ネットが広めた誤用……etc.──「教授する」か「教示する」か

〈1〉「教授する」か「教示する」か

 下記の仲間。
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-306.html
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1129089107&owner_id=5019671

mixi日記2009年11月24日から
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1346411816&owner_id=5019671

 気になるテーマを目にして書きはじめたら、ズルズルとんでもないことになってしまったorz。

 ネットの普及に伴って急速に広まったと思われる誤用っぽい表現がいくつかある。以前にも、マンガで使われることによって広まったと思われる例があった。ネットの影響力はケタ違いなので、そのテのものも広~く蔓延した。
 とにかく響きのいい言葉はあっという間に広がる。チェック機能がないから、誤用っぽくても明らかな誤用でも関係なく広がる。

「役不足」「すべからく」
よく目にする誤用の御三家
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=746503742&owner_id=5019671
 ↑で触れた「斜に構える」「さわり」はマンガではあまり見ない。一般の活字媒体から広まった例だろう。
 一般の活字媒体から広まったものには「欲しいままにする」もある。朝日新聞でも目にするようになってしまった。04-7-1/08-6-7(こっちは朝日新聞じゃないか)。
 08-6-7から引く。http://mixi.jp/view_diary.pl?id=851937145&owner_id=5019671
【「朝日新聞から」総索引(2002年~) 】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-244.html
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・大国の名を欲しいままにする
 これはさすがに「ほしいまま」にしてもらった。用法も厳密に言えば誤用だと思うが許容した。本来は「権力をほしいままにする」とか「ほしいままにふるまう」と使い、「好き勝手にすること」。漢字で書くなら「縦」とか「恣」とかを当てる。「擅」でもいいらしい。「擅」は「独擅場(どくせんじょう)」の「擅」。本来はこれだったが、いまは「独壇場(どくだんじょう)」のほうがフツーになってしまった。
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 ネットで広まったあやしげな表現のなかには、明らかな誤用もあるし、微妙な例もある。
 明らかな誤用には以下のようなものがある。
「適宣」「適せん」→「適宜」
つまらんダジャレは嫌いだぁ!44──ダンコンの世代(2009年09月14日)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1283357618&owner_id=5019671
「直裁」→「直截」
ちょっと気になる誤用の話──直裁ないいかたをする(2008年12月18日)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1025959857&owner_id=5019671

 微妙な例で真っ先に浮かぶのは、「ご教授ください」。
 これは誤用で「ご教示ください」が正しい、と主張する人がいる。当方はそこまで主張する気にはなれない。
「教授」をネット辞書(『大辞泉』)で引く。

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きょう‐じゅ〔ケウ‐〕【教授】

[名](スル)
1 学問や技芸を教え授けること。「書道を―する」
2 児童・生徒・学生に知識・技能を授け、その心意作用の発達を助けること。
3 大学や高等専門学校・旧制高等学校などで、研究・教育職階の最高位。また、その人。「大学―」
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〈[名](スル)〉になっているから、「教授する」は文法的には間違っていない。したがって、「ご教授します」も「ご教授ください」も間違いではない。
 ここでちょっとひっかかるのは「ご教授します」と自分の行動に「ご」をつけていいのかということ。これは「ご~する」の形で「謙譲」だから問題はない。
【関連トピ紹介】8──敬語の話1 自分の行為に「お」や「ご」をつけるのはNGか
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=42296162

 文法的には間違っていないが、一般的に使うか否かは別の話になる。
 こうなると辞書は役に立たず、主観の問題になってくる。
 個人的には、「ご教授ください」は使わないし、相当異和感がある。これを使うとしたら、偉い人が偉そうに語る場合。
ご教授いたそう」
 それは偉そうだな(笑)。専門的で高度な知識なら「ご教授」でもいい気がする。
 ネットで使われる例は、「○○について教えてください」くらいの意味だから。「教えてください」で十分だと思う。「教えていただけませんか」くらいのほうが丁寧か。少し改まった感じにするなら「ご教示ください」だろう。

 一般的に考えても、「ご教授」するからには、それなりの内容でなくては困る。辞書の「1」例にある「書道を教授する」はアリだろう。これは逆に「教示する」にはしにくい。
 実際に目にする例だと、囲碁・将棋(これは「技芸」だろうか)だろう。「教授」でも間違いではないが、フツーは「(一局)ご指南ください」「(一局)ご指南いたしましょう」とか言う。「指南」は少し語感が古いから、現代なら「指導」のほうが自然かもしれない。
ご教授ください」が広まったのは、おそらくそのほうが「ご教示」より丁寧な印象があるみたいに誤解されたから。それがネットで使われるようになってとんでもないスピードで流布した。もはや止めようがない気がする。
 こういう例はほかにもあるんだろうな。

 ちなみに、〈[名](スル)〉は、漢語名詞に「する」をつけてサ行変格活用の動詞として使われることを意味する。辞書で見ると、意外なものが「~する」にできる。少し前にビックリしたのが「参考する」がアリってこと。どこのトピで見たかは覚えていないorz。
 こういう例を見ると、「お茶」に「する」をつけて「お茶する」という表現もそうおかしくない気がしてくる(笑)。
 さらにちなみに、このテの動詞の可能形は「教示できる」と「教示することができる」の2通りがある。どちらを使いますか?
【板外編5】「ラ抜き言葉」を防ぐ方法
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1031310405&owner_id=5019671
 もひとつちなみに、「サ行変格活用の動詞」はいろいろあるが、下記のどれが正しいでしょう。
  1)信じる者こそ救われる
  2)信ずる者こそ救われる
  3)信じるからこそ捨てられる
  4)信ずるからこそ捨てられる


【追記】
「参考する」の話は下記。
【来る人がいない?/ご参考ください の違和感】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=39728414

「10」のコメントだけ回収しておく。
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 このコミュに限っても、「は」と「が」に関しては過去に繰り返し話題になっています。
 キチンと説明しようとすると、ものすごく長くなるはずです。

 下記をご参照ください。
http://mixi.jp/search_topic.pl?community_id=19124&submit=search&category_id=community&sort=date&page=1&open=1&type=top&bbs=0&keyword=%A1%D6%A4%AC%A1%D7%A1%A1%A1%A1%A1%D6%A4%CF%A1%D7%A1%A1&x=47&y=10

>0
> 初出の事項は「が」で既出事項は「は」という説明ではこの文章の不自然さを説明できません。
 当方は〈初出の事項は「が」で既出事項は「は」〉という考え方がわかりやすいと思いますが、そうともいえないという考え方もあるようです。
下記の「2」と「3」をご参照ください。
【「は」と「が」の使い分け練習問題。】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=27871409&comm_id=19124

「ご参考ください」は個人的にはヘンだと思います。しかし、「9」のかたがおっしゃるように「参考する」を認めている辞書もあります(初めて知りました)。

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ネット辞書『大辞泉』
さん‐こう〔‐カウ〕【参考】
[名](スル)何かをしようとするときに、他人の意見や他の事例・資料などを引き合わせてみて、自分の考えを決める手がかりにすること。また、そのための材料。「研究の上で―になる」「内外の判例を―する」

ネット辞書『大辞林』
さんこう[―かう] 0 【参考】
(名)
スル
[1]考えをまとめたり、物事を決める際に、手がかりや助けとすること。また、その材料。
・前例を―にする
[2]種々の資料などを利用し、考えること。また、その資料。
・ご―までに
・欧米の書籍を広く―する時間を要する〔出典: 社会百面相(魯庵)〕
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 手元の『広辞林』も「参考する」を認めています。
 そうなると、「ご参考ください」を誤用と断言する自信はありません。

>0
>「参考に」と「参考と」のニュアンスの違いはなんなんでしょうか。
 諸説あるようですが、個人的には意味はほとんど同じと考えています。
「と」のほうが少し堅苦しいニュアンスがあると感じるので、自分では極力「に」を使うことにしています。ただし、「一丸となる」の場合などは、「と」のほうが自然でしょう。
 この話もキチンと書こうとするとかなり長くなるので省略します。
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〈2〉「ご存じのとおり」か「ご存知のとおり」か


 いきなりですが問題です。下記の番組タイトルにフリガナをつけてください。

『ご存知!旗本退屈男』(○○○○はたもとたいくつおとこ)

 ネットが広めた誤用には2通りある気がする。
 
1)人間が●●の場合
2)マシン(変換ツール)が●●の場合

 詳しいことはhttp://mixi.jp/view_diary.pl?id=1360517677&owner_id=5019671&org_id=1360591441で書いた「新死語」の件とともに改めて整理したい。
 今回書きたいのは「2)マシン(変換ツール)が●●の場合」。まあ、これも使う人間が賢ければ防げるんだけどさ。
 以前書いたものとしては、「ひもとく」の話がある。
2)【「紐解く」と「繙く」の違い】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=18459809

 ↑のトピの「21」「22」にも書いたが、「看護士」と「看護師」の話や「小龍包」と「小籠包」の話もそうだろう。
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2008年10月25日 20:15
 古いトピを掘り起こします。
「紐解く」が広まった責任の一端は、MS-IMEにあるような気がします。
 かなり賢くなったと言われるMacintoshのOS X用のことえりが「看護師」を変換できないことは少し前に知りました。
 先ほど日記のコメントにいただいた情報によると、Windowsでも「看護士」になるそうです。
 このように、パソコンの変換の不備によって増えたと思われる間違いって、ほかにどんなものがあるのでしょうか。
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2008年10月28日 07:07
「欲しいまま」という誤用もあったな、と思ったら、「18」で書いていましたorz。

 Macintoshのことえり君の場合、「しょうろんぽう」は「小龍包」です。
 少し前に香港のガイドブックを作ったときに、Macづかいのライターが小龍包と書いてきたんで「しょうがねえな」と思ったけど、ことえり君の責任だったのね。OS 9用の古いことえりだと「しょう論ぽう」と変換する。ここまでバカなら、それはそれで諦める。
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 もっと頻繁に目にする例を思い出した。おそらくネット限定で、まともな出版物では見た記憶がない。これは表記の問題とはちょっと違う気がする。
「ご存知のとおり」

 まず『大辞泉』から引く。
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%9E%E3%82%93%E3%81%98&dtype=0&dname=0na&stype=0&pagenum=1&index=12818611054600
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ぞん‐じ【存じ】

知っていること。承知していること。「結果は御―の通りです」→御存じ
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「ご存じ」と書くか「御存じ」と書くかは趣味の問題(フツーは「ご存じ」だろう)。
『大辞林』はちょっと不親切。
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%9E%E3%82%93%E3%81%98&dtype=0&stype=1&dname=0ss
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ぞんじ0 【存じ】

〔補説〕 動詞「存ずる」の連用形から
知っていること。思っていること。承知。存知。
・御―の人
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 何が不親切って、最後に「存知」と記載している。これだけを見ると、「存じ」を「存知」と書いてもいいのか、と勘違いをされかねない。
「存知」を『大辞林』で引く。
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%9E%E3%82%93%E3%81%98&dtype=0&stype=1&dname=0ss&ref=1&index=111642000000
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ぞんち1 【存知】

(名) スル
〔補説〕 「ぞんぢ」とも
知っていること。心得ていること。承知。覚悟。
・後日の訴訟を―して、木刀を帯しける用意のほどこそ神妙なれ〔出典: 平家 1〕
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「存知」は言葉としては存在するが、「ぞんち」(もしくは「ぞんぢ」)と読む別の言葉。 
「ご存知でしょうが」とするのは誤用と言ってしまっていいだろう。
 ところが、この用例が異様に多い。グーグル検索で「ご存知」を検索すると、約17,500,000 件もある。
 なかには、テレビドラマのタイトルまである。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%94%E5%AD%98%E7%9F%A5!%E6%97%97%E6%9C%AC%E9%80%80%E5%B1%88%E7%94%B7
 これは、一部の変換ツールが「ごぞんじ」で「ご存知」と変換するからとしか思えない。当方はマイクロソフト系があやしいと睨んでいる。どなたか検証してください。

 ただ、ここで新たな問題が出てくる。
『ご存知!旗本退屈男』のような「ご存知」の使い方は誤用と言い切れるのか? 
 結論を言ってしまうと、こっちは誤用とは言い切れない気がする。意味を考えると、「ご存知」でも間違いではない気がしてくる。ってことは、「ご存知でしょうが」は誤用でも、「ご存知のとおり」は誤用とは言いきれないのかな。
 ただし、フリガナをつけるなら、「ぞんち」もしくは「ぞんぢ」が正解ってことになる。
 発音するときも、「ぞんじ」ではなく「ぞんぢ」でお願いします。

【追記】
『「超」文章法』のp.109に「ご存知でしょうが」があった。
【読書感想文『「超」文章法』】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=954734558&owner_id=5019671

 ちょっと気になっていたトピを見つけた。
【「ご存知」と「ご存じ」】日本語の乱れが気になる会
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=37381131

 これもメモしておく。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1131515816

【追記2】
 ↑の文章はかなりとっちらかってるな。
 少なくとも下記の部分は修正したほうがよさそうだ。詳しくは↓の〈2〉参照。
================================
 結論を言ってしまうと、こっちは誤用とは言い切れない気がする。意味を考えると、「ご存知」でも間違いではない気がしてくる。ってことは、「ご存知でしょうが」は誤用でも、「ご存知のとおり」は誤用とは言いきれないのかな。
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  ↓  ↓  ↓  ↓  ↓  ↓  ↓  ↓  ↓  ↓
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 結論を言ってしまうと、こっちは誤用とは言い切れない気がする。意味を考えると、「ご存知」でも間違いではない気がしてくる。ってことは、「ご存知でしょうが」「ご存知のとおり」も誤用とは言いきれないのかな。
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「ご存じのとおり」か「ご存知のとおり」か〈2〉

mixi日記2011年04月09日から
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1703659186&owner_id=5019671

 テーマサイトは下記。
【ごぞんじですか と書くには】
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1359756898

 質問内容を要約する。
「ごぞんじですか」の表記として、正しいのはどれか。
  1) ご存じですか
  2) 御存じですか
  3) ご存知ですか
  4) 御存知ですか

 問題を切り分ける必要がある。
 まず接頭語の「ご」の表記。
 これは「御」と書いても間違いではない。ただ、一般的には「ご」だろうな。
「御苦労様」「御機嫌いかがですか」「御足労いだだく」……間違いではないが、めったに見ない。
 接頭語の「お」を「御」にするのはさらに珍しいだろう。これも「御見舞い」と書いても間違いではないけど。
 問題は、「1) ご存じですか」と「3) ご存知ですか」。
 ↑で見たこの問題に関して再検討してみる。
『続弾! 問題な日本語』は明解に言い切っている。

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「ご存知」vs.「ご存じ」、どっち?

動詞「存ずる」の連用形「存じ」の上に接頭語「ご」を付けたもので、「ご存じ」が正しい。「存じ」は謙譲語だが、「ご」を付けて全体で尊敬語に転用したものである。一般には「存知」と書かれることも多いが、当て字。ただ、心得えている、という意味の「存知(ぞんち・ぞんぢ)」という語も中世から使われており、それと混同したものと見られる。(小)(p.94)
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読書感想文/『続弾! 問題な日本語』(北原保雄編/大修館書店/2005年11月3日初版第1刷発行)【1】~【3】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1717.html

 ベストセラーではあってもアラが目立つので、この本に関してはいろいろインネンをつけてきた。しかし、この記述に限ればきわめて妥当だろう。
「ご存知ですか」は当て字。「存知(ぞんち・ぞんぢ)」との混同とも考えられる。とにかく、「ご存じですか」が本来の形。
「ご存知ですか」は絶対間違い、とまで言う気はないが、個人的には使わない。校正が行き届いたまともな出版物には出てこないはず。

 手元の『朝日新聞の用語手びき』の使い分けを確認した。いつもは表記の話だと真っ先にこれをひくんだけど、なぜかやっていなかった。単純な表記の問題と考えてなかったんだろうな。
「御」と「お」の使い分けに関しては記載がない。まあ、「お」にするものだろう。
「御」と「ご」の使い分けに関して。
〈接頭語〉は「ご」。これは「一般の接頭語」ということだろう。
  ご縁/ご協力/ご多分に漏れず/ご本尊
〈接頭語のうち漢字で書く習慣が強いものや、固有名詞に近いもの〉は「御」。
  御所/御前試合/御用邸……etc.
 ちなみに、「ごぞんじ」に関しては単独の項目があり、〈御存知→ご存じ〉になっている。
 今度は『記者ハンドブック』(共同通信社)をひく。「御」と「お」の使い分け、「御」と「ご」の使い分けに関してはほぼ同様。「ご」の用例のなかに「ご存じ」が入っている。
 こう見ていくと、「ご存知」と書く理由はない。

 ……で終わらせることができればラクなんだけどさ。ネットだと、「ご存知ですか」としているほうが圧倒的に多いだろう。最大の理由は、パソコンが変換してくれるから。それらしい漢字に変換してくれるなら、誰も疑わない。困ったことに、「ご存知ですか」でOKと思わせる要因がほかにもあり、いろいろ考える必要がある。
 ということで、例によってあやしげなことを並べる。以下はほぼヨタ話と考えてほしい。
 まあ、こんなことをグチャグチャ言っても、これからも「ご存知です」「ご存知のとおり」は使われ、そのうち辞書にも採用されるんだろうな。しょうがないか。

●「ごぞんじです」の品詞は
『続弾! 問題な日本語』は「ごぞんじです」を〈動詞「存ずる」の連用形「存じ」の上に接頭語「ご」を付けたもの〉としている。こう考えるなら、「ご存知」はありえない。
 しかし、〈「ご」+「存知」(名詞)+「です」〉という解釈もできなくはない。ただしクドいようだが、その場合の読みは「存知(ぞんち・ぞんぢ)」になる。「存知(ぞんち・ぞんぢ)」という言葉あるから「ご存知です」「ご存知のとおり」もOKというのは、単なる後づけのコジツケじゃないのかなぁ。

●なぜ「お存じ」ではないのか
 こんなことに文句をつけてもしかたがないとは思うが、「存じる」につける接頭語なら「お」がフツーだろう。
 原則的に和語系には「お」がつき、漢語系には「ご」がつく。「ご」がついているから、「ごぞんじ」が「ご」+「存じる」ではなくて「ご」+「存知」の印象になっているのでは。
274)【お茶/おビール/お刺身……etc.】日本語
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1456.html

「存じる」は[動ザ上一]で〈「ぞんずる」(サ変)の上一段化〉したもの。やはりこういう書き方をするしかないのか。頭痛っ。
 似たような形で浮かぶのは「案じる」「信じる」「通じる」「投じる」「念じる」「命じる」「論じる」あたりだろうか。それぞれ「ご存じです」と同じ形にしてみる。
  案じる  お案じです
  信じる  お信じです
  通じる  お通じです
  投じる  お投じです
  念じる  お念じです
  命じる  お命じです
  論じる  お論じです
 いずれも「お~」だろう。あれ? 「論じる」は「ご論じです」とも言いそうだな。用例が極端に少なさそうだからわからない。ほかもあまり使わないだろうな。「お命じです」あたりなら使うだろうか。

●こんな微妙な使い分けできるの?
 仮に、「ご存知です」を〈「ご」+「存知」(名詞)+「です」〉と解釈するなら、表記の使い分けは下記のようになる。それはヘンじゃないか? もしこういう使い分けが自然に感じられて読みも「存知(ぞんち・ぞんぢ)」で徹底できるなら、それはそれでもいい。ただ、当方はそんな微妙なことはできないので「ご存じです」「ご存じのとおり」を使う。

  存じる       命じる
  存じます      命じます
  存じ上げています  ??
  ご存じください   お命じください
  ※「存知する」がXだから、「ご存知ください」もXのはず。
   こんな形は使わないか(笑)。
  ご存知です     お命じです
  ご存知のとおり   お命じのとおり

●「ご存じのかた」の使い方(ほとんどインネン)
 いまさらながらだけど、「存じる」の元になっている「存ずる」とはどういう意味なのか。
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=%E5%AD%98%E3%81%9A%E3%82%8B&stype=0&dtype=0
================================
ぞん・ずる【存ずる】
[動サ変][文]ぞん・ず[サ変]
1 「知る」「承知する」の意の謙譲語。「知らぬ―・ぜぬでらちがあかない」
2 「思う」「考える」の意の謙譲語。「お変わりなくお過ごしのことと―・じます」
◆現代では多く「ます」を伴った形で、聞き手に対して、改まった気持ちをこめて丁重に言うのに用いる。
================================
 ネットの質問で、「ご存じのかた、教えてください」と書く人がいる。これは二重の意味でおかしいという説がある。

1)「ご存じでないかたは教えられません」
 これは当方が冗談まじりで主張すること。これが「迷い犬」とかのことならさほどおかしくない。「お心当たりのあるかた」みたいな意味で「ご存じのかた」と言うならさほど異和感がない。ただ、これだって「心当たりがない」ならどうしようもないだろ、と屁理屈を言うことはできる。

2)「知っていること」「わかっていること」
「存ずる」は「知る」の謙譲語。つまり「ご存じのかた」は「知っているかた」という意味。
 迷い犬と同じ?で、「○○のサイトを知っているかた」という意味で使うならいいだろう。しかし、「○○と△△の違いを知っているかた」はヘンではないか、という説を聞いたことがある。
 これはこれで納得できる。そういうことに関してなら「知っているかた」ではなく「おわかりのかた」が正しいだろう。
 まあそこまで求めちゃいけないか。
 ちなみに、ネットで「ご存知」と並んでよく目にするのが「ご教授ください」の類い。これもやめたほうがいい。


〈3〉直裁ないいかたをする 直截 ちょくさい ちょくせつ 
mixi日記2008年12月18日から
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1025959857&owner_id=5019671

直裁ないいかたをする

 Windowsユーザーの原稿で見かけた。これは問題の根が深い。
 何よりの証拠に「直裁」で検索すると約278万件も(!)引っかかってくる。もちろん、正しく「直裁」の意味(「ただちに裁決する」くらいの意味)で使っている例もあるんだろうけど、そんなに使用頻度の高い言葉ではないから大半は誤用だろう。
「直裁」は意味が違うから、正しくは「直截」。「直截」で検索すると、約18.3万件。誤用の10分の1以下(笑)。
 まず問題は「直截」をなんて読むか。一般には「ちょくさい」の気がする。それは慣用読みで、正しくは「ちょくせつ」。慣用読みにあれほど寛容(単なる偶然です。ダジャレのつもりはありません)で片端から無節操に採用しているIMEが、「ちょくさい」を採用していないらしい。Macintoshのことえりが採用していないことは少し前に気づいていた。今回のことから判断すると、MS-IMEも採用していない。そりゃダメだよ。「ちょくさい」だと思い込んでいる人が、変換して「直裁」しか出てこなきゃ、字が似ているから絶対この字が正しいと思っちゃうよ。
 ずいぶん前(あんまり古くて探すのに苦労した。2002年の話だった)に、Macintoshの古いことえりが「ちょくさいてき」を変換しない、ってメールを書いてきた人がいる。そんときに、正しい読みが「ちょくせつ」だからでしょう(感じ悪っ)、と書いたあとに付け加えた話。

【とっても親切なtobirisuちゃんメール】=============
 でね、これはネタ帳に加えようと思っていますが、「直截的な」というのは、誤用とまでは言いませんが、異和感を覚えます。個人的な語感では、「直截な」が本来の使い方だと思います。こういう微妙な表現にぶち当たると、苦手な文法的解釈をして論理的に考えるしかありません。
 接尾辞(?)の「的」が何につくかと考えると、たったいま使った「文法的」のほか、
 積極、消極、表面、個人……etc.
 と、すべて名詞です(「積極」「消極」を「的」抜き名詞としてで使うことはめったになさそうですが。積極果敢ぐらいかね)。
 一方「直截」の品詞が何かというと、一般的には「名詞と形容動詞」です(この「名詞と形容動詞」の働きをする単語の品詞をどう分類するかは専門家の間でも意見が分かれているそうですが、学術的な話はどうでもよいので暫定的にこうしておきます……ウーム「的」を多用すると小難しい話に見える)。このパターンの言葉は、
 適当、適切、最適、強引……etc.
 などいくらでもありますが、いずれも「的」はつきません(例外がありますかね?)。こう考えると、「直截」は、「直截的な」とは使わないと考えるのが妥当です。

 ただし、この場合を問題を複雑にしているのは、「直接」という同音語があり、「直接的な」などの表現がよく使われることです。自分で使う場合でも「ちょくせつな」というのは、言葉足らずのような気がして、「ちょくせつてきな」としたくなります。これが「ちょくさいな」だと何も異和感がないため、書くときには「直截」を「ちょくさい」と意識しながら書いています。
 こうなると、話がグチャグチャになってきます。さらに言えば、「きわめてチョクセツテキナ表現」という用法だと、「直接的」でも「直截的」でもほとんど同義の気がしなくもありません(厳密には違うのでしょうが)。もっと言えば、名詞のなかで「的」がつくものとつかないものには何か法則性があるのでしょうか。「わたし的には」とか「気持ち的には」のように、「としては」に書きかえることができるものは×という気がしないでもないのですが、よく判りません。
 このテのことは考えはじめるとどんどん泥沼に入っていくところがあって、不用意に書くとこのようにわかの判らない文章になりがちです(もう少し整理せんとアカンな)。
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【20110226追記】
 最近、「直裁」のほかに「直載」と書く例もふえているらしい。
http://www.google.co.jp/search?client=safari&rls=ja-jp&q=%E7%9B%B4%E8%BC%89&ie=UTF-8&oe=UTF-8&redir_esc=&ei=n3FoTeq4CYbuvQOBh4DkAg
 いまさらながら「直截」を辞書でひいてみた。Web辞書は「慣用読み」として「ちょくさい」を認めている。まあ、これだけ誤読が増えるとしょうがないよな。

■Web辞書(『大辞泉』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch/0/0na/14730712185100/
================================
ちょく‐せつ【直×截】
[名・形動]《慣用読みで「ちょくさい」とも》
1 すぐに裁断を下すこと。また、そのさま。「―な(の)処置」
2 まわりくどくなく、ずばりと言うこと。また、そのさま。「簡明―な表現」
================================

■Web辞書(『大辞林』から)
================================
ちょくせつ0 【直▼截】
(名・形動)
[文]ナリ
[1]まわりくどくないこと。ずばりということ。また、そのさま。
―簡明
語を出すに軽快にして―なる〔出典: 即興詩人(鴎外)〕
[2]ためらわずただちに決裁すること。
〔補説〕 「ちょくさい」は慣用読み
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