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【板外編10】体言止めの使い方【1】

 なんかひさしぶりの【伝言板】&【板外編】です。
 お品書きは【総索引】の下のほうにいます。
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-132.html

 体言止めについて書こうと思ったが、本気で書きはじめるとエラいことになる。
 とりあえず、「赤い本」に書いた文章の一部でお茶を濁すことにする。


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●「終わりよりは始まりに」「長い文よりは短い文に」

【練習問題9】
 体言止めにはいくつかの種類があり、それぞれ性質が少し違います。体言止めの種類を2つあげてください。

 文末に変化をつける方法のひとつに、体言止めがあります。
 ただし、「名詞+デス」の形が続くのを防ぐために体言止めを使うのは、あまりおすすめできる方法ではありません。根本的な解決策は次項で紹介しますが、その前にしておきたいのは、体言止めの使い方の話です。
 体言止めの使い方は論理的に説明するのがむずかしく、ほとんどが経験則に基づいた記述であることを、あらかじめお断りしておきます。そのため、ほかの項目以上に例外が多くなるはずです。
 念のために、体言止めの辞書的な意味を確認しておきましょう。
 体言とは、名詞、代名詞の総称で、副詞などを含めることもあります。通常なら文末の体言の直後につくデスやデシタなどを省略した形が体言止めです。体言止めにはいくつかの形がありますが、ここでは3つに分けて考えます。

  1)後ろのデス(デシタ)が省略されている形
   例 体言とは名詞、代名詞などの総称のこと。
  2)後ろのシマス(シマシタ)が省略されている形
   例 自然の美しさを実感。
  3)「倒置」によって生じた形
   例 東京郊外のターミナル住宅地、二子玉川園。
 この3つのうち、よく目にするのは1)の形です。

 第1章で、「体言止めは、デス・マス体の文章にはなじみにくいのではないでしょうか」と書いたのは、あくまでも個人的な感覚にすぎません。極論すると、文末に来るデスはすべて取っても構わないとさえ思っています。自分でデアル体の文章を書くときには、デアルやダは音の響きが強すぎる気がするので極力使わないようにしているぐらいです。しかし、体言止めが連続する文章は、箇条書きのようなヘンな印象になります。
 では、体言止めはどのように使えばよいのでしょうか。次の3つの例文を比べてみてください。

 1)まず体言止めの問題。この問題を論理的に説明するには工夫が必要です。なかなかひと筋縄には行きません。
 2)まず体言止めの問題。この問題を論理的に説明するには工夫が必要。なかなかひと筋縄には行きません。
 3)まず体言止めの問題です。この問題を論理的に説明するには工夫が必要。なかなかひと筋縄には行きません。

 おそらく、3つの文章のうちでもっとも自然なのは1)です。2)のように、体言止めが続く形は避けるべきでしょう。3)が1)に比べてなぜヘンなのかをあえて説明すると、体言止めには次の性質があるからだと思います。

  ・文章中にあるよりも、文章の始まりにあるほうが自然
  ・長い文で使うよりも、短い文で使うほうが自然

 この2つを原則にするとよさそうです。ここで「文章の始まり」と書いたのは、全体の始まりのことだけではありません。小見出しや改行の直後の文章の始まりも、全体の始まりに準じます。
 少しヘンな感じになることが多いのは、文章の終わりにある体言止めです。付け加えるニュアンスの一文(注意書きなど)を最後に添える場合を別にすると、尻切れトンボの印象になってしまうことがあります。余韻の残ることが多い「変則形の文末」(★ページ参照)が文章の終わりに向くのと対照的です。
 2)は後ろのシマス(シマシタ)が省略された形でやや特殊ですが、新聞ではよく見かけます。デス・マス体の文章で使われることはほとんどないため、後ろのスル、シタが省略された形というほうが正確かもしれません。タイトルや小見出しなど、字数が極端に制限されるとき以外に使うと、言葉足らずの印象になります。
 たとえば、先に比べた例文の最初の一文を「まず体言止めの問題から開始」にしても問題はないのかもしれませんが、安易に使わないほうが無難です。この形は、新聞の文章のなかでお手本に向かない例のひとつだと思います(新聞の文章に関しては★ページ参照)。
 3)は「二子玉川園は東京郊外のターミナル住宅地です。」の主語である「二子玉川園」を、後ろに移動したと考えられる形です。「倒置」によって生じた形というのは妥当な表現ではありませんが、便宜上こう呼んでおきます。1)と違い、文末に省略されているはずのデスが加えられません。この形の文は、文章の途中では使いにくく感じられるのに、なぜか文章の始まりにもってくるとヘンではなくなります。さらに、ふつうは長い文章の文末を体言止めにするのはおすすめできないのに、3)の形は多少長くてもおかしくなりません。


【Coffee Break】

「倒置」による体言止めがもつ不思議な特徴
 体言止めの3)としてあげた「倒置」によって生じた形がどういう性質をもっているのか、気にはしながらもわからないままになっています。感覚的な問題なので例文をあげながら見ていきましょう(デス・マス体の文章で体言止めを使うと違和感があるので、以下の例文はすべてデアル体にします)

 〈原文1〉(「倒置」によって生じた体言止め)
1)ターミナル住宅地、二子玉川園。東京郊外にあり、東急線の新玉川線、田園都市線、大井町線が集結している。駅前には、街のイメージにふさわしい近代的な大型ショッピングセンターが建つ。
2)東京郊外のターミナル住宅地、二子玉川園。東急線の新玉川線、田園都市線、大井町線が集結し、駅前には街のイメージにふさわしい近代的な大型ショッピングセンターが建つ。
3)東急線の新玉川線、田園都市線、大井町線が集結している東京郊外のターミナル住宅地、二子玉川園。駅前には、街のイメージにふさわしい近代的な大型ショッピングセンターが建つ。
4)東急線の新玉川線、田園都市線、大井町線が集結している東京郊外のターミナル住宅地であり、駅前には街のイメージにふさわしい近代的な大型ショッピングセンターが建つ二子玉川園。

 1)は「倒置」の部分が短いために、ヘンになっています。短いためというより、単語が2つ並んでいるだけにも見えるせいです。もっと文字数は少なくても、「若者の街、渋谷。」ならほとんど問題はありません。2)と3)のどちらが自然に感じられるのかは微妙で、強いていえば3)のほうがほんの少しマシかもしれない、という程度のことです。4)は一文が長くなったのでややわかりにくくなっています。しかし、ここまで長くなっているのに、体言止めを使ってもヘンではありません。
 1)~3)の最初の文は、「倒置」ではない体言止めの形にもできます。

 〈書きかえ文1〉(「倒置」ではない体言止めに書きかえた例)
1)二子玉川園はターミナル住宅地。東京郊外にあり……
2)二子玉川園は東京郊外のターミナル住宅地。東急線の……
3)二子玉川園は東急線の新玉川線、田園都市線、大井町線が集結している東京郊外のターミナル住宅地。駅前には……

 1)は「倒置」のときと同様の理由でヘンです。やはり、「渋谷は若者の街。」ならややマシになります。2)がもっとも自然で、3)は体言止めを使うには一文が長すぎる感じがあり、文末にデアルをつけたいところです。
 ただし、体言止めにするか否かとは別の問題で、書かれている内容を考えると、〈書きかえ文1〉の1)~3)はいずれもヘンな感じがします。至極当然のことをわざわざ説明しているような印象になるからです。それが「倒置」の文にするとヘンではなくなります。
 見た目はよく似ていても、次の形の体言止めは「倒置」によって生じたものではありません。

 〈原文2〉(「倒置の類似形」)
 小高い丘の上にそびえる白亜の建物。

「倒置」によって生じたものでないことは、〈原文1〉と同じように「倒置」ではない文にしてみるとはっきりします。

 〈書きかえ文2〉(「倒置」ではない文に書きかえた例)
 白亜の建物は小高い丘の上にそびえる。

〈書きかえ文2〉は、このままでは落ち着きが悪く、文頭に「その」をつけたくなります。文末もこのままでは体言止めにできません。
〈原文2〉は「倒置」ではなく、「主語+は」(たとえば「Aさんの家は」)が省略されている形です。文末にダやデアルをつけると不自然になりますが、過去形のダッタ・デアッタならややマシで、小説では見かけることがあります。とはいっても変則的な形なので、ふつうの文章にはおすすめできません。
「倒置の類似形」を文法的に解釈すると、「文」というより「長い形容詞句がついた名詞」になりそうです。最後に来る名詞が固有名詞だと、なぜか性質が少しかわってきます。

 〈原文3〉(最後が固有名詞になっている「倒置の類似形」)
 日本有数の繁華街として知られている新宿。
〈書きかえ文3〉(「倒置」ではない文に書きかえた例)
 新宿は日本有数の繁華街として知られている。

〈書きかえ文3〉は〈書きかえ文2〉と違い、このままでも文としてヘンではありませんし、文末に「街」とか「エリア」をつければ、簡単に体言止めにできます。
「倒置」と「倒置の類似形」に共通しているのは、文章の始まりに使うと簡潔に全体をまとめる働きをすることです。そのため、店などを紹介する短い記事は、この形が非常に多く使われています。便利な形ですが、多用すると文章の印象が画一的になりがちです。
「倒置の類似形」も、「倒置」と同様にあまり短くすると不自然になります。次の2つの例文を比べてみてください。

  ビジネス街にあるパスタの店。この店の人気メニューは……
  パスタの店。ビジネス街にあるこの店の人気メニューは……
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【続きは】↓
体言止めの使い方【2】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1407.html

体言止めの使い方【3】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1408.html
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