章を書くときにはさほど問題がない。まあそういう考え方をすると「読点の打ち方は、わかる人はわかっている。わからない人には何を言ってもムダ」って話になってしまうんだけど。
 読点の使い方を説明するためや、他者の読点の使い方に異を唱えるためには、論理的な理由をデッチ上げる必要がある(説得力がどの程度あるのかは別として)。
 以下、本多読本をベースに、下記を加味して見ていく。
【句読点に関する記述・ブログバージョン】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-3138.html
 
それは、★生活の中に
 →主語(正確には主題、以下区別せずに「主語」と書く)のあとなので、打ってもいい。趣味の問題。

これにより、★結果的に
 →読点の前が「中止形(仮称)」になっているので、打ったほうがいい。「これによって、」だと趣味の問題。

かつての先輩たちが、★行きつけの店に
 →主語のあとなので、打ってもいい。趣味の問題。次の読点までが一塊と考えるなら不要(個人的にはそう思う)。ただしこの長さの一文で読点3つは多い。むしろ下記を削除したい。

日常生活の安定のための、ちゃんとしたストレス・コントロールだったのだろう。
「ストレス・コントロール」にかかる修飾句が2つある。本多読本の「長い修飾語」かもしれないが、この程度の長さなら読点は不要だろう。当方なら「、ちゃんとした」を削除するか漢字で始まる言葉にかえる(「必要な」「欠かせない」とか)。

すっかり、★沿線の店が気に行(ママ)ったWさん
 →打つ理由がないので打ってはいけない。これを趣味の問題と言われるとちょっと困る。

次の週末は、★妻に声を掛けて
 →趣味の問題と言いたいところだが、打ってはいけない。直前に「は、」があるので、どちらかを削除するべき。2択なら、こちらを削除するしかない。

そのうち、★Qさん夫妻と食事をする
 →微妙。本多読本の「逆順」と言えるかもしれない。この程度の長さの文で、ほかに読点がないのでどちらでもいい。

 そんな空想が、★いろいろと広がる
 →主語のあとなので、打ってもいい。趣味の問題。

そして、★そうした空想こそが、
 →接続詞の直後なのであってもいい。当方は原則して打つことにしている。しかし、この場合は別の問題がある。直前にも「そして、」がある。こうなると善くない書き癖(重言)だろう。こういう書き癖がある人はかなり多い。「そして、」を削除するべき。
 どちらかと言うと、前の「そして、」ほうが不要だろう。別に両方なくても何も問題はない。

そうした空想こそが、最近なかったんだな、ということにも改めて気づいたのだった
 → 「、最近なかったんだな、」がちょっとむずかしい。本多読本の解説のどこにあてはまるのだろう。「挿入句は逆順の典型」と言えるか否か。当方にはそういうむずかしいことはわからない。引用(句的な)と考え、〈「最近なかったんだな」〉とするほうが、ほかの読点の働きに干渉しない。この文の場合は、冒頭の「そして、」を削除するなら、原文のママでも構わない。

「大きな問題」以外で気になったのは、↑の「そして、」の使い方。 
 もうひとつ気になるのは「冗長性」。「冗長性」と書いてしまったら、否定的なイメージしかない。一般には「(ハンドル)のあそび」とか言うのでは。
「息抜き」じゃミもフタもないか。
 きれいなところでは「人生の句読点」などと言ったりもする。やはり重要な役割を果たしているし、どこで打つかが問題になる。
 ウーム。こんなにきれいにオチがつくのも珍しい(笑)。
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